2018年7月31日

『 なぜ甲状腺がんが「原発事故の影響だ」と言えないか 』

 原発事故があって、「甲状腺がん」を引き起こすとされる放射性ヨウ素が放出された。しかしその調査委員会では「事故の影響だと認められない」としたままだ。世界的に「放射性ヨウ素と甲状腺がん」との因果関係は認められているのに、なぜ認められないのか。

 この曖昧な判断は、政府に忖度した結果ではないかと疑問を持つ人も多い。
なにより確率論で言えば、通常の小児甲状腺がんが「100万人当たり一人か二人」なのに、福島の一巡目の集団検診調査で、38万人の中で116人の子どもに「甲状腺がん・またはその疑い」が発見されたのだから。しかしそこには別な事情があった。

 1986年のチェルノブイリ原発事故の頃には、今ほど精度の高いエコー検査装置はなく、もともと小児甲状腺がんは発生確率が低すぎて、症例を診たことのある医師もほとんどいなかった。しかし福島までの間に症例も積み重なり、エコー装置自体の精度も向上した。そのことによって事態は解明されるどころか、逆に判定困難になってしまったのだ。


 中でも重要な事実は、
「潜在がん」の存在だ。患者にエコーを当てて調べると、実に約30人に1人の確率で「潜在甲状腺がん」が見つかる。「一万人に一人か二人」ではなく、「30人に1人」だ。ところがこの「潜在甲状腺がん」は不思議なことに、そのまま悪化も重篤な症状も招かず、遺体解剖した際に見つかるだけのものだ。
その「潜在甲状腺がん」を集団検診で発見してしまった可能性があるのだ。


 誤診ではなく確かに「甲状腺がん」なのだ。ところががん細胞として増大せず、他へ転移することもない。こんな「潜在甲状腺がん」を含めてカウントしてしまった可能性があって、第一回の集団検診で38万人の中に110人も見つけてしまったのだ。専門医も少なく、検診に駆り出されていたのは非専門医であり、エコー検査が急激に進化し、それ以前と比べて鮮明に映し出したことも災いしたのかもしれない。


 もう一つ異なる点は、チェルノブイリの場合と比べて発症が早すぎる点だ。
少なくとも事故後4年程度経過してから発症するはずなのだ。

 チェルノブイリではそうだったし、福島の場合はさらにヨウ素の被ばく線量が低い。チェルノブイリは内陸地でヨウ素摂取量の不足する地域であったが、海藻などの海産物の多い福島ではヨウ素が不足する状況ではない。それなのに福島の発病の方が多いというのも合点できない。

 さらに遺伝子情報まで検査した結果では、チェルノブイリの場合が「レットPTC」という部分に遺伝子異常が見つかるのに対して、福島では「BRAE(ブラフ)」という部分に出ている。遺伝子が壊された部位が異なっているということは、原因が異なる可能性がある。

 要は「世界的に初めての優れた検査装置での集団検診」がなされ、その結果、その子ども達の中に、「潜在がん」をたくさん見つけてしまったのではないかということだ。危険性のない「潜在がん」と違って、チェルノブイリ型のがんは増殖が早く、他の器官にも転移しやすい。だからチェルノブイリ型なら早期の対策が必要となるのだ。そして切除手術をした子も多い。自分ががんである可能性を抱えて生きることは、想像しがたいほどの不安と苦痛をもたらす。予後に問題がないとはいえ「潜在がん」もまたがんなのだし。


 そして「切除手術」を受けた場合はその後も大変だ。甲状腺は成長ホルモンの分泌を司っているので、一生甲状腺ホルモンを摂取しなければならない。切除後に「だるい、疲れやすい」などの症状も出る。こうした中で第二巡目の集団検診が行われた。事故から4年後、時期的にはチェルノブイリ型ならがんが急増し始める時期だ。受信者は27万人、この時期にも71人ががん・がん疑いとされ、そのうちの65人は一回目の検診では「問題なし」とされた子たちだった。


 医師たちはこうした現実のはざまで、判断できない状況に置かれた。もちろん現実に福島原発からのヨウ素は浴びたし、その影響を否定してはいない。しかし断定できる状況にないのだ。この中から「潜在甲状腺がん」だけを外すことも困難だ。外したとすると将来にがん化したときに取り返しがつかないのだから、カウントせざるを得ないだろう。

 新たに増加すると見込まれるのは、福島原発事故から放出された自然界に存在しなかった人間が作り出した「人工放射性核種」の「放射性ヨウ素」によるものだが目印はない。


 さて、「どう考えたらいいのか」に悩んでいるのが現時点だ。そんな中、福島県の小児科医のグループが、不安を助長するとして「集団検診の中止」を訴えた。しかし中止されると自分がどちらの甲状腺がんかわからないまま、定期検診が受けられなくなる。
 こうした中、間もなく三巡目の集団検診の結果が出る。


 こうした「潜在がん」は、前立腺にも多い。しかも一般的に、体内には毎日5000個ものがん細胞が生まれてくる。それらは体内の免疫細胞によって退治される。特に「ナチュラルキラー(NK)細胞」によって破壊される。ところがこの免疫細胞の管理・調整は「腸内微生物」が指揮を執っていて、人の意思に基づくものではないのだ。

 免疫コントロールに特に重要なのが酪酸菌が食物繊維から作り出す「Tレグ」という化学物質で、免疫が過剰な攻撃をしないようにコントロールしている。


 その元になるのが水溶性の食物繊維(コンニャクや豆に多い)で、もう一つのがんを抑制する機能があるのが植物の持つ「フィトケミカル(植物の化学物質)」だ。潜在がんならこれで対処できる。


 ところが二つが混在しているのだ。しかもチェルノブイリ型甲状腺がんだったらすぐに対処しないと危険だ。これが甲状腺がんを原発のせいと判断できない理由なのだ。


 対策として効果があるのは、「食物繊維とフィトケミカル」だ。

西洋医学の父とされるヒポクラテスは、意味深い言葉を残している。
「食べ物で治せない病気は、医者でも治せない」と。


 しかし当時は原発などなかったのだ。人間の作り出した「人工放射能」が新たな甲状腺がんを作り出し、その現実の前に医師たちは立ち尽くすばかりなのだ。







2018年7月29日

賃貸で住める天然住宅もあります!~杉並区『久我山エコマンション』~

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2018年7月27日

『原発に頼らない社会へ』~原発がなくても 電気は足りる~ 講演概要

2018年2月、グリーンコープ共同体様主催の2017年度脱原発学習会が開催され、田中優が講演をさせて頂きました。

その講演をまとめたものが、グリーンコープ共同体の機関紙「共生の時代」に掲載されました。

図は、こちらのPDFからご覧いただけます。
http://www.greencoop.or.jp/kyousei/pdf/kj201804.pdf




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田中優
『原発に頼らない社会へ』


▼原発がなくても 電気は足りる


 政府や大手電力会社は原発がないと電気の安定供給ができないと言っているが、電気が足りなくなる恐れがあるのは、真夏の平日昼間、年間数時間だけ。しかし、日本各地の電力会社はネットワークで結ばれピーク時には補完し合うため、電気が不足することはない。電力不足と騒がれ大飯原発を再稼働した2012年さえ余剰が出たほどで、再稼働は全く必要なかった。

 ピーク時の電気を消費しているのは大半が事業者で、家庭用はわずかだ。日本の家庭は先進国の中で最も省エネが進んでおり、家庭よりも事業者が消費を減らす必要がある。

 ピーク時の電力消費を減らすのは難しいことではない。アメリカのカリフォルニア州では、電気の消費量が多い時間帯に電気料金を上げる設定をしたところ、消費量か減った。莫大な費用をかけて発電所を建設し電気の供給量を増やすより、消費量を減らすほうが合理的なのだ。


▼原発と総括原価方式で肥えた日本の経済界

 政府と大手電力会社が原発に固執するのは、発電に必要な経費全てとその3%の事業報酬を電気料金に含めて消費者の負担にすることができる「総括原価方式」が採用されているからだ。電力会社は事業報酬を大きくするために架空のニーズを創り出し、多大な経費がかかる原発や再処理工場などの建設を進めてきた(図2)。

 2020年に「総括原価方式」が廃止されることが決まり、直前の今、大手電力会社は、原発の再稼働準備や津波対策費等という名目でどんどん浪費し、事業報酬を増やしている。

 「総括原価方式」で日本の企業の7割が儲かると言われている。政府や大手電力会社だけでなく、日本の経済界、政界のほぼ全体が利権を共有する仕組みによって原発は守られ、推進されてきた。原発により甘い汁を吸う人々によって、日本はエネルギーの国際競争力を失った。今後大きな経済効果が見込める自然エネルギー発電は、エネルギー先進国に大きな後れを取っている。


▼“原発の電気は安い”はウソ

 電気事業連合会の試算によると、発電コストは原発が最も安いとされている。
最も高いとされた水力発電には、※1揚水発電のコストも含まれる。揚水発電は、100%の出力で稼働させ続けなけれはならない原発で発電した余剰電力を使うためのもので、水力ではなく原発のコストと考えるべき。補助金等も含めた原発のコストと揚水発電のコストを合わせると、原発が最も高くなる。

原発を推進した日本の電気料金は、世界一高いと言われる。


▼電気は地域分散型で

 日本でも自然エネルギーによる発電が広がっているか、特に太陽光発電は電圧が低いものが多く、電力会社の送電線網に乗せると電気抵抗により口スが生じ、届く電気は大きく減ってしまう。小さな発電はその地域で消費するべきだ。

 2020年に※2発送電分離で送配電も自由化されれば、自分たちで電気を届けることができる。国や大手電力会社から降りてくる電気ではなく、地域で電気を選び、自給する仕組みづくりが必要だ。

 これまで、日本の自然エネルギー発電の電気料金は、※3固定価格買い取り制度で守られ特に高かった。今後は市場競争が生じ、世界の水準にまで下がるだろう。蓄電バッテリーも性能が上がり価格は下がっている。我が家では、太陽熱温水器と太陽先発電、ペレットストーブを使うことでエネルギーを全て自給している。皆でやれば、地球温暖化を止めることもできる。

 原発に頼らない安全な電気をもっと広げ、各地で小さく発電し、地域で独立して屈ける仕組みをつくっていこう。


※1 発電所の上下ともにダムと調整池を設ける。電力需要の少ない夜間の電気で上部調整池に揚水し、昼間のピーク時間帯に下部調整池に水を落として発電する。

※2 発電事業と送電事業、配電事業を切り離すこと。大手電力会社が独占していた送電網を誰もが公平に使えるようになる。

※3 再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間、固定価格で購入する制度。
これまで段階的に見直しがされている。


文責:グリーンコープ共同体様


★グリーンコープ機関紙「共生の時代」ラインナップはこちら
https://www.greencoop.or.jp/about/journal/

どなたでもご覧いただけます


2018年7月25日

2018.7.30発行『大雨被害とダム』

2018.7.30発行の有料・活動支援版メルマガ はこちらです!
 
『大雨被害とダム』

今回の西日本豪雨で特に被害の大きかった岡山県倉敷市真備町。

その原因は何だったのか?


気象図や警報発表などの分析、ハザードマップで見てもほぼ全域が水害の予測される地域であったことがわかりました。

そして今回大きな原因となった「ダム放流」について。

同じ豪雨でも、被害が少なかった高知県と、大災害になってしまった岡山県のダム対策では何が大きく違ったのか?

二度とこのような悲劇を繰り返さないために、ダムが本当に必要なものか、長崎県石木ダムのようにこれから新たに造る必要があるのか、改めて考えるきっかけになれば嬉しいです。







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■第166号:「天然住宅は、なぜ「森を守って、健康・長持ち」を目指すのか(下)」

■第167号:「大雨被害とダム」

2018年7月24日

講演会レポート「持続可能な住まい」「持続可能な食」

6月3日、株式会社ホリスティックウェルネス様主催「ホリスティックコミュニテDay」にて、田中優は「住まい」と「食」について2講演させて頂きました。

当日のイベントの様子がブログにアップされています。

↓   ↓   ↓
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「持続可能な住まい」
 
今回の特別ゲスト・環境活動家の田中優氏の第一弾のお話。

食品以前に空気が一番大事!
そのために、どんな住まいが真に快適なのか、どんな仕組みで建てるのがよいのかということをご紹介いただきました。


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「持続可能な食」
 
今回の特別ゲスト・環境活動家の田中優氏の第二弾のお話。

遺伝子組み換え作物の脅威、子供たちの情緒障害の増大、ネオネコチノイド農薬問題、日本の種子はどうなる?

という環境・社会問題から土づくり、私たちの健康を担うフィトケミカルの効率の良い摂取方法等まで、広範囲に及びました。


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「報告 ホリスティックコミュニティDay」より
http://blog.holistic-wellness.jp/takai/5247.html


株式会社ホリスティックウェルネス様、ありがとうございました!


2018年7月11日

田中優より「2018年7月の大雨」

このたびの西日本豪雨の被害に遭われたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

岡山ということで、全国のたくさんの方から安否確認のご連絡を頂きました。
この場を借りて感謝申し上げます。

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『 2018年7月の大雨 』

 倉敷を始め、岡山県なども洪水によって甚大な被害を受けた。同じ岡山県内に住んでいることもあって、ぼくのところにも有難いことにたくさんの人から安否を尋ねられた。はい、全く無事です。しかし実際に我が家も洪水警報やら、土砂災害警戒情報などが出されていて、寝ていてもケータイはひっきりなしに騒いでいた。でも我が家が避難する場所は地域の公民館で、我が家から下に1メートル以上降りて行った場所にある。すなわち洪水になったら自宅の方が安心なのだ。ほんの数メートルだけ高いので、我が家が水に漬かるときは、地域中がみんな浸水した時になる。



   水色が田中優宅。右下が吉井川の支流金剛川。

 そして裏山はそのまま「和気アルプス」と呼ばれている連山につながっていて、土砂災害はちょっと怖い。でも我が家の辺りはなだらかな傾斜で、しかも築百年以上の古民家を解体して建てたから、少なくとも百年は土砂災害に遭っていない場所だ。そんなこんなで我が家にいた方が安全だと判断した。それでも夜は耳をそばだてて寝ていた。地崩れの前の地鳴りがしないかどうか気にかけていたからだ。


 地鳴りもなく、洪水が届くこともなく大雨は過ぎていった。しかし7月6日に開催予定だった岡山市内での講演会は中止に。そして翌日の天然住宅の見学会でのお話会のため東京に行こうとしたら、列車のダイヤが大幅に乱れていて、岡山まではなんとか行ったものの、新幹線が広島側から来なかった。止まってしまったのだ。駅員に聞くと、「東京に行けるかどうかは保証できないですよ」と言われてやむなく断念した。


 翌日7月7日、ローカル線が全滅、運休。7月8日、新幹線はほぼダイヤ通り走っていると聞いていたので東京に行くことにした。ところがこの日もローカル線は点検のために運休。確かにかなり増水した吉井川の脇を走るのだから、難しいかなと思う。仕方なく車で岡山駅まで行って新幹線に乗った。岡山駅までの道のりが長い。みな車で動くしかないせいで、道路が渋滞しているのだ。それでも何とか乗ると、3分遅れで走ってきた新幹線は、東京までに遅れを取り戻して走ってくれた。まぁ、実質的な被害は交通の乱れぐらいだった。


 岡山は天災がほとんどないせいか、全く慣れていない。ぼくの周辺では友人たちがボランティア隊を組織して、町内や近隣の町、倉敷などの地域へ手伝いに出掛けて行った。和気町内では25棟が床上浸水した。

 悪天候が続いたので、オフグリッドをしている我が家では途中で電気がなくなりかけた。今夜は無理だなと判断して子どもに言うと、子どもはさっそく近くの温泉ホテルに出掛けるのを楽しみにしている。泊まろうかとも考えたが、満室だったので日帰り入浴と食事だけにする。


 翌日も発電しないので、朝から発電機をかけた。こんな時のために発電機を持っているのだ、音がうるさくて気になったりするのだが、雨音の方が大きくて心配する必要もなかった、そして日曜日には雨が上がり、久しぶり日が差した。通りすがりの人が「久しぶりの太陽だね」と言った。もっとも夏至に近いこの時期は太陽高度が高く、曇りでも発電してくれる。おかげで翌日には電気の危機も去った。



緑の棒グラフが当日。朝25%を下回っていた電気の充電率も75%まで回復!



 その後は天気も良くなってよく発電する。我が家ではありがたいことに電気が余るほどになった。余った電気でエアコンを効かせながら、この原稿を書いている。


 なんとも危機感のない話だが、今回の大雨、幸いなことに我が家はそうして過ぎていった。大雨のせいで、地域の水路が溢れて道路に水びたしになった。子どもは大喜びで、バケツを持って外に出て、大規模な水遊びをする。山から流れ出てきた水にバケツを当てて、その水をあちこちに撒いている。ずぶぬれになったが、それもまた楽しいらしい。


 我が家の井戸はますます健在、電気もほんの少し不足しただけで健在、通信もインターネットも健在のままだった。やっぱりオフグリッドして自給していた方が、安心なのかもしれないと思う。同じ集落から見ると、我が家はほんの一メートルほど高い。この一メートルが大きいのだ。広さに一メートルの高さを掛けると、よっぽどの大水にならなければ水が届いてこないことがわかる。そう、家を建てる場所を考えるときに、高さを気にした方がいいのかもしれない(我が家は偶然だが)。





 今回悲惨だったうちの1つに愛媛県の肘川の氾濫がある。ダムが造られているのに氾濫した。ダムには貯水量がある。それを越える雨が降ったので、ダムの「但し書き操作」がされたのだ。雨が大量で、そのままではダムが破損する可能性があるときには、ゲートを開けて放水することができる。ただし放水するのは今降っている雨の量までと制限されているのだが、その量が文字通り致命的だった。ゲートを開ける前に三回もアナウスしたのだそうだが、その放流によって家は押し流され、五人の人命が失われてしまった。



                肘川ダムの放水


 「何のためのダムか」と言いたくなるが、もともとダムは完璧な解決策ではない。想定内の雨が、想定内の範囲で降った場合にだけしか有効ではないのだ。それを政治家と土建業者が利益のために「大丈夫になる、安全だ」などと言うから、こうした事態を招く。もともとダムは無限に水を貯められるものではないのだ。


 ちょうど長崎県の「石木ダム」についての訴訟の判決が出たところだ。住民側の敗訴。県の勧めるダム建設は違法ではないと。水も足りていて利水の必要はなく、洪水などの治水にもほとんど役立たないダムを大枚かけて建設するのが違法ではないそうだ。ばかげている。もっと税金を使うなら人々のためになることに支出してほしいと思う。

 それでもこの石木ダムの建設は、いずれ止まるだろうと思う。あまりにも根拠が薄弱だからだ。裁判所すら合理的な判断ができず、政治家に至っては目も当てられない状態だ。それでも私たちはその中を生きていかなければならない。



 私の消息を心配してくださったみなさん、本当にありがとうございます。私は大丈夫なので、その分だけ今回被災された方や支援活動をされている方、そして石木ダム予定地域で頑張っている皆さんに注意を向けてほしい。

 ダムはもともと万能ではなくて、しかも必要性の乏しい理由で人々の住まいを水底に沈めようとしている。美しい場所なのだ。ダム計画があったために開発されなかった。そのことが美しい場所を奇蹟的に残せたのだ。夏は水遊びに出掛けることもできる。こんな美しい場所すら私たちは子どもたちに残せないのか。










 私は子どもたちのために、こうした場所を残すために活動したい。自分のできる範囲のことでいいから、関心を持ってほしいと思う。



 最後に、今回の大雨の状態を、近所の見える範囲だけ写真に撮ってみたのでご覧ください。


 1の写真は同じ場所で、水位の低いグラウンドに看板が立っている。その看板が水没してしまっている。



 2は集落を流れる水路の写真。溢れた水が道路を冠水させている。






 3の写真も同じ水路。1メートルぐらい下を流れるが、そこから溢れて農地に逆流している。こういうところを間違えて踏み込むと水難被害に遭うのだと思う。「近くの水路を見に行く」と言って消息不明になる人は、こういうところに落ちるのではないか。


その他、周辺の写真





2018年7月5日

「 未来バンクを超えて新たなステップへ 」

『 未来バンクを超えて新たなステップへ 』

         未来バンク事業組合 理事長  田中 優


 未来バンクが、同じく私が代表を務める天然住宅バンクに合併するという話を伝えたが、なんだか変わりないように思えるかもしれない。
しかし大きな違いがあることをお話ししたい。

 数年前に脳幹部の出血をして、後遺症も何もないが危険な体験をした。こうしてリスクが加齢とともに増えてきているのだ。そればかりでなく、頭が固くなって次の機会を逃す危険もある。老害になることのリスクもあるのだ。ある団体では頭が固くなった老人が最後まで我を張って代表を続け、若いスタッフが困った末に自殺してしまったという悲惨な例もある。

 私自身が固陋になってしまったとしても、はたまた今以上に能力が衰えてしまったとしても、次に委ねる仕組みを作っておきたい。そうすれば安心して活動できるのではないか。と考えたのだ。だから若い人たち主体に新しいバンクを構成し、今いる、ある意味でベストメンバーである今のバンク理事たちはサポートに回る。 

 そして徐々にフェードアウトできる仕組みにしたいと思うのだ。

 未来バンクの今の理事たちは、特技にでっぱりへっこみがあるとはいえ、全体としてうまく運営できるメンバーだと思う。そこから私たちにしてみれば多額の貸倒引当金や事業準備金を含めて、次の世代に引き継ぎたいのだ。


 とはいえ私自身も引退するには早すぎると感じている。その部分は、別な形で実現しようと進めている。それが「未来基金」構想だ。私はそれら二つのバンク以外にも関わっていて、「財団法人 信頼資本財団」の評議員も務めている。そこで次の仕組みを作ろうと考えているのだ。動機は私自身が年金を受け取れる歳に、あとわずかでなれるということだ。しかし社会を見渡してみて、私がそのお金を受け取ることに抵抗があるのだ。個人的には一生懸命に頑張ってきたとは思う。


 しかし若い世代の人たちを差し置いて、私が受け取ることには抵抗があるのだ。
ある団体に関わっていて、世界一周する旅行の講師をしていた。そこには今や高齢者が多くを占め、体が十分に動かない人たちも参加していた。すると若い人たちが親切に高齢者をかばい、車椅子の後ろを押すのだ。その後ろから押される側に、私がなることには抵抗があるのだ。病気して一時的には車椅子で移動する生活になったことはある。そうではなく、これから先の生き方として納得できないのだ。

 私が生まれた年は、日本で原子力の予算が初めて組まれた年だ。なんてことをしてくれたのかという思いはある。それと同様に私の育ってきた時代は将来のツケにして良い暮らしになってきた時代でもある。

 恩恵に浴することはなかったが、バブルの時代もあり退廃的なまでに遊び呆けていた時代でもある。そんな時代の人間が、年老いてまで車椅子を後ろから押してもらうだけの資格があるようには思えないのだ。

 そこで年金を受け取る中の一部でも、きちんと未来に寄付できる仕組みを作りたいと考えたのだ。年金額の総額は巨額で、わずか一%に満たない寄付でも、全体としては「兆円」の単位になる。その資金を得て、未来に残したくない負の遺産(ツケ)をなくしたいと思うのだ。

 たとえば放射性廃棄物の問題にしても、恩恵を得ることのない世代に残すことになる。その電気すら使っていないのに、一方的に放射性廃棄物だけを押し付けられる。これを解決するのに国の費用ですべきと言うことはできる。しかし今の政権を見ていればわかるように、そんな能力も決意もないだろう。ここには三つの選択肢しかない、政府がするか、市民が自発的にするか、市民と政府が共同でするかの三つだ。

 言葉上で美しいのは共同で実行するというものだが、実際の場面を見てみると、無責任で、大きなものに寄り掛かった活動しか見えてこない。これでは解決するはずがない。

 市民が勝手に自発的に始めなければ、十分に効果的なものにはならないだろう。ある人が実験して、トリチウムの混じった水の浄化に挑んだ。成功したので政府に働きかけたが、政府は追加実験もすることなく握りつぶした。従来の物理学からは不可能と思われるからだろうか。そうでなくても、もし実現できたらゼネコンの「除染ビジネス」に齟齬をきたすからだと聞いた、すると成功したら除染ビジネスの利権に穴が開き、失敗すれば従来通りの不可能な話になるのだ。ならば何もしないことが最高の対策になる。

 こんなことでは解決できる手段は見えてこない。実績があるならやって実験してみたらいいと思う。その費用も「国の対策」では検討すらされなくなる。放射性物質の話は荒唐無稽と思われるかもしれないが、人口が激しく減少する時代のダム計画はどうだろうか。

 ついに10人に一人を越えて発生するようになってしまった「ADHD(注意欠陥/多動性障害)「LD(学習障害)」「情緒障害」や「自閉症」などの問題はどうだろうか。この発生とネオニコチノイド農薬の使用量とが比例していたり、アメリカの自閉症児の増大と、除草剤ラウンドアップの使用量が比例している。

 マサチューセッツ工科大学から、「2025年には二人に一人の子どもが自閉症になる」と論文も出されている。この除草剤ラウンドアップは、それでも枯れないように作られた遺伝子組み換え作物の栽培によって、当たり前に使われることになる。
日本ではその準備として「主要作物種子法」が廃止されてしまった。


 私たちは政府に気兼ねしたり忖度したりすることなしに、きちんと調べて対策する資金を市民自身で持つべきではないだろうか。信頼資本財団は公益財団だから、寄付したお金の四割程度が税控除される。

 その分は戻ってくるのだ。さらに若い人たちが能力ではなく、親の財力によって将来が限定される事態も避けたい。最低限、無利子の奨学金を用意したい。そのとき※信頼資本財団は、公的財団となっているので貸金業の登録なしに融資ができる。
そして現に今も融資をしている。

 なんと「無利子・無保証・無担保」で、信頼保証人という法的な責任を負わない人だけで融資し、これまでの十年間に一軒の貸倒も起こしていない。これはブロックチェーンによる信用確保と同様で、信頼によって社会の仕組みを実現する形になっているのだ。

 これが私の考える次の仕組みだ。わずかではあるが、もちろん私も寄付していこうと思う。買いに稼いだお金と、現世代の就労者から老後の費用を賄おうとするのが年金制度だとするなら、これまでとは逆に過去に働いて稼いだお金である年金を、未来のために使おうとする動きだ。

 未来バンクは「過去の費用」には融資せず、未来のための活動だけに融資してきた。同様に未来のための資金にしたい。石川啄木の言葉で恐縮だが、「これをし遂げて死なんと思う」のだ。私たちは未来世代のために生きてきた。そのひとつの表現にしたい。


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以上、2018年6月発行 
※「未来バンク事業組合ニュースレター No.95/2018年6月」より抜粋

※PDF版はこちら
http://www.geocities.jp/mirai_bank/news_letter/MB_NL_95.pdf


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※公益財団法人信頼資本財団
 http://shinrai.or.jp/








2018年7月1日

7月7日(土)天然住宅 お住まい見学会@所沢(無料)


お住まいになられて【7年目】のお住まい見学会を開催します。
実際のお住まいを見学させていただく貴重な機会です。

田中優セミナー、くりこまくんえん大場さんのお話もあります。


今回は、「初夏の見学会」です。

湿度が高く、気温も高い季節の天然住宅を体感しに来て下さい!
 
今回、見学させていただくお宅は、

●一般住宅の約3倍量の木材を使用した新板倉づくり

●外観はレンガと漆喰

●ご主人の意向で温熱環境にこだわりを

1階の大きな掃出し窓には通常の窓の内側に木製の暖窓(だんまど)とサーモスクリーンを設置、夏涼しく冬暖かい空間を実現しています。
 
●素材工房オリジナルの蓄熱式床暖房
●漆喰の塗り壁
●雨水タンクや太陽光発電パネルなどの自然エネルギー設備も充実

 
などなど、設計士とゼロから建てた住宅、建主さまのこだわりがたくさん詰まった家を是非見に来てください!




 
 
★建物データ
敷地面積:215.63㎡(約65.22坪)
延床面積:139.44㎡(約42.17坪)
間取り:3LDK+1LDK
工法:木造(新板倉工法)

■日時 
7月7日(土) 午前の部:10:30~12:00 午後の部:13:30~15:00

■場所 埼玉県所沢市(西武新宿線「所沢駅」徒歩10分)

■参加費 無料

■内容 お住まい見学会+田中優セミナー
【午前の部はくりこまくんえん大場さんのお話もあります】


■お申込み
下記フォームからお申し込みください。
http://tennen.org/event/tokorozawa-3.html