2016年11月23日

『 抵当権を登記しない融資を 』

□◆ 田中 優 より ◇■


天然住宅コラム第42回 

 『 抵当権を登記しない融資を 』


■抵当権設定しない融資

 前回天然住宅バンクの融資で、「家を抵当権設定しない仕組み」を実現したと説明したが、これにはちょっと専門的な法的な説明が必要かもしれない。

実はぼく自身が法律を専門にしていたので、(ちょっと怪しいが)詳しいのだ。

※第41回 年収300万円台からのマイホーム
http://tennen.org/yu_column/300man.html


■登記することの効用

 抵当権を設定しないのはまず経済的な理由だ。他の金融機関から融資を受ける以上、金融機関は土地と建物に抵当権をつけて登記する。すると天然住宅バンクが登記したとしても、二番、三番の登記順位になる。抵当順位が上のものから返済を受けるので、実際には登記しても返済される可能性は乏しい。そのために登記費用を負担してもらうのは無駄ではないかと思うのだ。

 次の理由は登記の法的位置づけだ。登記したから抵当権が発生するのではなく、登記は「第三者対抗要件」とされている。つまり第三者が知らずに取得しようとしたら、「登記簿見ろよ、書いてあるだろ」と言えるためのものなのだ。抵当権があるかどうかは登記と関係ない。逆に言うと、登記していなくても契約すれば抵当権は発生する。順位が低い抵当権登記に経済的利益がないのなら、第三者に通用しない抵当権でも十分ではないかと思うわけだ。


■利用しやすい制度にするために

 こんな法的論議が正しいかどうかはまだ不明だが、頼もしい助っ人がいるのだ。
それがぼくの次男、天然住宅スタッフのリュウジくんの弟だ。なんと弁護士をしている。ちょっと聞いてみたが、「調べてみないとわからない」と言っていた。そりゃそうだ。普通はそんなイレギュラーなことをしようとしたり、聞いてきたりする人はいない。逆にだからこそ役立つことのできる仕組みが作れるのだ。これから返事が来るのを待つことにしよう。

 低い順位の抵当権に意味がないなら登記しても意味がない。万が一抵当権が実行されて競売になったとしたら、すべての関係者は高く売れる相手を探す。そのときに一番高い価格(15年経った建物だけで300万円)で天然住宅バンクが買いたいと手を挙げているのだから、連絡が来るのが普通だろう。つまり抵当権を登記する意味がない。高く売りたい本人自身が覚えていればいいのだから。

 そして天然住宅バンクが300万円融資した中の残額 200万円を支払えば天然住宅側のものになる。わずか200万円でも、他の評価はゼロなのだから十分に高い購入額になるのだ。

 この仕組みで実現可能なら、年収が少なかったとしても担保価値の高い「健康的で長寿命の天然住宅」を選んだ人でも家が入手できる。 


 そして、こうした天然住宅の中古市場ができれば、資金的に新築できない人でも入手可能になる。良い方法だと思わないだろうか。


抵当権
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 田中優が共同代表を務めます非営利の住宅会社「天然住宅」では、ホームページのリニューアルに伴い、田中優のコラム「住まいと森のコラム」を始めています。

 「森を守って健康で長持ちする」住宅や森の再生へのヒントなどがたくさん入っています。
 

☆--★ 2016.11.23現在、コラムは第56回まで更新中!☆---★  

田中優の「住まいと森のコラム」 

 月に3回記事を更新しています! 


■目次一覧 http://tennen.org/yu_column 


第1回 住むんだったら健康な家がいい
第2回 そのどこがエコなの?
第3回 天然住宅は高い?
第4回 蚊を殺すのにバツーカ砲
第5回 いい湯だな、バハン
第6回 次の世代に引き継げる林業に
第7回 本物「小林建工」さんとの出会い
第8回 日本ミツバチ
第9回 カビを寄せつけない技術
第10回 温泉三昧、雨ときどき間伐
第11回 小屋礼賛
第12回 皮むき間伐の弱点
第13回 低周波騒音問題
第14回 上下階騒音問題
第15回 住宅リテラシーを
第16回 湿気で溶けていく家
第17回 住宅貧乏
第18回 家を担保にした超・長期ローンを
第19回 「私、研究所の者です」
第20回 鉄筋にアースを
第21回 太陽パネルの電気自給は「冬場」が大事
第22回 男なら天然住宅!
第23回 男なら天然住宅!~男ならスペックにこだわれ~
第24回 男なら天然住宅~男なら「マイホーム主義」~
≪番外編≫寺田本家さんに共感する
第25回 暮らしに家を合わせる
第26回 次の世代の住まいとは
第27回 「未完」の家
第28回 カナダからの見学者
第29回 気候の事情、個人の事情
第30回 健康を害さない防音ルーム
第31回 電力自由化でどこを選べばいいの?
第32回 エアコンは「熱を電気でつくる」もの?
第33回 電力自由化を契機に節電を
第34回 24時間換気の不要な家
第35回 「カネを出せば買える家」じゃない
第36回 「普通の」家
第37回 自宅の完成見学会
第38回 森を守って、健康長持ち
第39回 ネオニコ住宅の恐怖
第40回 ベランダって必要なの?
第41回 年収300万円台からのマイホーム
第42回 抵当権を登記しない融資を
第43回 木造の「継ぎ手」が同じという不思議
第44回 伝統大工は頑固なままで
第45回 木材に要注意
第46回 楽しいハイブリッド林業
第47回 自立的なウマ、琴姫
第48回 この世にムダなものはない
第49回 天然住宅にすむのに必要なもの
第50回 ホタル族、ホタルに会う
第51回 ホームバイオガス
第52回 いびきが消えた
第53回 高知県興津海岸は、こうして残された
第54回 太陽温水器の裏ワザ
第55回 「Low-Eガラス」の功罪
第56回 不都合を楽しむ

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