2010年3月20日

21日@東京 明治大学 イラク開戦から7年、検証シンポジウムへのおさそい

□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□

「イラク戦争なんだったの!?」開戦から7年、検証シンポジウムへのおさそい

 いきなり固い話で恐縮だが、たまにはまじめな話をさせてほしい。ぼくの「隠し芸」なので、たぶん今後書くことはないと思うのだが、実は法学部でまじめに勉強していたので、法律は得意なのだ。でも厳密な定義に基づいてする法律論は、どうしても「悪文」になる。それは読者を減らすのでやりたくないのだ(普段の文章もわかりにくいって? それはあきらめてください)。

「国連決議1441」の話

 これがイラク戦争に踏み込んだ根拠とされているのだが、以下のようなものだ。*****「この決議によって、イラクに関連安保理決議のもとでの軍備解体義務を実行させる最後の機会を与えることを決定」し、それに従い「強化された査察体制を創設することを決定する」。 さらに遵守不履行は「評価のため安保理に報告する」ものとなり、査察団の報告書を受理したときには、「状況ならびにすべての関連安保理決議の全面遵守の必要性について検討するため…直ちに会合を開く」ことを安保理に求める。 「これに関連し、安全保障理事会がイラクに対し、義務違反が続けば重大な結果に直面するであろうと、再三警告してきたことを想起する」。*****

 これだけ読むとものものしくて、イラク戦争に踏み切ったのは当然と思われるかもしれない。しかしここに書かれた文言ではなく、「書かれなかった文言」が大事なのだ。その前に国連が認める参戦の条件を見ておこう。
国連憲章が認める開戦

 国連憲章では、「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置を取るまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」とのみ開戦を認めている。 「武力攻撃が始まり」、「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置を取るまでの間」の自衛権のみだ。つまりイラクがアメリカに武力攻撃し、国連安保理が措置を取るまでの間だけ、自衛権を認めている。 しかしイラクはアメリカに武力攻撃をしていない。イラクに対する多国籍軍の攻撃は、国連安保理の措置とはならない。だから違法な攻撃なのだ。

書かれなかった文言

 決議678号<イラクのクウェートからの撤退>では、安保理が「クウェート政府と協力する加盟国に、イラクが1月15日までに上記の決議を実行しないならば」、「その後の決議を遵守し実施するためおよび国際平和と地域の治安を回復するために『必要なあらゆる手段の行使』を承認する」と述べている。 この『必要なあらゆる手段の行使』という文言が、武力攻撃のためには必要だった。だから現実にアメリカは、国連決議1441にこの文言を入れようとした。自動的に開戦できるようにしたかったからだ。しかしフランス、ロシア、中国の反対で、この文言は削られた。つまり自動的に攻撃できないことは、アメリカ自身が最もよく知っていた話だ。 さらに「安保理に求め」られていたはずの「直ちに会合を開く」こともしていない。
日本の協力は参戦だ

 国際法では、「中立」の立場を取っていない限り、参戦と解釈する。つまり敵対する国の側から見て、『あの野郎、手伝いやがって』とみなせる行為を一切していない場合しか、「中立」とは呼べないのだ。日本は参戦当事国の一方であるアメリカ軍に、物資を供与し、兵士を運び、便宜を図っている。これは国際法上、当然に「参戦行為」となり、敵対する国から攻撃を受けたとしても非難はできない。たまたまイラクが弱かっただけのことで、イラクから「参戦したから攻撃した」とされても致し方ない行為だった。 この行為は日本を戦争に導くものだ。
当時の町村外務大臣の発言のごまかし

 町村外務大臣は、当時のタウンミーティングでこう語っている。「ではアメリカが国連を一切無視してすべて単独行動主義でやっているでしょうか。そんなことはありません。実際にアメリカの行動を正当化する国際会議での議論等々の中では、必ず国連決議1441に基づいて、あるいは、それから遡る国連決議に基づいて現在のイラクに対する武力行使を行っています」と。 上に見たように、国連決議1441は武力行使を認めていない。再度の国連決議がなされなければ武力行使はできなかった。これは人々を欺く悪質なごまかしだ。

具体的な日本の参戦行為

 それは「イージス艦、インド洋派遣」や「自衛隊のサマーワ派遣」によって行われた。だが自衛隊の任務は「イラクの人たちに水を届けること」だったから、それだけなら参戦とは言えない。効率は悪かったが、それだけなら参戦とは言えないだろう。 となると、当時の小泉元首相が決断した「イージス艦、インド洋派遣」だけが参戦行為と言える。しかしその決定は、小泉元首相が石破防衛庁元長官との協議のみで決められている。閣議決定すらなく、「基本計画」の変更も、「国会報告」も「国会審議」もない。なんと防衛庁長官が定める「実施要項」の護衛艦にイージス艦をただ付け加えただけで実行してしまった。
「独裁者」が二度と生まれない仕組みを

 これは独裁者のやり方だ。運よくイラクが弱く、「弱い者いじめ」だったから戦争に巻き込まれなかったが、他国だったらこうはならない。国会審議もしない独裁者の決定によって、日本はあやうく戦争に巻き込まれるところだったのだ。これを二度と起こらないようにしなければ、安心して暮らせない。 二度と起こらないようにするにはどういべきだろうか。そういうことをした人間に対して罰することで、他の人がまねすることがないようにすべきだ。これが刑法の予定する「抑止効果」だ。だから小泉元首相が独断専行で決めた以上、イラク戦争参戦の賠償を「個人」に課するべきだと考える。そうでなければ抑止できないと思うからだ。
海外では始まっている検証!

 オランダでもイギリスでも、イラク参戦に対する検証が始まっている。二度と間違った戦争に加担しないようにするためだ。それは平和憲法を持つ日本にこそ必要ではないか。ただし日本国憲法違反だけが問題なのではない。この戦争は「国連憲章」にも「国連決議」にも違反して行われているものだからだ。だから憲法9条の論議以前の問題なのだ。 日本国民全体を組み込む重大決定を、国民の代表たる国会議員の議論もさせず、「事務手続き」だけで進めたのだ。私たちはあやうく第二次大戦の被害を再現させられるところだったのだ。

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「イラク戦争なんだったの !?」 開戦から7年 検証シンポジウム

 「大義のない戦争」「石油のための戦争」として、世界中で反対の声が上がったにも拘らず、2003年3月20日、強行されたイラク戦争。日本でも、盛り上がる戦争反対の世論を無視し、当時の小泉首相が戦争支持を表明しました。

 あれから7年、日本の検証を求める動きが全国各地で高まりつつあります。昨年、イギリスやオランダでイラク戦争の独立検証委員会が設置されたことを受け、私たちは同年11月、「イラク戦争なんだったの!?─イラク戦争の検証を求めるネットワーク」を立ち上げました。 有志の国会議員も応え、すでに80人余りが「イラク戦争検証を行うべき」との議員署名に賛同。岡田外相も国会で、検証を行いたいとの意向を明らかにしました。

 イラク戦争の検証は、日米同盟や憲法論議、国際社会の中での役割、そして私達の税金の使われ方など、今後の日本のあり方を問う上でも、重要ではないでしょうか。

  このたび、私たちは、“日本での検証を実現するためには何が必要か?”“検証すべきことは何か?”“検証を経て、私たちは何を求めていくのか?”などを、各分野の専門家とともに議論するシンポ ジウムを開催いたします。

 7年前のあの日、少しでも「おかしい」と感じた方々、昨年の政権交代で何かが変わるかも、と思った方々、ぜひ、本シンポジウムにご参加下さい。

【日時】2010年3月21日17時から19時半【場所】明治大学リバティータワー1F・1012教室http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html(千代田区神田駿河台1-1)

【主な内容予定】
・イラクの現状 (佐藤真紀/JIM-NET、高遠菜穂子/イラク支援ボランティア)
・国際法の観点からのイラク戦争の問題点  (東澤靖/日弁連国際人権問題委員会委員長、HRN理事)
・イラク人道復興支援の問題点 (高橋清貴/日本国際ボランティアセンター)
・イギリスとオランダのイラク戦争検証委員会について  (スピーカー交渉中)
・自衛隊派遣の問題点 (川口創/イラク自衛隊派兵差止訴訟弁護団)  *敬称略

【問合せ&詳細】「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」HP:http://isnn.tumblr.com/メール:regretiraqwar☆gmail.com(☆は半角@に換えてください)電話連絡先:090-9328-9861(志葉)

※全国各地でもイベントがあります!※
くわしくは、こちらをごらんなり、お近くの会場に、ぜひご参加ください!
http://isnn.tumblr.com/post/447436735/7


 ~~ メルマガ第70号より