2018年12月27日

『「原子力損害賠償支援機構法」の見直しと未来 』

 「原子力損害賠償」とは何なのか。

 その見直しが国会で進んでいるが、その衆参附帯決議では、以下のように決議されている。


・国民負担の最小化を図ること。

・「抜本的見直し」に際しては、原賠法3条の責任の在り方、7条の賠償措置額の在り方等国の責任の在り方を明確にすべく検討し、見直しを行う。

・損害賠償交付金は、原子力事業者が、原子力損害を賠償する目的のためにだけに使われること。


 とされている。

 ところがこの賠償法で想定されている賠償額はわずか1200億円で、2016年12月に国が閣議決定した東電負債見積額でも22兆円(損害賠償費用8兆円、除染・貯蔵等費用6兆円、事故炉処理等費用8兆円)だ。わずか183分の1でしか予定していない。

 足りない分をどうするかというと、「事故前には確保されていなかった分の賠償額の不足金は全需要家の負担」として、負担金を「電気料金及び託送料金から回収する」と決定している。


 その結果が今の事態だ。放射能の汚染度の高いかつて避難を命令された地域でも再び住めるとされて「帰還」可能とされた。ところがその地域は本来の年間1ミリシーベルトまでの被ばく量を大きく超え、年間20ミリシーベルトとそれまでの基準の20倍とされてしまっている。


 原発作業員がそこに入るためには、「まず手袋と靴下を二重三重にして、その上から長靴を履く。着るものは使い捨ての汚染防止服。その上から厚手のカッパを羽織ることもある。呼吸から放射性物質を取り込まないよう、顔には防毒マスクのような形をしたマスクを着ける。さらに放射線量が高い場所では、線源に鉛シートをかぶせて作業員の被曝を抑える」汚染線量なのだ。


 この汚染地には子どもの帰還も前提にされている。しかし帰還させられる地域の放射線量はレントゲン技師などの被ばく規制値を超えており、その場合なら18歳未満の子どもや妊娠可能性のある女性は除かれる。これはとてつもない被ばくを強いることになる。そのため国連人権委員会はこの被ばく線量を1ミリシーベルトまでに規制するよう求めたのだ。


 放射能の影響は一定以上から被害が出るという「しきい値」がなく、一定量を被ばくした集団には一定の確率で被害が出るものと国際的には考えられている。
これを「確率的影響」といい、どの人が被害に遭うかはわからないが、集団では被ばく量が増えると確実にがんなどの疾病の確率を高めていくというものと理解されている。


 さらに現実を見てみると、福島原発事故後わずか6年間で、胃がんなどに統計的に有意な増加が生じてしまっていた。

https://level7online.jp/?p=1744&fbclid=IwAR0FL8Ept7mBrPoMvmooH2JbthYa70zUVjfDZjMm1M3ARnCkeT8pJJqRTO0「全国がん登録」最新データ公表 福島県で胃がんは3年連続で「有意に多発」していた)



 さすがにこの事態に際して国際人権委員会はよしとしなかったのだ。ところが日本政府はいろいろと反論して従わない。それに対して人権委員会はいちいち反論すらせずに勧告を出した。


 こうした被害に対して損害賠償がされない。避難する費用の補償もされなくなったので汚染地に帰還しなければならない。汚染を避けて避難することを賠償しないので、人々は自主避難しなければならない。つまり強制保険すら加入していないクルマに衝突されたので、自分で何とかしなければならないのが日本の法制度なのだ。

 クルマなら運転してはならないが、原発ならできてしまうのだ。それが現状の「原子力賠償賠償支援機構法」の現実なのだ。それが改正されるはずだったのに、現状ではそのままに放置されそうになっている。なぜか。電力会社の利益を守るためだ。人々の「命の値札」はタダのままにして、その機械だけの賠償保険にしようとしている。


 こんな政府しか持てない国民は不幸だ。しかしその国民たちの選択の結果であるとも言うことができるのだ。私は無保険でクルマを走らせるのが禁止されるように、原子力も無保険で運転すべきでないと思う。それは当たり前のことだと。この先の福島原発の処理費はさらに増大する。どれほどの処理費・賠償費が必要になるのかわからない。それを改正するこの機会に、そのままの額に押し留めようとするのが今の政府だ。


 この「改正」の機会を徒過してはいけないだろう。あなたの命の値札はタダのままでいいのか。このまま無保険で暴走させて良いのか。もし「許せない」としてきちんと改正させるなら、原子力は保険も掛けられないほど高いつくものであることが明らかになるだろう。原子力は経済的にも合わないものになる。つまり経済合理的に止めることができるのだ。

 もともと日本で初めて原子力発電所が作られたとき、その保険をイギリスの「ロイズ」保険会社に掛けようとして断られている。地震・津波など天災が多い日本に掛けられるはずがないだろうという理由だった。そこで賠償する額を小さくすることで成り立たせた。そのツケが今ごろになって明らかになったのだ。


 損害保険ですら成り立たないリスクは対処できない。今、地球温暖化によってその被害の賠償に損害保険が成り立たなくなってきているのと同じことだ。


 損害保険すら成り立たないものには隠された賠償されない被害がある。あなたの命の値札がタダでないのならば、賠償されければならない。原子力賠償保険が整備されないことには私たちの命はタダ取りできるものになってしまう。だから正に人権の問題なのだと思う。もう合理的に成り立たない原子力はなくさなければならない。








2018.12.27発行 田中優無料メルマガより

2018年12月7日

『 ゴミ問題の本当のこと』

2018.12.6発行田中優無料メルマガより

□◆ 田中 優 より ◇■□■□


『 ゴミ問題の本当のこと 』(2013.2.1)


 本当は「汚染がれき」問題の話をしたいのだが、その前に日本のゴミ問題がどうなっているのかを話さないと分からない。

 そこで今回はゴミ問題を中心に話をしたい。そのゴミ問題が理解できると、「汚染がれき」問もどう解決すべきなのか、理解できるのではないかと思うからだ。

 「汚染がれき」の話は次回にさせてほしい。まず前段から理解してほしいと思うのだ。



 ライフスタイルの話じゃないゴミ問題 

 まずゴミといえば多くの人が、「リサイクルしよう」「ライフスタイルを改善しよう」と言う。しかしゴミ問題はライフスタイルの問題ではない。絶対量が違うからだ。

 国内のゴミのうち、家庭などから出る「一般廃棄物」は9分の1なのだ。一般廃棄物の8倍も産業廃棄物が出されている。青森でも瀬戸内の豊島でも、問題を起こしていたのは産業廃棄物だ。

 その絶対量が多い上、一般廃棄物の処理費とは比較にならないほど安く処理させているからだ。処理費を値切るために不法な投棄がなされている。

 しかも今、家庭などから出る「一般廃棄物」と言ったのには理由がある。
一般廃棄物といえば家庭のゴミと思いがちだが、家庭「系」なのだ。そこには小規模な商店やオフィスからのゴミが混じりこむ。

 東京では一般廃棄物の実に3分の2までがオフィスなどの事業系のゴミだった。
東京のゴミ問題は解決したと言われるほど抑制されたが、その理由はそれら事業系のゴミを有料化したからだった。家庭だけで言うなら、海外と比較しても決して多くはないのだ*1。


*1 http://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/dce89290372db9da6a23b71351fd8570






たとえばあるHPでは、以下のように答えを出している*2。

<一人あたりの一日のごみの排出量>

* アメリカ合衆国 約2.0キログラム
* オーストラリア 1.9キログラム
* ノルウェー 約1.7キログラム
* オランダ 約1.5キログラム
* デンマーク 約1.5キログラム
* オーストリア 約1.4キログラム
* ハンガリー 約1.4キログラム
* カナダ 約1.3キログラム
* イギリス 約1.3キログラム
* イタリア 約1.3キログラム
* フランス 約1.3キログラム
* ベルギー 約1.3キログラム
* ドイツ 約1.3キログラム
* ルクセンブルク 約1.3キログラム
* スペイン 約1.1キログラム
* フィンランド 約1.1キログラム
* 日本 約1.1キログラム
* 韓国 約1.1キログラム
* ギリシャ 約1.0キログラム
* スウェーデン 約1.0キログラム
* ポルトガル 約1.0キログラム
* スロバキア 約0.9キログラム
* トルコ 約0.9キログラム
* ポーランド 約0.9キログラム
* メキシコ 約0.8キログラム
* チェコ 約0.8キログラム

*2 http://www.haikisurumaeni.jp/hitori.html (図はメルマガにて公開中)


 しかもこの数字は家庭「系」のゴミだから、オフィスや商店のような事業系のゴミも含んでいるのだ。たとえば東京ではゴミ問題が言われた1990年から2000年まで、事業系のゴミが一般廃棄物の3分の2を占め、しかも産業廃棄物はその8倍もあった。つまり純然たる家庭のゴミは、ゴミ全体の27分の1しかなかったのだ*3。

*3 




 それなのに「一人ひとりの心がけ」なんて言われるのは誤りだ。いくらゴミを出さなくしても、27分の26が残る。

 それを「ゴミ問題の解決」とは言わないのだ。ゴミを有料化した結果、事業系のゴミが減った。家庭のゴミはとっくにリサイクルしていたし、日本人はおそらく世界一真面目な国民性だから、そこらに捨て散らかしたりしない。


 リサイクル先進国と言われるスウェーデンですらこの有り様だ*4

*4 (メルマガにて公開中) スウェーデンのヨーテボリ市内で撮った写真(著者)


 その結果、日本の一般ゴミ量は上の一覧よりさらに減って、いまやピークだった2000年と比較して13%も減らして、1.0キロまで減っている*5。


*5 http://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/dce89290372db9da6a23b71351fd8570より




 ゴミの正体は紙とプラスチック 

 ゴミが増加したのはおおむね1985年頃からだ。毎年東京都内に札幌市一市分のゴミが増加していた。

 しかしどうにもおかしい。当時の生活感覚として、ゴミを増加させた気がしないからだ。そこで調べてみた。


 日本国内のゴミ増加量に対して、「生産されながら、リサイクルされなかった紙ゴミ」分、すなわちゴミにされた紙ゴミは、どれぐらいあるのかグラフにしてみた。それがこのグラフだ*6。


*6 初出 拙著グループKIKI「どうして郵貯がいけないの/北斗出版」1993年
 (メルマガにて公開中)



 なんと増加したゴミのうち、リサイクルされずに捨てられていた紙ゴミ増加分が約7割を占めている。「ゴミ問題じゃなくてカミ問題だな、こりゃ」と思った。


 しかしさらに調べるのがぼくの趣味だ。同時期の紙生産量の増加分を調べてみた*7

*7 初出 拙著グループKIKI「どうして郵貯がいけないの/北斗出版」1993年
 (メルマガにて公開中)




 このグラフは二つのデータを入れているので説明すると、まず棒グラフが生産された紙全体の増加量だ。

 特に1987年からは著しく増えている。もうひとつの折れ線グラフは、さまざまある紙の種類の中から、特に増加が顕著だった段ボール用の原紙、新聞用の巻紙、OA紙の三種類の紙の生産増加分だけを示したものだ。

 よく見ると紙の増加分の棒グラフを三つの紙の生産増加量が上回っている。なんと他の紙の生産は減少している中で、この三つの紙だけが増えていたのだ。


 当時、「ポケットティッシュを受け取らないようにしよう」という運動もあったが、実際にはポケットティッシュの増産が問題なのではなかった。特に増加分の半分を占めているオフィス・オートメーション用の紙、コンピューター用紙に代表されるOA紙の生産増加が問題だったのだ。

 折しも「ペーパーレス社会」などと言われたコンピュータ社会の始まりの時期、まだ家庭にコンピュータが入る前のことだ。

 家庭に入るようになったのは、ウインドウズ95が発売されて、爆発的にパソコン時代に入ってからのことだからだ。その頃言われた「ペーパーレス社会」というのは偽りだった。そう言いながら製紙会社は紙の増産を進めていたのだから。


 そう、紙ゴミを出していたのは家庭ではない。オフィスの紙ゴミが問題だった。
 しかも同じ会社でも、工場から出るゴミは産業廃棄物として自費で処理しなければならないのに、オフィスから出されるゴミは「家庭系」一般廃棄物として、ゴミの日にタダで一緒に運んで行ってもらえたのだ。だからオフィスからのゴミが増えた。

 これがゴミ問題の実際だった。

 もうひとつ、ゴミ増加分の1割を占めたのがプラスチックゴミだった。
特に増やしたのが「ほかほか弁当」や「コンビニゴミ」、そして「ペットボトル」だった。それまでは通い箱のお弁当だったのが、使い捨ての容器に変わった。ビンがなくなり、ペットボトルばかりになった。


 つまるところ、ゴミ処理費を負担しない企業が、ゴミを増やしたのだ。一方の通い箱の弁当は、自社で洗浄し、ゴミは発生させなかったのに。ちゃんと処理費を負担させていたなら、日本にゴミ問題は起こらなかった。


 ところがそこにはウソの答えが用意されていた。
 それが一億総懺悔、みんなの「ライフスタイル論」だった。



 日本だけに特殊なのは「焼却主義」 

 日本のゴミ問題は、産業廃棄物と事業系ゴミの多さが問題だった。要は負担をきちんとさせればゴミ問題は解決する。きちんと事業者はゴミ処理費を払い、メーカーは生産する時点で処理の責任を負えば、いい加減なモノなど作れないのだ。

 ところがいつもライフスタイル論に責任転嫁される。そして真面目な人ほど「まずは足元から」と、そのロジックにはまって出られなくなってしまうのだ。

 ゴミ量の多さは他国と比較して突出したものではない。いや正確に言うなら、他国よりは少ないのだ。


 では日本に突出したゴミ問題は何だろうか。

 それが「焼却主義」なのだ。


 日本ではとにかくゴミと言えば焼却しようとする。再び他国と比較してみよう。
(*8)のグラフを見てほしい。

*8



 他国がゴミ焼却に頼るのは10~30%程度、スイス、スウェーデン、デンマークは焼却が多くてゴミの50%ほどになっている。ところが日本は74%、抜きん出てゴミを焼却処理している。

 しかも日本ではゴミ発生量は他国より少ないのに、ゴミの焼却比率が74%と突出しているために焼却量が多い。


 そして面白いのが(*9)のグラフだ。

*9 



 ゴミ焼却場の一施設当たりの焼却量は大きくないのに、対人口比ではベルギー、アイスランドに次いで第三位だ。しかしベルギー、アイスランドは人口の少ない国だ。

 日本は人口が多いのに、人口に対してゴミ焼却場が多い?つまり津々浦々にまんべんなくさほど大きくないゴミ焼却場があるということだ。


 ゴミ問題が言われた時に、「域内処理」と言われた。つまり「他の地域にゴミ処理を押し付けるのではなく、自分の地域で処理しなさい」というものだ。自分のゴミすら処理しようとしなかった杉並区は論外として、ゴミの広域処理をすべきではないというのは理屈が通る。自分の見えないところに運べばいいというのは無責任だからだ。


 あれ? 環境省は確かにこう言ってきたのだ。「ゴミの広域処理はすべきでない」と。今回の「汚染がれき」処理と、全く逆のことを言ってきたのだ。


 でも不思議に思うことがある。では他国は、焼却しない代わりにどう処理しているのだろうか。

 それも先ほどの*8に載っている。


 焼却に代わる処理方法は、「リサイクル」「堆肥化」それに「埋立て」なのだ。日本はリサイクル率は高いものの、ゴミの減容化(カサを減らすこと)を進めるために焼却処理ばかりを進め、堆肥化に至ってはほとんどない状況になっている。しかも堆肥にするには事業系の有害ゴミが入り込む可能性が高く、とても有機農家が喜べるような質になっていない。


 質の低いゴミ処理、焼却主義、しかも各地に数限りなくゴミ焼却場を建てることは、産業廃棄物と処理プラントメーカーが歓迎する処理方法になっていると言えるだろう。

*8,9 http://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/dce89290372db9da6a23b71351fd8570



 ゴミが増えたのは世界的現象 

 そのゴミ問題は、日本だけの問題ではない。世界的に、特に先進国に大きく起きている問題なのだ。

 その理由は何か。実に簡単だ。途上国からの資源が安すぎて、“リサイクルして再利用するより、使い捨てた方が安い”からだ。誰だってリサイクルに手間をかけるより、そのままタダで捨てられるならそちらを選ぶ。


 まさにそうした事態が先進国で進んでいた。日本でも、産業廃棄物の処理費は多くの場合、一般廃棄物処理費用の5分の1~10分の1程度でしかない。それどころか事業系一般廃棄物は、有料化が進められるまではタダで処理してもらえたのだ。それと比較したら、リサイクルなんて面倒でコストのかかることをしたがるはずもない。


 なぜゴミ問題は世界的な事態まで発展したのか。それが途上国の貧しさだった。
途上国を正確に言うと「工業発展途上国」になる。つまり「工業製品」が作れない国なのだ。では工業製品以外に売れるものは何があるだろうか。「知的所有権」、これもまた先進国がそのほとんどを支配している。


 すると途上国に残されるのは「原料」だけだ。いわゆる「一次産品」だけしか輸出品がないのだ。しかしその原料の価格は先進国のマーケットで決められる。その結果、原料価格は中国が買いまくった一時期を除き、下がり続けていたのだ。

 ゴミとは、ゴミ処理費と原料価格の対比でどちらが安いかによってゴミになったり資源になったりする。ゴミと資源は同じものを値段で呼び分けているだけなのだ。途上国が重債務にあえぎ、輸出しなければ返済ができなくなれば安くても売らざるを得ない。しかも債務にあえぐ国の数は100カ国を超えるというのに、一次産品の種類はロイター指数で30程度、日経商品指数でも40程度でしかない。


 世界の債務国が同じ品を輸出して返済しようとしたらどうなるか。

 そう、供給過剰で値崩れしたのだ *10、11。

*10(メルマガにて公開中) レスターブラウン、ワールドウォッチ研究所「地球環境白書1990-1991」
*11 著者作成 (メルマガにて公開中)




 こうして世界中できちんとリサイクルするより、税金に負担させて焼却・埋立てしてしまった方が安いから、ゴミ問題が発生したのだ。途上国を貧しくさせたのは、世界銀行やIMFによる「構造調整プログラム」という指導・強制、そして各国の思惑で支えられた「政府開発援助(ODA)」だった。


 悲しいことに、人々は援助を歓迎するが、本当に必要な援助とは何なのかを知らない。その結果、いいことをしようとして悪い現実を届けてしまっているのだ。

 ゴミ問題は、世界的に起きた途上国資源の価格低下によって起きた事態だ。
日本だけの問題ではない。


 新品価格が安すぎれば、リサイクル品は買ってもらえず、ゴミにされてしまう
のだ*12。
*12 著者作成 (メルマガにて公開中)





 露呈した「域内処理」のウソとウソくさい「絆」 


 日本には世界一数多くのゴミ焼却場がある。小さく、熱効率も高くないために発電にも使えないレベルの焼却炉が、世界の7割と言われる数がこの日本にある*13。


*13 OECDデータ、環境省データなどを元に著者作成 (メルマガにて公開中)


 焼却炉がこれほど作られたのは「域内処理」が理由だった。しかし今回の「汚染がれき問題」では、日本中に「絆」という美名の元にゴミが日本中に撒き散らされた。ということは、環境省の言ってきた「域内処理」、「ゴミの広域処理はすべきでない」という言葉も、実際には本気でなかったのだろう。


 では、なぜそう言ってきたのだろうか。

 結局のところ、「域内処理」はゴミ焼却炉メーカーにたくさん焼却炉を作らせるための方便だったのだのだろう。


 そして「汚染がれき」が日本中にばら撒かれた。そのときには「域内処理」は語られなかった。被災地では「地域で処理した方が、地域経済の活性化につながるのに」と言われたにも関わらず。


 しかも福島県南相馬市では、市がより汚染レベルの低い宮城・岩手両県の「汚
染がれき」を受け入れて、壊れてしまった防潮堤を作りたいと計画したのに、被災地同士でのやりとりは認めていないと拒否されてしまっている。


 本来、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」は完全に分離される。その両者は一切混じりこまない。それは排出者責任を明確にするためだ。ところが大規模災害では、「これは工場のゴミ、これは家庭のゴミと分別することが困難である」として、阪神淡路大震災以降、まとめて一般廃棄物として処理することにした。

 しかし実際には阪神淡路大震災でも、最後に所在が不明で処理できずに困る時点までは、一括で全部を「一般廃棄物として処理する」扱いはされていなかった。


 なぜきっちり分けるかと言えば、排出者責任に加え、処理費用のレベルが大きく違うからだ。家庭などから出される一般廃棄物は自治体の税金で処理され、かなり徹底的に費用をかけて処理されている。


 しかし事業者自身の費用によって処理される産業廃棄物は、非常に厳しく買い叩かれる。その結果、産業廃棄物の処理費は、一般廃棄物処理費の5分の1~10分の1程度しか払われていないのだ。

 ところが今回の「汚染がれき」問題では、すべて“一般廃棄物扱い”だ。
それなのに「絆」の広域処理として、産業廃棄物処理業者が扱えることになった。つまり産業廃棄物業者にとって、5~10倍も高い費用を受け取れる、とても美味しい仕事になったのだ。


 こうして従来型の「焼却主義」の一般廃棄物処理に産業廃棄物事業者が入り込み、「域内処理の原則」は捨てられた。ところが問題はそれだけにとどまらなかった。今回の「汚染がれき」には、特にセシウムを中心とする放射性物質の問題があったからだ。

 それを軽視し、デマまで流して、環境省は環境をダメにし、人々を不健康に追い込む官庁へと生まれ変わった。その話は、次回のメルマガに譲らせていただきたい。



 「燃やさないゴミ処理」は可能だ 



  解決策を提示せずに終わってしまったのでは、田中優の名がすたる。
そこで解決策を示しておこう。


 まず最初に、2000年時点での東京都のゴミを分析する。家庭ゴミには「燃えるゴミ」「燃やさないゴミ」「粗大ゴミ」がある。

 圧倒的大部分を占めるのは「燃えるゴミ」だが、その半分以上が紙ゴミで、次に多いのが「厨芥」と呼ばれる「生ゴミ」、残りは木材とプラスチック、わずかに繊維が占めている*14左


 紙は濡れやすい。しかも三分の一を占める生ゴミはほぼ8割が水分だ。その結果、ゴミの水分率は5割程度になる。これが「燃えるゴミ」なのか?特に紙がリサイクルされてしまった地域では、燃えるゴミは単独では燃えず、重油を加えて燃やしている。このおかげで東京都の市部ではどこも最大の二酸化炭素排出源がごみ焼却場になっているのだ。

 「燃えるゴミ」ではなく、「燃やされるゴミ」だろう。

 さらに粗大ゴミや燃えないゴミを加えると、全体では(*14右)のようになる。

*14 東京都資料から著者作成 (メルマガにて公開中)



 さて、これをよく見てほしい。まずは円グラフの左上に「リサイクル可能なゴミ」が入っている。

 これはもちろんリサイクルすればよいからゴミに加えなくてよい。続いて最大部分が紙なので、もちろん紙としてリサイクルすればよい。繊維も同様だ。生ゴミとごっちゃにしなければ、それもまたリサイクルできる。例外的に「他の物質を合成してしまった紙」などは、そもそも作らせないことで解決すべきだ。

 ある雑誌が本の中に印画紙を挟み込んだため、リサイクルペーパーを台無しにしたことがあるが、その責任は雑誌生産者にあることは当然の話だろう。


 次に多い厨芥(生ゴミ)は、空気に触れないところで微生物に分解させると「メタンガス」になる。別名「都市ガス」だ。ガスとして使うことができる。残る生ゴミは液体状の堆肥(「液肥」という)になり、農業で堆肥として使えるから、最後に何も残らない処理ができる。

 もちろん「有害化学物質を入れさせない」などが必要になるが、現実に福岡県大木町に導入されている。その町では生ゴミをガス化させたことで、なんと大木町のゴミ全体の44%を減らしてしまった*15。可能なのだ。


*15 大木町のバイオガス施設、ここでは糞尿もガス化している。著者撮影。





 そして木草はそのまま燃料にもできるし、ペレット化すれば燃料として移動性の高いものにすることができる。

 さて、ここまででゴミの81%が燃やさずに処理できる。残りは「その他」の4%とプラスチックの15%だけだ。「その他」には複合合成物質が多くを占めるはずなので、すでに述べたとおり作らせない規制をすべきだ*16。


*16 ゴミは燃やさず資源にできる






 では最後に残る「プラスチック」をどうしたらいいのだろうか。



 プラスチック問題を解決する 


 プラスチックには特徴がある。化学物質を除けば、紫外線以外ではほとんど分解しないほど安定している点だ。便利だから、ありとあらゆるところに使われてきた。しかも原料は石油だからふんだんに安く存在する。

 プラスチックを石油戻せるプラントもすでに作られているのだが、石油が安いために使われない。したがってゴミとして燃やされてしまっている。


 しかしこれは将来世代から考えたら、とんでもない損失だ。将来石油は否が応でもなくなる。その時には石油が欲しくて仕方ないのだが、それを作ることのきるプラスチックまで、過去の世代の人たちはゴミとして焼却してしまった。残しておいてくれれば使えたものを。


 そもそも今、リサイクルされているものには理由がある。今すぐ別なモノとして使え、経済的に成り立つからなのだ。しかし、そうでないモノは燃やされてしまっている。

 時間軸で考えてみるとよくわかる。リサイクルされているモノは今すぐ使えるもので、将来使えるモノは燃やされてしまっているのだ。だから三つ目のリサイクル方法がある*17。
*17






 今すぐ使えないモノは、安全・確実に保管しておけばいいのだ。


 幸いプラスチックは紫外線以外では分解されない。だから土の中に埋めておけばいい。いずれ枯渇して価格がつくものなら、それまでの間、保管しておけばいいのだ。それは難しくない。高知市ではプラスチックゴミに圧力をかけて大きなペレットのように成形し、そのままネットに入れてゴミの処分場に埋めている。


「将来、プラスチックが売れるようになったらどうします?」

「そんときは掘り出して売っちゃえばいい」

 そう担当者の人は言った。


 こうすれば最後に残ったプラスチックですらリサイクル可能になる。ゴミを燃やす必要はないのだ。しかも日本人だけは、一銭にもならないのにリサイクルに協力してくれる人たちだ。そうすればゴミ焼却場は一切必要なくすることができるのだ。


(次号はこれに続けて「汚染がれき」問題を書きます)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・  メルマガ本文はここまで  *:.。..。.:*・゚ *


追記:

中国では昨年(2017年)末からプラスチックの輸入を禁止しました。
https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20180716-00089455/


今まで中国に輸出をしていたアメリカは困り、その後マレーシアに輸出。
するとマレーシアは大反発をして一切の輸入を止めました。
https://globe.asahi.com/article/11912576


それによってプラスチックゴミの行き場が失われ、各国でプラスチックゴミが積みあがった状態になってしまっています。



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今回は、2013.2.1発行 第32号 『 ゴミ問題の本当のこと』 です。

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