2016年1月11日

『大飯原発の再稼働は不要だ』 

2015.11.13発行 田中優無料メルマガより転載


2011年12月に開始しました「田中優有料&活動支援版メルマガ "未来レポート"」のバックナンバー(文章のみ)を公開しています。

今回は、2012.5.30発行 第15号 『大飯原発の再稼働は不要だ』です。

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『大飯原発の再稼働は不要だ』  (2012.5.30発行)


◆供給力が足りない

 一番もっともらしい説が原発が止まっているために発電所の供給力が足りないというものだ。

 しかしこれは奇妙なことに、関西電力(以下「関電」と略す)の言い分は「15.9%足りない」という説明から、いったん「5%足りない」に下がり、再び今は「15.9%足りない」に戻っている。

 しかも再稼働の理由も、「電力需給の問題ではない」と何度も繰り返したのに、結局は「足りないからだ」となっている。全然説明になっていない。

 この理由は、足りないとする電力供給元を調べると理解できる。

 関電や政府の電力供給量の想定と、市民側の示す供給量の差は、主に「他の電力会社からの融通電力」と「揚水発電所の供給量」の二つの供給量が異なっていることによっている。

 関電は他社からの融通電力を少なく計算しているが、電力送電網の結節点になっている関電には、少なくとも北陸電力、中部電力、中国電力からの電気が届く。関電の「融通電力には期待できない」とする数値は、すべての地域が同じ日、同じ時間にすべての電力会社の電力消費ピークが来ることになっているためだ。だから足りなくなる。

 電気は貯められないから、どうしてもピークの消費を賄えるように発電所を用意しなければならない。

 それはわかるのだが、共同通信社の調査では、実績に基づいた上で西日本の電力6社が5%強の節電をして融通すれば、電気は不足しないという結果だった。(2012年5月17日 共同通信)

 また、これまで「原発とは関係ない、需給の観点から運用している」と言ってきた揚水発電所を、なぜこんな肝心な時に十分使おうとしないのか。供給力465万キロワットの半分ほどしかカウントしていない。ちゃんと使えば両者だけで電力の供給は足りるのだ。

 それ以外にも「太陽光などの自然エネルギー」をほとんど計算に入れていないことや、企業の持つ自家発電設備の余剰分の買い上げも検討していない。東日本大震災から一年以上の時間があったのに、休止中の火力発電所の手入れをして万が一に備えなかったなどだ。


◆本当の理由は「損するから」

 なぜか電力会社同士で融通する電力は値段が高い。だからピークの時間帯に買いたくないのだ。それが「融通」しようとしない理由だろう。


 もう一つ、揚水発電を十分に使わない理由はもっと根深い。

 揚水発電を動かしたくないのは、10の電気を受け取って水を上の池に持ち上げても、翌日のピークに落として発電するときは7しか電気を生まないせいだ。実は3割ずつ電気を無駄にするのが揚水発電で、その電気は通常、深夜に余る原発の電気を使っている。

 原発は弱火にすることができない発電所だから、発電している限り一年中、出力100%で動かす。だから深夜、電力消費が減ってしまうと電気が余ってしまうのだ。その電気の受取先が揚水発電で、「原発とは関係ない」どころか、原発がなかったら存在そのものが不要なのだ。

 ところが原発が止まっているから夜に電気が余らない。すると揚水発電所の上のダムに水を揚げるには、他の電力会社から電気を買ってこなければならない。それはとてもカネがかかる。太陽光や民間会社の自家発電を当てにしたら、今後はそこから電気を買わなければならなくなる。火力発電を動かせば、原発なしでも電気が足りると言われてしまう。だから意図的に供給力不足を作ったのだ。


◆何をすればいいのか

 本当は節電を勧めるのが一番いい。しかし勘違いしないでほしい。節電すべきは家庭ではなく事業者だ。電力消費のピークである「夏場・平日・日中・午後1時から4時」には、家庭の電力消費は10%程度であることは前回の支援版メルマガで立証した。 家庭を減らさせてもほとんど影響しないからだ。

 中でも節電効果が大きいのが業務用の電力だ。オフィスや病院、デパート、冷凍冷蔵倉庫、コンピューターのデータセンター、半導体工場のクリーンルーム」などだ。なだか節電困難として関電は除外してしまっているのだが、これこそが節電できる分野だ。現に「冷凍冷蔵倉庫、コンピューターのデータセンター、半導体工場のクリーンルーム」などでは、エアコン買換えと合理的な運用で、三分の二の節電が実現している。

 特に伸び率が大きいのがオフィスだ。オフィスではエアコンが45%、照明が21.3%を占めている。

 まず照明は反射板付きのHf型蛍光灯に変えれば一本で二本分の明るさになる。詳しくは「電気をカエル計画」のホームページを見てもらえばいい。またエアコンを節電型に変える前に熱の半分が逃げる窓に省エネ対策をしてほしい。それだけで少なくとも半分以下に節電できる。

 さらに節電型のガスヒートポンプ型に換えればランニングコストが下がる上に電気消費は10分の1から20分の1に下げることができる。オフィスは半分の電気で今と同じにできるのだ。
 しかも節電型の照明に換えたのは、未だ全体の20分の1のオフィスだけだ。


◆節電にインセンティブ(動機付け)を

 それが進むのは、やはり節電すると電気料金が安くなる仕組みを導入することが一番だ。節電すればするほど得になる電気料金にしたなら、事業者はコストに敏感だからあっという間に節電するだろう。


 ところが現状の事業系の電気料金は、使えば使うほど安くなる。関電はもっと悪い。

「はっぴeポイントクラブ」なるものを作り、電気消費を増大させるオール電化を推進し、電気を使うともらえるポイントを作り、電気消費を促進している。東電はなんとか節電すれば得する電気料金を家庭向けだけだが導入したが、関電にはその気配すらない。それで電気が足りないというのだ。

 節電も進めず、融通電力も買おうとせず、発電施設も復活させようとしない。どこかの総理が「私の責任で」などと言うが、あんたの責任で大地震が止められるとでも思っているのか。
 副大臣を現地に人身御供で置くようだが、盗塁したいランナーみたいに「リーリー」言って逃げる準備をしているだけだろう。

 大飯原発は免震棟を持っていない。オフサイトセンターは海抜が低くて原発より先に水没する。

 3,4号機の後ろには崖があって、地震で崩れ落ちる危険性がある。

(写真)



 

 その場所に電源車を配置しただけで万が一のときには電気が届けられると言っているだけだ。冗談のような状態だ。

 しかし地震の発生確率は低いだろうから、とタカをくくっているのだ。それを「私の責任で」と言う。絶望的な無責任状態だ。


◆企業会計のためのいけにえ

 2012年5月16日、民主党内の作業部会の合同会議で、仙谷政調会長代行は、「需給問題とは別に、再稼働せず脱原発すれば原発は資産から負債になる。企業会計上、脱原発は直ちにできない」と話した。

 現状の関電の総資産1.5兆円のうち、原発関連が8900億円を占めている。それが廃炉となると、原発は「資産」から「負債」に変わる。残りの資産額6400億円も、毎年約2400億円の赤字経営なのだから、あと3年ほどで経営破綻だ。


 本当の原発の発電コストは高い。詳しくは「原発のコスト(大島堅一著/岩波新書)」
を見てほしい。
(グラフ)

 原発が重荷となって破綻寸前になっているのだ。特に原発を作りまくった関電の会計は瀕死の状態だ。しかしそれを救うために国民の命を賭けるのはおかしくないか。

 今の政策のままだと、原発は動くほど負債を増加させる。動けば使用済み核燃料が発生して将来のコストを増やす。しかしその負債である「使用済み核燃料」を「資産」扱いさせてきたのだ。

 再処理して「新燃料」として使うという偽装シナリオのもとで、猛毒の有害物質を「資産」として計上させてきた。そのために、動かさなくても維持費だけで毎年1100億円かかる「六ヶ所村再処理工場」や、同じく200億円以上かかる「高速増殖炉もんじゅ」を資産扱いさせてきた。

 原発を止めると総発電コストが上がるのは、火力発電の燃料代のせいではない。原発は動いていなくても数百億円の維持費がかかるのだ。これはきっぱりと清算しなければ、もっと費用がかさむことになる。

 愚かな政府は時間を稼いで、その間に電力会社に利益を上げさせ引当金を積み、債務超過にならないようにしたいと考えている。しかしそれなら、企業会計に例外を設けた方がまだましだろう。

◆世論30%を「いやいやながらの容認派」にしようとしている

 しかし2012年3月の「日本世論調査会調査」では、将来は原発をなくす「脱原発」派に、「賛成」が44%、「どちらかといえば賛成」が36%、合計で80%だった。


 その一方で停止中の原発について、「電力需給に応じ必要分だけ再稼働を認める」
が54%だった。「電力が不足するのなら、安全が確認された原発は再稼働させてもよい」とする人が51.5%と過半数を占めている。

 ということは、停電で脅せば、人々は「停電するのは困るから再稼動を認めよう」と考えることになる。

 「停電」で脅かせば、キャスティングボードを握っている人々を、「いやいやながら原発再稼動を容認する」状態にすることができる。「いやいやながらの容認派」に仕立てることが、今回の計画停電の目的なのだ。

 しかし現実のデータで調べてみると、昨年の東電が行った計画(輪番)停電は過剰なものだった。

 電気が逼迫したのは震災直後の発電所が停止していた一週間で、

(グラフ)

 しかも時間帯は平日の10時~12時、土日の午後6時となっていた。
(グラフ)

 土日の消費量は平日より2割少ないから、電気が逼迫しないのに計画停電で脅された。電気消費は気温が低い日に高くなっているが、それは効率の悪いエアコン暖房と、「オール電化」が原因だったことは明らかだ。
(グラフ)

「東京電力でんき予報」より作成 http://www.tepco.co.jp/forecast/index-j.html


 一日の中で消費ピークが出るのは「平日の午前8時から12時」と、「休日の夕方18時から22時」だけだというのに、計画停電の予定時間は、午前6時20分から夜22時まで行われた。続いて意味のない「節電協力」が行われ、自主的な節電協力による電車の間引き運転と混雑、暗い車内、夜の街路灯の消灯など、ずっと圧迫されていた。
 ピークの出るはずのない夜間に街路灯が消され、強盗の増加と不便を強いられた。

 これに人々は懲りて、「脱原発」なんて言わなくなるだろう、というのが為政者と電力会社の考えだろう。

 実際に人工透析患者の透析時間が短縮されたり、在宅で酸素療法の患者が停電により酸素供給が停止したりして、死者も出ている。こんなひどい話を放置していいのだろうか。


◆知っておいて! 停電は偽装だ!

 大口電気需要家に対する「電力使用制限令」は見送られた。電気事業法に基づき、大口の契約電力500kw以上需要家の使用最大電力を制限する措置だ。しかし実行されることになった「計画停電」は、家庭や商店などの小口需要家だけに地域を区切って停電させるものだ。大口契約者にやさしく、家庭や小口の消費者に厳しい。

 特に中小零細は大変だ。停電が起これば、バックアップ電源を持っていない中小零細企業は大事なデータを失うかもしれない。

 「どうしてくれるんだ、市民がバカみたいに原発なしでも電気は足りると騒いだおかげで我々の業務には大きな被害が出たんだ。やっぱり原発なしでは雇用も守れない、原発再稼働は生命線だ」と怒りだす。

 こうして「原発神話」は復活するのだ。政府や電力業界が信頼に値するかどうかは、昨年の「輪番停電」の現実から明らかではないか。


 私たちにできることは、このことを多くの人に知らせることだ。後になって「偽装だった」と「検証」するだけのメディアではダメだ。しかし今の私たちには、インターネットとSNSがある。

 彼らが偽装停電ができなくなるくらいに多くの人に知らせよう。ここは市民の伝達力と、推進側の伝達力の勝負になる。

 もちろん推進側の方が物量ともに圧倒的だ。しかし市民の小さな伝達が何度も繰り返し行われることで、彼らの偽装停電を止められることになるかもしれない。可能ならチュニジアのジャスミン革命のような伝達力を持って、彼らのもくろみを失敗させたい!



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