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2020年7月10日

ダムが洪水・地震を引き起こす!? 大災害が起きる前に「ダムに頼らない社会」を

今日本でも豪雨とダムが問題になっているが、中国の三峡ダムが危ない

しかも中国には世界最大の死者数の1975年8月の板橋ダムなど63基のダムのドミノ倒しの事故がある。 

それに加えて「ダム誘発地震」もある。

三峡ダムが決壊すれば日本も無傷でいられない。

おぞましい話だ。ぜひ知ってほしい。



ダムが洪水・地震を引き起こす!? 大災害が起きる前に「ダムに頼らない社会」を


 世界最大のダムとは、もちろん中国「三峡ダム」のことだ。今年の雨の時期、中国ではすでにいくつかのダムが決壊、もしくは「放流」が行われている。そのせいで、すでに宜昌などの地域の水害被災者は数千万人に上った。避難指示が出されている人々の数は1600万人に上る。これだけでもすごい数だが、万が一ダムが決壊したなら下流域の3億~6億人に被害が及ぶという。

 日本の総人口の、最大5倍の人々が被災するのだ。しかもこのダムは大河「長江(日本ではなぜか支流の一つの「揚子江」と呼んでいる)」の中流にあり、下流には武漢や南京、上海などの大都市があり、中国経済の中枢がある。


 しかもダムに流れ込む水域には人口3000万人の重慶があり、工業排水や生活排水などの汚染水を川に流し込んでいる。したがって、決壊して流れ出る洪水はきれいなものではなく、ヘドロや有害物質を含んだ汚水なのだ。それが1000kmも離れている下流の上海まで流れる。


<主な項目>

■三峡ダムが決壊すれば3億~6億人に被害!?

■ダムの上流に堆積した土砂が洪水を引き起こしている

■三峡ダムがこのまま土砂を貯め続ければ、取り返しのつかないことになる

■中国・河南省で起きた「世界最大」のダム決壊事故

■水深の深いダム湖が引き起こす「ダム誘発地震」

■地震によって、八ッ場ダムが貯めた大量の水が都心部へと流れ落ちる!?


▼全文はこちらよりお読みください


2019年12月4日

「想定外」の危険な災害

2019.12発行 メルマガより

 
多くなる災害廃棄物

 今年の台風の被害は大きかった。

 連日テレビに映る被災地では、水害後の道路にはうず高く廃棄物が置かれ、ほとんど丸々一軒の家屋が廃棄物となっている。  

 畳を上げ、床を剥がし、床下や壁の内側に使われたベニヤ板を捨て、停電で腐った冷蔵庫の食品も、もちろん水を浴びた電化製品や家具類もまた廃棄されている。  

 前から災害のたびに、これほど大量の廃棄物が出されていたのだろうか。 もちろん水害のせいもある。水害では自分の命を守るのにやっとで、家財など命に比べたら物の数ではないだろう。それにしても家一軒丸ごと廃棄物にすることはなかったのではないか。しかも水害の保険は加入していたにしても床上浸水でなければ保険金が下りず、床下までは保険の対象にならない。   

 どうやらこれは家の造りに原因があるようだ。今の家は集成材で作られ、ベニヤ板で補強され、家具もMDF(中密度繊維板)と呼ばれるは、木材チップを原料としてこれを蒸煮・解繊したもの に合成樹脂を加えて成形したものだ。 

 これらのものは水に触れると膨れ上がって歪み、元の形に戻らなくなる。しかも樹脂が固める際には防腐剤を大量に加えているはずなのに、腐ってカビだらけになって、気味の悪いとりどりの色になる。 

 昨年ぼくの住む岡山にも水害があり、手伝いに行った人々が嘆いていた。無垢材で建てた家は洗って干せば使えたし、歪んでいるなら削って直せたのだが、今の家はどうにもならないと。 そう、かつては再生できたのに、最近建てられた家ほど捨てるしかないのだ。 これは建物の話だが、修復が効かないものが社会全体を覆ってしまっているようだ。


 
何が洪水を防いだか

 東京の東側にある利根川水系では水害が少なく、西側の世田谷区・大田区、神奈川県川崎市では水害が大きかった。調べてみると水害の防止に大きく役立ったのが、利根川水系にある「遊水地」だった。鉱毒事件を発端として作られた渡良瀬川添いの遊水地や、周辺の遊水地が溢れる水を一時的に貯留し、水位が下がると川に戻して水害を防いでいたようだ。   


 政府は偶然「試験湛水中」だった八ッ場ダムのおかげで洪水が防げたかのような宣伝をしているが、もしそうならダム建設後に予定している水位では、洪水防止効果はほとんどなくなってしまう。

 しかし今回の豪雨でも八ッ場ダムの貯水効果は、利根川中流域でもわずか17センチほどしかなかった。 もともと河川水位から見て、水害を心配するレベルには達していなかったのだ。 ダムが川の水位を下げる効果は下流に行くほど小さくなるので、八ッ場ダムは東京の洪水防止には影響しなかったのだ。   


 多摩川水系には遊水地を造れるほどの余地がなく、しかも堤防が決壊しないように造られてなかったことが被害を大きくした。しかし「堤防」を決壊しないように造ることはできるのだ。 旧建設省が二年間だけ採用していた「フロンティア堤防」というものがある。 河川が越流し、堤防を溶かして大水害にしまうことで被害が拡大するのを防ぐのに、堤防の天端に鋼矢板を刺して補強し、堤防の弱点となる住宅地側のり面(裏のりという)を安価なシートなどで保護して補強すればよかったのだ。ところがそれは「(簡単に対策できるので)ダム建設の妨げになる」という理由の反対があり、そしてお蔵入りしてしまった。   

 今回の水害で、長崎県で建設を推進している石木ダムの担当課長が、「相次ぐ大型災害はダム建設にとって追い風」という発言をして問題になった。後に撤回したが、この発言のように、水害はダムを造るための理由として利用されている。ダムよりもっと安くて簡単な方法があるのに、彼らの利権を守るために無視される。 

 もし川の水位上昇が心配なら、河床を掘削して水位を下げられるようにすればいい。放置して河床を上げるから、水害時の越水を心配しなければならなくなるのだ。 ダム推進のためにすべきことを怠り、対策をなおざりにする。


 
「事前放流」せずに「緊急放流」する  

 もう一つ気になるのがダムの運用だ。ダムは事前に放流して水位を下げておけばそれだけ貯められる量が増える。しかしダムは完璧な対策ではないから、ダムが大きくなるとそれだけ万が一の水害を大きくする。「安全保障のための軍事拡大」のようなイタチごっこを招くのだ。安全性を考えてダムを大きくすると、万が一の際の被害を大きくする。   

 それに加えて危険にしているのが「多目的ダム」だ。洪水防止が唯一の目的ならダムを空にしておくのがいい。ところが発電目的や工業・農業用水目的が加わると、貯まった水は「おカネ」と同じになってしまうのだ。   

 事前にダムの余力を作るための「事前放流」も、それらの関係機関と協議してからでないと「事前放流」ができない。いよいよこのままではダムが破壊されるという時点になって、「緊急放流」して貴重な人命や財産を危険にさらすのだ。緊急放流の怖さは昨年の愛媛県・肱川や岡山の高梁川で嫌というほど目にしたというのに。   

 そんな中で突然に「記録的な短時間大雨情報」が出されるようになった。降水量は海水の温度に比例して大きくなり、しかも日本近海の海水温は上がり続けている。 地震の多い日本に原発が無理であるのと同じように、今後さらに短時間の降水が予想される日本の水害に、ダムで対策するのは無理になる。   

 「ダムで水を受け止める」という発想ではなく、「しなやかに流れを受け止められる」方向に進むべきだ。そのことは国や自治体だけではない。私たちがどこに住むかを考えるときにも、どのような家を建てるかを考えるときにも必要な発想になる。 今回、国も自治体も「想定外」という言葉を連発した。想定外の豪雨だとか想定外の台風とか。ならば想定すればいい。地球温暖化が進展している以上、その言い訳は通用しない。  

 私たち自身が問題を理解しないと危険な時代になった。 他人任せにはできないのだ。


 
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2019年8月23日

中国「世界最大ダム」の崩壊リスク&おすすめ動画

「世界最悪のダム事故」って映画があってイタリアのバイオント・ダムの話になっているけれど、実際には中国で起きたダム事故が最悪のものだった。

この記事はその中国の三峡ダム、やばいかもしれないって話。

「中国「世界最大ダム」の崩壊リスク…当局説明を信じ切れない人々」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65908


日本のだってやばいんだ。

ダム自体、やめた方が良いと思う。


日本語で解説されているからぜひ見てみて。
https://youtu.be/C_Wdpprd5tg (16万6千回視聴されています!)


2018年10月22日

『 「川に生きる~世界の河川事情~」中日新聞社を推す 』


 ぼくの親しい友人である新村安雄さんが初めて本を出した。新村さんと知り合ったのは20年以上前のことだ。ぼくの記憶では、新村さんよりもそのお連れ合いだった森野康子さんの方が前だった気がする。その森野さんは残念ながらその後に他界してしまったが。

 その彼女の葬式のときに、新村さんは焼き場に集まった人たちに、「森野は本当に頑張って生きたんだ、だからみんなで拍手して彼女を送ろうじゃないか」と言って、みんなで拍手したという。ぼくはその場に居なかったのだが、その話を新村さんらしいと思って読んだ覚えがある。

 新村さんはそれからだいぶ経ってから今の彼女と結婚して、幸せに暮らしていることをうれしく思う。その彼女とも30年近く前に知り合っていたから不思議な縁だと思う。その新村さんはあまり知られていない人だから、ちょっとぼくなりに紹介してみたいと思う。


 新村さんはまず何よりも声のでかい人だ。全然目立とうとする人ではないのに声がでかい。いつも腹から声を出すせいだろう。そのせいもあってなんとなく偉そうに見える。たぶん秘密の話などできない人だろう。そのせいかウソはつけない人だ。そこが好きだし、信用できる友人なのだ。その彼が本を書いた。

 「川に生きる」というタイトルだが、そう思って彼のフェイスブックの写真を見たら、魚の写真とそれにまつわる話ががやたらと多い。彼は子どものように魚を愛しているのだと思う。

 ところがその魚たちは追い詰められて、どんどん居場所を奪われて絶滅させられている。それがこの本を書いた動機なのかもしれない。彼の愛していた森野さんが亡くなってしまったように、彼は愛するものを失い続けている。その本を読んで、なんだか川に生きていた者への想い、彼の悲しみの原因に触れたように思えるのだ。

 しかも彼は体も大きい。その彼と初めて会ったはずのわが娘は、会うなり肩に乗り、大きな図体によじ登ろうとしていた。警戒心もなく。


 彼は以前から文章がうまかった。というよりも心根が優しくて、対象への思いが溢れているのだ。彼の文章を盗用する人すらいた。図体と声からは想像できないほど良い文章を書くのだ。それは「石木ダム」(ほたるの川のまもりびと)という映画のパンフレットにも使われた。ぼくが映画の宣伝と供給をする会社に相談されたときに、新村さんが一番いと紹介したからだ。そのパンフレットの記事は好評だそうだ。


 彼はウソをつかないし、興味が湧いたことには努力を惜しまない。その彼がやっと本を出せたことをうれしく思う。彼に紹介された友人と、長良川上流の板取川に予定されていた揚水発電ダムを止めることができた。板取川の友人は長屋さんという。といってもかつての板取村(今は関市に編入されている)では集落の半数近くが、長屋姓なのだが。その長屋姓の友人たちが頑張ってくれたおかげなのだが。
私たちがしたのはその川の美しさを素直に感嘆していただけだが。しかしそのことが彼らを力づけたのだということになろうか。


 彼の文章には愛する長良川が河口堰によって堰き止められて、生態系が壊されていく様子が描かれている。もうこんなことはやめさせようと思う。川を壊すことは、私たち自身の足元を掘り壊すことなのだ。そのことを思い起こすのに格好の書であると思う。その彼は学生時代に青ナイルと呼ばれるナイル川支流に研究に行っていたし、その後はメコン川に出掛け続けていた。

 ある時、メコン川が増水して彼の泊まっていた川に浮かぶコテージごと流された話も本に書かれている。隣に宿泊していたイギリス人たちのコテージを滝に落ちる寸前に救った話もある。なんというか、彼は無冠のインディージョーンズのような人でもある。彼はわが娘のために、ライフジャケットをプレゼントしてくれた。彼に頼めば大概のことは(川に関係することなら)解決してくれるのだ。


 彼のクルマの屋根の上にはテントが乗せてある。彼はその車で全国を走り、その場で泊っていく。下に寝るとイノシシや動物に囲まれることもあるので、クルマの上の方が安心なのだという。彼のフェイスブックにはもう一つ、よくサッポロの黒ラベルが登場する。ぼくも同じものが好きなので、彼がいると分けてもらって飲んでいる。その彼だけには見送られたくないし、見送りたくもない。その彼もぼくも還暦を過ぎたことだし、少しは安心してゆっくり過ごしたい。

 もうこれ以上のダム建設は止めてもらい、これからは造ってしまったダムを解体してもらいたい。


 川は人間のためのものではないのだから、たくさんの生き物と共有して暮らせるようにしたいと思う。長良川が再びたくさんの流域の人たちの支える流れになったら、そこで乾杯したいと思う。彼が潜って撮影するリアルタイムのアユの産卵の動画でも見ながら。新村さんの書いたこの本を読んだら、アユの産卵時のリアルタイムの動画を観に長良川に集まろう。とっておきのアユの塩焼きを食べながら。


******


『 川に生きる 世界の河川事情 』

新村安雄 著   
税込1,404円(税抜き1,300円)
192ページ
2018/9/14発行


中日新聞・東京新聞で好評連載(2015年4月~18年5月)されたコラム「川に生きる」を書籍化。

さまざまな生き物がすむ川から見た、自然と人間との関係を鋭い筆致で描きます。

西日本豪雨災害などから、川と人との共存が注目されている今、世界の河川をめぐってきた著者が、長良川をはじめ、世界や日本の河川で何が起きているかを紹介します。

書籍化にあたり、長良川・川下り紀行も掲載。
カヌーイスト・野田知佑氏も推薦を寄せています。

                

<目次> 

一章 長良川に暮らす

    川との決め事/川ガキとミズガキ/鵜飼屋に暮らす

    鵜飼屋の母/川を繼ぐもの/落ちアユの季節 瀬張り網漁

    もう一つの長良川鵜飼/魚は旅をする/川漁師の矜持

    カニの通り道/流れない水面/ウナギの寝床

    海に向かう魚/川漁師のワザ

二章 長良川河口堰が変えたもの

    幻の大マス/若くてばかで、よそ者で/潮のポンプ

    大アユの消えたわけ/開いている河口堰/幻の干潟

    追加された魚道/よみがえる「マウンド」/河口堰と津波

    ウナギと河口堰/見張り塔からずっと/川を耕す

    マジックアワー/観察する力/河口堰が変えたアユ

    繋ぐ命

三章 川の未来

    亜細亜の宝/川の観光価値/長良川から世界へ

    川上り駅伝大会/激流下り世界選手権/最後の流れを漕ぎ抜く

    日本一のアユ/命の水のアユ 琵琶湖/京の川漁師

    京都で鷺知らず/トキの落とし羽根/シーボルトとアユモドキ

    モンスーンの賜物/ニホンウナギ発祥の川/ダムに消えるアサリ

    消える大砂丘/ダムと砂丘/森の香りのアユ

    アマゴの宝庫遠く/シーボルトの川/ダムの未来

    砂の行方/川の恵みを取り戻す/よみがえる伝統工法

    イワナの生きざま 産卵場復元/うな丼の行方/河川法とヤナギ

    始まりから終わりまで 流域を守る

四章 川と命と

    開かれたゲート もう一つの長良川/母なるメコン/メコンの魔法

    流されてメコン/メコン祈りの儀式/虫食いの系譜

    ラオス式魚焼き/消えたメコンオオナマズ/存在の証し

    最後の魚を拾う/南の島のアユ/リュウキュウアユフォーラム

    「世界自然遺産」の島/淵の名は/亜熱帯最後の自然海岸

    森と川の生態学者/釣り人の見た夢/旅人の選んだ川

    アユの生まれるところ/津波の記憶/川に行こう

    伝える川の知恵/「出会い」が守った川

「全長良川流下行」記

終わりに

                

<新村安雄・にいむらやすお>

フォトエコロジスト、環境コンサルタント、リバーリバイバル研究所主宰。
1954年、静岡県浜松市生まれ。
長良川、琵琶湖、奄美大島、メコンなど、生き物と人間のかかわりという視点から
撮影と映像製作を行っている。
長良川うかいミュージアム、滋賀県立琵琶湖博物館、世界淡水魚園水族館アクア・
トトぎふなどの企画展示、映像提供。


ブログ 「リバーリバイバル研究所」 https://blog.goo.ne.jp/niimuray


新村安雄さんと田中優(ライヴアースまつやま2018にて)


田中優もオススメします☆

ご購入はこちらからでもできます↓


●中日新聞 http://www.chunichi.co.jp/nbook/shoseki/chu2018091401.html

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2018年9月18日

『 ダム神話の水害 』


 私も岡山県に住んでいるから、倉敷市の水害の折には「田中さんの家は大丈夫でしたか」という連絡が相次いだ。我が家の周囲でも川が増水し、警戒情報も出された。だが避難先に指定されている集落の公民館は我が家より一メートル程度低地にあり、避難するより自宅にいた方が安全なのだ。テレビでは「迷わず避難を」と言われるが、合理的に考えてどうなのだろうと思う。わずか一メートルだが、その広さを考えると、相当の水害でなければ我が家に水が来ることはないのだ。


 今回、水害に遭った倉敷市真備町に押し寄せた水は、調べてみると高梁川にあるダムが放流したせいだった。なだらかな地域を流れる小田川と高馬川の水は普段なら高梁川に流れ込んでいく。しかし高梁川の「河本ダム」が放流したため、その流れは高梁川の流れに壁のようにブロックされて、流れていくことができなくなった。そしてどんどん水位が上がり、堤防を決壊して低地の町を飲み込んだのだ。

 高馬川周辺で洪水警報が届いたのは深夜の一時半、水が届いたのはそのわずか4分後だった。夜中の深夜一時半に警報で起こされて、着替えて荷物をまとめてと考えたら、間に合うはずがない。そして多くの犠牲者が出た。二回に逃げて助かった人も多いが、もし高齢者世帯だったらそもそも二階建ての住宅を建てただろうか。亡くなった被災者たちには高齢者が多かった。


 河本ダムの放流量のグラフを見ると、突然たくさんの水を放流しているのがわかる。ダムには「但し書き規定」があり、流入する雨の量が多すぎるときに、ダムが決壊して被害を最大にしないために流量を限度にして放流することが認められている。大雨だったからダムが決壊しないように但し書き規定通りに放流したという理屈も一応成り立っているように見える。

 しかし雨の被害の多い高知県の鏡川では、少しずつ放流していって被害を起こさなかった事例もある。10分おきに、10センチ単位で堰を調整して洪水になるぎりぎり手前の範囲で、ダムをコントロールしていたのだった。それと比べるときめ細かくない対応だった。


 しかも河本ダムは、発電用と工業用水用のダムを兼ねた多目的ダムだった。
発電と工業用水から見ると、貯まった水はそのままカネになる。そのことが事前の放流を思いとどまらせたのかもしれない。ダムの放水で事故になるとき、多目的ダムが起こすことが多いのだ。しかも河本ダムはダム自体の堆砂量が多く、水を貯められる容量を圧迫している。そのせいで岡山県営の河本ダムは事態を悪化させたのかもしれないと思う。

 さらに放流を通知する相手先に、ずっと下流である倉敷市は入っていなかった。
そして住んでいた人たちに豪雨の雨音で警報すら聞こえず、聞こえていたとしてもわずか数分で水が溢れてくるという事態が襲ったのだ。


 大きな技術を使った装置には大きな安心感があるものの、一方で信じられないほど深刻な被害をもたらす。ダムがあるから大丈夫と思っていたら今後の前代未聞の豪雨の時はさらに被害が大きくなる。大きく貯められるダムは、大きく放水することにつながるからだ。

 その前にできることもあった。堤防を増強することだ。堤防は一般的にただ土を盛り上げてあるだけの構造だから、一か所が雨の浸透で切れてしまえばどんどんと決壊地点から広がっていく。そうしないために、鋼矢板を堤防に刺しておいただけでも堤防を防げるし、人々が住む側の法面を強化しておくだけでも破堤を防ぐことができる。その技術は半世紀も前にできているのに、堤防の強化がダムの必要性を減じて人々がダムを拒否するようになるからと勧められなくなっていた。


 もう一つ、川に貯まった土砂を撤去する「浚渫」をしておけば、それだけ川を流れる流量が多くなって水位を下げることができる。現に京都の桂川では大規模に浚渫が行なわれ、そのおかげで数年前の洪水とはうって変わって、全く氾濫しなかった。こうした従来からある方法はダムを造るよりはるかに安く、はるかに効果が大きい。もし下流に土地があるなら、そこに遊水地を造っておくのがいい。
人々の生命や財産が集中するのは下流域だから、その手前で水を逃がして貯めておいて後で流せば、一時だけの水量の増加なら問題ではなくなるのだ。


 水田や農作物に被害が出るとしても損害保険でカバーしておけばいいし、氾濫した水を受けた農地は連作障害が消えることも多い。しかもその方がダムを造るよりも安上がりになることも多いのだ。洪水を敵にしてダムを造るのではなく、味方にして利用することはできないだろうか。


 日本には2011年まで「原発神話」があった。安全だし安上がりなんだと。
しかしそれが誤りであったことは2011年の事故で明白になった。「ダム神話」はいつまで続くのだろうか。


 おそらく首都圏には、火山灰の大地に作っている最中の「八ッ場ダム」が、貯めた水の浸透によって崩壊するだろう。実際問題は小さな崩壊で済むか、巨大に崩壊して水害を起こすかの違いでしかないだろう。その心配は現にしている。


 現地では「観測井戸」を掘ってあって、水位がどこまで来ているか調べているのだ。山は火山灰と粘土の地層によって、ミルフィーユ状態になっている。そこに水が流れれば、水を通さない粘土層の上に水が流れ、地崩れを引き起こすからだ。


 しかも自然の状態で川は、活断層の動いた跡に流れることが多い。その活断層の上に水を貯めると、重さのかかった水が浸透して地震を引き起こすことがある。これを「ダム誘発地震」といって、チェルノブイリ原発事故の数秒前にプリピャチ川でも起きている。熊本では地震で崩壊した阿蘇大橋のまさにその場所に、立野ダムを建設しようとしている。






 ダムが安全だというのはまさに神話だ。必要のない、あるいはもっと安くて効果のある治水法があるのに、利権のために造られているだけのものだ。水害の被害に目を向けるなら、同時にダム神話にも気づいてほしい。今回の水害にはダムが深く関係しているのだ。




☆こちらもご参考ください☆


■図やグラフを用いてよりわかりやすく解説しています↓
 2018.7.30発行『大雨被害とダム』(有料・活動支援版メルマガ)
 http://tanakayu.blogspot.com/2018/07/blog-post_25.html





■立野ダム今夏にも着工!&「世界の阿蘇に立野ダムはいらない」販売のお知らせ
 http://tanakayu.blogspot.com/2018/06/blog-post_23.html


天災より人災に注意せよ ~阿蘇の「流動性地すべり」~
 http://tanakayu.blogspot.com/2016/06/blog-post_30.html


「豪雨に負けない森はどこへ…。今国会で成立 「森林経営管理法」 が日本の山と林業を殺す=田中優 」
 https://www.mag2.com/p/money/501696


■田中優『ダムはムダ』 書き起こし無料公開中!
 http://tanakayu.blogspot.com/2018/08/blog-post.html

2018年9月12日

危険なダム、ワースト10はこれだ!

皆さんのお近くにありますか?

「豪雨が来たら気をつけたい。専門家が選ぶ「危険なダム ワースト10」
https://hbol.jp/173708 (2018.08.30)より


1位 天ヶ瀬ダム(京都府宇治市)

2位 八ッ場ダム(群馬県吾妻郡)

3位 新成羽川ダム(岡山県高梁市)

4位 山鳥坂ダム(愛媛県大洲市)

5位 下久保ダム(群馬県藤岡市・埼玉県児玉郡)

6位 石木ダム(長崎県彼杵郡)

7位 二風谷ダム・平取ダム(北海道沙流郡)

8位 平瀬ダム(山口県岩国市)

9位 只見川水系のダム(福島県大沼郡)

10位 殿山ダム(和歌山県田辺市)



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2018年8月8日

田中優『ダムはムダ』 書き起こし無料公開中!

オンラインサロン「田中優ラボ - 七世代先の未来に責任を持とう 」にて、書き起こしを無料公開中です☆

今回の西日本豪雨でも問題になったダムについて・・本当に必要なのでしょうか?

ご一読頂けたら幸いです。


『田中優氏「ダムはムダ」編 ワールドフォーラム2007年9月』

(講演動画はこちら https://youtu.be/5F09Zg9oKGQ 再生時間10分)
の書き起こしに、今回加筆を行いました。




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田中優

ダムは目的別に「治水」「利水」に分かれて、「利水」の中には「水」「電気」という形に分かれます。

例えば東京の場合、1971年と現在と比べて水ってものすごく消費量が増えたと思いますよね?

減っているんです。

実は三十何年かけて東京の水の消費量は減り続けています

なぜ減ったのでしょう? 

工業用の水道が値段が高いので、みんな節約してしまったんです。その結果、ものすごく水の消費量が減りました。

それから家庭の需要も減っています。

今まで増えてきたのは「水洗化率」、トイレの水を水洗にするために需要が上がってきたんですね。ところが水洗化率はほぼ100%、今後は上がりません。しかも水洗トイレの節水型が増えたので、今新しいトイレにすると従来の3分の1しか水を使いません。


その結果、水の消費量は減っているんです。

ところがこの35年間の間に、東京のためにたくさんダムを造りました。
そのダムの水がどうなっているかご存知ですか? 

「無効放流」です。

そのまま川に流しているだけです。何も使っちゃいません。

霞ヶ浦も長良川河口堰でも二風谷ダムでもどこでもそうです。
無駄に造っているだけで、これは必要がありません。ですから今や電気必要なし、水必要なし。


そして治水はというと、実はダムを造るときというのは下流部分に財産が集中していて、そこにこう川が流れ込んでくるわけですよね。

その時にここにダムを造ると、ここに一定量の雨が降った場合については、この雨を川に流さずにダムにプールできますね。

でも流域面積全体で考えると、だいたい今は多くても10%くらいです。つまり、10%のところだけ雨が降ったら役に立ちます。残り90%は役に立たないんです。だからダムで治水をするというのはこれはムダです。


どうやると一番良いかというと、この下流部分のところに貯水池を設ける。大雨が降ってきたらこの下流の貯水池に逃がす。

こういう形にするのがコストも安く便利です。その土地がないということであれば、水田を使うと便利です。水田のところに流し込む。それは育っている稲がダメになりますが、きちんと保険に入って補償する。そうすると翌年になると連作障害が消えるんですよ。


ダムについてはもはや全く必要性がありません。
理屈さえ理解をすればやめる話になるはずですが、今のところみんな騙され続けているので、ダム推進が続いているという状況です。


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「風と水」の密度を比べると、水の方が800倍密度が大きいんですね。

その結果、風車の800分の1のサイズで同じ量の発電ができるんです。
だから日本の場合一番大きなエネルギーを得られるのは、小規模な水力です。

小規模な水力に進めていくのが一番最もコストが安く、一番大きなエネルギーが取り出せます。
それをダムにする必然性は実は全くありません。

水力発電の電気の発電量はどうなっているかと言うと、発電量は「高さ×水量×重力」によって決まります。

ですからダムで作った場合の発電量と、小さく水力をこう階段状に貼り付けていった場合の発電量を比べたとするとどうなるか? 

同じなんですね。

高さは同じでしょ?流れる水量は同じ、それに重力はどこでも一緒だから。ということは、ダムにする必然性が全くないんです。


なぜダムにするかというと、必要な時に発電してもらえるからです。夜中、水をずっと貯めておいて、昼間にどっと落として発電できる、つまり充電装置のような役割を果たすことができるからダムを造るという状況なんです。


ダムで水を貯めると、砂が溜まってしまいますよね。そのために土砂が海に流れていかないから砂浜が消えていく。そして時々その溜まってしまったヘドロを一斉に流すんですね。


黒部川が有名なのですが、梅雨の時期の大雨の日に思い切り土砂を流してしまうために、ふもとの漁師さんたち、いくら何をとってもヘドロしか取れないんですよ。タコつぼを入れておくと、タコが壺ので中でヘドロで窒息しているんです。かわいそうです、本当に。そういうような状態になってしまうのがダムです。


だからダムはとにかく撤去した方が良いです。今はもうアメリカでは500基以上撤去していますし、日本でも川辺川ダムを予定していた球磨川の荒瀬ダムも撤去しました。これからダムは撤去する時代に入っていきます。これは公共事業としてもものすごく力になるんですよ。


だからぼくは公共事業が悪いんじゃなくて、その選んだ代物が悪いと思っているんです。だから地域の人たちが役に立って経済的に利益が得られてもっと安いものだったら、公共事業はあった方がいいと思うんです。

だけど今の公共事業は、借金を貯めて役に立たなくてすぐにダメになるということが問題なんだと思います。ダムを撤去することは経済的にとても利益が出ます。というのは魚がたくさん上がってくるようになりますから。


そしてダムのために砂が入らないように砂防ダムというのをバーッと連続して作るんですよ。これ1基、2千万円から2億円かかるんです。にもかかわらず山の中に入ってみると、例えば木頭村、四国の山の中を見てみると400基以上も連続してあるんですよ。1基2千万円から2億円、それが400基以上連続してあるんですよ。もう万里の長城のようで、バカげていますよね。

そんなバカなことをやって公共事業で儲けているから「砂防会館」というのがあるんですね。それが特定政党の集まっている場所になっているわけですが、なんで砂防会館か? それが一番お金が儲かるからです。


そしてダムを貯めるとそこにはもう一度「浚渫(しゅんせつ)・・水底をさらって土砂などを取り除くこと」が必要になりますね。

そして今度下側には「飢えた水」というんですが、もうまるっきり砂を含まない水が流れていって全てをツルツルにしてしまうんですよ。そうすると魚が卵を産める場所がなくなってしまうんですね。そして下の橋脚、橋とかをどんどん溶かしていってしまうんです。


そして一番下にいくとどうなるかと言うと、砂がどんどん失われているので、今「遠州灘」とかどんどん減ってしまっていますね。

そういう構造になってしまうので、テトラポットを並べるわけです。だから公共事業は今テトラポットを並べたりしてお金を使っていますが、それよりもダムを撤去した方がよっぽど安いです。経済効果もとても大きいです。

ですからそういう方向に公共事業を向ければ良いんです。建設会社の人たちも全然断る気はないと思います。だって公共事業が欲しいだけですから。だから公共事業はまともな公共事業であれば良いんだという形で主張していくべきだと思います。

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椎葉ダムというのはアーチ式ダムなんですよね。
アーチ式ダムというのはダムの上流に向けてアーチを造ってダムにします。

最もコンクリートの量が少ないので一番安上がりでできるんです。ところがもうボロボロです。崩れていますね。しかももし崩れたとしたらあそこは真下に学校があるんですよ。ですから崩れてしまったら最初に学校が被害に遭ってしまう。


実は世界の中ではダムというのはすごく壊れているんです。一番ダムの中で悲惨な事故だと思うのは中国の「板橋ダム」というダムが壊れた時です。

1970年代に起こりましたが、この時上流で2つダムが壊れました。ところが中国ってダムを連続して造っているのでドミノ倒しが起こってダムが62基壊れました。最後のダムが壊れなかったので、町が水没してしまいました。その結果、23万人が亡くなっています。これが世界最悪のダム事故です。

こういう事態もあるし、例えばアメリカの「ティートンダム」、「フランシスダム」なども壊れていますし、世界各地で実はダムって壊れているんです。

だから日本のダムが壊れるのはこれから起こってくる時代だと思います。特に椎葉ダムは危険だと思います。



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<<サロン概要>>

**「田中優ラボ - 七世代先の未来に責任を持とう 」**

「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長・田中優による
”次世代社会”をテーマにした会員制コミュニティ。

田中優がSNSやメルマガではなかなか書かない、次世代社会をよりよいものに
するための最新の考察を配信し、新たな気付きの提供はもちろん、田中優が
実践している情報収集術・アウトプット術など実生活でも役に立つノウハウも!


メルマガのように一方通行な情報発信ではなく、田中優による考察をベースに、
会員の皆さまと意見を双方向に交わしながら、これからの社会をよりよいものに
するためのプロジェクト発足も視野に入れています。


これからの未来社会を一緒に考えていきませんか?


只今サロンメンバーを大募集中です!
https://lounge.dmm.com/content/1881/



2018年7月25日

2018.7.30発行『大雨被害とダム』

2018.7.30発行の有料・活動支援版メルマガ はこちらです!
 
『大雨被害とダム』

今回の西日本豪雨で特に被害の大きかった岡山県倉敷市真備町。

その原因は何だったのか?


気象図や警報発表などの分析、ハザードマップで見てもほぼ全域が水害の予測される地域であったことがわかりました。

そして今回大きな原因となった「ダム放流」について。

同じ豪雨でも、被害が少なかった高知県と、大災害になってしまった岡山県のダム対策では何が大きく違ったのか?

二度とこのような悲劇を繰り返さないために、ダムが本当に必要なものか、長崎県石木ダムのようにこれから新たに造る必要があるのか、改めて考えるきっかけになれば嬉しいです。







<<ご登録はこちらより>>
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~2018.7発行 ラインナップはこちら~

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■第166号:「天然住宅は、なぜ「森を守って、健康・長持ち」を目指すのか(下)」

■第167号:「大雨被害とダム」

2018年6月23日

立野ダム今夏にも着工!&「世界の阿蘇に立野ダムはいらない」販売のお知らせ

田中優も以前から反対している熊本の立野ダムの建設が、今夏にも着工するとのことです!

「立野ダム、今夏にも着工 22年度の完成目指す」 より
https://this.kiji.is/381216959125718113?c=92619697908483575


国土交通省は17日、白川上流で建設を進めている国営立野ダム(南阿蘇村、大津町)本体について、今夏にも着工する方針を明らかにした。着工は熊本地震の影響で約1年ずれ込んだが、国交省は当初の予定通り2022年度までの完成を目指すという。
立野ダムは、白川と黒川の合流点の約1キロメートル下流に建設し、集水面積は阿蘇カルデラの内側約383平方キロメートル。熊本市の市街地など白川下流の洪水の予防や軽減を目的とする。1983年に事業着手し、地震前までは周辺の工事を進めてきた。

高さ約90メートル、上部の長さ約200メートルのコンクリートダム。 下部に約5メートル四方の穴を3カ所設け、普段は穴から水が流れるが、大雨時には自動的に水がたまり、下流に一度に流れる水の量を減らす。総事業費は約917億円。
立野ダムに対しては、白川流域の複数の市民団体が反対や慎重姿勢を示しており、国や県に、反対派も交えた住民討論集会の開催を求めている。


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もう一度見直しませんか?

「世界の阿蘇に立野ダムはいらない」販売のお知らせ






田中優より

「熊本地震を経験して止めたいもの、原発だけでなく「立野ダム」もあります。

阿蘇の外輪山がほぼ唯一切れている場所に予定されて工事中です。

地図で見ると右上が崩落した阿蘇大橋、左下に工事中の場所を記しました。


画像に含まれている可能性があるもの:テキスト



ここの地形は活断層がそのまま地形になっています

それを利用してダムを作る気です。正常な神経とは思えないです。
この冊子、よくできていてお薦めです。ぜひ読んでほしいです。」


★詳細、お申込み方法はこちらより

お申込みメールフォームhttp://tanakayu.blogspot.com/search?q=%E7%AB%8B%E9%87%8E


・在庫はあと5冊!(2018.6.23現在)
・送料無料
・書籍代は864円(税込み)
・メールフォームでのお申込みの場合、クレジットカードは使えません。書籍を送付時に請求書も同封しますので、郵便局よりお振込みください。その際のお振込み手数料(郵便振替口座で最も安いのは80円)がかかります。
・2冊以上お買い上げの方はその振込手数料もこちらで負担します。


★または 公式web shopでも販売開始しました!(クレジットカード払いも可能です)
https://tanakayu.thebase.in/items/11917494


先着順にて受付、在庫がなくなり次第販売終了とさせて頂きます。

【書籍の詳細】

2012/12発行
立野ダム問題ブックレット編集委員会 (編集)
立野ダムによらない自然と生活を守る会 (編集)

単行本: 85ページ
出版社: 花伝社 (2012/12)

・立野ダム問題とは?
・住民の視点でまとめた災害対策の提案
・阿蘇の大自然と白川の清流を未来に手渡すために。


第1章 検証・2012年7月白川大洪水
第2章 2012年7月白川大洪水被害者が体験したこと
第3章 立野ダム計画の問題点
第4章 国土交通省の「立野ダム事業検証」を検証する
第5章 立野ダムは災害をひきおこす
第6章 住民が考える白川流域の総合治水対策 など

2018年4月26日

『 なぜ故郷を水没させなくてはならない? 』

▼「石木ダム」

 先日長崎県の石木川に出かけた。前から行きたかった石木川ダム予定地を見に行くためだ。ダム予定地には今なお13世帯約60人が住んでいて、ダム建設反対の運動をしているからだ。どうして反対しているのか、どんな場所なのか知りたいと思っていた。

 ぜひ機会があったら見てほしい。石木川はものすごく小さな小川で、水没予定地のこうばる地区の人たちが抵抗を続けている。たぶんこの運動は勝つと思う。石木ダムは必要性に乏しく、知られていけば止められるダムだと思うからだ。





 国内で反対運動の成功体験を味わうには最適な場所だと思う。現地の人たちは団結し、カネで買われない地道な活動を楽しく続けている。楽しくないと続けられない。普通の人たちの抵抗運動はこうして成功に至るという体験をすることができると思う。


▼ダムを造る理由

 ダムの予定されている石木川は、川棚川の支流になっている。川棚川が大村湾に注ぐすぐ手前のところで支流の石木川が注ぐ。そこにダムを造って隣の佐世保市の水道水を補い、川棚川の氾濫を防ぐのが目的となっている。でもこの目的そのものが虚構に近い。

 まず氾濫防止だが、石木川が川棚川に流れ込むのは下流域だ。ところがその川棚川の人命や財産が集中するのは、はるか上流の波佐見町なのだ。しかも波佐見町の想定されてるのは30年に一度の大雨だ。最下流が100年に一度の大雨に耐えられるように想定しているのに、人口集中地の手当てが十分ではない。
その土地を守るなら、波佐見町の上流を手当てすべきなのにそうなっていない。

 石木川が氾濫したとしても、下流で合流するのだから川棚川を遡って氾濫することなどありえない。しかも石木川の集水域は、川棚川全体の11%でしかない。
このダムが造られても波佐見町には何のメリットもないのだ。そして下流域を100年に一度の洪水から守りたいのだとしたら、今ある堤防を部分的に4センチかさ上げするだけでいい。ダムを造る必要はないのだ。

 もう一つ理由にされているのが佐世保市の渇水だが、佐世保市の水需要の想定だけがぐんぐん伸びることになっているだけなのだ。実際の水需要は毎年減り続けている。今後さらに人口は減る見通しだから、こんな水需要はあり得ない。


 しかも佐世保市は、人口20万人以上の水道事業の中で下から5番目に無収水率(カネにならなかった水量)が高い。その理由はなんと漏水なのだ。届けている水道の11%以上が漏水で勝手にこぼれている。ダムの完成予定は早くても2022年だが、その頃には人口も減り、水需要も減り、漏水が改善できればそれだけで足りてしまう。それなのに他市町村の土地を水没させてダムを造ろうとしている。


 ただ先祖伝来の土地に住み続けたいだけなのに、それが強情のように言われるいわれはないのだ。

 川が下から上に流れるのでなければ、洪水にはならない。いきなり佐世保市の人口が急増して水需要が激増しなければ渇水も起こらない。そんな根拠のないダムなのだ。


▼ダムを造った場合の影響

 ぼくは大村湾が死んでしまうのが最大の被害になると思う。地図で見てもらえば一目瞭然だが、長崎空港のある大村湾は閉鎖性海域だ。細い2箇所でしか海につながっていない。その大村湾に流れ込む川で最大なのが、この川棚川だ。

 ところがその水を佐世保市に奪われたら、水は別な海域に流れることになるから大村湾は浄化されなくなる。するともっと水は入れ替わらなくなり、すでに水揚げ量が減ってしまっている大村湾での漁業は、壊滅的になるだろう。漁獲高の問題どころか湾をドブにしてしまうかもしれない。国内屈指の美しい長崎空港がドブに囲まれたら、長崎に行こうとも思うなくなるだろう。


 このダムが予定されたおかげで、こうばる地区は道路の改修費や公民館の改修費も支給されなくなった。おかげで地元の人たちが自費で賄わなければならない。
税金は払っているのに差別を受けるのだ。


 でも逆に良い面もあった。土手をコンクリートにするような改修工事がされなかったために、清流が保たれているのだ。そこにはホタルが乱舞する美しい地域が残された。そこでこうばる地区の人たちは「ほたる祭り」を始めると同時に、ホタルを減らさないようにと農薬をなるべく使わないようにした。

 おかげでサンクチュアリのような場所が残った。かつて長崎に来たシーボルトが採集した日本の淡水魚標本19種のの中の、12種までが石木川に見つかるのだ。
ダム予定のおかげで残された最後かもしれないサンクチュアリを、根拠の乏しい理由のために壊してしまっていいのだろうか。もう二度と戻せないのに。


▼石木ダムは造らせない

 すでに新たな運動もあちこちに始まっている。「ほたるの川の守りびと」というドキュメンタリー映画が上映されて、特別な人ではない普通に暮らす人々のやまれぬ思いの運動であることが知られるようになり、関わる人が増えている。

 さらに小林武史さんやサリュー、坂本龍一さんや加藤登紀子さんが関わってくれてさらに周知されるようになった。友人は佐世保市で県議にも実態を知らせるために奔走してくれている。

 これら全体の動きが、ぶれない地元の人たちの運動に合流したのだ。ぼくはもう一つ、労働組合にも参加してほしい。もともとは参加していたのが、いつからか関わらなくなってしまった。なにせ現在の通説的見解と言われる説では、「違法な業務命令であっても、公務員は判断する権利がないから従うしかない」とされているからだろう。

 世界でロボット兵器が問題にされている。しかしそれ以前に日本では人をロボットのように使うことができるのだ。こんな見解は間違っている。人はまず良心に従って生きるものだ。自分の良心に従って生きることが服務違反にされるなら、その服務が憲法違反であるはずだ。私たちは奴隷やロボットではない。「人間解放」が必要なのは中世ばかりじゃなくて、絶え間なく権利を求めて闘う労働者も同じではないか。



◆◇◆◇ より詳しくはこちらをご覧ください ◆◇◆◇◆◇


田中優有料・活動支援版メルマガ 2018.4.15発行 第160号

『 石木ダム建設予定地にて 

  ~住むんだったらここがいい!~ 』


グラフや写真を多用して解説しています。
4/末までのご登録で、“無料”でお読み頂けます。
→ http://www.mag2.com/m/0001363131.html



以下本文より

「先日初めて石木ダム予定地を訪ねた。以前から一度は行ってみたい場所だった。

どんな場所がダムに沈められようとしているのか。
何か手伝えることはないだろうか。

そんな思いで出掛けたかったのだ。

(中略)


そうすると見事にこうばる地区だけが水没するのだ。
この地域には今の倍以上の人が住んでいた。ところが不安定な立場に耐えられず、しかも度重なる県職員の圧力に耐えられず、しかも高額な土地収用額に揺さぶられて人々は立ち去っていった。そして現在の13世帯、約60名だけが残ったのだ。


地域の公民館は「どうせ水没するから」と修繕費も支給されず、地域の道路舗装すら自分たちで負担しなければならなかった。その公民館の屋根の補修は、「パタゴニア社」の協力で、クラウドファンディングで集めたそうだ。

 さらに収用の名のもとに補償金が払われ、それを拒否するために「供託」して受け取らないようにしている。ところがそれに対しても「所得」として税負担が掛かってくるのだ。  (中略)


「嫌がらせに耐えても何になるのか」、「わずか60名で何ができるか」という声が聞こえてきそうだ。しかしそうして耐えた人たちだからこその良さがある。何より仲良しで、一致団結したコミュニティーがあるのだ。そこに行ってみて、何より楽しかった。また来たいと思う。できることなら住みたいと思うほどだ。


 なぜただ故郷に住み続けたいだけなのに、こんな目に遭わされなければならないのか。そのダムは利水からも治水から見ても意味がないのに。この国ではお上の横暴に黙って従う人以外は、生きる価値がないかのように扱われる。


 でもぼくは、この闘いは勝てると思う。何より人々が楽しんでいて、関わってくれる人が日々増え続け、この動きはどうやったとしても止められないからだ、そうなればこの運動は持続するし、やがて無視できないほどの大きな運動になる。

 だから多くの人に関わってほしい。

これは歴史を変えていく第一歩を刻むかもしれないのだ。 」



~~メルマガ最後より~~


石木ダム建設予定地を歩いていたら一人のおばあさんに会いました。

どこが建設予定地ですか?と聞いたところ、
「ダムの底に沈むのは、今私たちがいるここら辺だよ。」と教えてくれました。

そのおばあさんの家は、私たちのすぐ目の前にありました。


ほたるが住むほどきれいな川、色とりどりの花、大きな桜・・
そしてそこで生活している人たちが今もいます。


ダム建設の話ができたのは今から約半世紀も前です。 


今では残ったたった13世帯の人たちが、まるでひとつの家族のように、 
54人が力を合わせて毎日工事をさせまいと反対運動をしています。 













「クヨクヨしてもはじまらんですもんね」

「機動隊からもやられたけんですね」

「殺されてもよかって覚悟をしとります」

とおばあちゃんたちは笑いながら言います。



「ニュースではすごい怖い人たちが抗議している風にしかとらえられていない。
ちょっとそれは違うよ、って」(女性)


「子どもたちには(反対運動は)させたくない。
彼には彼の人生があって夢がある。」(男性)


-ごく普通の暮らしを  ごく普通にしたい-






1人でも多くの方にこのことを知って頂きたいと思います。

今後も田中優のSNSでも発信していきます。


取材時に撮った写真もご覧ください (田中優スタッフ)


--*--*-*--*--*--*--*--*--*--


★映画「ほたるの川のまもりびと」 http://hotarunagasaki.strikingly.com/






★動画「劇場版『ほたるの川のまもりびと』予告編」 
https://youtu.be/ngZ8VncJkng



★「ほたるの川のまもりびと」 Facebook https://www.facebook.com/savekobaru/


★石木川まもり隊 http://ishikigawa.jp/


★パタゴニアが長崎県石木ダム建設反対活動を支援する理由
 http://wash-me.jp/patagonia_interview_2


★動画:プロテクターズ・オブ・ファイアフライ・リバー
 (ほたるの川のまもりびと/パタゴニア特別限定版):パタゴニア
  https://youtu.be/hq2F3uyP5JQ

 

★【イベント】5月6日「ほたるの里から長崎をかえよう千人の集い」
 ~加藤登紀子さんのミニコンサートつき~
  https://www.facebook.com/events/1361120560656820/ 







2018年1月31日

白根山と浅間山と八ッ場ダムと東京

田中優より

白根山と浅間山はすぐ近く。




そして八ッ場ダムはこの浅間山の噴火によってつくられた谷に造られる。


巨大ダムなので噴火の時は東京も洪水に呑まれる
八ッ場ダムはやめたら?

  ◇   ◇   ◇   ◇  

▼「本白根山「想定外」の噴火、隣接の長野県も警戒強める」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180124-00000004-wordleaf-l20


2017年10月3日

官僚だけが大儲け。日本を破壊する「水道民営化」のトリックに騙されるな=田中優

2017.9.28発行!
田中優が水道民営化に物申す!!
ぜひご一読ください(^^)


田中優より
「「水の民営化」について書きました。
石木ダムも同じ構図なので、知ってほしいです。」


170928tanakayuu_eye

(写真は掲載サイトより)


官僚だけが大儲け。日本を破壊する「水道民営化」のトリックに騙されるな=田中優



 今年3月に水道法改正が閣議決定され、民間企業が参入しやすくなった。政府は民間に丸投げしてコスト問題などを解決したい考えだが、これは警戒すべき動きだ。(『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』)


危険すぎる水道民営化の動き。誰が得をして誰が損をするのか?

ひっそりと水道法改正、民間事業者が参入しやすく


 あまり多くの人の注目を浴びないまま、2017年3月に水道法の「改正」が閣議決定され、民間事業者が参入しやすいように改正された。
  水道管の更新は0.76%しかされておらず、人口減少が見込まれる今、水道料金の値上げは必至の状況である。

  そんな中、その運営を民間事業者に託して「直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図る」とするのだが、何を言わんとしているのかよくわからない。
  しかし水の現状を知るならば、課題があることに気づくのではないか。

  簡単に言うと、民間事業者に丸投げして、料金の値上げを伴う「課題解決」させようとしているように見える。
 確かにインフラ事業を民間事業者が担っていることも多い。しかしその民間事業者はどうしているのか。

  電力会社は高給を取りながら潜在的危険性のある原子力発電を運用し、費用の問題から必要な津波対策を怠っていたために大事故を起こし、その対策費用の大半は税金に頼っている。

  ガス会社は築地に代わる市場用地を売却したが、その豊洲市場は土壌汚染されていて、施設が完成した後にも移転できずにいる。

 むしろ民営化には危機感を持って監視した方がいいのではないか。

  今の楽観に基づいた「民営化」に、警戒心を持ってほしい。
その思いからこの文章を書くことにした。(田中優)


<<続きの内容>>


・このままでは「持続不可能」な水道事業
・日本は世界の流れに逆行している
・なぜ無駄なダムが造られるのか?
・自治体が助長する「水の無駄使い」
・水道民営化で元水道官僚たちが大儲け
・民営化は水道問題の解決策ではない


全文はこちらよりご覧ください ↓
http://www.mag2.com/p/money/308966


本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年9月28日)