2012年7月30日

「Rolling Stone」にインタビューが掲載されました!




音楽雑誌「Rolling Stone(ローリングストーン)日本版」での田中優インタビュー内容がwebにてアップされています。一部ご紹介させて頂きます。

★全文はこちら⇒ http://www.rollingstonejapan.com/politics/yu-tanaka/
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『日本には優れた技術がある 
 原発をやめてスマートグリッドにすれば世界で最高の競争力が持てる』

-3・11の前後で明確に変わったことは何でしょう?

「震災以前、原発の否定はタブーだったし、なくていいと考える人は非常に少数でした。
脱原発というと『原始時代に戻りたいのか』と言われ、人々はそれに納得していた。
今はそんなバカなことを言う人はさすがにいませんよね」
-チェルノブイリからずっと一貫して脱原発という姿勢を貫かれてきたいちばんの
 理由は何ですか?

「僕は『義理人情』って言っているけど、親しい友人はもちろん、人々が嫌な目に遭わせられることが許し難い。特に子供が虐げられるのは本当に嫌なんです。
 先日出たデータですが、政府の統計で、事故から一年経った今、福島県内の子供たちの死亡率が1・5倍伸びている。事故による被害のピークは約10年後で、7年後くらいからさまざまな病気が急激に増えます。それを考えると当然この後、トータルで万単位の被害者が出る可能性がある」


-それはよく言われる甲状腺がんや白血病で?

「がんは一部です。実際には心臓病や高血圧などの循環器系です。
ユーリ・バンダジェフスキーが徹底的に調べ上げています。疾病と体内セシウム量の比例関係を見いだしました」

-辿っていくと「世界的な原子力マフィア」ということになってしまうかもしれませんが、根本的な原因はどこにあるんでしょう?
「僕は金だと思います。金の切れ目が縁の切れ目で、最近メディアが結構きついことを報道するようになりましたよね。あれは東電から広告宣伝費が出なくなったからです。

 現在、東電は総括原価方式(公共料金を設定する方式のひとつ。燃料費、運転費用、営業費用などをまとめた費用を“総括原価”とし、それに一定の利益を上乗せして料金を算出する方式)で電気料金を設定していますが、その中にオール電化の広告宣伝費を入れられなくなった。事故以降、東電はオール電化のコマーシャルを自粛しており、禁止に向かっています。
 2014年からは、総括原価方式そのものも廃止される方向です。経済産業省の『電力システム改革専門委員会』での取り決めです。今後まだ紆余曲折があるとは思いますが」


-さらには再生可能エネルギーの全量買取制度も7月に施行されると。

「それももちろん重要ですが、はるかに重要なのが電力の自由化です。東電は利益の91%が家庭向けの電気料金から得ています。自由化されると、この高すぎる電気から、もっと安い電気にみんな逃げます。

 そもそも総括原価方式も、戦後の復興期に、集中的に今後大きくしたいインフラに有利になる仕組みとして進められてきたものなんです。発電所や電力が足りなかった時代に、『つくればつくるほど儲かる』という仕組みが、安定期に入ってもずっと続けられてきた
ことが問題です」

-総括原価方式の廃止」と、もうひとつの大きな肝だと思われる「送電線の自由化」も実現されるんでしょうか?

「今なお方針上、実現されることにはなっています。実際に『次世代エネルギー・社会システム実証地域』に選定された北九州市の八幡東区東田地区では、スマートグリッド(次世代送電網。IT技術を使い、使用量に合わせ電力を自動的に調整する仕組みで、発電量が不安定な自然エネルギーに適していると言われている)の実証実験を行っていて、独立して電力を供給しています。新日鉄の工場で作られる余分な電気を利用しているんです。
今エネルギー業界では、そのような話をずいぶん聞きます。ピーク消費を下げさせるため、時間帯によって電気の価格が約4倍高くなったりしますが、需要を調整すれば、余っている電力の有効活用で足りるようになるのです」

-明るい未来への変化の兆しも、少しながら見えてきている?

「僕はデータ・マニアなんです。だからデータを調べ上げ、その事実を『こうでしょう?』と出すのがいちばん好きで、それが自分の役割かなと思っています。その情報を全部オープンにして、みんなが情報という武器を持つようになれば社会は変わるだろうと思ってる。
 僕の目標は『社会を変えて、もっといい社会にする』いうことなんです」

-そこでおっしゃる「いい社会」というのは、どんな社会でしょう?

「きわめて単純です。人間は最終的に滅びるけど、その滅びるまでの時間を短くするのが
悪いことで、延ばすのがいいことであると。そう考えた時、将来を長く保たせることができ、そこに住む人たちが不幸な状態ではない、つまり差別とか格差がない状態で長く住み続けられたらそれがいちばんいい。

 『データから考えたらこうしたほうがいいでしょう?』というだけのことで、『原発を
すすめてもいいけど、それじゃあ人類が滅びるのを近づけちゃうよ』と。そのうえで、
自然エネルギーにしたほうが儲かるんだから、という説明をするようにしているんです」

-誰でも、儲け話には耳を貸す?

「みんな説教には耳を閉じるけど、『儲かりまっせ』って言われるとピクッと振り返って
くれる(笑)。実は日本はエネルギーの輸入量が莫大で、去年31年ぶりに貿易赤字になり
ました。一年間に、海外の石油、石炭、ウラン、天然ガスのために23〜27兆円を払っているんです。自然エネルギーに変え、そのお金を国内にまわしたら、一都道府県あたり毎年
約5000億円以上が入る。そしたら雇用だって増えるんです」

-ドイツは約27万人増えたとか。

「約12倍に増えました。オーストリアではバイオマスにした地域で15倍伸び、しかも
電気料金が下がりました。そういったことが現実にある。現在、世界でいちばんお金が
注ぎ込まれているのがスマートグリッドです。それには、『省エネ製品』『バッテリー』
『電気自動車』『自然エネルギー』『IT技術』の5つの技術が必要なんですが、日本はその
すべてにおいて世界一優れているのです。だから、原発をやめてスマートグリッドの技術
を磨いていけば世界で最高の競争力を持てるのに、なぜやらないのというだけの話なんです」