2008年3月26日

田中優メルマガ、第10号を迎えました。

昨年11月25日に創刊したメルマガが、ちょうど4ヶ月で第10号を迎えました。
二週間に一度ほどの間隔で発行してきましたが、
546人もの方々に読んでいただけるようになりました。
本当にありがとうございます。
ぜひ周りの方々にもお勧めください。
登録はこのブログの右下の部分、あるいはこちらでどうぞ。
http://www.mag2.com/m/0000251633.html

巻頭の田中優の最新メッセージを掲載します。



□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□

 南米、フォークランド、南極、パタゴニアを回ってやっと日本に戻りました!
 うれしいですね、特に日本の食事。肉食が多くて辟易した胃袋にとてもやさしい。日本の食文化は本当にすばらしいです。

 さて、「どんなものを見てきたか」なんですが、今日はいきなり悲しい話を先にさせてください。ぼくの頭の中でもどう整理したらいいかわからず、散らかった状態なのです。

 今回、ピースボートのお手伝いで船に乗ったのですが、南極に船で向かうときには、必ずアイスパイロットという船長の上に位置するパイロットを配置しなければならないことになっています。
今回乗船してくれたパイロットは、ブエノスアイレス在住のドイツ人。世界で5人しかいないアイスパイロットの一人で、最も多く南極を航行している実績のある人です。

 その人に温暖化問題を聞きました。
「温暖化は進んでいるなんてもんじゃない。これまでは氷山にぶつかるので、とてもこんな大きな船で行けなかった。それに比べたらこの仕事自体がとても楽になったよ(笑)
 温暖化の進み方はものすごい。ぜひ今のうちに見に来てくれ。このままじゃ氷がなくなってしまうから」と言っていました。

 しかも南極の歴史は浅いのです。200年前に探検家が、「おそらく氷の下に大陸がありそうだ」と言ったのが始まりです。しかし今行って見ると、誰の目にも明らかに氷の下に隠れていたはずの陸が、黒くはっきりと見えるのです。「なぜ大陸だと分からなかったのか」と不思議に感じてしまうほどなのです。むしろ南極半島では、全面的に真っ白な峰のほうが少ないほどでした。

 アイスパイロットは「人々の努力は間に合うと思いますか?」という質問に対して、「手遅れだね、人の努力なんてピーナッツみたいに小さなものにすぎないのだから」と言っていました。

 同意するわけではないですが、彼こそが最も長年にわたって、南極を見てきた人であることを考えると、暗然とした気持ちになります。

 こんな記事があるのですよ。

南極西部で1.6倍、半島は2.4倍=氷流出量、10年間で

 南極大陸の西部では、2006年に氷床から海に流出した氷の量が1996年に比べて1.6倍に増え、南極半島では2.4倍になったとの推計を、米カリフォルニア工科大などの国際研究チームが14日、英科学誌ネイチャー・ジオサイエンスの電子版に発表した。昭和基地がある東部ではほぼ変わらなかったが、地球温暖化の影響で氷河の流れが局地的に加速したとみられる。
 地球温暖化で南極大陸の氷が長期的にどの程度流出し、海面上昇に影響するかをめぐっては、周囲の大気や海水温の上昇によって流出量が増える一方、氷床のもととなる雪の量も増えるとの見方があり、議論が続いている。
 研究チームは、欧州やカナダ、日本の人工衛星が観測した92年から06年までの南極大陸沿岸での氷河の動きから流出量を計算し、コンピューターの気候モデルで計算した降雪量を差し引いた。
 その結果、南極大陸西部では06年の氷の流出量が約1320億トンと96年から59%増え、南極半島では約600億トンと140%増加。南極大陸全体では約1960億トンと、75%増えた計算となった。(2008年1月14日の時事通信)


 この半島部を見てきました。南極はオーストラリア大陸の二倍の大きさですからとても全体を見ることはできません。しかしその美しさはものすごいです。南極はまさに聖地というにふさわしい場所でした。
 その聖地を壊すという一点だけで、ぼくは温暖化を許す気にはならないです。