『未来の農業は農薬や化学肥料を使わない』
■奇跡のリンゴ
映画「奇跡のリンゴ」を観られただろうか。「絶対に無理」と言われていたリンゴの無農薬栽培を実現した木村秋則さんの苦難と家族愛の物語だ。これがヒットしたおかげで多くの人が無農薬に理解を示すようになった。
木村さんほど深刻ではないが、ぼくの友人の吉田俊道さんも苦労のあげく、ついに農薬・化学肥料に頼らない農法を実現した。彼に言わせると、「簡単すぎて農法なんて呼べるものではない」そうだが。
もともと彼は九大農学部の大学院まで出て、長崎県の農業指導員になった人だ。しかし今の農業に疑問を持ち、職員をやめて農家になった。親戚一同からは大反対され、信頼し続けてくれた母親も思い悩んだまま歩いていて崖から落ちたり、父からは親子の縁を切るとまで言われたりしたそうだ。
彼の無農薬野菜の生産が軌道に乗り、「お母さん、もう安心していいよ」と言えるようになるその少し前に、母は他界していた。彼は「やっぱりお母さんの誇れる息子だった」って安心してもらいたかったという。
■虫と匂いがヒントになる
吉田さんの野菜を食べてみると素直な味がする。畑で間引いたばかりのニンジンでジュースを作っていただいた。「甘くてうまい」と言うと、「今はまだ糖度は高くないんだよ、余分な苦みとかがないから甘く感じるんだ。冬になれば糖度が高まるけど」と教えてくれる。
その作り方は難しくない。「土を良いものにする」、これに尽きる。土に生ゴミを入れたり、草以外は全く何も入れなかったりする。土に入れた生ゴミは、徹底して発酵させる。水分が高かったり、温度が高すぎたりすれば腐敗に進む。白カビのような微生物が広がり、発酵熱で土が暖まれば成功だ。
しかしすべての畑が完全に成功するわけではない。そもそも虫たちは存在している。ただ爆発的に広がったりしないだけだ。失敗すると彼は、その葉を食べ比べてみる。苦味・えぐみがあればさらに土を掘る。出てくる生物も大事な指標だ。
コガネムシの幼虫や太ミミズが出てきたら腐敗に向かっている。匂いを嗅ぐとかすかな腐敗臭がする。そうなると太ミミズを求めてモグラがやってきて、畑は無残な状態になっていく。発酵していればシマミミズやカブトムシの幼虫が多くなる。匂いはかすかな発酵臭だ。
そうなっていれば作物には強い有機酸類、酵素、ビタミン類、ファイトケミカルなど、高分子の健康成分がしっかり含まれ、虫に食われることが少なくなる。
有機・無農薬は虫に食われるというのは神話だ。虫は、常に衰弱した個体を自然界に戻す役割を果たしている。だから強くて健康な野菜は食われないのだ。
発酵させると有機物はアミノ酸に分解されるが、腐敗は分子レベルにまで分解する。ここ数年でわかったことがある。それまで植物は分子レベルの養分しか摂らないと思われていた。
だから今でも三大栄養素は「窒素、リン酸、カリ(ウム)」なのだ。
しかし実際の植物は、タンパク質の素になる高分子のアミノ酸を直接吸収できる。分子レベルを吸収してタンパク質を合成する労力が不要になる。それが植物を強くする。これからは分子レベルの栄養素を与えるのはやめて、発酵によるアミノ酸を与える方がいい。
■自然に逆らわない
ではなぜ一方で生ゴミを入れ、他方で一切入れないのか。この理由は窒素固定菌の活用による。
生ゴミの場合には窒素分が多いが、炭素循環農法の場合には草以外に与えないので窒素はほとんどない。すると土の中に風来坊のように存在する窒素固定菌が、空気中の窒素を直接吸収してくれるのだ。彼らは根粒菌とも違い、土地に生ゴミのような窒素分が与えられるといなくなってしまう。中途半端に与えると、虻蜂取らずになるのだ。
荒れた土地には単葉類のイネ科の植物やスギナが生えてくる。それを人々は枯葉剤で撲滅しようとするのだが、吉田さんのやり方は違う。
それらを刈り取って積み重ね、ビニールシートを被せて、やはり発酵させるのだ。それらが土になる頃には、豊かな土地にしか生えない双葉類が生えてくる。自然を理解するから逆効果になることをしないのだ。
考えてみるとこれは、ただの進化の繰り返しだ。単葉類が土になって豊かになったからこそ双葉類が生まれたのだ。発酵菌がアミノ酸分解をするようになったからこそ、植物はそれを利用できるようになった。
学術的には「腐敗」と「発酵」は同じものとされるが、そこには大きな違いがある。それはこれから学術側が検討しなければならない課題だ。その発酵を利用することで、無理なく農業を有機無農薬栽培に変えていくことができる。
■植物の命をいただく
こうして作られた作物は栄養価が高く、微量元素をきちんと含み、ファイトケミカルと呼ばれる人の健康に良いものがたくさん含まれている。
それを食べた子どもたちは便秘しなくなり、アトピーも病気も少なくなる。
虫が嫌う成分を調べていったところ、「スルフォラファン」であることがわかった。それは解毒や抗酸化作用を持ち、ガンの抑制効果が認められているものだった。分解酵素を持たない昆虫にとっては毒なのだが、私たちにとっては大切な薬効成分なのだ。
腹を空かしてから食べ、よく噛み、お腹をさすって回し、発酵食品をよく摂れば便秘も、病気の温床になる低体温も改善する。それは生命の進化の歴史に学ぶことだ。今、不自然な食を摂るようになって人々の健康状態が悪化したのだから、自然の摂理に戻ればいい。それだけのことで有機無農薬栽培は実現でき、未来を豊かなものにできるのだ。
彼の作ったニンジンジュースは、コップに入れていてもなかなか変色しない。
体に良い抗酸化物質が多いからだ。そのニンジンは直接依頼して手に入れることもできるし、ぼくのアイデアを応用して「菌ちゃん野菜交換券」を作っているから、人にプレゼントすることもできる。こんな農法が未来に広がったら、なにも農業の未来に絶望しなくていい。新しくて懐かしい農法が生まれてきているのだ。
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