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2020年5月14日

田中優インタビュー『学生ボランティアの「正しいススメ」』

2020年4月発行「 BILANC」 (公益財団法人私立大学退職金財団発行)に、田中優インタビューが掲載されました。



学生ボランティアについてです。
ご一読いただければ嬉しいです。
なお、webにて全文公開されています

学生ボランティアに警鐘!「大人主導」は危険


 ボランティアとは、他人や社会のために自分で考えて行動することで、「自分の意思」を「自発的に」つくり上げていくものです。ところが昨今、間違った取り上げられ方が多く見られます。
  ときどき「学校が児童・生徒を半強制的にボランティアに参加させようとしている」などと問題になることがあります。実際、こうした大人主導のボランティアは大変危険です。「強制参加」というのは、大人が子どもを型にはめようとしている図式です。
  せっかくの貴重な機会が、大人に強制されたつまらない学校行事になってしまっては、元も子もありません。罪深い行為ですね。

  ボランティアの問題点はまだあります。「ボランティア」という言葉を、単なる人件費削減の手段に利用していることが挙げられるでしょう。「ボランティア」を美辞麗句のように用い、持ち上げることで、無賃労働あるいは低賃金労働を学生に強いるわけです。
 
 このようなボランティアの利用は、裏を返せば正規の雇用機会を奪い、プロフェッショナルが育ちにくくなる原因の一つとなり、もはや社会問題ともいえるでしょう。たとえば、図書館のスタッフに学生を起用しているところがあります。問題はある市町村であったように、スタッフだけでなく司書まで学生に置き換えてしまったケースです。
 
 国際社会では、司書は社会的な地位が高い専門職です。なぜなら、司書は図書館が内包する「知」をつかさどる存在であると認識されているからです。

  しかし日本では、司書に倉庫番のようなことしか任せていないケースも多い。だから運営費用を下げるために、図書館の機能を落とすだけでなく、司書の雇用までも奪ってしまった。本当にもったいないことです。十分なレファレンスサービスが受けられない図書館の利用者も被害者といえます。関わる人すべてにとってマイナスになってしまう。こういった状況を生んでしまっては、もはやボランティアとは呼べないのです。


「違和感」を覚える場で人は成長する


「ボランティアを通じて、学生に自発的に考えさせる」のは、まさに言うがやすしで、実践するのは難しい。学生は、自分で考える経験が少なく、そうした素地がまだ十分に整っていないのですから、なおさらです。それに、そもそも現代は、自発的に考え、行動することが難しい時代になってきています。


 原因のひとつと考えられることとして、SNSの普及などにより、似た個性をもつ人たちが、同じコミュニティに集うようになったことが挙げられるのではないかと思います。同じ考えの人が集まると、「個人」が隔離され、気にくわない人を遠ざけることができます。しかし行き過ぎると、多様性が排除されていきます。これは恐ろしいことです。マイノリティーが瞬時に疎外される社会へと向かっているのです。


 この状況の改善にボランティアはとても有効といえるでしょう。インクルーシブ教育※の考え方は、ボランティアと相関性が強いと考えています。いろんな立場や考えの人が同じ場にいると、これまでの経験や思考では処理できない、さまざまな「違和感」が生まれます。この違和感は他人の痛みがわかるきっかけであり、自発的な行動の第一歩です。自分の考えていることと違う、異なるジャンルの人たちとの関りでは、時にいさかいも生まれることでしょう。そこで生まれた違和感を課題に挙げて話し合い、関係性を深めていけばよいのです。


 ボランティアへの参加は、「違和感を覚える場に自ら飛び込む」ことにほかなりません。それに、自発的に参加したのであれば、責任が生まれます。チャレンジングなことですが、ぜひ今の学生たちには取り組んでもらいたいと思っています。


※インクルーシブ教育・・・障がいの有無にかかわらず、誰もが通常学級で学べることを目指す教育理念と実践課程のこと。



 
説明を追加

 三つの「やってはいけない」学生編

1)「自分探し」で行ってはいけない
2)「手段」になってはいけない
3)「ぶっつけ本番」ではいけない



 教育現場でボランティアを正しく導入するためには


 ボランティアを教育の場に組み込むためには、まずは教える立場の人が、事例や歴史を含めボランティアについて、よく勉強することが不可欠です。しっかりとボランティアのことを学習すれば、学生にとって適切な場を提供することが可能になります。

 大学で授業にボランティアを盛り込んだ場合、システム上、単位の取得可否が問われます。ただし、就職活動の点数稼ぎなどに利用されることは、絶対に避けなければなりません。ただ働きさせる仕掛けを作り、低賃金の温床になってしまいます。

 単位授与に関しても、ペーパーテストではなく、学生の思考や経験値を単位に直結させるべきだと思います。とはいえ、ボランティアは点数化しづらいので、評価をする立場の先生が素養を深めておかなければ、教育現場でボランティアを扱うのは不可能です。


 ボランティアに行く前には、学生に事前学習を促す必要があるでしょう。障がい者や被災者と接する時などには「してはならないこと」をリストアップしておくべきです。あまりがんじがらめにしても良くありませんが、ボランティアの現場というのはいわば「ライブ」で、やり直しがききませんからね。

 学生には、ボランティアでの失敗談を話すのが効果的です。身近な経験談でも、事例でも構いません。失敗談をインプットすることで、学生は「してはいけない」ことの範囲外で、自分には何ができるか考えるようになります。

 加えて、学生には「引き際」の重要性を認識させておく必要があるでしょう。阪神淡路大震災の時、ボランティアを引率して被災地に行ったことがあります。そこではボランティアと被災者に依存を生み出してしまいました。これはかなり厄介でした。ボランティアを受ける側と「施す満足」が依存関係となってしまうのです。相手のことをまず考える必要があるわけです。被災者にはこれからの生活があるのに、ボランティアが来ている時に頼りきりでは、プラスにならないのです。また、押しつけがましくても争いになります。学生には、引くところは引くことを意識してもらう必要がありますね。
 
 学生は多くの場合、ボランティアの場で戸惑います。未知の世界に足を踏み入れて、違いを肌で感じ、違和感を覚え、相手のことを考える訓練をしていく。似た者同士が多いコミュニティに属している現代の学生には、この上ない経験になるでしょう。

  

三つの「やってはいけない」教職員編

1)「参加の強制」はいけない
2)「安い労働力」とみなしてはいけない
3)「評価対象」にしてはいけない



2019年5月13日

ソーラージャーナルに NO NUKES 2019レポート

ソーラージャーナル2019春号にて、田中優が3/24 NO NUKES 2019に出演させて頂いたレポートが掲載されました。
 



『2日目のトークセッションでは、アーティスト3名に加え、未来バンク・田中優さんが登場。田中さんが示す太陽光発電を活用したオフグリッドシステムやエネルギー自給自足生活に、観客は真剣に耳を傾けた。「エネルギーのことを考えるきっかけになれば」と田中さんは語る。』
 

ソーラージャーナル
https://solarjournal.jp/information/29354/


2017年11月28日

今年も寄稿しました!『現代用語の基礎知識2018』


今年も寄稿しました!



2017.11.9発売 『現代用語の基礎知識2018』





田中優は「環境問題」項目で7ページを担当させて頂きました。


・グリーンウッド法
・認証パーム油
・炭素税
・グローバル・タックス
・ミツバチの失踪
・ネオニコチノイド系農薬
・ホルムアルデヒド
・化学物質過敏症
・電磁波過敏症
・諫早湾干拓事業
・多目的ダム
・保育所新設
・人工放射性物質
・汚染がれき、海中がれき、がれき焼却
・東海再処理施設
・スラップ訴訟
・六価クロム
・都市鉱山
・マイクロプラスチック 



などなど。




帯は池上彰さん。
大きい字で見やすい大字版もあります。






ぜひお手にとってご覧ください。


池上彰/佐藤優/竹内洋岳/飯田泰之/平田直/島薗進/五野井郁夫/伊藤真/金子勝/森永卓郎/清家篤/湯川れい子/塚田穂高/伊勢崎賢治/やくみつるほか

現代用語の基礎知識 http://gendaiyougo.jiyu.co.jp/

2017年5月30日

【寄稿】「子どもと読書」にて『「ボランティア」は永遠に未完だ』

【寄稿しました!】

 現在発売中の「子どもと読書」に、田中優が考える“ボランティア”についての記事が掲載されています。

 『
子どもと読書 〈No.423 2017年5・6月号〉
- すべての子どもに読書の喜びを! 』


 (親子読書地域文庫全国連絡会発行 )
http://sinkan.net/?asin=4907376235&action_item=true



 特集:これからの読書ボランティア


 田中優 『「ボランティア」は永遠に未完だ』





 <<ご興味のある方はこちらよりお求めください>>


 ■amazon  

 https://www.amazon.co.jp/dp/4907376235?tag=vc-1-513774-22&linkCode=ure

 ■セブンネット 

 http://7net.omni7.jp/detail/1106771075

 ■TSUTAYA オンライン

 http://shop.tsutaya.co.jp/book/product/9784907376239/

 ■楽天ブックス
 http://books.rakuten.co.jp/rb/14917958/

 ■紀伊国屋書店
 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784907376239

 ■HonyaClub
 http://www.honyaclub.com/shop/goods/goods.aspx?goods=18620178

2015年12月21日

「週刊SPA!」に地球温暖化について田中優より緊急コメント! 

「週刊SPA!」にて、地球温暖化についてコメントさせて頂きました 

ぜひご覧ください☆
 
2015.12.15発売 12.22号(表紙は電気グルーヴのお二人です)
http://www.zasshi.com/zasshiheadline/spa.html
 
P26「このままでは人類滅亡5大危機/
地球温暖化 4℃上昇で6億人の住む地域が海面下

-環境活動家・田中優」

 
本文より抜粋
 
「シベリアの永久凍土や海中に固定されているメタンガスはCO2の約25倍の強力な温室効果ガスですが、気温や海水温が上昇することで、大量のメタンガスが大気中に放出される恐れがあります。これはすでに放出が始まっています」

「日本で原発は過酷事故を起こす可能性は、ほとんどゼロだと言ってきた。でも、実際に事故は起きてしまった。温暖化の暴走も起きてしまたっらどうするのでしょうか。常に最悪のケースを想定していなければ、いざ起きたときに対応できません。」

 


志葉玲さんのインタビューです。


-----------------


★田中優著『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』もご参考下さい!★


 
扶桑社 2007.6月出版 756円(税込)
 
目次
第1章 現在は“試合終了”までのロスタイム
第2章 地球温暖化の現実とメカニズム
第3章 石油と戦争と温暖化
第4章 社会の仕組みを変えて、二酸化炭素排出量を減らす
第5章 家庭から二酸化炭素を減らす
第6章 熱の省エネとトクする仕組みの作り方
第7章 自然エネルギー社会のイメージ
第8章 もっと自由に考えよう

 
人類に残された時間はあと10年しかない!?
2007年2月に「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が、地球温暖化に関する「第4次報告」を発表、温暖化の影響が「人為的なもの」と断言した。


これを受けた英『インディペンデント』紙の“100年後予測”では、
地球の平均気温が現在から2.4度上昇した場合、3分の1の生物種が絶滅、3.4度上昇で北極海から氷がなくなり、4.4度上昇でヨーロッパ南部が砂漠化するという。


そして5.4度の上昇で世界の食糧供給は尽き、6.4度上昇でメタン・ハイドレートが噴出して「全球蒸発」、ほとんどすべての生物は絶滅する──。

今、科学者たちの間では「人類は温暖化のポジティブ・フィードバック(悪循環)を止めることができるのか、間に合うとしたらいつまでか」が論議になっている。


温暖化はすでに“暴走”を始めてしまったのか?
世界中で進行している「恐ろしい現実」と、
人類滅亡を回避するための方策をわかりやすく語る。

●Amazon http://www.amazon.co.jp/dp/459405384X/ref=cm_sw_r_tw_dp_Ld1Dwb1GT7B2V

●紀伊国屋書店 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784594053840

●楽天ブックス http://books.rakuten.co.jp/rb/4411179/


2015年8月2日

『市民による市民のための市民金融機関のチカラ-お金の使い方と、使われ方-』その2

2015.6.8発行田中優無料メルマガより 

 未来バンク事業組合理事長 

田中優

 『市民による市民のための市民金融機関のチカラ
   -お金の使い方と、使われ方-』  その2 

 その1 http://archive.mag2.com/0000251633/20150405093000000.html からの続き 


 ■問われる預金者のモラル  

未来バンクを設立したころ、東京の「安全信用組合」「共和信用組合」の二信組が破産しました。二信組は、事業の六割がゴルフ場などリソート開発で、バブル崩壊とともに経営も崩壊しましたが、二信組の経営を支えていたのは、他金庫他銀行よりも高金利だと群がった預金者でした。  

日本の個人貯蓄は一千二百兆円。これを眠らせている金融機関はありません。 
預けた金は当然ですが必ず使われています。預けた本人は貯蓄と思っているのでしょうが、実際は金融機関によって投資されている。それが自らの意に沿わないものへの投資である可能性は非常に高い。  

もう原発はイヤだと思う人は多いと思いますが、そうした人の預貯金は原発推進企業に白紙委任で投資されていたりする。日本の自然環境をこれ以上壊したくないと強く思っている人の預貯金も、大々的に自然破壊に加担する企業に融資されていたりする。  

最悪の事例が戦争でしょう。  
太平洋戦争では国家予算以上のお金が戦費に投入されましたが、原資は郵便貯金でした。日本はいま戦争をしていませんが、アメリカの軍事行動を貯金で支えている面かある。  

アメリカは財政も貿易も赤字で、赤字額はイラク戦争開戦直前の二〇〇二年末で約三百兆円と天文学的なのに、イラク戦争やアフガニスタン紛争で五十兆円ともいわれる戦費を投入しています。  

それを可能にする一つは、日本人の貯金です。僕たちが銀行貯金をすると、銀行はその貯金を日本銀行に預けます。すると日本政府は国債の一部である「政府短期証券」を発行してそのお金を借り、ほぼ全額をドルと両替し、アメリカ国債を購入するのです。  

日本はいままで約百兆円のアメリカ国債を購入していますが、借り換えが操り返されるだけで、アメリカからは一円も戻ってきません。いうならば、日本人が汗水たらして稼いだお金は、僕たちの知らぬまに、いちばん望まない戦争に投入されているということになります。 


 ■いいものはないのか?  

金融機関は大手であるほど、福祉や環境保護といった事業に融資をしない、これも問題だと思いました。  

貯金をなんとかしなければと、僕はグループKIKIの会報に原稿を書いたのが出版社の目に留まって、『どうして郵貯がいけないの』の出版につながりました (一九九三年)。おそらく財政投融資の問題を初めて世に問うた本だと思います。    

そうしたら読者から、「では、どこに貯金をしたらいいのか?」との問い合わせが来た。僕が勧めたのはタンス貯金か労働金庫。労働金庫は大企業には融資をしませんから、悪くはない。そうしたら、「『悪くない』じゃなくて、いいものはないのか?」と質問が来る(笑)。  

僕は仲間と考えました。そして「必要なのは、自分たちのお金を自分たちでコントロールする場だ」という意見でまとまったんです。  
それが未来バンクにつながった。 

 未来バンクのパンフレットにはこう書きました。  
「出資金は元本を保証するものではありません。リスクを皆で共有するものですから、貸し倒れが発生したときなどには、元本を割り込むこともあり得ます」  
配当もなければ、元本そのものも減っていく可能性を強調した。で、NPO業界ではいっせいに白い目で見られた(笑)。  

当時、僕は、あるNPOで金融研究部門も立ち上げていたので、そこの事務所の一角を未来バンクに貨してもらえないかと打診したら、「貸金業者に事務所を貸すわけにはいかない」と断られました。金貸し=汚いと思われていたわけです。 
「そんなのやっても無理」とか「配当ゼロでいったい誰が金を出してくれるんだ」 といった批判も飛び交いました。  

そこで僕を含め四人が百万円ずつを出して、一九九四年四月に未来バンクを立ち上げました。やがて新聞報道や口コミで徐々に組合員が増えて、三カ月後には五十人から計一千二百万円の出資が寄せられた。  

融資第一号は、ソーラー発電、風力発電、自然エネルギー商品を扱う事業者の組合「レクスタ」を通じての、三人の市民のソーラーパネル設置でした。レクスタの担当者は、「趣旨です、趣旨!自分たちの頂けたお金を、自分たちで環境事業に融資するという万針は実に明解」といって評価してくれました。嬉しかったですね。


 --- その3に続く 

 ▼マガジン 『望星(ぼうせい)2014.10月号』  特集 「みんながトクする投資」 より http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/contents/1410.html 

 ※田中優がインタビューに応えたものを、 発行元の編集者が文章にしたものです。

2015年6月29日

『市民による市民のための市民金融機関のチカラ-お金の使い方と、使われ方-』その1

2015.4.5発行田中優無料メルマガより

未来バンク事業組合理事長 田中優

『市民による市民のための市民金融機関のチカラ 

 -お金の使い方と、使われ方-』  その1


■無理に決まってる!

 僕がNPOバンク「未来バンク事業組合」(以下、未来バンク)を設立したのは三十七歳のときですから、二十年前になります。

 バンクと名はついていますが、いわゆる銀行ではありません。貸企業の登録を受け、「環境に優しい事業」「福祉」「市民運動」の三つに限って融資を行なう、市民による市民のための市民金融機関です。融資を受けられるのは出資をした組合員だけというシステムになっていて、出資金は一口一円で一万口以上が加入条件になります。

 始めた当初は、NPO仲間から、「そんな夢みたいなこと、無理に決まってる」と冷ややかに受け取られたものです。出資金を拠出してもらっても、ATMで引き出せるわけでもないし、配当もゼロ、そんなものに出資する人などいるはずないじゃないかと(笑)─--。

 でも、設立二十年を迎えた未来バンクは、二〇十四年三月末時点で、組合員数五百十三人、出資金は一億六千万円を超え、融資総額は約十億六千万円となりました。いま全国に十四のNPOバンクがあります。もはやNPOバンクは、"夢"と揶揄される存在ではなく、立派な市民運動になったと思います。


 初めから市民金融機関を作ろうとしていたのではありません。もともとは原発への異議申し立てがあったのです。きっかけは一九八六年のチェルノブイリ原発爆発事故。事件の直後、生後三ヵ月の息子が喘息などで体調を崩し一週間入院したのですが、もしかしたら関係あるのではと関心を抱き、環境問題を考えるようになりました。

 当時はチェルノブイリ事故の影響で、全国的に反原発の市民運動が展開され、とくに八八年四月の「原発とめよう!一万人行動」では、東京の日比谷公園に全国から約二百五十団体二万人もの人が集まり、すごい熱気でした。僕東京都江戸川区の職員でしたが、江戸川区内で市民団体「グループKIKI」を設立し、これを軸にいろいろな問題に関わることになります。

 でも、原発への反対運動は一年も経つと全国的に失速しました。痛感したのは、「原発は危ない」と、単純に危機感を煽る運動は続かない、もっと日常的で、生活に密着した問題意識から出発した運動にしなければということです。

 そこで開始したのが「リサイクル」、いわゆる資源回収です。当時はアルミ缶など一キロ百円以上で売れました。

 ところがアルミはすぐに一キロ三十円まで暴落します。鉄など、一キロー円で売れていたのが、逆にこちらが二十円払わないと引き取ってくれない逆有償が始まりました。

 なぜなんだ?-─この疑問が未来バンク設立につながるのです。


■貯金・預金の行き先への疑問

 調べてわかったのは、リサイクル品の値段が落ちる背景には、同時に新品の値段が落ちているといるという事実がありました。つまり、安い新品のアルミが入ってくれば、リサイクル品は買い叩かれるしかない。

 なぜ新品のアルミがどんどん入ってくるのか?答えは意外でした。アルミはあちこちの途上国で作られているわけですが、工場を稼働させる電源のための発電用ダムは、日本のODA(政府開発援助)で造られていた。ブラジルのツクルイダム、インドネシアのアサハンダムなどです。

 しかもダム建設を受注するのは日本企業。そしてODAとはいっても、円借款プロジェクトで、つまり相手国にとっては借金なんです。これが国際援助なのかと疑ってしまいました。

 そしてODAは「財政投融資」制度のもとに成り立つことを知りました。
財政投融資‐‐‐-初めて聞く言葉だったので、財政投融資と名のつく文献を片っ端から読んだのですが、驚きました。

 その財源は、僕たちの郵便貯金や年金だったからです。


 当時、郵便貯金や基礎年金、簡保の簡保の残高は五百兆円以上もありましたが、財政投融資のもとでは、そのお金は全額、当時の大蔵省の資金運用部に預託され、資金運用部がそのお金を「特殊法人」に融資していたんです。

 たとえば、大反対の中、建築された長良川河口堰を運用する「水資源開発公団(現・水資源機構)」、不必要と思われる地域にも高速道路を造り続ける「日本道路公団(当時)」、赤字確実といわれても建設されたアクアライン(車京湾横断道路)の「東京湾横断道路株式会社」、ナトリウム漏れ事故を起こした「もんじゅ」の「動力炉・核燃料開発事業団(現・原子力研究開機構)、新幹線建設の「旧・国鉄」、ほかにも大型ダムや空港、スーパー林道、リゾート開発など、僕たちが環境問題の視点から反対してきた事業を展開する事業者にに融資されていたんです。


 
 原発のことも調べてみました。これにもやはり財政投融資が使われていました。
原発の燃料のウランを買うため「日本輸出入銀行」に融資され、輸入ウランの濃縮や核燃利加工、そして原発建設や再処理のために「日本開発銀行」に融資されていました。青森・大間崎に建設される大間原発を管轄する「電源開発株式会社」にも融資されていました。


 多くの市民運動は、日本の環境や自然を真剣に守るべきだといろいろな場面で異議申し立てをしてきました。巨大ダムができると知れば「大型ダムによる自然破壊反対!」と運動を起こし、原発建設には「原発反対!」と叫び、リゾート開発にも「反対!」と、意思表示をしてきたけれど、なんのことはない、諸々の環境破壊事業の根っこは僕たちの貯金だったんです。

 つまり僕たちは右手では「環境破壊反対!」「原発反対!」と拳を上げながら、左手では環境破壊や原発建設に手を差し伸べていた。そして、そんな事業者経由で貯金の利子を受け取っていた。

 その利子にしたって、腹立たしい。当時、財政投融資は、単年度で約四十兆円(国の一般会計は約七十兆円)もの巨額予算を動かしていたのですが、特殊法人が原発やダムを造るたびに公共料金は値上がり、タダになるはずだった高速道路は世界一の高額料金となり、長良川河□堰は水が売れないため税金で維持され、ニ十八兆円もの国鉄債務は税金で返済されることとなりました。僕たちは結局損をしている。

 
 銀行などの貯金も調べました。これも同じです。銀行に貯金されたお金は、銀行でじっと眠っているのではない。大手銀行の融資先を調べればわかりますが、原発建設を推進する企業や、環境破壊につながる大型開発に関わる事業を行なう企業がずらりと並んでいます。


--- その2に続く


▼マガジン 『望星(ぼうせい)2014.10月号』 特集 「みんながトクする投資」 より
http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/contents/1410.html


※田中優がインタビューに応えたものを、発行元の編集者が文章にしたものです。

2014年12月23日

「ナチュママVol.2」~子育て・人生の先輩たちのエコロジーライフ~

◆<雑誌掲載> 「ナチュママVol.2」
    ~子育て・人生の先輩たちのエコロジーライフ~ ◆
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P75  
田中優さん 「楽しく自給を進めて安心な暮らしを」

  岡山での暮らしぶりが、6枚の写真と文で掲載されています。

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 東日本大震災後、放射能汚染されている土地から離れ、福島の人たちのように縁のない
土地に移住しないと、と思い、2012年末に岡山へ。
 太陽光で電力を供給する「パーソナルエナジー」を導入して、電力の自給自足を始めました。

 朝起きて晴れていると、電気があり余る“電気富豪”となってうれしくなります。敷地内の
井戸を復活させて水も自給、ご近所からは無農薬野菜のおすそ分けが。暖房も地域の木くずをかためたペレットストーブで、自給率が高くなって安心であると同時に、お金のかからない暮らしになってきています。

 モノには生産財と消費財があって、苗木を買って野菜を収穫するなど、まずは自分で生産
することを優先させるべき。

 次に必要以上のモノを持たないことが大事だと思います。
特に小さなこども用品は仲間で使いまわさないと。必要なモノを吟味して買い、最後まで使い切る。モノに対する礼儀を持つべきです。でも無理なく、こどもと一緒に楽しみながら進めていくことも大切。

 安心な暮らしを求めるなら、自給をおすすめします。


1.スギ間伐材や端材を利用した棚「組手什」を使用。
2.田中さんの自宅にあるかまど。炊きつけに紙、端材を使って資源を有効利用。
3.電気を自給自足するための装置「パーソナルエナジー」を自宅に導入。
4.家庭の生ゴミでたい肥作り。元気な野菜を作るため、実験のようで楽しい。
5.田中さんの自宅は築100年前後の古民家。自宅前には太陽光パネルが。
6.ご近所から頂いた無農薬野菜は新鮮そのもの。




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▼ブティック社 「ナチュママ Vol.2」
http://www.boutique-sha.co.jp/book/show_detail/4961


2014年12月10日

週刊SPA  田中優「大手電力会社は自然エネルギー普及に関心ナシ!?」

(12/10発行の田中優無料メルマガより転載)

「11月25日に発売された「週刊SPA」にてオフグリッドを勧めている
『自エネ組 http://jiene.net/ 』がやっと紹介されました。

読みましたが記事は秀逸です。
オフグリッドした一般家庭の取材レポートも掲載されています。
ぜひ機会があれば手に取って見てください。

ぼくも再生可能エネルギー売電についてコメントしています。」



『大手電力会社は自然エネルギー普及に関心ナシ!?』

(抜粋)
これでは日本の大手電力会社もたいへんだと誰もが思うことだろう。しかし実は、
買い取りに要した費用は使用電力に比例した「再生エネルギー賦課金」によって
賄うこと、とされているのだ。

つまり、買い取り料金は電力会社が負担するのではなく、各家庭や小規模事業者
の電気料金から支払われている。

そもそも電力会社は、発電や送電にかかるコストを含め、「総括原価方式」という
計算方法でさらに3%の利益を上乗せし、電気料金を請求している。

加えて自然エネルギー発電が普及して売電が増えると一般家庭の電気代が上がる
仕組みになっている。


環境活動家の田中優さんはこの制度に疑問を唱える。

「近場で電気が消費されないと、売電した電気は送電ロスや同期しない『無効電流』
として、使われずに消えている可能性がある。
しかしその負担は消費者。電力会社は損をしません。

また、ドイツでは風の強い地域からは安く、弱い地域からは高く買うようにと、
各地域で風力発電が成り立つよう配慮しています。
バイオマスも、市民が行う小規模発電からは高く買い、大きな事業者の発電からは
安く買うようにと区別されています。

大手電力会社が『自然エネルギーの電力を系統に入れると、周波数が乱れて不安定
になる』のは事実。しかし、だから3%以上は入れられないとするのではなく、
きちんと蓄電池の負担を設置者にさせるべきです。

結局、日本の大手電力会社が買い取りを促進し、地域の自然エネルギーを育てていく
というのはポーズだけだ、本当は、推進する気はないのでしょう」



▼田中優ブログ"持続する志" 
「雑誌掲載:「週刊SPA」にオフグリッド、自エネ組が!」
http://tanakayu.blogspot.jp/2014/11/spa.html



2014年11月28日

雑誌掲載:「週刊SPA」にオフグリッド、自エネ組が!

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◆ 雑誌掲載:現在発売中の「週刊SPA」にオフグリッド、自エネ組が! ◆
  
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ぜひお読みください!
自エネ組(田中優が相談役を務めています)でオフグリッド、
電力会社に頼らない暮らしにシフトした人たちのレポートが掲載♪


田中優より
 
「自エネ組」がやっと紹介されました。
読みましたが記事は秀逸です。
ぜひ機会があれば手に取って見てください。
ぼくも再生可能エネルギー売電についてコメントしています。




11/25発売 12/2週刊SPA 
「[脱・大手電力会社]はここまで進んでいた」


自治体や企業が続々と新電力に乗り換え、
家庭もエネルギーの自給自足で電気代0円に
~大手電力会社の電気を使わない、「オフグリッド」な生活とは!?~

★田中優コメント部分
「大手電力会社は自然エネルギー普及に関心ナシ!?」

http://nikkan-spa.jp/spa_magazine_article/752416