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2019年9月2日

遠雷 ~遠くに見える稲光~


「遠くに見える稲光」

 遠くで稲光が光っている。遅れてすかすに雷鳴が聞こえる。世界で起こっている「ダイベスト運動」も「ミレニアム開発目標」もそんな感じがするのだ。世界で音が大きくなってるものの、日本には届いてこない。多分日本人の興味ある音ではないし、関係ないことと多くの人が耳をそばだてたりしないせいだろう。


 そうして世界に取り残される。「RE100(再生可能エネルギー100%)」の運動もそうなのだろう。しかしそのことがビジネス界に激震をもたらした。


 「RE100」をグーグルなど世界的企業が採用したのだ。そして調達品にも同じ要求を持ち込んだ。そうなって初めて日本の世界的企業も慌て始めた。このままではわが社の製品は買ってもらえなくなると。


 この鈍さは日本の政治にも共通している。ジェンダー問題や人権など、世界はもっと敏感に反応しているのに、日本だけは知りもせず無視を続けている。悲しいほど「遠雷」なのだ。


「お尻を見られたら死ぬ」

 世界の投資家や政府では、石炭火力発電など見向きもしない。それどころか使っている国は地球温暖化を考えない国としてパスするようになっている。と同時に原子力発電などそれ以下だと扱っているのに、日本の政府・経済界だけは未だに推進しようとする。民意は各種の統計でも半数以上がもはや反対しているのに。


 この鈍さが日本を孤立させている。ネットではこれを「ぼっち」と呼ぶ。「ひとりぼっち」の「ぼっち」だ。世界の首脳が集まっても日本政府だけは相手にされない。無視されている。言葉すら通じない「未開の酋長」がいるみたいだ。


 日本の文脈から伝えられるツールはないものだろうか。人々はすでに原発を認めていないし、人権問題も気候変動問題も心配している。「それが証拠に…」と伝えられるものが必要なのだと思う。


 先日「新聞記者」という映画を観た。「日本の現実を映画化している」と伝えられるものだ。しかし観に行って私は全然違う感想を持った。ガラス細工のようなひ弱な人々の群れを見た気がした。些細なことで自殺してしまう。「私はこう生きる」というような強い意志を持たない。まるで「お尻を見られたら死ぬ」と決意している小学生みたいだ。狭い蛸壺の中に入り込んで、外の世界はないみたいに。仕事を辞めればいいだけだ。みんなの期待を裏切って自由になりさえすればいい。なんだか「武士の切腹」を見させられた思いがした。そんな些細なことに命がけになることに私は共感できなかった。


▼野太い活動を

 NPOバンクはそんなガラス細工の神経ではなく、野太く生き続ける意志を見せる存在になりたい。毎日関わる「おカネ」に意志を持たせて、「ダイベスト運動」のようにそんなことには協力しないという意志を持つるようにしたい。「原発や石炭火力発電には自分のカネはびた一文使わせない」という意志を。ほとんどの金融機関や企業では実現できないことでも、NPOバンクならできる。みんなでカネの使い道を決めているからだ。


 企業の「RE100(再生可能エネルギー100%)」への対応の遅れの原因にも、人々の意識の遅れがある。人々が投資するとき、そんなことを思う人はごく少数しかいない社会なのだから。


 NPOバンクは小さなものだし、人々にほとんど認知されていない。「だからダメだ」ではなくて、ここから社会を覆していく可能性があるのだ。

 小さな蛸壺の中に逃げ込むのではなく、もっと大きな世界の中に飛び出そう。
これまでのことに思い悩むな、ここから何するかが自分を決めるのだ。
NPOバンクが小さな存在であっからこそ、未来が大きく開かれているのだ。


全国NPOバンク連絡会理事長 田中優

(2019年NPOバンク連の総会に向けて書いた原稿です)


☆全国NPOバンク連絡会 https://www.npobank.net/

☆未来バンク(リニューアルしました!) https://mirai-bank.org/










2019年2月6日

『新バンクを作る意味を 』  

いよいよ2019年2月、新生未来バンクの誕生です! 

未来バンク事業組合ニュースレター No.97/2019年1月 より
 
『新バンクを作る意味を 』
 
  未来バンク事業組合 理事長  田中 優


今年、新生「未来バンク」という新しいNPOバンクが誕生する。

これまでの「未来バンク事業組合」が「天然住宅バンク」と合併し、若いメンバーが中心の「天然住宅バンク」が新たに運営をしていくのだ。私は両方のバンクの代表をしているが、今後は新生「未来バンク」だけに移る。これだけだとまるで変わらないが、要は「いいところ取り」をめざしたのだ。

これまで信頼を作ってきた「未来バンク事業組合」を引き継ぎながら新しい血を「天然住宅バンク」から受け継ぐのだ。個人的なことだが去年、人生二回目の脳出血をして入院した。出血したのは文字通り「頭に血が上った」せいだった。検査してもらうと、頭の中には何度かの出血痕があった。自分なりに思い起こしてみると、腹を立ててカッとしたときに出血していたようなのだ。
 

以来、きちんと毎日血圧を下げる薬を飲み、いわゆる「頭にくる」のが危険だと気がついてそんな事態にはならないようにした。不誠実な人間には合わないこととし、信頼できない人とは極力つきあわないことにした。命取りになりかねないからだ。
 

私はものすごく短気だ。この性格は治りそうもない。不誠実な対応をする人に会うといきなり「カッ」とする。これはどうにも治りそうにない。今更治そうと思ってもいないのも事実だ。ならばそうなるような場面にいないことが大事だ。だからそんな「不誠実」と思う人とは縁を切り会わないようにした。信頼できる人たちの間で生き続けるのなら、生きつづけることも無理ではないからだ。
 

これは個人的体験と事情による変化だが、もう少し一般化して言おう。自ら活動するときには「信頼できる人」だけと行なうことが大事だと思う。信頼できないと気づいたらすぐさま縁を切る勇気が重要だと思う。そして翻って自らの行動原理に戻れば、絶対に裏切らない信頼を得ることが必要だと思う。

もちろん信頼はカネにならないし、カネを大事に考える人たちは裏切ることが多い。となるとカネに左右されない代わり、カネと縁が薄い人になる可能性が高くなる。とすれば逆に、最初からカネに左右されない暮らしをしておくのがリスクヘッジになる。そうした暮らしをめざしてほとんどを自給できる暮らしに近づけている。

新生「未来バンク」では信頼できる関係の中で進めたい。


それでは新年に当たって、これからをどうするか考えた。そのひとつは今の土地で新たに家を建てようとするときに役立つ融資制度を作りたいと思っていることだ。もちろん第一にその人個人の信用だが、住宅取得を補えるような融資の仕組みを準備したい。


例えば「フラット35」というローンを利用する仕組みで、都会にそのまま住み続けるより有利になる仕組みを作れないだろうか。長く住むことが有利になるような住宅とローンが作れたらいい。その仕組みの中に、その人が信頼を長年得たことが有利になる仕組みを入れられないだろうか。
 

金融は無機質な仕組みなのではなく、もっと有機的で人間的なものであっていいのではないかと思う。返済されない時に悩まされたり手間が掛かったりすることを考えると、そんな心配のないつながりから融資制度を活かせないかと思うのだ。
 

長年やってきた私が発言するよりも若い人たちの芽を伸ばしたい。幸い私の子どもたちは親の私が言うのもなんだが、信頼できる親切な子ども達に育った。三人ともそれぞれの役割を活かして天然住宅バンクを支えるメンバーになってくれた。長男は非営利の住宅建設をする天然住宅のスタッフに、二男は弁護士としてこうした活動を支える役割を、三男はこうした活動を映像にするドキュメンタリー監督をし始めた。


私は少し手が空く立場になった分、新たな分野を開拓する以上に考えを深化させていきたい。もっと深堀りして、役立つ仕組みを考えたい。もっと有機的で、簡潔な仕組みがあるのではないか。それを試行錯誤していきたい。


※PDF版は次のURLから御覧頂けます。

https://drive.google.com/file/d/1w4PvXX568bFjMgW25s1rCQRwRBAN7_PN/view?usp=sharing



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田中優有料・活動支援版メルマガ 最新号(1/31号)
 
『 新生未来バンクの未来を祝福する 』
です!

1994年に未来バンクが誕生した経緯、その理由やこれからのことなど、代表の田中優がお伝えします!


(本文より)

「それは金融機関に留まらない。要は預金者自身の態度の反映なのだ。
日本で非常に人気のある貯金先に郵便貯金がある。それが何に融資され、どんな事態を引き起こしているのかを問題にしたのが 「どうして郵貯がいけないの」(北斗出版 絶版)だった。日本が戦争を続けたり、世界中でダムを造ったりして環境破壊ができたのは、人々が郵便貯金にお金を預け続けた結果だった。 」



<ご購読方法>
2019年1月号のバックナンバーご購入でこちらがどちらもお読み頂けます。


■2019/01/31 第179号:「 新生未来バンクの未来を祝福する 」
■2019/01/15 第178号:『 終わる原子力、歴史を逆回しさせるな(下)』

バックナンバーご購入はこちらより
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2018年7月5日

「 未来バンクを超えて新たなステップへ 」

『 未来バンクを超えて新たなステップへ 』

         未来バンク事業組合 理事長  田中 優


 未来バンクが、同じく私が代表を務める天然住宅バンクに合併するという話を伝えたが、なんだか変わりないように思えるかもしれない。
しかし大きな違いがあることをお話ししたい。

 数年前に脳幹部の出血をして、後遺症も何もないが危険な体験をした。こうしてリスクが加齢とともに増えてきているのだ。そればかりでなく、頭が固くなって次の機会を逃す危険もある。老害になることのリスクもあるのだ。ある団体では頭が固くなった老人が最後まで我を張って代表を続け、若いスタッフが困った末に自殺してしまったという悲惨な例もある。

 私自身が固陋になってしまったとしても、はたまた今以上に能力が衰えてしまったとしても、次に委ねる仕組みを作っておきたい。そうすれば安心して活動できるのではないか。と考えたのだ。だから若い人たち主体に新しいバンクを構成し、今いる、ある意味でベストメンバーである今のバンク理事たちはサポートに回る。 

 そして徐々にフェードアウトできる仕組みにしたいと思うのだ。

 未来バンクの今の理事たちは、特技にでっぱりへっこみがあるとはいえ、全体としてうまく運営できるメンバーだと思う。そこから私たちにしてみれば多額の貸倒引当金や事業準備金を含めて、次の世代に引き継ぎたいのだ。


 とはいえ私自身も引退するには早すぎると感じている。その部分は、別な形で実現しようと進めている。それが「未来基金」構想だ。私はそれら二つのバンク以外にも関わっていて、「財団法人 信頼資本財団」の評議員も務めている。そこで次の仕組みを作ろうと考えているのだ。動機は私自身が年金を受け取れる歳に、あとわずかでなれるということだ。しかし社会を見渡してみて、私がそのお金を受け取ることに抵抗があるのだ。個人的には一生懸命に頑張ってきたとは思う。


 しかし若い世代の人たちを差し置いて、私が受け取ることには抵抗があるのだ。
ある団体に関わっていて、世界一周する旅行の講師をしていた。そこには今や高齢者が多くを占め、体が十分に動かない人たちも参加していた。すると若い人たちが親切に高齢者をかばい、車椅子の後ろを押すのだ。その後ろから押される側に、私がなることには抵抗があるのだ。病気して一時的には車椅子で移動する生活になったことはある。そうではなく、これから先の生き方として納得できないのだ。

 私が生まれた年は、日本で原子力の予算が初めて組まれた年だ。なんてことをしてくれたのかという思いはある。それと同様に私の育ってきた時代は将来のツケにして良い暮らしになってきた時代でもある。

 恩恵に浴することはなかったが、バブルの時代もあり退廃的なまでに遊び呆けていた時代でもある。そんな時代の人間が、年老いてまで車椅子を後ろから押してもらうだけの資格があるようには思えないのだ。

 そこで年金を受け取る中の一部でも、きちんと未来に寄付できる仕組みを作りたいと考えたのだ。年金額の総額は巨額で、わずか一%に満たない寄付でも、全体としては「兆円」の単位になる。その資金を得て、未来に残したくない負の遺産(ツケ)をなくしたいと思うのだ。

 たとえば放射性廃棄物の問題にしても、恩恵を得ることのない世代に残すことになる。その電気すら使っていないのに、一方的に放射性廃棄物だけを押し付けられる。これを解決するのに国の費用ですべきと言うことはできる。しかし今の政権を見ていればわかるように、そんな能力も決意もないだろう。ここには三つの選択肢しかない、政府がするか、市民が自発的にするか、市民と政府が共同でするかの三つだ。

 言葉上で美しいのは共同で実行するというものだが、実際の場面を見てみると、無責任で、大きなものに寄り掛かった活動しか見えてこない。これでは解決するはずがない。

 市民が勝手に自発的に始めなければ、十分に効果的なものにはならないだろう。ある人が実験して、トリチウムの混じった水の浄化に挑んだ。成功したので政府に働きかけたが、政府は追加実験もすることなく握りつぶした。従来の物理学からは不可能と思われるからだろうか。そうでなくても、もし実現できたらゼネコンの「除染ビジネス」に齟齬をきたすからだと聞いた、すると成功したら除染ビジネスの利権に穴が開き、失敗すれば従来通りの不可能な話になるのだ。ならば何もしないことが最高の対策になる。

 こんなことでは解決できる手段は見えてこない。実績があるならやって実験してみたらいいと思う。その費用も「国の対策」では検討すらされなくなる。放射性物質の話は荒唐無稽と思われるかもしれないが、人口が激しく減少する時代のダム計画はどうだろうか。

 ついに10人に一人を越えて発生するようになってしまった「ADHD(注意欠陥/多動性障害)「LD(学習障害)」「情緒障害」や「自閉症」などの問題はどうだろうか。この発生とネオニコチノイド農薬の使用量とが比例していたり、アメリカの自閉症児の増大と、除草剤ラウンドアップの使用量が比例している。

 マサチューセッツ工科大学から、「2025年には二人に一人の子どもが自閉症になる」と論文も出されている。この除草剤ラウンドアップは、それでも枯れないように作られた遺伝子組み換え作物の栽培によって、当たり前に使われることになる。
日本ではその準備として「主要作物種子法」が廃止されてしまった。


 私たちは政府に気兼ねしたり忖度したりすることなしに、きちんと調べて対策する資金を市民自身で持つべきではないだろうか。信頼資本財団は公益財団だから、寄付したお金の四割程度が税控除される。

 その分は戻ってくるのだ。さらに若い人たちが能力ではなく、親の財力によって将来が限定される事態も避けたい。最低限、無利子の奨学金を用意したい。そのとき※信頼資本財団は、公的財団となっているので貸金業の登録なしに融資ができる。
そして現に今も融資をしている。

 なんと「無利子・無保証・無担保」で、信頼保証人という法的な責任を負わない人だけで融資し、これまでの十年間に一軒の貸倒も起こしていない。これはブロックチェーンによる信用確保と同様で、信頼によって社会の仕組みを実現する形になっているのだ。

 これが私の考える次の仕組みだ。わずかではあるが、もちろん私も寄付していこうと思う。買いに稼いだお金と、現世代の就労者から老後の費用を賄おうとするのが年金制度だとするなら、これまでとは逆に過去に働いて稼いだお金である年金を、未来のために使おうとする動きだ。

 未来バンクは「過去の費用」には融資せず、未来のための活動だけに融資してきた。同様に未来のための資金にしたい。石川啄木の言葉で恐縮だが、「これをし遂げて死なんと思う」のだ。私たちは未来世代のために生きてきた。そのひとつの表現にしたい。


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以上、2018年6月発行 
※「未来バンク事業組合ニュースレター No.95/2018年6月」より抜粋

※PDF版はこちら
http://www.geocities.jp/mirai_bank/news_letter/MB_NL_95.pdf


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※公益財団法人信頼資本財団
 http://shinrai.or.jp/








2018年3月24日

『 未来バンクの世代交代 』

 未来バンク事業組合 理事長  田中 優


 以前講演会場で聞かれたことがある。「そろそろ次の世代に引き継がなければならない時期に入ると思いますが、後継者の育成はどうしてますか」と。

 そのときぼくが答えたのは以下のようなものだ。

 「自分が誰にも育てられた覚えがないように、次の世代の人も育てるということはできないのではないかと思います。育てるのではなく、勝手に育つものなのではないかと」


 簡単な言葉で言うと、ぼくは生意気に育ってきたのだ。誰かに育てられたこともなければ、自分から何らかのエスカレーターに乗ったこともない。若いころにつまらない組織の幹部候補に持ち上げられたこともあった。もちろん断った。自分で決めればいいときに、誰かの頭を借りる必要はない。そう思っていたし、今でもそう思う。

 しかし未来バンクの監査役と話していた時に、「そろそろ団体をどうしていくのか考えてもらいたい、年齢が団体のリスクになってきています」と言われた。確かに私自身が還暦を超え、団体は次の世代に譲れるように体制はなっていなかった。こちらは譲りたいと思っているのだが、無償の労働で運営し、名誉も何もない活動を引き継ぎたい人がいなかったのだ。


 未来バンクを立ち上げたのは1994年だったから、いつの間にか24年も経っている。
立ち上げたときは30代だったが、もう還暦になる。人生の中で、活動できる期間というのは実に短い。他のNPOバンクに併合してしまうのもいいが、我々の活動があまりにも禁欲的であったために、変質は免れない。

 もちろん努力はした。未来バンクの中で「作戦会議」を作り、いろいろ新たなリクルートの試みもしてみた。そこに集ってくれる人たちは素晴らしかったが、私たちと年齢が近ければ、すぐに次の世代交代の時期がきてしまう。


 必要な資質があるとすれば、何よりフェアな人であることだ。おカネを扱う以上、絶対に自分を優位においてはいけない。自分のことは貧しいままにしたとしても、他の困っている人を優先できないといけない。


 もう一つはリスクに対する敏感さだ。してみたいことがあったとしても、リスクを考えて判断していかないといけない。実際、未来バンクの中でぼく自身はアクセルだった。先に進むために新たなことをしてみたくなるタイプだ。しかし事務局長の木村さんは慎重に考えるタイプで、ブレーキ役を果たしていた。木村さんの考えることは常に冷静・正当だった。それを熟慮していく中から、新たな仕組みを作り上げて実現した。そのときに人の意見に耳を貸さないタイプだっらできなかったことだろうし、問題を別な形で解決できるスキームを考えつかなかったら実現できなかったことだろう。


 例えば「特定担保提供融資」というものがある。あるとき、ドキュメンタリーの映画作りの融資申し込みがあった。素晴らしい映画を作ってきた監督であり、映画に対する信頼性はあったのだが、リスクが高すぎる。たくさんの人に観てもらえなければ資金の回収はできないのだ。映画監督と聞けばなんだか立派な職業のように聞こえる。しかし自分でスポンサーを見つけなければできず、不安定なものなのだ。

 そこで未来バンクの組合員に、自分の持つ「出資金」の一部を担保として提供してもらい、その分だけ融資する仕組みを作った。もちろん出資金を提供してくれる人たちの出資金は返済されなければ担保として返済金に充てられてしまう。そのあとは未来バンクが代理人となって返済を求め、返されれば取り上げられた出資金に充当されていくという仕組みだ。

 この場合、リスクは未来バンクが背負っているのではなく、「担保提供してくれている組合員」が負っている。その分だけ未来バンクはリスクが減るのだから金利はその分だけ少なくていい。だから当時通常3%だった融資金利を1%に下げた。残りのリスクは担保提供してくれた組合員が支えてくれたのだ。

 最終的に融資は実行でき、「教えられなかった戦争シリーズ」の第三回が完成した。高岩さんのその作品はキネマ旬報特別賞を受賞してくれた。そのおかげもあって完済された。


 もしこうしてリスクをみなで分担していくなら、融資はもっと身近なものにできるかもしれない。市民が自分たちでリスクを分担していけるなら、もっと少ない金利でさまざまなことを実現できるかもしれない。それがさらなる未来バンクの未来にしたいと思うのだが、残念ながら私たちの世代は終わってしまった。


 そうこうしている中、予想外な形で後継者が現れた。同じ仕組みで立ち上げていた「天然住宅バンク」のメンバーたちが、未来バンクを引き継ごうと言い出してくれたのだ。


 天然住宅バンクは、非営利の一般社団法人「天然住宅」の取得を助けていくために立ち上げた仕組みだ。住宅取得の際の「つなぎ資金」の融資や、住宅のための木材を供給する「くりこま木材」への融資、太陽光発電による電力自給システムやペレットストーブ設置への融資などを行ってきた。代表は私が担っていて、理事メンバーには未来バンクの理事たちも参加している。 それ以外の若いメンバー中心に、新たなバンクを作ろうと考えたのだ。

 これまでは住宅に特化した融資を行ってきたが、これからは未来バンクの融資スタイルを取り入れながらさらなる融資を実現したいという。名前は「未来バンク事業組合」を引き継ぎ、新たな仕組みを実験していきたいという。

 主要メンバーには現在の天然住宅バンクを担っている井上あいみさんと田中竜二くん、それと天然住宅を建ててオフグリッド生活を始めた佐藤隆哉さんが担う。いずれのメンバーも30代の中盤だ。さらに弁護士の田中翔吾くん、映画製作と福祉ワーカーを掛け持ちする田中悠輝くんも参加する予定だ。

 ここに未来バンクを合併させて、名前は彼らの希望で「未来バンク」を名乗りたい意向だ。ここに出てくる田中竜二くん、田中翔吾くん、田中悠輝くんはぼくの三人の息子たちでもある。彼らは自分の意志で引き受けたいという。

 私たち未来バンクのメンバーはアドバイザー的に関わり、少しずつ抜けていっても大丈夫なように体制を整えるように手伝いたいと思っている。


 未来バンクの未来のために、次の世代に事業を引き継ぎたいと思うので、協力をお願いしたい。


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以上、2018年3月発行 
※「未来バンク事業組合ニュースレター No.94/2018年3月」より抜粋

※PDF版はこちら
http://www.geocities.jp/mirai_bank/news_letter/MB_NL_94.pdf


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2017年12月26日

2018年夏上陸「日本版グラミン銀行」はサラ金とこの国の貧困に勝てるか?=田中優

2017.12.23発行しました!
「日本版グラミンバンク設立」に向けて書いた原稿です。
 171221muhammad_yunus_eye

(写真は掲載サイトより)

2018年夏上陸「日本版グラミン銀行」はサラ金とこの国の貧困に勝てるか?=田中優


今、設立の準備が進められている「日本版グラミン銀行」は、バングラデシュのグラミン銀行と同様の仕組みで小口の融資を行い、お金に困っている人々の生活や自立を支援するものだ。私はこの試みにエールを送りたい。ぜひ実現してほしいと思う。しかしそのためには、日本の特殊な状況を乗り越える必要がある。(『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』)
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「日本の貧困」をマイクロファイナンスで克服するための条件

「グラミン銀行」とは?

グラミン銀行を知っているだろうか。バングラデシュで土地なし農民など貧しい人たちに融資し、生活を向上させ、多くの人に未来の可能性を切り開いてみせた、市民による市民のための銀行だ。・・

 全文はこちらよりご覧ください⇒ http://www.mag2.com/p/money/352614


<<主な内容>>

・「日本の貧困」をマイクロファイナンスで克服するための条件
・「グラミン銀行」とは?
・創設者モハメド・ユヌス氏の抱いた疑問
・なぜ男性ではなく女性に融資?
・バングラ最大の銀行に
・「日本版グラミン銀行」に立ち塞がる我が国の問題点
・日本版グラミン銀行は「サラ金」に勝てるか?
・「日本の貧困」を救うための条件


他、マネーボイスでの田中優記事はこちら↓↓

官僚だけが大儲け。日本を破壊する「水道民営化」のトリックに騙されるな=田中優 (2017.9.28)


「人をお金に依存させる」ベーシックインカムの問題点と貧困解決の重要点=田中優 (2015.12.10)

2017年12月25日

『 病気の朝 』

 8月16日、朝早く起きたぼくは、子どもが起きる前に一仕事しようとパソコンに向かった。それまで特に不調だったわけではない。強いて言えば前日、地域で育てた無農薬の小麦を石臼で挽いたうどんを食べたとき、それほど美味しいという感動を受けなかったことぐらいだ。

 パソコンの画面を見ているとき、突然にそれは襲ってきた。滅茶苦茶な眩暈だった。見ているものが突然、左に回転し始めて止まらなくなった。座っていることすらできずにそのまま床に倒れ込んだ。それでも強い回転の渦に呑まれ、すさまじい吐き気に襲われた。


 吐き気はものすごくあるのに、起きたばかりの胃の中には吐き出すものがなかった。吐き気で気持ち悪いのだが、音は聞こえるし力も入る。窓ガラスを体に引き寄せるようにしてガラスの外に顔を出した。咄嗟に吐き出す。酸っぱい臭いがするので昨日食べた胃液の残りだろう。

 しばらくそうしていると、妻が降りて来てくれた。子は降りてきてぼくの姿を見ると、何も言わずにただ大粒の涙を流していた。意識に障害はない。しかし目を開けていられない。ぐるぐる回って吐き気がひどくなるからだ。


 自分で分析してみた。5年前に脳間出血したことがある。そのときと比較しても脳に損傷があるようには思えなかった。音も聞こえるししびれる箇所もない。
 脳の出血ではないと思った。妻が「救急車を呼びましょう」と言ってくれた。
こまま改善を待つのも良いが、前回の出血があるから単なる受診では納得してもらえないだろう。

 いくつか病院名を言ってくれる。「・・脳神経外科病院」、そこでなければ再度受診せざるを得なくなる。そこで「その病院に相談してみてくれ」と答える。受診可能との返事を聞き、「救急車を呼んでくれ」とお願いした。目すら開けられないのだから、それ以外に受診の方法がないからだ。

 そしてこのままストレッチャーに乗せられて運ばれるのだろうからと、吐き続けながらも窓の外にあるウッドデッキの上に横になった。しばらくすると救急車のサイレンが聞こえた。しかし目は開けられないままだ。ストレッチャーに乗せられて空き地に置いた救急車に乗せられた。 

「キュウキュウシャ 写真 フリー」の画像検索結果

(イメージ)


 救急隊員が病院に受け入れを確認した後に発車。救急車の中で検査のたに、日時や生年月日、住所などを聞かれる。すらすらと答えられるのだが、吐き気の症状は変わらない。病院に着いてストレッチャーで揺れながら運ばれる。想定していた通り、CTスキャンやMRI検査が始まる。目の状態を見るために、強制的にランプで目を検査される。それだけのことで吐き気がして少し吐いた。

 検査が終わると予想通り、命に危険のある病気ではないと言われた。そうなると脳本体の問題ではないのだから、三半規管のあたりの問題だろう。若い二人の脳外科医は緊張が解けたように「どうしようか」と言った。

 要は脳出血などではないのだから、緊急の処置が必要ないのだ。しかしぼくの側は相変わらずひどい吐き気で、動くことどころか目を開けることもではない。そして病室に運ばれることになった。

 病室に入ると点滴された。その中には眩暈の防止の薬が入っているそうだ。その日も翌日も何も食べられなかった。吐き気がひどいのに、食べても仕方ない。妻に土曜日から予定していたツアーに出かけられなくなったと友人に連絡してもらうようにお願いした。自分ではスマホの画面すら見られないのだから。

 翌日昼には退院した。ここは脳外科の専門医で、そうした人たちが運び込まれてくる。ぼくのような緊急度のない患者がいても邪魔になるだけだ。それは実際、検査直後から興味を急速に失った脳外科医の姿からも見て取れる。しかし吐き気は続いている。結局、車椅子で車まで運んでもらって妻の運転する車で自宅に帰る。

 病名は「前庭神経炎」だった。原因は未だにはっきりしていない病気で、風邪のウィルスなどが三半規管の「前庭」に入って炎症を起こしているらしい。驚くのはその突発性だ。何の前触れもなく突然に世界が回転しだすのだ。

 病院内よりは自宅の方がずっといい。有害化学物質フリーだから、自宅は吐き気を催させるものがない。しかし鋭敏になっているせいか、子どもの小麦粘土が臭い。ベネッセの「しまじろうの玩具」が臭い。『普通の家だったら吐き気で死ぬな』と思う。

 翌日にはふらつきながらも目が開けられるようになった。立って歩けるようになった。目が開けられるようになると早速スマホで調べてみた。「前庭神経炎」は突然に発症するが予後は良い。一週間程度で眩暈は取れることが多いと書いてある。

 5日ほどして、パソコンも見られるようになった。行くはずだったツアーの沢登りの様子の写真を見る。みんな無事に登ってきたようだ。自分が行けなかったことが悔しい。


 歳をとったせいか、病気が身近なことになってしまった。それでも今まで通り原稿を書き始めた。「あとどれぐらい生きられるのだろうか」という思いが頭を掠める。今進めていることぐらいはきちんと本にしておきたいと思う。もっとぜいたくを言うと山に登りたい、海に泳ぎに行きたい、沢登りにいきたい。それはきっと自分の摂生次第なのだろう。


 もっと生きないといけない。もっと貪欲に実験してみたい。そして地域活性のための新たな方法を考えたので、実現してみたい。経済の回転の仕方が変われば、地域に暮らすことが楽しくできて安心して地域で暮らせるようになる。

 そうすれば、「西暦3000年にはこの国の人口が数千人になって地方は無人の荒野になる」という、馬鹿げた予測も覆せるのだ。このことは発行している有料メルマガの2017.8.30号にも書いた。



 もっとしたいことがある。人生はなんと短いものなのだろうと思う。まだ死ぬ時期がわかったわけではないのだが。


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以上、2017.9発行 
※「未来バンク事業組合ニュースレター No.92/2017年9月」より抜粋

※PDF版はこちら
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2017年12月14日

『 アルジャーノンになる日 』

2017.12.13発行 田中優無料メルマガより

■アルジャーノンの話

 「アルジャーノンに花束を」という小説はとても面白く、感動的な物語だ。
ここであらすじを書いたとしても伝わらないことは分かっている。それでも簡単に書いておこう。

 チャーリイ・ゴードンは知的障害者でパン屋に勤めている。その彼を大学で「ロボトミー手術」の研究をしている医師が研究材料にして、知的障害者の彼を天才にしてしまう。誰も及ばないほどの天才となり、自分の知性でその手術の効果を読み解いてしまう。やがて彼は自分がモルモットにされていたことにすら気づき、ネズミを飼い、そのネズミに「アルジャーノン」と名付ける。

 さらに彼の施された手術を調べ、「確かに天才になるがそれと同じスピードで低下していってしまう」ことに気づく。次第に衰えていく知性に怯えながら、残りわずかな知性の中で養護学校に戻っていく決意をする。彼の飼っていたネズミが死ぬと、庭に埋めた。さんざん面会を断っていた医師たちが管理する報告書の中にこう書く。


「ついしん。どうかついでがあったらにわにうめた
アルジャーノンのおはかに花束をそえてやってください」。

 このアルジャーノンの物語は知性を中心に生きているつもりでいる私たちに存在価値を投げかける。知性の乏しい人に生きる価値はあるのかと。相模原の大量殺人事件のような問いを投げかけるのだ。


 しかしそのことが今回の文章の趣旨ではない。それを頭に入れた上で、添付した文科省の調査データを見てほしいのだ。このグラフは学校で、指導が必要になる児童の数の推移を示している(図1)。

(図1)



 グラフは2000年を超えたあたりから激増している。その内訳は、上から増加の著しいADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)、自閉症、情緒障害の順だ。
増加の見られない下の二つは「難聴その他」と「言語障害」になっている。


 簡単に言うと、今の子どもたちが壊されつつあるのだ。何が原因かについての説明はない。もし何らかの文化的要因だったとすれば、こんなに短期に著しく増加するはずがない。「母原病」と呼ばれるような母の子育てを原因とするにはやはり時間が短すぎる。


 この原因として考えられるのは、全体的に増加しているのだから誰もが摂取するような化学物質を疑うしかなく、しかも脳の情緒を司る海馬や偏桃体を想定するしかない。そこに影響を与えるような化学物質として考えられるのは、最近それ以前の「有機リン系農薬」に代わって出てきた「ネオニコチノイド系殺虫剤」を疑わざるを得ない。

 人間に影響が少ないとして広がったこの農薬は、その受容体である「ニコチン性アセチルコリン受容体」が海馬や偏桃体に多く分布している点で人間に影響しないはずがなかったのだ。


 実際にそれとおぼしき症例がたくさん出ていて、農薬を摂らないような食事に変えると治っている。このネオニコチノイドの出荷量だが、添付したグラフのように推移しているのだ(図2)。


(図2)


 一方でこのネオニコチノイド系農薬に対して、欧米は禁止したり規制したりし始めている。ところが日本では、逆に規制を緩和しつつあるのだ。理由は不明だが、少し前まで経団連の代表をしていた人物こそ、ネオニコチノイド農薬を生産している住友化学の米倉会長だった。ここにつながりを想定しない方がおかしいだろう。


 かくして化学薬品メーカーの利益のために、子どもたちが壊されていく時代が進んだのだ。このままなら、すべての子どもたちが「要指導児童」になる日も近いだろう。最近、「何でしたっけ?」とファミレスで聞かれることが多くなった気がしないだろうか。

 ネオニコチノイドは短期記憶に影響を及ぼす。破壊衝動やうつ状態、不眠や物忘れに症状が出る。 


 大人もまた同様だ。酒で頭を壊した大人たちに加えて、さらに融通の利かない石頭の大人たちが増えていく。調べたければ真っ直ぐ腕を伸ばした手を、指先まで伸ばさせてみるといい。指先が震えるのがその特徴だ。


 何で化学物質を摂取してしまうかというと、ネオニコチノイド農薬の特徴は「水溶性、持続性、残効性、神経毒性」にある。つまり農薬を撒いた果物の皮を剥いても効果なく、その果実自体の水分に残るのだ。分解しても分解された成分自体が人体に有害で、しかも長く土地に残るのだ。残効性が高いので、農薬を少なく使う「特別栽培」によく使われる。

 日本で健康を気にする人たちが、果物を食べ、お茶を飲むようにすることが多いが、それこそがネオニコチノイド農薬摂取のワースト一位と二位なのだ。


 さらに主食であるコメに対しても、カメムシ対策で膨大に撒かれている。空中散布されている長野県松本市では。学校が成り立たないほど子どもたちへの影響が出ている。

 まず摂取しないことが大事だ。そして呼吸しないこと。しかし不可能だから松本市のように訴訟してでもやめさせる運動をするか、他の土地に逃げるしかない。


 私たちは世代を越えた「アルジャーノンの実験」をしているようなものだ。
アメリカではついに平均余命が短くなった。歴史上初めてのことだ。アメリカでの自閉症の発症率は、遺伝子組み換え作物のコーンと小麦の出荷量と比例している。日本は農薬に甘く、アメリカは遺伝子組み換え作物に甘いことが人々の健康に影響しているようだ。


 アメリカで売れなくなった遺伝子組み換え作物は日本に輸出され、さらに日本政府は遺伝子組み換え技術に対して規制緩和しようとしている。

 アルジャーノンの話と違っているのは「頭が良くなる栄光の日がないこと」だ。
栄光のない影ばかりの未来を作ってしまう。でも人々は今の暮らしのすばらしさや努力のない利益に溺れている。こんな社会は変えなければならないと思う。


-------

以上、2017.12発行 
※「未来バンク事業組合ニュースレター No.93/2017年12月」より抜粋

※PDF版はこちら
http://www.geocities.jp/mirai_bank/news_letter/MB_NL_93.pdf

※原文では主人公の名前がチャーリイ・ゴードンではなくアルジャーノンになっていました。訂正させて頂きます。(追記2017.12.21)

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2017年7月27日

『 新手のサラ金、その名は「銀行カードローン」 』

 まずはこのグラフを見てほしい。



 このグラフは「無担保ローンの融資残高」だ。かつて社会問題化した「サラ金」たちの資金貸出額を、銀行が軽く超えてしまっているというものだ。友人から「クローブアップ現代」で放映されていたと聞いたので早速検索。ちゃんと見つかった。見てみたらこれが優れた番組だった。

 かつてサラ金がきつい取り立てや過剰貸し付け、高金利の「3K」が問題になって厳しい規制が課せられるようになった。特に厳しい規制は、法定金利を上回った金利の返済と、本人の年収の3分の1を上回る貸し付けの禁止だった。ところが銀行は「善意の機関」と信じられていてその規制を受けなかった。そこでサラ金に代わって伸びたのが銀行カードローンだったのだ。

 しかし銀行は個人の信用情報を持たないし、融資のノウハウもない。そこでサラ金が信用情報を審査し、万が一の焦げ付きには補償をし、銀行はノーチェック、ノーリスクで貸し出すようになったというのがこの流れだ。

 かつてサラ金では生命保険を掛けさせて、本人が自殺すると資金回収できるので、社内で契約者の自殺に万歳三唱をしたという。ところがその業態が銀行に移ったのだ。サラ金は銀行と提携することがあったが、それがこういう形で進化していたのだ。

 本来銀行は、地域の事業者に融資して共存共栄を目指したものだが、もはやそんな余裕はない。国債はマイナス金利、事業融資は金利が低く目利きができないことから銀行自体が個人カードローンに走ったのだ。金利は3%~15%となっているが、大きい金額か期間が短いものかでなければ安い金利は適用されず、個人ローンの多くは高い側の金利になってしまう。しかもリボルビング方式による定額返済で、金利負担が非常に大きくなってしまうのだ。

 経営の厳しくなった銀行も、これを積極的に営業成績に結びつけ、堅実経営の中小企業への融資より優先して自分で審査せず、リスクも少ない個人ローンを優先する。それが営業成績につながるのだから、職員も競って融資しようとする。やがて破裂するバブルならぬカードローン破産に向けて、恥も外聞もなく銀行はアクセル全開にしたのだ。

 低所得者は当然カネが不足することが多い。その人たちがターゲットだ。
リボルビング方式なら、返済は6年ほどで借入元本の1.5倍になる。低所得者は、その間にまた再びカネが足りなくなる可能性が高いのだ。すると再び銀行カードローンに頼る。そのようにして利益を得ていくのだ。

 吸血鬼のような業務を、銀行が中心になって広げだした。何より大きいのは「年収の3分の1以上は貸し出せない」という総額規制のない点だ。サラ金が規制されてできなくなったことを、「銀行は悪いことをしない」という神話の下で続けられるのだ。そのせいで13年ぶりに自己破産者が増加した。

 これは新たな「銀行地獄」の始まりだ。銀行は善意で運用しているものではない。カネの魔力に憑りつかれた存在だ。人々の世帯所得はピーク時から100万円以上下がった。年収がそれだけ下がれば、学費も出せなくなるし、万が一の費用不足の事態も当然起こる。そんなときになっても銀行カードローンに頼るのは危険だ。

 何より収入に見合った暮らしに戻さなくてはいけない。そのためには現金支出の削減こそが重要なのだ。


以上、2017.6発行 
※「未来バンク事業組合ニュースレター No.91/2017年6月」より抜粋

ニュースレター PDF版はこちら
http://www.geocities.jp/mirai_bank/news_letter/MB_NL_91.pdf



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「銀行を信じてはいけない 」 (2017.6.15発行)

 ・共謀罪成立
 ・えげつない銀行
 ・サラ金から銀行に移った無担保ローン
 ・善意の銀行という神話
 ・無能が暴露した銀行
 ・背景にある貧困化
 ・破産の淵にいる多数の人たち

などなど書かれています。


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2017年5月26日

5月30日(火)「未来バンクと未来をつくる作戦会議」

引き続き休眠預金の動向をチェックしつつ、現在、すでに高額な奨学金返済に苦しんでいる若者の生の声を聞き、未来バンクとして何ができるか議論していきましょう。
その他の課題提供も歓迎です。


ご参加をお待ちしています。 どなたでもご参加大歓迎です☆
 


■日時 
5月30日(火)19:00~
 
■会場 文京シビックセンター区民会議室の5階会議室B
    東京都文京区春日1‐16‐21 tel 03-5803-1162
    東京メトロ後楽園駅・都営地下鉄春日駅 徒歩1分

■お申込:mirai_bank@yahoo.co.jp へメールをお願いします。 
 
■参加費:500円
 
■主催:未来バンク事業組合

    

写真はイメージ


2017年5月5日

『 政府の政策に左右されない暮らし 』

『 政府の政策に左右されない暮らし 』
   未来バンク事業組合 理事長  田中優


◆日常生活の実験

 昔、好きだった大江健三郎の本に「日常生活の冒険」というタイトルがあった。
ちっとも内容は思い出せないが、タイトルが好きだった。考えてみるとぼくは日常生活という言葉に引っ掛かりがあるのかもしれない。背伸びするのは好きじゃないし、大言壮語するより毎日のことを大事にしたい。それで言うならぼくがしているのは「日常生活の実験」だと思う。ご存知の方も多いと思うが、どんなことをしているのか書いてみよう。


◆岡山での暮らし

 福島原発事故直後からたくさんの講演会を頼まれ、2011年から2年間は日数よりも講演回数の方が多くなるような暮らしをしていた。毎日遠くへ出かけ、まるで住所不定のような暮らしぶりだった。こんなことができたのも、2008年に仕事を辞めたからだった。以来、原稿書きと講演会、大学の非常勤の仕事などで暮らしていたが、2011年の事故はぼくの暮らしに大きな変化をもたらした。


 2012年末、岡山に引っ越した。ぼくが原発に反対であることは、政府の作った「要監視者リスト」に名前が挙がっているくらいだから、周知の事実だったろう。
でも仲良くしている「くりこまくんえん」の大場さんから、「田中さんって原発問題で有名だったんですね、ぼくはただの山好きのおじさんだと思ってました」なんて言われたぐらいだから、あまり自分からは言わないタイプだったのかもしれない。

 そして岡山に越してから少しして、再婚した奥さんとの間に子どもが生まれた。こんな安心な場所で子育てできるのは幸いなことだったと思う。








 引っ越したのは偶然に近い。「てんつくマン」という友人から、「ビデオ撮りするから来てくれ」と言われ、そのときに「こんなところに住みたいなぁ」と言ったのがこの岡山の和気町だった。今の家の場所を探してくれたのもてんつくマンの奥さんだった。メールで写真を見て、ここにしようと決めてしまった。

 ぼくが東京を離れることになれば、「田中優は逃げた」と言われるだろう。
しかし居続ければ「田中優は放射能が危険だと言いながらそのまま住んでいる」と言われる。どちらがいいかと言えば、けなされても危険は避けた方がいい、そう思って転居した。

 なぜか引っ越しのときは、今ここで親しくしている岡山の友人たちが徹夜でトラックを運転して荷物を運んでくれた。まだ講演会ラッシュの時期で、引っ越し当日には自分は一緒に来ることができなかった。荷物だけが引っ越した状態だ。当時は古民家を買って住んだのだが、室内にムカデが出たり、動物が入り込んでいて人感センサー付きの照明器具が勝手に点いたりするのが嫌で建て直した。人感センサーならぬ、動物センサーとなっていたのだ。


 もちろん家は自分がやっている一般社団法人「天然住宅」の仕様だ。建てるときも自分で決める「分離発注方式」で建てた。大工さんたちは「ベニヤと接着剤を使わずに家が建つのかよ」と言っていたほどだ。それでも満足できる十分な家が2016年に建った。
 



伝統工法の仕口接手

 国産の無垢・防腐剤フリーの杉・ひのきなどで作った





 こう書くと東京から離れたように思うかもしれないが、大学の授業は続けているので、授業のある間は毎週東京に来ている。まぁ、会議に追われる東京での滞在時間だが。


◆自立した暮らしを

 そして2013年からは電気を自給して電線を切り、文字通りのオフグリット生活にした。その後に庭の井戸跡を見つけて井戸を復活させ、水も自給に切り替えた。
さらに固定電話をやめて携帯と無線のインターネットに変え、固定電話線もカットした。残るはガスだが、太陽温水器を入れて消費量は半分程度に下げた。こうして初期費用はかかるものの、日常生活にかかる費用を極めて少なくした。とりわけ電気の自給はカネがかかるし元は取れないのだが、それでも電力会社との関わりを断ち切りたくてやめた。



  電力会社と契約を解除、電線も切ってもらった。完全なオフグリッド


 太陽熱温水器



 ここまでがこれまでの話だ。そこからも「日常生活の実験」は続く。

 あらたに入れたのが無煙炭化器と炊飯器だ。



無煙炭化器



ブラジル・アマゾンの先住民が作り出した「テラプレタ」という奇跡の土がある。なんど作物を収穫しても連作障害を起こさず、土は自分の力で回復していく。そんな土があって、それが人間が作ったものだったとわかったのは2000年を過ぎてからのことだった。その土地は荒れ果てた「ラテライト」で、三作作れば何も採れなくなる。そこに炭と木酢液などを混ぜることで、奇跡の土を作っていたのだ。




 しかもそれを作り出すことで、地球の大気に吐き出してしまった二酸化炭素のすべてを、数年のうちに土に吸収させることができるのだ。今回COP22でフランス政府は、耕地の中に0.4%だけ多く炭素を混ぜこむことで、毎年排出する世界の二酸化炭素の75%を吸収できると発表した。これまで厄介者扱いしかされなかった農業者が、最前線となるのだ。炭は木材の持っていた二酸化炭素の8割を閉じ込め、燃やさない限り排出されない炭素の吸収源となるのだ。

 この話が面白くて自分でもしたくなった。そこで無煙炭化器を買い込んで、庭で炭作りを始めたのだ。「まぁいつか炭で菜園を作ろう」ぐらいに思っていたのに、急きょ農地が必要になってしまった。それはフェイスブックでGMO(遺伝子組み換え作物)の話を載せたおかげだった。宮崎で農業をしている友人が、「のらぼう菜」の苗を送ってくれたおかげだった。

 のらぼう菜は面白い作物だ。ほとんどの野菜の祖先になったアブラナ科の野菜であるにもかかわらず、ちっとも交配しないのだ。普通は勝手に交配して別な野菜を作り出してしまうほどなのに、ちっとも交配しない。交配させて別な種を作ろうとあちこちで試みたのだが、まだ成功できていない。遺伝子組み換え作物によって世界の作物を支配しようとするモンサントのような会社は、自分で作物から種を取ることを禁止しようとするのだが、のらぼう菜は自分で種を取らなければ収穫できず、しかも交配しないのだ。




田中優宅で栽培しているのらぼう菜



 これが江戸時代の飢饉の時代に人々を救っている。寒さにも強く、生命力も旺盛で、栄養豊富なのだ。こんな作物が各家庭の庭にあったら、巨大アグリビジネスの支配下にならずにすむではないか。その苗を送ってもらったので、急いで炭を混ぜた自家製テラプレタを庭に作ってみたのだ。今のところのらぼう菜の生命力に救われて、どうやら活着したようだ。


 そしてもう一つの炊飯器は、自動でスイッチ一つで「酵素玄米」だろうが「発芽酵素玄米」だろうが炊くことができる優れモノの炊飯器なのだ。玄米はビタミンCを除けば完全栄養だといわれる。調べてみると量的には不足するものの、微量栄養素のすべてを持っている。つまり一汁一菜のように、わずかな副菜があれば、それだけで生存可能なのだ。




炊飯器で炊いた酵素玄米


 ときどき言われる玄米のフィチンが微量栄養素を奪ってしまうという懸念は、実際の二年間の実験によって否定されている。これから玄米と一汁一菜で、生命をつなぐことができるのだ。幸い、昔勤めていた会社の親友が、退職して新潟で有機のコメを栽培している。そこから安心できるコメを買えば、ぼくはそれだけで生活できるのだ。


◆自立は孤立を意味しない

 こうした暮らしはとても大きな安心感につながる。自立すると孤立するかと思っていたが、自立することでより多くの友人たちが出来てくる。

 自立するとおカネのつながりがほとんど消え失せるだけで、孤立の問題はおカネでのつながりのときに起きるようだ。カネでないつながりは、多くの友人を引き付けてくれるようだ。

 おかげで心配しなくていい部分が広がった。もちろん家の中には人体に有害な化学物質は使っていないし、食べるものも有害物質はほとんどない。そんな中、ついに60歳の誕生日を迎えてしまった。「ジジイ」という言葉を実感する。

 先日検診を受けてみたら、あちこちにガタが来ているのがわかった。
体力だけで乗り切ってきたこれまでの暮らし方を、いよいよメンテナンスしながら暮らしていかなければならない。そこで朝早くからウォーキングすることにした。かつてマラソンをしていたことがあったが、さすがに歳のせいか老練になってくる。タイムなんて考えるよりも、楽しくすることを考えるのだ。


 そう思ってウォーキングすると、田舎に住んだことの素晴らしさを実感する。どこを歩いても美しいのだ。今は枯れ木ばかりだが、その木の色が少しずつピンクがかってくる。枝の先につぼみがつくからだ。その後には燃えるように色とりどりの花と緑が吹き出して来るだろう。それを考えると今の風景のピンク色がかった枯れ木も美しく感じるから不思議だ。


 ぼくはいろいろ調べてみるのが好きだ。好奇心に任せてあれこれ追いかけるのが。そしてフェイスブックの発信は、いろんな人とつながるばかりか運動の始まりにもなっていく。こんな暮らしをしていて、さらに次の「日常生活の実験」を考えている。


 そんな暮らしをするにはとても良い時代だ。友人が新たなエネルギー源のニュースを伝えてくれた。どうなっていくのかワクワクしている。対立して落ち込むこともあるかもしれない。しかしぼくには生活の安心という後ろ盾があるのだ。
もっともっと日常生活の実験を進めていきたい。



以上、2017.3発行 
「未来バンク事業組合ニュースレター No.90/2017年3月」より抜粋

PDF版はこちら
http://www.geocities.jp/mirai_bank/news_letter/MB_NL_90



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