2016.4.28田中優無料メルマガより
□◆ 田中 優 より ◇■
『風来の源さん』のこと
■日本一小さい専業農家
金沢に住んでいる友人が本を出した。『小さい農業で稼ぐコツ』という本だ。
彼とはずいぶん前に出会った。ぼくが金沢で講演とワークショップを頼まれて開催したときの受講生だったからだ。西田さん(通称名は「風来の源さん」)の印象は頭の回転の早い人という感じだった。彼はコストに敏感でありながら、金儲けではなく幸せに家族と農業をして暮らすことを目指している。
「年収は450万円を上限にしたいんです。それ以上稼ぐには農地を広くしなければならないし、何より人を雇わなくちゃならない。人を雇うとそのコストを稼ぐために、どうしても大規模化しなければならなくなりますから」と。
その彼は現在、わずか30アール(100m四方が1ヘクタールだから、その3割の広さ)の農地で、年間の売り上げが1200万円あるそうだ。ということは原価率から考えても、言っていた450万円をはるかに上回る収益を上げていることになる。
文字通り「日本一小さな農家」だ。彼は『かかりつけ農家』の必要性について訴え、『ミニマム主義』の農家を目指している。それを成功させ、どうしたらできるのかについてを惜しげもなく本で伝えているのだ。その本を読むと、農業をしたこともないぼくですら、やってみたいと思う。そこには原価計算から、作物の育て方、収穫の仕方、調理の 仕方に至るまで懇切丁寧に書かれているからだ。
■何を食べているのか
私たちは食事を毎日欠かさず食べているにもかかわらず、食事に無頓着だ。何を食べているのか、それがどんな効果を及ぼすのかすら考えない。『医食同源』という言葉を持ち出すまでもなく、私たちの体は食べたものによって作られている。だから病気の原因となるようなものを食べればいつか必ず病気になり、病気にならない食物を食べれば元気でいられる。ところがビタミン、カロリー、薬効成分を頼りに、成分だけの錠剤のようなものを口にして健康になろうとする。
いや、人は単純な成分だけでできているのではない。最近になって「第七の栄養素」として「ファイトケミカル」が知られるようになった。しかしそれ以前を考えてみてほしい。ファイトケミカルなど知らないのだから、当然どんな錠剤にも含まれていない。
一時流行したものに『ローフード』があった。生で食べることで健康になれるというものだ。しかしファイトケミカルは固い細胞の中に含まれているので、5分ほど煮込まないと取り出せない。しかもそれらが多く含まれるのは成長点、皮、種なのだ。つまるところ食べずに捨ててしまうものの中にこそ含まれるのだ。
もしきちんと摂ろうと思うのなら、くずとして捨てる部分を細かく刻んで出汁を取り、これをベースにして調理するのがいい。さらに「アゴ出汁(トビウオ)」を摂ることで、さらに健康に近づける。もし「かかりつけ農家」がいたならば、自分で栽培することも、どう調理すればいいのかも知ることができる。
源さんは調理法をよく知っている農家だ。そして調理するから調理法に最も適した野菜の品種を知っている。私たちからすれば「ハクサイ」といえばたった一種類の野菜だが、彼は「キムチに最も向いた品種は○種苗の○だ」と言う。しかも新芽からトウが立つまでの間ごとの味わい方を教えてくれ る。
■広告代理店を不要にする
あるとき、彼の野菜の苗が金沢のフェアトレードショップに売られていた。農家ならいくらでもあるキャベツの苗を、百円で売っていたのだ。キャベツは通常、苗一つから一つのキャベツしか採れないのだから、キャベツ自体を百円で買った方が安い。
自ら育てることで栽培に親しむことができるにしても、高いのではないかと思った。しかし源さんの方がさらに上をいっていた。彼は今回の本の中で、キャベツを三回収穫する方法を示している。彼が知らせたいのは農家の苦労などではなく、農家の楽しさなのだ。
さらにすごいのは、彼が販売方法にも長けていることだ。販売方法には現在、革命が起きつつある。従来なら選挙みたいに商品の名前をメディアが連呼し、その名前につられて買うというのが普通だった。だから「電通」のような広告代理店が闊歩し、大資本の商品ばかりが売れていた。
しかし源さんの売り方は違う。毎日の作物の様子をブログにアップし、顔の見える直接の関係で売れていく。彼は「源さん」の名に恥じぬ野菜を提供する。炭素循環型農法で農薬・化学肥料を使わず、栄養のしっかり詰まった野菜を届けている。
「命の林檎」というドキュメンタリー映画になった化学物質過敏症の早苗さんも、源さんの野菜を取っていた。「私も食べられました」と、源さんに感謝の手紙を送っていたのだ。
この販売法なら広告は要らない。彼は農家を始めるのに必要なコストの一番目に、パソコンを挙げている。広告代理店に頼らない社会革命が始まりつつあるのだ。
■未来を指し示す農家
キューバはかつて旧ソ連に依存し、そこからの農薬・化学肥料で作物を育てていた。ところが旧ソ連の崩壊によって援助が届かなくなった。食べ物の自給率は日本並みに低く、しかも作物を育てるための手段も奪われたのだ。キューバの人々はひもじい思いをしながらも、一人の餓死者も出さずにそれを乗り越えた。それが有機無農薬の実践だった。といっても言われてすぐできることではない。
ところが農薬・化学肥料ばんばんの時代にも、有機無農薬を実践していた農家がいた。しかも野菜料理が苦手な欧米人の中に、野菜を美味しく調理できるアジア系移民の人たちがいたのだ。彼らが「こうすればいい」と方向性を示したことで、この「スペシャルピリオド(特別な期間)」を乗り越えたのだ。
こうして未来を指し示すことのできる農家のいたことが、キューバを救ったのだ。その話をぼくは講座の中でした。まさにその言葉を実践してくれたのが源さんだった。彼の本の結びにその言葉が書かれていた。『いや、期待以上だよ』と彼に伝えたい。
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★西田さん(源さん)のホームページ「風来」はこちらです
http://www.fuurai.jp/s-yasai.htm
★こちらの動画もわかりやすいです!
動画『無農薬野菜 ミニマム主義農家』 (再生時間約7分)
https://youtu.be/kM8JZ9Iv404
★「小さい農業で稼ぐコツ」はこちらよりご購入できます
■amazon http://www.amazon.co.jp/dp/4540151363
■風来さんのHPでも販売しています。
(こちらは送料194円かかります。畑MAPのおまけつき)
http://www.fuurai.jp/shouhin-kisetu.htm