2009年6月9日

JVC(日本国際ボランティアセンター)が、ベトナム支援を終えた




□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□


JVC(日本国際ボランティアセンター)が、ベトナム支援を終えた


 「日本国際ボランティアセンター(JVC)」と聞くと、なんだか古い建物の片隅に入った公の団体のように聞こえるが、由緒正しいNGOだ。たしかに古い建物にいるのは事実だが。JVCはタイ・カンボジア国境難民支援のために、1980年にタイの難民キャンプで誕生した。日本人の団体だが、生まれは日本ではないのだ。だからこんな名前になっているのだ。 ぼくはずいぶん前からこの団体の理事をしている。JVCに関わることで、とても多くのことを学んできた。JVCはくそまじめで律儀で、不正なことはしないし、カネになって有名になれることでも信念を曲げるぐらいなら躊躇せずに断る。ぼくは「硬派」と呼んでいるが、それを心の底から好ましいことだと思っている。

 そのJVCが今年、ベトナムでの活動を終了した。その理由は、人々が自分たちでやっていけるようになったからだ。JVCは合鴨農法の達人を派遣し、農薬に頼らない農法の普及に努めた。牛・豚の銀行(牛・豚を貸し出し、子どもを増やして返してもらうので、銀行のような仕組みになる。)や草の根の獣医の育成をしたり、村内の道路整備や井戸の設置、水利用の改善などの小さなインフラ整備を支援する。果樹の栽培や作物の多様化を進めることによって、安定性の高い暮らしの実現をめざしてきた。

 インフラと言ってもカネは届けないし、自分たちの力でやってもらう。支援といっても彼らのすることを重視していて余計な口出しはなるべくしない。その結果、彼らは自信を持って自分たちの活動を広げ、ついには支援の必要がなくなった。「援助」は「援助が必要な間だけ」するものだ。だからいつまでも終わらない援助はそもそもおかしい。支援団体だけの問題ではないとはいえ。

 ベトナムで活動最後の総括の集まりがあった。約20年いたから、さまざまな人たちが参加してくれた。しかしそこでベトナムの人々が口々に言ったのは、「私たちはその後、こんなに活動を広げた」という報告だった。 こんなにうれしいことはない。私たちではなく、ベトナムの彼らがしているのだ。彼らの心に根付いた活動は、今後も終わることがない。彼らとは今後も交際させてもらい、まだ十分には進んでいないラオスなど各国からの見学者を受け入れてもらう予定だ。しかしもはや支援ではない。対等な関係での「受け入れのお願い」だ。

 数年前、タイ東北部での活動が終了した。ここはかつて深刻な貧困地域で、タイの歓楽街はイサーン地方と呼ばれる東北部と北部からの女性たちであふれていた。食べられないから人身売買同然に送られてしまうのだ。JVCはそこで支援活動をした。あるとき、彼らを招いて日本の地方の農家の活動を見学してもらった。彼らは山形で見つけた活動をタイの東北部に持ち帰った。それが「朝市」だった。そもそも伝統的な農村ではないタイ東北部では、首都バンコクの仲買人に農産物を売り、同じ仲買人から生活用品を買っていた。

 つまり売るときと買うときの両方で収奪されていたのだ。そこで朝市を始めた。最初は恥ずかしいから子どもと老女ばかりが売っていたのだが、それが生活に貢献することがわかるにつれて母、父と参加していくようになり、周囲の村々にも伝播していった。それで変わったのは、売り買いの両方で収奪されていたおカネが自分たちの中で回るようになり、おカネが残せるようになったことだ。しばらくすると借金を返済できるようになり、人によっては完済した。借金さえなければ、農家は生活していける。 一方の朝市は、ローカルマーケットを作るまでに成長した。外部から金儲けの事業者が参入したり、農薬をたくさん使った作物が運ばれたりした。そのときにも彼らは自主的にルールを作り、地域のためのマーケットにしていった。そうしてここも自立し、JVCは支援を終了したのだ。

 そして今なお果敢に困難地域に関わっている。入ることも困難なイラクには現地スタッフを通して医療支援をし、今なお戦闘が続くアフガニスタンでは問題の原因となっているアメリカ軍に抗議をしながら困難な女性たちの暮らしに支援し、イスラエルの激しい攻撃のあったパレスチナにはビスケットの栄養支援をし、長い内戦の続いたスーダン南部には帰還難民の支援をする。世界のあちこちで活動している。どうしてその国が選ばれたのか。その理由は支援しようとする人がいたからだ。JVCは分散型の組織だから、組織のトップが決定することはない。支援したいと思う人たちの集まりがJVCだ。JVCのポリシーを共有する人のネットワークとして、今なお存在するのだ。29年前のままに。

 しかもきちんと批判する。日本が自衛隊を外に派遣しようとすれば反対して抗議し、イラクを侵略しようとするアメリカに協力する政府に抗議しデモする。「政府開発援助(ODA)」のおカネを受けていたとしてもまったくひるみもしない。日本にもこんな団体があるのだ。ぼくはそれがうれしいし誇らしい。ぼくは理事をしているが、実務に関わっているわけではないのだから功績には関係ない。功績はもちろん活動するスタッフたちのものだ。そんな団体だから支援したい。もしできる余裕があったら、百円でいいから寄付してほしい。関わりをもってほしいのだ。


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認定NPO 日本国際ボランティアセンターhttp://www.ngo-jvc.net/

郵便振込みの場合口座番号: 00190-9-27495加入者名: JVC東京事務所寄付先の指定をご希望の場合は、その旨通信欄にご明記ください。(例:「アフガニスタン支援」など)

「月500円からの自動引き落とし
『マンスリー募金』」http://www.ngo-jvc.net/jp/support/monthlybokin.html

「クレジットカード募金」https://gt205.secure.ne.jp/~gt205119/form_creditbokin11.html

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