まずはこのグラフを見てほしい。
このグラフは「無担保ローンの融資残高」だ。かつて社会問題化した「サラ金」たちの資金貸出額を、銀行が軽く超えてしまっているというものだ。友人から「クローブアップ現代」で放映されていたと聞いたので早速検索。ちゃんと見つかった。見てみたらこれが優れた番組だった。
かつてサラ金がきつい取り立てや過剰貸し付け、高金利の「3K」が問題になって厳しい規制が課せられるようになった。特に厳しい規制は、法定金利を上回った金利の返済と、本人の年収の3分の1を上回る貸し付けの禁止だった。ところが銀行は「善意の機関」と信じられていてその規制を受けなかった。そこでサラ金に代わって伸びたのが銀行カードローンだったのだ。
しかし銀行は個人の信用情報を持たないし、融資のノウハウもない。そこでサラ金が信用情報を審査し、万が一の焦げ付きには補償をし、銀行はノーチェック、ノーリスクで貸し出すようになったというのがこの流れだ。
かつてサラ金では生命保険を掛けさせて、本人が自殺すると資金回収できるので、社内で契約者の自殺に万歳三唱をしたという。ところがその業態が銀行に移ったのだ。サラ金は銀行と提携することがあったが、それがこういう形で進化していたのだ。
本来銀行は、地域の事業者に融資して共存共栄を目指したものだが、もはやそんな余裕はない。国債はマイナス金利、事業融資は金利が低く目利きができないことから銀行自体が個人カードローンに走ったのだ。金利は3%~15%となっているが、大きい金額か期間が短いものかでなければ安い金利は適用されず、個人ローンの多くは高い側の金利になってしまう。しかもリボルビング方式による定額返済で、金利負担が非常に大きくなってしまうのだ。
経営の厳しくなった銀行も、これを積極的に営業成績に結びつけ、堅実経営の中小企業への融資より優先して自分で審査せず、リスクも少ない個人ローンを優先する。それが営業成績につながるのだから、職員も競って融資しようとする。やがて破裂するバブルならぬカードローン破産に向けて、恥も外聞もなく銀行はアクセル全開にしたのだ。
低所得者は当然カネが不足することが多い。その人たちがターゲットだ。
リボルビング方式なら、返済は6年ほどで借入元本の1.5倍になる。低所得者は、その間にまた再びカネが足りなくなる可能性が高いのだ。すると再び銀行カードローンに頼る。そのようにして利益を得ていくのだ。
吸血鬼のような業務を、銀行が中心になって広げだした。何より大きいのは「年収の3分の1以上は貸し出せない」という総額規制のない点だ。サラ金が規制されてできなくなったことを、「銀行は悪いことをしない」という神話の下で続けられるのだ。そのせいで13年ぶりに自己破産者が増加した。
これは新たな「銀行地獄」の始まりだ。銀行は善意で運用しているものではない。カネの魔力に憑りつかれた存在だ。人々の世帯所得はピーク時から100万円以上下がった。年収がそれだけ下がれば、学費も出せなくなるし、万が一の費用不足の事態も当然起こる。そんなときになっても銀行カードローンに頼るのは危険だ。
何より収入に見合った暮らしに戻さなくてはいけない。そのためには現金支出の削減こそが重要なのだ。
以上、2017.6発行
※「未来バンク事業組合ニュースレター No.91/2017年6月」より抜粋
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http://www.geocities.jp/mirai_bank/news_letter/MB_NL_91.pdf
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田中優有料・活動支援版メルマガでもこの銀行について取り上げています。
■「銀行を信じてはいけない
」 (2017.6.15発行)
・共謀罪成立
・えげつない銀行
・サラ金から銀行に移った無担保ローン
・善意の銀行という神話
・無能が暴露した銀行
・背景にある貧困化
・破産の淵にいる多数の人たち
などなど書かれています。
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