具体な数字で、数度で言うと、電気のように間接的な排出量を家庭にカウントしても家庭の排出は16%弱で、二酸化炭素は巨大企業の排出がほとんどを占めている。
しかも政府はその企業を取り締まるどころかその利益に群がる始末。これで未来が安泰であるはずがない。この夏には極地方やヨーロッパを熱波が襲い、今は地球最大の森林のあるシベリアで巨大な山火事が燃え広がっている。
止めるには普通に考えて、政府が温暖化を進めている企業を取り締まるしかない。
温暖化を止められなければ地球が熱球と化し、人類の生存を不可能にするだろう。しかも北極周辺の熱波はツンドラの永久凍土を溶かし、その凍土から放出される温室効果ガスは従来考えられていたよりずっと多いことが分かった。
▼4パーミルイニシアチブ
私たちには打つ手がない。いくら「人々のライフスタイルが問題」と言われても、私たちが全く二酸化炭素を排出しなくなっても16%しか減らず、温暖化は止められないのだから。若者たちを中心に、今年9月20日には「グローバル気候マーチ」が予定されている(2019.8現在)。若者たちが学校に通っている場合じゃないと活動しているが、それほどまで社会の大人たちの活動への信頼性は失われている。
私も長年そう思っていた一人だ。世界をぶち壊す企業を尻目にたった16%を排出するだけの市民は、責任をなすりつけられるだけで、政府が変えられない以上解決策などないと思っていた。
しかしフランス政府が主張した「4パーミルイニシアチブ」をよくよく考えるうちに、政府や大企業を全く無視したままでも解決する手段があると思うようになった。それはぼくの内側では革命的な出来事だった。
まずフランス政府の主張した「4パーミルイニシアチブ」について説明しよう。
その原理は極めて簡単だ。大まかに言うと、現在、地球全体で人間活動によって大気中に排出している炭素は、年間約100億トンあるが、そのうち樹木や海洋などが吸収・固定してくれている炭素が約57億トンで、残りの43億トンの炭素が大気中に拡散されている。この炭素が大気中に増大して地球温暖化を起こしていると言える。
この43億トンが温暖化を進める正味の炭素ならば、これを大気中に戻さずに、どこかに確保すれば今現在の温暖化を少なくとも進行させないことができる。
一方で土壌の中には1兆5000億~2兆トンの炭素があるとされ、うち表層の30~40センチの「耕作地」などに約9000億トンの炭素があるとされる。そこでこの9000億トンの耕作地などに含まれている炭素を、毎年今の0.4%だけ増やすことができれば、43億トンの排出分をほぼ帳消しにできる。地球を温暖化している炭素を土に還すことで大気中から排除できるから、地球温暖化を食い止められるのだ。
0.4%、別な言い方をすれば「4パーミル(パーミルはパーセントのヒト桁下で1000分の1を意味する)」を大気中ではなく土壌に確保させれば、地球温暖化を止められるのだ。
▼ 温暖化の加害者から救世主に
さてこの計算は私たちの生活に身近ではない。そこで人々の「家庭一世帯当たりの年間排出量」と比較してみよう。二酸化炭素で4480kg、炭素計算で1.2トン(1223kg)」というのは単純な日本の全世帯の平均値だ。その人の暮らしぶりによって、世帯の二酸化炭素排出量は大きく変わる。
天然住宅で今建てている小さな木造家屋、わずか24坪ほどの住宅なのに、14立方メートル(重さ8.4トン)の無垢材を使う。
これを将来的に炭という炭素の塊として土に埋めるとしたら、純粋な炭素で1.4トンほど土に還せる。もちろんすぐに炭にするのではなく、使える限り建物として使って、廃棄するときに炭にしよう。
すると木材は炭になる前提だから、炭素を隔離できる。年間一世帯で、平均1.2トン排出するので、1年以上分の炭素を隔離することができるのだ。
さらに我が家のように省エネと自然エネ利用をした場合、その排出量は炭素に換算してたった225gになる。森や海が自然に吸収する量より少ないため、マイナスの排出となる。家の炭素1.4トンもマイナスとなるので、排出したのではなく安全に排出可能な枠を作り出したことになる。
つまり私たち市民の責任分を越えて、過剰に排出する企業の分まで二酸化炭素排出をカバーしたのだ。これを始めていくのはどうだろうか。小さな「私にできること」というレベルを超えて、地球温暖化に対して貢献していくことになるのだ。
家屋を最終的に炭にして土に還す方法によってマイナスする方法は、地球温暖化を起こしている「43億トンの炭素」を隔離する方法だ。もちろん森林の豊富な日本だからできることだし、現状日本は植林以上に森を使うことの方が必要な時期にあって、初めてできることではある。なにせ現状の日本には、「史上最大の森林蓄積量」があるのだ。
もうプラスチックや、鉄やアルミに頼るのはやめて、多くのモノに森林資源を活用していくならば、地球温暖化さえ解決可能になるのだ。さらにもう一つある。
サイエンス誌によれば、地球全体にどれだけ森が広がれるかを調べたところ、森林の再生が可能な土地は米国の広さほどあった。そのすべてが森になれば、過去100年近くの二酸化炭素排出量を相殺できるというのだ。
地球温暖化問題は、解決できない話ではなくなるし、私たちにはどうにもできない話でもなくなる。このことが大事なのだと思う。いわば私たちは温暖化の加害者ではなく、救世主となるのだ。温暖化をもたらした企業を免罪する気にはならないが、それでもなお森林をキーにすれば、私たちに可能な解決策があったのだ。
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