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今回は2012年4月30日に発行しました
『「合鴨米はがき商品券」作成 』です。
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※2012年4月30日発行
田中優有料・活動支援版メルマガ "未来レポート"
第13号 『「合鴨米はがき商品券」作成 』
◆すとう農産の合鴨米
ぼくは「美味しんぼ」104巻に出ている。104-105巻の「環境と食」の部分は、
原作者の雁屋哲さんに頼まれて、ずっと一緒に取材旅行したからだ。もちろんぼくはあの頑固な雁屋さんが好きだし、なんだか海原雄山みたいだなと思っている。ところが本人は「よく海原雄山は自分がモデルだろうと言われるけど、
ぼくは山岡なんだよ」なんて言っている。
その雁屋さんから電話があった。
福島県の会津でまじめにコメ作りをしている農家が、放射能はゼロなのに同じ福島県ということで、風評被害で契約をキャンセルされてしまって困っているという話だった。
それなら、ということで時間を作って訪ねてみた。
「すとう農産」を経営している須藤さんは、とてもいい人だった。販売のアイデ
アなどで意気投合していろいろ聞いてみた。
(写真)すとう農産ブログより
40年ほど前に、農薬を使っていたせいで自分の妻の体調が悪くなってしまった。
そこから須藤さんの脱農薬の試みが始まった。周囲は全く理解せず、バカ者扱いだったという。脱農薬しても、手間の省ける方法を考えないと経済的に成り立たない。
そこで合鴨農法を入れた。合鴨はコメの穂が出るまでの一ヶ月半、余計な草と虫やザリガニを食べてくれる。その後は隠居してもらって、やがては食品として販売
される。
このコメを育てるのに土に入れるのは「ヌカ」を発酵させたものだ。地場の菌を使う。新たな菌を入れたとしても、次のシーズンに別な菌構成になっているとした
ら、その土地に合わない菌なのだ。この発酵させたヌカがコメのための栄養分にな
る。そして種もみも除菌剤に漬けたりせず、60℃のお湯の中にゆっくり入れて殺菌
する。
そして販売するおコメも、注文が来てからもみすり、精米する。コメを精米してしまうとコメは命を失う。だから精米してから一か月が「賞味期限」だという。も
ちろんそれを過ぎても食べられるのだが、美味しいコメは精米後一カ月の間だと須藤さんは言う。
このこだわりのコメが、福島第一原発事故のせいで売れなくなった。須藤さんはコメを放射能検査した。
不検出。
しかしそれでも納得せず、もっと精度の高い装置で再度検査。
再び不検出。
それでも福島産ではイメージが悪くて売れないのだ。
それ以前、顧客の一部から須藤さんは疑われていた。「合鴨米」はウソではないかと。その理由は須藤さんの作っているコメが相場より安すぎたためだったという。
「こんな価格で合鴨米を販売できるはずがない」というのが疑いの理由だった。
ぼくも確かに安すぎると思う。だってたかが一期売れなくなるだけで経営が困難になってしまっているのだから。「もっと稼いで数年はびくともしない経営基盤を作った方がいいと思う」と須藤さんに伝えた。
しかし今の価格でも値上げした価格なのだ。その疑いを受けてから、須藤さんは購入してくれている人たちにアンケートを取っている。どの程度の価格だったら納得できるだろうかと。その結果、値上げして今の価格なのだ。
須藤さんはコメを売るためのものとは考えていない。
「微生物たちが肥料を作り、合鴨たちがコメを育て、命を連続させていく。
その中に割り込ませてもらっているのが人間なのだ。
主人は自然界の命の循環だ。
その合間に入り込んでいるだけの人間が、 主人のような顔をするのはおかしいじゃないか」と。
須藤さんは今回の事故以前から脱原発派だ。その理由も当たり前のものだ。
「命の循環に生かされているのに、その命を殺してしまう原発はあってはならない」
と。
◆雁屋さんの想い
もちろん雁屋さんも出向いて須藤さんのコメと味噌を食べている。須藤さんは売れなくなって困ったときに、「このコメをマンガに書いてくれないか」と相談したそうだ。
しかし雁屋さんの答えは否だった。その理由はこのようなものだ。
「以前、ぼくのマンガで紹介したためにものすごく売れて、どんどん建て増しして生産するようになったが、ブームが去ると設備コストのためにつぶされてしまったところがある。本当にいいものはひっそりと残しておいた方がいい」と。また「ブームがあったせいで味が落ちてしまった例もあるから」と。
しかし雁屋さんはマンガではなく自分のブログの方では紹介しているし、ぼくを含めて何人かに支援のお願いをしていたりする。頑固だが、情の深い人なのだ。
(雁屋さんブログhttp://kariyatetsu.com/blog/1384.php)
マンガほど読まれていないブログでは、声を大にして言っている。このコメは「第一、大変に美味しい米である」と書いている。さらに味噌に至っては、須藤さんのところで、「これは絶品だ」と言っているのだ。ぼくがこの話を、他で詳しく
紹介しないのは、雁屋さんの気持ちを考えてのことだ。雁屋さん自身が広げすぎな
いように配慮しているのに、それをぼくが広げすぎてしまったら意味がないからだ。
◆はがき商品券の効果
それを適度に広げていくために、「合鴨米はがき商品券」というものを作り、ぼくが代表をしている「天然住宅バンク」で売り出した(この表現は正しくないが、
その理由は後述するとして、分かりやすさのためにこう書いておきます)。
この「はがき商品券」を最初にやってみたのは、天然住宅と組んでいる生産者
「くりこま木材」の「ペレットはがき商品券」が最初だった。
ペレットというのは木材かすを燃料とするために、ボールペンのインクカートリッジを半分に折ったみたいな形に固めたものだ。薬品は使わない。木材の中に含まれる「リグニン」という成分が、圧力をかけると溶けて勝手に固まるのだ。
もちろん薪やチップでもいいしペレットよりずっと安いが、都会で使うのには向かない。
場所を取ることと自動化が困難なせいだ。ペレットだと熱量も一定になり、自動供給ができるので普通のストーブのように使える。
しかしペレットにも不都合がある。これまた仲間である新潟の「さいかい産業」
は高効率なペレットストーブを開発し、ついに灯油よりランニングコストの安いペレットストーブを開発した。
しかしペレット自体が場所を取る、ペレットが一袋20キロの重さで運ぶのがきつ
い、近所に売っていない、という点だ。
そこで作ったのが「ペレットはがき商品券」だった。はがきそのものを送料込みで1300円で買ってもらう。本人は自宅内のペレットが減ってきたらはがきを投函す
る。
くりこま木材ははがきが届いたら、指定された場所にペレットを宅急便で届ける仕組みだ。おかげで自宅内にペレットを積み上げておく必要がない。宅急便だから、
自宅の玄関の内側まで届けてくれる。
これが便利だということで、ものすごく人気が出た。
もちろんぼく自身も使って
いる。
(写真)<ペレットはがき商品券>
(写真)<実際に田中優事務所で使っている、さいかい産業のペレットストーブ
とくりこま木材から送られてきたペレット袋(20kg)>
一方の生産者側も、先にお金が入る、生産量の見当がつくようになる、管理が簡単になるなどのメリットがある。この成功は、新たな可能性をも示している。
これまでの市場を見た考え方(「マーケットイン」という)は、価格競争しか考えてこなかったが、こなかったが、別な競争軸があるということだ。
人々がコンビニでモノを買うのは価格のせいではない。「利便性」にカネを出
しているのだ。他にも「物語性」や「健康」「フェア(公正性)」などの価値軸
を入れられるのだ。
ぼくはこれを「発展型マーケットイン」と呼んでいる。
この仕組みをすとう農産の合鴨米にも入れようと思ったのだ。
◆「コピーレフト」運動
このはがき商品券を考えたのは、今から10年以上も前のことだった。信州大学名誉教授をしていた故・玉井袈裟男さんとぼくは、なぜか一回会っただけで意気投合していた。玉井さんはわざわざぼくの自宅まで来てくれて、こういう仕組みを作らないかとさまざまなアイデアを子どものように語り合った。
そのときのひとつがこの「はがき商品券」だったのだ。
その頃すでに玉井さんは高齢だったが、ぼくらは悪だくみをする子どものように話し合い、玉井さんに誘われて長野から岐阜まで一緒に小旅行したりした。玉井さんのやや危ない運転で、あちこち見て歩いた。玉井さんが亡くなったことはずっと後
で知った。
考えてみると、ぼくらは二人で秘密基地の冒険話を企画するみたいに話していたから、他の人からはつながりがあることすら気づかれなかったのかもしれない。
その頃から重たくって運びにくくて必需品である「コメ・味噌・醤油」は、はがき商品券でやるべきだと話し合っていた。それが現実化したのは、正直なところイ
ンターネット、SNSが発達したからだ。そうでなければ広げられない。 玉井さん、実現したからね。あの世で会ったらまた画策しようね。
ただし法律的にはグレーな部分がある。というのは、ぼくが売ったとしたら、ぼ
くの側に消費税がかかる。そして「商品券」だとしたらプリペイド法の規制がかかるのだ。あらかじめ、政府に供託金を出さなければならない。
こんな規制があるから小さな事業が生まれにくいのだと思う。そこで、こういう法的な仕組みにする必要がある。真似されるときは、ここが重要なので気をつけてほしい。
ちなみにぼくの活動は真似されることを期待している。
なぜなら各地で経済を作っていくことが大事なので、独占するつもりがないからだ。
独占しない仕組みが「非営利」なのだと思っている。
坂本龍一さんに習ったのだけれど、こういう運動を世界的には「コピーレフト運動」と呼ぶのだそうだ。コピーライトの反対、自発的に著作権をフリーにする運動だ。ぼくはそれが好きなのだ。
まず、プリペイド商品券ではない仕組みにするために、売買契約は、はがきそのものを手渡す時点で完成する。はがきの効果は、届ける時点を特定するために
だけ使う「時期特定証書」とする。だからプリペイドではない。また、その売買契約は、直接生産者と購入者の間で行い、天然住宅バンクは販売しているのでは なく 「取り次ぎ」をしているだけとする。
結果、消費税はすとう農産にかかり、
天然住宅バンクにはかからなくなる。
そのために、はがき商品券は「合鴨米交換カード」としているのだ。
◆地域経済の活性化の道具に
この仕組みを図で示してみよう。天然住宅バンクに連絡して申し込んでおカネを振り込む。すると「はがき」が送られてくる。 おコメが欲しいと思ったらはがきを投函する。
するとすとう農産に届き、すとう農産が指定する場所に宅急便で送ってくれる。
そのときに味噌も買いたいと思ったとしたら、あらかじめその旨を伝えてもらえば、はがきと一緒にシールが付いてくる。そのシールを貼って送るとおコメと同時に味噌も同封されてくる。
味噌は値段が安すぎて、単独で配達すると配送コストが高くなりすぎてしまうからだ。
そこで「合鴨米交換カード」と一緒に宅急便で送る形にした。
このシールの名前は「お味噌シール」という。こういうネーミングって好きだな。
この仕組みは自分で消費するだけでなく使うことができる。実際、ウチでもはが
きを買って、はがきを出して世話になっている人の家に届けてもらった。はがきの表には最初にはがきを買ってくれた人から順に、次の人の名前を入れられる欄がある。この欄の最後の人に送られていく仕組みだ。だから上の欄にぼくの名前を書いて、次の欄に世話になった人の住所・氏名を書けば、そちらに送られていく。
(写真)<合鴨米交換カード・表>
(写真)<合鴨米交換カード・裏>
これを使うと、世話になった人へのプレゼントにも使えるし、はがきそのものを地域通貨のように回すこともできる。少し心配になるのが偽造だ。ところがインタ
ーネット時代だから、私たちの購入者のリストとはがきのナンバーリングの数字は、
すとう農産に毎回メールで即座に送る。お味噌シールも同じだ。
もし心配だったら、
はがきに実印を押すといい。ただし印肉ではなく大根汁で。あぶり出しになるので、
まず偽造することはできなくなる。
こんな仕組みを使えば、地域活性化に役立てることもできるし、生産者を支えていく仕組みとして使うこともできる。なかなかいい仕組みではないだろうか(自画
自賛で申し訳ないが)。
◆すとう農産を支持したい
この仕組みがすとう農産の合鴨米に適切だと思ったのは、そのこだわりによく合うからだ。須藤さんは、この合鴨米を精米してから一か月以内に食べてほしい。
ところが普通の定期購入だと、足りなくなったり余ったりして賞味期限と合わなくな
ることがある。そこでいつも新鮮な状態で食べてもらいたい須藤さんにとっては、
とてもいい仕組みになるのだ。須藤さんにこのはがきの仕組みごと譲ってしまおうかと考えている。
もしよければ、このはがき商品券(いや正しくは「合鴨米交換カード」)を使っ
てみてほしい。
そして自分たちの地域にも導入してほしい。
そうやってすべての地域が豊かになれば、なにも海外に頼らなくたって私たちは地域で生活できるよう
になるはずだ。
ぜひやってみてほしい。
★合鴨米交換カード入手方法&商品ラインナップ★
http://tennenjutaku.seesaa.net/article/262014196.html
■商品ラインナップ
合鴨米(送料込) 2kg → 3000円 5kg → 5000円 10kg → 9000円
お味噌シール 1kg → 1000円
■お申し込み先
【お名前、連絡先、お送り先、購入希望商品】を記載の上、天然住宅バンクまで
ご連絡ください。
お問い合わせも天然住宅まで
メール:info@tennenbank.org
電話番号:03-5726-4226
FAX:03-3725-5652
■下記いずれかの口座にご入金ください。
西武信用金庫 中目黒支店 普通 2039060 天然住宅バンク(テンネンジュウタクバンク)
ゆうちょ銀行
天然住宅バンク テンネンジュウタクバンク
店名:目黒柿ノ木坂 00110-2-651692
※他行等からの振込の場合
店番:〇一九(ゼロイチキュウ)店(019) 当座 0651692
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★ ペレットはがき商品券 ★
1900円/20kg送料込み (2015.5現在)
http://tennenjutaku.seesaa.net/article/187546283.html
★ すとう農産 ホームページ ★
http://www9.plala.or.jp/sutou-nousan/