2020年9月29日

誰も知らない輻射冷暖房の話

  今年の夏は暑い。いくらなんでも体温を超える温度が何日も続くのは耐え難い。耐え難いのは人の体だけじゃない。

 我が家は太陽光発電とバッテリーで電気を自給しているので、バッテリーの方も耐え難い。「熱中症にならないようにエアコンをつけて」と言われたって、翌日充電量を取り戻せる日じゃなければ使い放題にはできない。明日が晴天なら使っても心配ないが、曇りだと取り戻せるかどうかわからないし雨だったら無理だ。心配性のぼくとしては、電気をなるべくとっておきたくなる。


 それほど心配になるのはエアコンの電気消費が大きいからだ。たいして涼しくなるわけではないのに電気ばかり食う。冷媒を圧縮して含まれていた熱を外に捨てるために、コンプレッサーが動いて室内に送風するためだ。そのくせ冷房のためにはこうした「対流熱」を利用した冷房は決して効果が高いものではない。「空気」なんかで冷房しても、体に届く前に消えてしまう。要は電気ばっかり食って涼しくないのだ。電気の使える量は一定だとして、もっと涼しくできる仕組みはないものか。  



 ここで考えるのが「熱伝導」の法則だ。伝わる熱は三つしかない。エアコンのような「対流」、フライパンを火にかけると柄まで熱くなる「伝導」、そしてもう一つが太陽の光や電気ストーブみたいに電磁波で届いてくる「輻射」だ。


 この輻射熱は面白いことに、扇風機で間を遮っても何も変わらない。電磁波なのだから、風に吹きとばされたりしないためだ。しかもこの電磁波は、あちこちに乱反射しながら熱を届けていく。これには「ステファン・ボルツマン定数」というものがあって、「熱放射によって放出されるエネルギーが 絶対温度 の4乗で与えられる」ことになっている。対象物と熱放射体の絶対温度の4乗倍も伝わるというのだ。エアコンの「対流熱」とは比較にならないし、金属の熱伝導などとも比較にならない。輻射熱は乱反射しながら、周囲に熱を伝えていくのだ。  


 そのときに輻射熱を反射してしまってそのものは温まらないアルミのような素材と、熱を受け取って外に出さない黒い塗装面のような素材がある。これをうまく利用すれば程好く冷暖房できるかもしれない。なんせ絶対温度の4乗倍なのだからものすごい。  


 これによって起こっている不都合と、優れた方法がある。不都合の方から説明すると、「低温着火」と呼ばれる壁の内側からの発火で、台所のコンロの火から15センチ以上離せない時は「ケイ酸カルシウム板」などの防熱板によって防護するように書いてある。  


 別名「伝導加熱火災」というのだが、どちらも誤解を招く名称だ。というのは「低温着火」するのは火災の着火時の話で、ではなぜ低温で着火してしまうほど熱に脆くなったかと言うと「輻射熱」が表面ではなく、その下の壁の中の「ケイ酸カルシウム板」や「石膏板」「木材」を焦がしてしまうためだ。それらは燃えにくい素材だが、輻射熱によってぼろぼろの状態になってしまっているのだ。だから本来、輻射熱を反射して守ることのできるアルミが適切だ。

 なぜなら「伝導熱」ではなく「輻射熱」が原因であるからだ。ステンレスもピカピカしていて反射しそうだが、アルミと比べると半分しか反射する力はない。  


 ところが消防署のデータを見てもそのことは書いていない。「輻射熱」のことはそれほど知られていない盲点になっているのだ。  逆に「冷暖房」に生かすとしたら、「輻射熱」は最適だ。相対的な絶対温度の4乗倍も伝えるのだから。そのため「光冷暖」という仕組みが作られた。それは良いのだが、温度が違うということは「結露」を起こす。その排水が難しいのだ。  


 我が家では、その仕組みを自エネ組の大塚尚幹さんが作ったのでそれを取り入れてみようと思う。壁に冷たい井戸水を通し、それによって風もなく冷やす。結露するので雨樋のような「水受け」を作って流していく。そうすれば音もなく涼しくなり、エアコンなしに冷房が実現する。

 空気の中から結露した分だけ樋に流し、その分だけ室内の湿気は除湿される。井戸水は熱伝導性の高い銅管とアルミで流す。それならば電気は井戸ポンプを動かすだけで足りる。井戸ポンプは一年ほど前から以前の半分ほどまで省エネされるようになっている。  


 これを大塚尚幹さんはすでに作り、※京都の南禅寺や岡山のお寺にも設置している。決してできない仕組みではないのだ。これを我が家に導入し、これから嫌でも暑くなる日々に対抗しようと思うのだ。これなら太陽光発電を増やさずにできる。

 


京都 南禅寺 井戸水輻射冷房完成 自エネ組HP より


 さらに熱の伝わり方の原則は、暖かい熱でも同じだから、風に頼らない暖房の仕組みもできる。冬はペレットストーブに頼っているのだから。煙突につながる二重管の内側の管に銅管を巻き付け、そこからの熱で暖房したい。  


 従来の吹き付ける「対流熱」に頼ることはやめて、効率の高い「輻射熱」で冷暖房したいのだ。もともと我が家は実験的な試みをたくさんしている。

 今度はそこから熱にもチャレンジしたいのだ。  


 もう一つのガスレンジ周りの輻射熱に対しても、アルミの反射率の高さを利用して対策してみたい。簡単にアルミをタテに入れた間柱に巻き付け、それをレンジの脇に取り付けたい。アルミを張った下を触ってみると、輻射熱が反射されて全く熱くならない。それを利用することで熱の対策をしたいのだ。ガスレンジに寸胴鍋を置いたりすれば、嫌でも壁側は熱くなる。それに対策しようと思うのだ。  


 これは実験だから予想通りになるとは限らない。それなら人に頼むわけにはいかない。まずは自宅で試そう。自分としては成功すると思うからするのだが、これが効果的になるのなら、もっと省エネができることになるかもしれない。そんなことを考えながら来年の夏に備える準備をしてみよう。妻は怒るかな。



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※▼「南禅寺 井戸水輻射冷房の検証 早稲田大学建築科 中川先生

https://tennen.life/2020/08/29/井戸水輻射冷房/ より


井戸水を利用した冷房です。電気代はエアコンの1/10以下。

エアコンは部屋を冷やすが外を温めるので、温暖化を助長しますが、これは部屋を冷やし、外も冷やしますので、温暖化防止に貢献します。

輻射冷房は火鉢で温かくなるのと同じ作用で冷たい電磁波を体が受けて冷えます。電磁波の冷房はとても気持ちよく、これにうちわで扇ぐだけで最高級の空調となります。

協力 南禅寺僧堂、早稲田大学建築科、SHOKAN desgin


▼動画「 南禅寺井戸水輻射冷房」

https://youtu.be/5jFWkaFRQus



2020年9月24日

9月29日 天然住宅 オンラインセミナー~工法編~

 図でわかる天然住宅。



設計の小野寺さんが講師です。


無料ですのでどうぞお気軽にご参加ください。


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家づくりを考えるとき、「自然素材」や「無垢」という言葉をキーワードにする方も多いと思います。

私たちも、自然素材建築が当たり前の選択肢になる未来を目指し、日々、家づくりを探求しています。

でも、自然素材が単なる「お化粧」として使われることに対しては、少し違和感を持ちます。

壁と天井は漆喰で仕上げ、床には無垢のフローリングを敷く。

それだけでも、もちろん魅力的な空間になると思います。

私たちも仕上げにはこだわりを持って、家づくりをしています。


ただ、それは単なる「お化粧」とも言えます。


壁の中ってどうなっているのでしょうか?

漆喰は、何の上に塗られているのでしょうか?

フローリングを剥がしてみたら、どんな床下になっているのでしょう?


住み始めたら見えなくなってしまうところに、何が使われているのか、そこにどういう意味や効果があるのか。

そこにこそ、本当に気持ちがいい空間の鍵が隠れているかもしれません。


自然素材建築の魅力は、きれいにお化粧をした見た目だけにとどまりません。

すっぴんも、なかみも、とても魅力的なんです。


■日時 2020年9月29日(火) 10:30〜11:30

■場所  オンライン ※ビデオ会議システムZOOMを使用します。

■参加費 無料になりますが、アンケートへのご協力をお願いしております。

■お申込み こちらより
https://tennen.org/event_contents/9499




天然住宅こだわりの「すっぴん」、お見せ致します!





2020年9月17日

動画「優さん、化学肥料削減で温暖化防止になる?」


2020.9.16配信

動画「優さん、化学肥料削減で温暖化防止になる?」

https://youtu.be/3p2VPr7hoSc



田中優がメルマガ読者の方からの質問に答えました。


質問内容はこちらです


「温室効果ガスについて。
温室効果ガスとしては、一般にCO2が大きな原因とされています。

 一方、亜酸化窒素はCo2の300倍の温室効果があるとのことで、この主な排出源が農業で使われている化学肥料(窒素)で、化学肥料の使用をやめるなり減らせば温暖化に大きく貢献(ほぼ解決できるかも)できるという意見があります。

 一般的に考えて化学肥料は地球規模で使われているので、こちらに焦点を当てた削減活動の方が大切なのではとも思えます。

 使用量か削減効果についての詳細は分からないのでCo2との単純比較はできないですが、優さんの方で把握されている情報があればその公開なり、これから分析できる可能性があるのかどうかお聞かせ願いたいと思うのです。」


ヒントは土と緑!


(以下動画より)

「地球の歴史46億年前からと考えてみると、最初のうちに二酸化炭素を吸収しそして酸素を作り出してくれたのはストロマトライトとう名前の要はシアノバクテリア、光合成をしてくれるようなものが酸素を作り出したんですが、その後に圧倒的に二酸化炭素を吸収して酸素を作り出したのは緑なんです。

だから緑をもう一度回復させなければ解決できない。 
そしてその緑というのは単に緑が解決しているのではなくて、実は木材の中に含まれているCO2の5倍も土の中に含まれているんです。

だから土壌の方を回復させながらそこに二酸化炭素を吸収させる、ということがどうしても必要になるんですね

それを考えると今の時点で一番問題なのは、土壌を痛めつけて木さえ育たないような状態に仕向けてしまっていることが問題なんだろうと思います。

そこを何とかしないと今CO2を減らしたとしても、今大気中に上ったCO2を吸い取ることができない。

どうしてもその大気中に上ったCO2を吸収させるために、土と樹木に思いきりがんばってもらわなくちゃいけないんですね。

その辺のことを次のメルマガの中では触れました。

ぜひ、参考に見て欲しいと思います。

今回、質問をしてくれたのでそこから広げていって、「どうして緑と土が大事なのか」というところに触れています。

ぜひお読みになってください」


■詳しい回答は、こちらをご覧ください↓

有料・活動支援版メルマガ 「田中優の未来レポート」

2020.9.15発行 第218号 

【メルマガ一問一答 「化学肥料削減で温暖化防止になる?」】

http://www.mag2.com/m/0001363131.html


ご購読料 550円(税込み)/月  登録初月は無料


メルマガは、これまでのバックナンバーも1カ月単位でお読みいただけます
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2020年9月11日

「Farm to Fork(農場から食卓まで)」の第一歩

 

「Farm to Fork(農場から食卓まで)」の第一歩


EUは新たな戦略として、「Farm to Fork(農場から食卓まで)」を打ち出した。


話を短くするために私の感じているところから述べよう。

要は、これはアメリカ流の「巨大アグリビジネスへの依存」をやめて、小さな農家・企業・消費者が、自然環境と一体となり、共に持続可能な食料システムを構築しようとする戦略なのだ。


アメリカ流のやり方なら広大な農地を巨大企業が独占して、「アグリビジネス」による食物戦略が行われる。それは第二次大戦後、今に至るまで同じ「化学薬品と彼らの提供する種」による農業だ。それは世界の農地を破壊するばかりだ。広大な農地を機械で植付・収穫し、被覆作物もなくて土は雨に流され、土は養分を失ってカチカチになっている。そのため土壌は農業すらできないただの無機物の荒れ地になっている。


今、世界の農業で見直されつつあるのが「」だ。「土」は無機物なんかではない。たくさんの微生物と共生する「有機物」の場なのだ。


実際に収量の多い「豊かな土」とは、多種多様な微生物の生息している土だと理解されている。その「土」を守れるのはどちらか。答えはおのずと明らかであるだろう。同じ農地でも作物の収量は4~5倍違う。


日本は政府がその先棒を担ぎ、メディアも無批判にそれを伝えるので、特別意識しない人なら必ずアメリカ流の農業こそが未来の形だと誤解している。狭い農地ではダメで、目新しい農薬、化学肥料、遺伝子組換え作物を受け入れるのが普通と思っている。有機無農薬というような持続可能な農法は、まるでお伽話のように扱われる。


しかし現実を見てみよう。世界の56%の食料は小さな農家によって生産されており、土を痛めつけない農法のおかげで豊かな土地が日本に広く広がっている。そのメルクマールになるのが土壌微生物の多様性と数だ。日本の農地は著しく高い。多くの人がお伽話として認めようとしないのに、その実、足元の農地では豊かな土が維持されているのだ。

 ところが農民でない人たちは農家の懸命な努力を無視して、農家のためだと言いながら土から生命を奪う農業を支持している。このままでは世界中の土が壊されてしまうというのに。



 アメリカ流の農業は、除草剤の効かない「スーパー雑草」の登場に困り果て、農薬の人体に対する加害に巨額の賠償金を払いながら、世界中の農薬を集めてはそれに耐性を持つ遺伝子組み換え作物を作り、種から農薬、化学肥料に至るまで独占しようとしている。



 それに対抗しているのがEUだ。例えば国連では、2017年の国連総会で、2019年~2028年を国連「家族農業の10年」として定めた。そして加盟国及び関係機関等に対し、食料安全保障確保と貧困・飢餓撲滅に大きな役割を果たしている「家族農業」に係る施策の推進・知見の共有等を求めている。これこそ「巨大アグリビジネスの世界支配」に対するアンチテーゼだ。

 地域の小規模農民は世界のマーケットの中では本当に小さな存在だ。しかし人々の食料供給には欠くことのできない存在だ。日本はアメリカの手先なのでわからないかもしれないが、現実に今も「家族農業の10年」の真っただ中なのだ。


 この流れの先に、「Farm to Fork(農場から食卓まで)」の戦略がある。小さな農家・企業・消費者が、自然環境と一体となり、共に持続可能な食料システムを構築する戦略こそが必要なのだ。


 林業でも農業でも、日本は世界一の最先端の技術を持つ。ただ政府だけが三流で理解できないだけで。私たちはどちらに進んだらいいのだろうか。


 日本はまさに宝の持ち腐れだ。人々が自分でもっと学ぶようになれば変わるのだろうか。有機農法でも持続可能な林業でも、世界一優れた仕組みを持っている。きっとそれは自然から学んでいるからだ。人々がもっと現場を知れるようになれば変わるだろう。


庭で小さく菜園を始めてみた。小さなコンポストを入れてから家の生ごみがなくなった。その小さな試みが「Farm to Fork」の第一歩なのだ。


2020/08/27発行 田中優天然住宅コラム#162 よりhttps://tennen.org/read_contents/9173

 






 


 

 

2020年9月10日

9月19日 天然住宅オンラインお住まい見学会 伊豆のオフグリッドファーム

実際に天然住宅に住んでいらっしゃる方のリアルな感想をぜひ聞いてみてください。


「オンライン見学会」 自然と共に暮らす。


■建主様のこと

元々東京で暮らしていらっしゃいましたが、ご主人の早期退職を期に、伊豆に約5,000坪の土地を購入し、移住されました。

無農薬のオリーブ栽培とオリーブオイル製造を軸に、自然と共に暮らすことを選ばれた、バイタリティあふれる大同様ご夫婦です。


ご主人は、電気工事士の資格を取得して、自らオフグリッド設備を設置、メンテナンスされている他、敷地の開拓、本格的なDIYを楽しみながら取り組まれています。

奥様は麹と発酵調味料の製造、発酵食品関係のワークショップ、農家民宿のお客様の受け入れなどを日々されています。


■お住まいのこと

農家民宿を開業することを念頭に、フルオーダーで設計し、2016年に完成しました。


外壁は周囲の緑と馴染む杉板と漆喰、内部は農家民宿やワークショップに対応できる広々とした空間設計になっています。

リラックスできる桧風呂も見ものです。


自然エネルギーの活用と、災害対応も考え、

電気→オフグリッド

給湯→太陽熱温水器

水→井戸水

暖房→薪ストーブ

を活用されています。


実例写真はこちら



 ■オンラインでのセミナー参加について

当セミナーは、ご自宅からお気軽に参加いただけるよう、オンラインで開催します。
パソコン、スマホ、タブレット、いずれかの端末をお持ちでしたら簡単にご参加いただけます。お申し込みの方には、事前にご案内致します。


■日時 2020年9月19日(土) 14:00〜15:30

■場所 オンライン  ※ビデオ会議システムZOOMを使用します。

■参加費 無料


■詳細・お申し込み 下記リンク先フォームよりお申込みください。


https://tennen.org/event_contents/8841



■当日の見学会の内容(予定)

①家と設備の案内

・ご自宅

・お庭

・オフグリッド設備 

 

②建主様インタビュー

・家づくりに込めた思い

・天然住宅の家の暮らし心地

・暮らしている中で思うこと、感じていること

 

③質問コーナー

参加者の皆様からの質問に建主様と天然住宅のスタッフが回答します。