2016年7月18日

『日常生活からのテイクオフ』(有料・活動支援版メルマガバックナンバー)

2012.7.8発行 田中優有料・活動支援版メルマガより

□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■

『 日常生活からのテイクオフ 』


■ 「させられ」仕事からの脱却

 ずっとサラリーマンとして仕事をしてきた。理解のない上司の下で、うんざりするような仕事をしてきた。でもうんざりしたら身を保てないから、なんとか仕事に楽しさを見出して、31年以上も仕事を続けてきた。活きのいい新人が入って、ムードを変えるかと期待しても、少しすると結局は新人の方が環境に順応してしまう。おしなべて上昇志向。仕事の実績は見えにくいから、同僚からは評価されても上司からは疎まれ続けたままだ。

 しかも中卒から仕事をしていたから、限りなく続く月並みで退屈な仕事の波に埋もれていく気がした。一生というのは仕事に埋没することかとも思った。その後には子どもも生まれ家も買った。

 毎日は永遠に繰り返されて続くようだ。…いつしか早く仕事を辞めたいと願うようになった。こんな気持ちで働くのは、ぼくだけではないだろう。

 今は自営だ。講演し、原稿を書き、会社を設立して自分の稼ぎで暮らしている。
 束縛はあるはずなのに、なぜか自由な気持ちだ。朝起きて、その日のことを考えるとわくわくする。毎日は新たな試みに満ちている。

 何より「させられる」ことがなくなった。自分から「する」仕事ばかりだ。自分からする仕事なら疲れを感じない。こんな気分で仕事ができることをうれしく思う。


 多くの人が自分の仕事をしたいと望んでいる。自分だけにできる、自分を表現する仕事を。
 そのためのテイクオフはどうしたらできるのだろう。そのプランを考えてみたい。


■ まずは支出の節減を

 と言ってもケチケチするとあとでリバウンドが来るので、合理的に賢くしたほうがいい。

 今、会社勤めをしているなら、急に辞めない方がいい。辞めたから自由になるのではない。別な仕事で身が立ってから仕事を辞めるのだ。


 そこでまず、今の仕事からテイクオフする順序を考えよう。
今の収入で暮しているなら、収入と支出が釣り合っているか、収入が少し上回っているはずだ。最初にすべきことは収入の増加ではなく、支出の削減になる。



 家計支出は大雑把に、住宅費、生命保険料、食費、教育費、交際費、光熱費、携帯電話代などが並ぶことになる。この中で無理せずに下げられるものを考えてみよう。

 簡単なところから、携帯電話代は契約を見直して、実際の使用に合わせた契約に変えてみよう。

 住宅費は、自分が家具のために家賃を支払っていないかどうか考えてみよう。住宅の間取り合計が20畳で10万円であったとしたら、2畳で毎月1万円払っていることになる。そのうちで本当に必要なのはどれだけの広さだろうか。家具のために家賃を支払っていないだろうか。

 生命保険は掛捨て保険に貯蓄がついたものが多い。貯蓄だったら生命保険会社よりは優れた運用先がある。ましてや原発を推進する第一の金融機関なのだから、そこに預けるよりは城南信用金庫のような地域の協同組合組織、非営利の労働金庫に預けた方がいい。

 そして保険掛け金で考えたなら、世界一高い保険料金の日本の生命保険に掛けるよりは、世界一掛け金が安い「共済保険(県民共済や全労災など)」を利用した方がいい。合理的にすることで住宅費に次いで大きな支出である保険料金を下げられる。

 食費は外食を避け、可能なら家庭菜園を実現することで、支出を下げていくこともできる。

 その他、生活をシンプルにすると同時に省エネ製品や自然エネルギーを利用することで、光熱費や交際費も下げられる。

 実は貯蓄して金利を得るよりも、今や省エネ製品や自然エネルギーを購入して減る支出金額の方が、金利に直してみるとずっと得になる。こうして生活支出を減らすことが第一だ。


■ 複数のわらじ

 よく、同時に別な事をすることを「二足のわらじを履く」というが、二足だけでなくていい。三足、四足と複数のわらじを履くのがいい。たとえば会社に勤める傍らで農業を始めたり、文筆活動をしてみるのもいい。間違っても会社を辞めることを先にしてはいけない。会社を辞めたから農業ができるようになるわけではないからだ。

 複数のわらじは、自分の可能性を見極めていく意味でも大事だ。向き・不向きも考えずに、次の生業を決めてしまうのは安全ではない。

 支出を減らした部分を用いて、次の生業に投資しよう。といっても自分の可能性に投資する意味であって、収益を上げる意味ではない。農業でも文筆でも最初の投資は必要だからだ。
 いわば「未来への投資」だ。

(図)・・有料・活動支援版メルマガにて公開中

 ぼく自身、持ち出しはあっても一銭の利益にもならない「未来バンク」の活動が、収益は生まないと思っていた。しかしこの18年間、「持ち逃げしなかった」という実績によって、今になって顧問を頼まれたりするようになった。この18年間の投資が、今になって収入源の一つになりつつある。

 もうひとつ可能性があるのは、自分の好みの事業に向けて、ネットワークを作っておくことだ。

 たとえば自然エネルギーの事業をするなら、そのためのネットワークをfacebookやtwitterなどのSNSで作っておく、メルマガを発行して参加者を集めていくことだ。
これが後に財産になる。事業化すれば、嫌でも拡販のための広報手段が必要になる。
そのとき役立つのがこうした情報ネットワークだ。「誕生日おめでとう」のやり取りだけではなく意識して拡大するネットワーク作りに応用しておくことが大事になるのだ。

 こうして二つ目、三つ目の事業のための投資をしておく、もしくは複数のわらじを作っておくことが役立つ。

 ぼくの場合は他の収入が、気付いてみたら会社から得ていた収入を上回るまでになっていた。それなら会社に執着する必要もない。そして本業が入れ変わり、複数の収入源から生業を立てるようになっていった。

 ぼくはこれを「生活の百姓」と呼んでいる。「百姓」という言葉は、百の生業を持つことを意味している。百の生業があるならAが不作ならBで食べ、CがダメならDで暮らせばいい。会社だけに所属するより、はるかにセキュリティーの高い暮らしになる。どれかの事業に失敗したとしても、他の収入で食べていくことができるようになるからだ。





■ PDCAサイクルの誤り

 こうして事業を進めていくことになった時に、多くの人がモデルにするのがPDCAサイクルだ。





 Plan(計画し) → Do(実行し) → Check(チェックし) → Act(次の活動に入り)→ Plan(次の計画に入る)

というサイクルだ。よく金科玉条のように言われるが、これは単純作業の継続的なモデルだ。

 まず事業を始めていくためなら、計画のすぐ後に実行が来てはいけない。事業を開始する前こそが最も重要な部分だからだ。

 まず重要なのは「リスクつぶし」だ。事前にどんなリスクがあるのか検討し、リスクをすべてつぶしてからでなければ、行動に移るべきではないからだ。そのリスクについては後に述べる。

 ときどき言われるのが、「優さんの話は出来すぎではないか、失敗はないのか。胡散臭い」という言葉だ。正直言って、小さな失敗はあるものの、大失敗はない。簡単な話だ。始める前になるべく多くのリスクを想定し、対策を考えてあるから失敗の確率が低いのだ。大失敗をしてしまう人は、もしかしたら事業に向かないのかもしれない。

 もうひとつのPDCAサイクルの欠点は、イノベーションが入りにくい仕組みになっていることだ。事業は絶えずイノベーションを繰り返さなければ成り立たない。

 良い例がコンビニではないかと思う。コンビニは常に批判にさらされている。不良が集まって風紀を乱す、食べ物に保存料などの添加物が含まれている、エネルギー消費量が多すぎる、などなど…。

 しかしコンビニはそれをどんどん乗り越えてきた。警察官の立ち寄り所とし、食材は良いものに変えて時間管理を徹底し、省エネ製品と自然エネルギーの導入も積極的だ。問題がすべて解決したわけではないが、絶えずイノベーションを繰り返している。

 少なくともこれはPDCAサイクルの考え方ではなし得ない。実際にはサイクルではなく、イノベーションを入れることで二週目の計画時点では、次元が異なっているのだ。だからサイクルではなく、らせん状の構造になっている。


(図)・・有料・活動支援版メルマガにて公開中


■ 「一村一品運動」の誤り

 その商品は、本当に社会のニーズに合致しているのだろうか。「良いもの」を作っても売れるわけではない。よく「一村一品運動」がされるが、商品で当たるものは千に一つだ。もし千の村が一村一品運動をしたなら、999の村が失敗することになる。

 そうではない。「良いもの」を作るのではなく、「売れているものを良いものにする」のが鉄則だ。

 こうしたニーズに対応した商品作りを「マーケットイン」と言う。それがまず重要だ。しかしそれだけではすでに時代遅れだ。人々のニーズはすでに「価格」ですらないからだ。たとえばコンビニで人々が買い物をしている。そこは価格だけで言うなら決して安くはない。

 そこには「利便性」という価格を超える価値が乗っているのだ。
ぼくはこれを「発展型マーケットイン」と呼んでいる。利便性だけではない。社会性ある商品、フェアトレード、ストーリー性ある商品など、発展型が求められているのだ。

 ぼくは地域経済の活性化が大事だと考えているから、ターゲットは都会資本だ。都会資本が地域内で発達してしまうと、地域の大事な資金が都会に吸い上げられてしまう構造になる。だから都会資本の店があるなら、もっと良いものをもっと安く、もっとすてきに販売することができないか考える。そこに必要なのがもう一歩超える発展型マーケットインなのだ。それを知らせるためにもソーシャルメディアの活用が重要になるのだ。


■ リスクつぶしを

 事業化の前に考えるべきことは多い。いくつか並べてみよう。


(図)・・有料・活動支援版メルマガにて公開中


 今見たようにニーズに合致しているのかどうかが重要だが、同時に「社会性」がなければならない。ただ収益を得るだけでは、今後淘汰されていくだろう。なぜならマーケットインの手法を超えないからだ。社会性を持たなければ持続できない。

 当然のことだが「収益モデル」の健全性が重要だ。事業を開始すれば、日々経費が発生することになる。借りたとしても金利がかかる。そこでまず、事業開始前から集客できることが重要だ。

 友人が建てたコミュニティー型のエコアパートは、賃料が周囲と比較して高かった。そこで友人は、インターネット上にコミュニティーを立ち上げて、そこでエコアパートとはどんなものかを話し合った。建物が立つ前の時点で、彼のエコアパートは満室に達していた。この広報手段で、費用がかからずに効果が大きいのがインターネットとSNSだ。広報手段を持たない事業は成り立たない。

 もうひとつは"金利"をきちんと理解することだ。


 ある友人の事業は成功していた。年間の収益率は5%以上あった。しかし彼はそこを理解していなかった。なんと借り入れている資金は最大で、17%もあったからだ。金利の方が高ければ、当然事業で稼いだ利益はすべて金融機関に吸い上げられる。収益率と金利や配当率のバランスを見ていなければ、経営はできない。

 また確固とした「意志と能力」がなければならない。あいまいだったり、「やっている事業が良いことだから」と甘えていたならば、事業にはならない。そしてそれを裏打ちするのが「実行組織」だ。必要な人的・物的な資源が<揃っていることが必要だ。

 しかし一人でやろうとしてはいけない。良いリーダーは、必ず穴だらけに見えるものだ。なぜなら彼だけに任せるのは心配だからと、周囲が支えるために集まってくるものだからだ。だからぼくはリーダーの条件について、いつもこう表現している。「リーダーはチーズのように穴だらけであることだ」と。

 正しく言うと「穴だらけに見える」ことだ。自分だけでやらずに、人に任せられる度量が必要なのだ。

 しかしそれは誰にでも頼む度量ではない。ぼくは長年NPOなどに関わってきて、よく「仲良しクラブ」と揶揄する言われ方をされてきた。しかしだから誰でもいいとメンバーを広げたら失敗する。ぼくが絶対に排除する類型がある。信頼できない人間だ。いくら目的が同じであったとしても、信頼できない人間だけは排除する。

 特にぼくは人を利用すべきものとしか見ない人間を排除する。考えてみれば、企業にしても面接などして排除しているのだ。「仲良しクラブ」と揶揄されたら、「そのどこが悪い!」と開き直るべきだ。

 以上が「リスクつぶし」の大まかな内容だ。それが終わる前に事業を始めると失敗する確率が高くなる。どんなにコンテンツが良かったとしても、体制を整えてからでなければ成功しないだろう。

 リスクを可能な限り考えて見つけ、それに対策してから事業を始めていくことにしよう。


■ 資金

 そこで前号の話をもう一度読んで欲しい。「おカネの入り方、三つ」の部分だ。






 最初のおカネを得るには三種類しかない。「寄付」か「出資」か「融資」だ。
その三つにはそれぞれ特徴がある。


「寄付」
 福祉など、収益性のないものをするときに用いる。要は返済できない資金を集めるときにはこれしかない。寄付は個人、助成金、企業のメセナやCSRを探すことになる。しかし企業は業績が悪化すればやれなくなるし、助成金も今後の経済状況から考えて、大盤振る舞いを続ける現政権でなくなれば当然出せないだろう。


 そして個人だが、言うまでもなく生活が苦しい。しかも困っている人の方が、困っている人のことがわかるから同情的だ。すると貧しさの循環を作ってしまうことになる。


「出資」


 収益があることが前提だ。しかし融資と違って、「出資者」には万が一の時には出資額が戻らなくなるリスクがある。したがって、事業者と共同してリスクを負担する関係だ。もともとNPOは出資を受けることができない。出資という言葉自体が「配当すること」を前提にするためだ。配当を受けたのでは営利になってしまうから、NPOは出資が受けられないのだ。



「融資」


 収益がなければ返せない。こちらは相手の事業が成功するかどうかに関わりなく返済を受ける。したがってリスクの低い事業に対して行う。NPOが受けられるのは、この融資と寄付だけだ。この資金調達の方法で、ぼくはすでに「融資」は未来バンク、天然住宅バンク、公益財団法人信頼資本財団、ap bankに関わっている。

 さらに近日中には「投資」もできるようになりそうだ。この三つの手法が使えることになると、多くの市民事業の下支えをすることができるようになるだろう。ぜひ実現して、ぼくに事業資金の相談をしてほしい。

 今号ではここまでにさせていただきたい。
続けて次号では、「事業化をする方向性」の考え方について伝えたい。残念ながら、想定していたより、説明すべき話が多くなりすぎてしまった。連載になってしまったことをお詫びしたい。

(今回の内容も、「田中優的 身の立て方講座」をベースに作成いたしました。)


------ バックナンバーここまで --------
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今回は、2012.7.8発行 第17号 『日常生活からのテイクオフ』です。

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