2020年3月16日

田中優「9年目の311、そしてこれから ~日本の森を活かす~」動画あり



 

 2020年3月11日、田中優公式動画チャンネルにて

9年目の311、そしてこれから

~日本の森を活かす~

 を配信しました。




動画URLはこちらです https://youtu.be/LKGRFjnYYG4

以下、書きおこしです。

MT311 SUMITA


(2020年3月11日)

田中優です。
今日は9年目の311の日です。今から9年前に東日本大震災が起こって原子力発電所の福島第一原発の事故が起こった時から、9年経ったわけですね。

今年の正月にぼくの友人の、新潟のさいかい産業の隊長と呼ばれている古川(正司)さんがこの家に訪ねてきました。

 
  右が古川さん


古川さんがうちのこのペレットストーブ「MT311 SUMITA」を見て「懐かしい」と言っていたんですね。何でこれが懐かしいかと言うと、MTはmore trees、311は311事故の年(SUMITAは岩手県住田町)を示したものがこのストーブの由来だからです。


 



このストーブは実はそこから始まった運動の、ある意味始まりの年でもありました。

 何が始まったかと言うと、MTはmore treesなのですが、more treesという運動は坂本龍一さんが立ち上げて、もともと「ストップ六ケ所more trees」だったのですが、ストップ六か所の方はなかなか政治的に受け入れられないということで、それで後ろの方の「more trees」というだけの名前がうけていったわけです。

それによってmore treesという運動が生まれてきたわけですけども、その311の頃に東北の方では何が起こっていたかというと、実はもちろん電気も止まりました、ガソリンも買えないという状態でものすごく困った状態になりました。


しかも現地は寒く、その寒い中暖房器具がないという中で、実はあまり知られていないですが、避難生活を余儀なくされた人たちが避難先の学校の体育館とかそういうような場所で残念ながら凍死してしまうという事件もいくつも起こりました。あまりにも寒かったんですね。

 その時にその二つの動きが合体しまして、古川さんはもちろんその東北の人たちを助けたい、何とか暖かく過ごして欲しいと古川さんは思っていて、more treesの方はその東北にたくさんある木を利用していけるような地域が自立して生きていけるような運動を目指していました。

 そこから考えついたのが、このペレットストーブを普及していくことと、そして木造の仮設住宅を建てる、ということだったんです。そのmore treesの方が考えた地域の木材を利用して仮設住宅を建て、ペレットストーブを届けていくという動きに古川さんが賛同してそれで作ったのがこの「MT311 SUMITA」のストーブだったんです。

 そのストーブが暖かいのはもちろんですが、それによって寒くて凍え死んじゃうというようなことは止められたのと同時に、他も色々協力しましてそれらの施設にこのストーブを届けて、そのペレットストーブの(燃料である)ペレットも届けていって、地域で循環してやっていけるスタイルを作りたいということで始めていったわけです。more treesの動きはずっと継続していまして、全国各地の森林地帯の応援をしたりとか、相変わらず進めています。

 そしてその時に作ったペレットストーブがこれで、このペレットストーブは、他の物はビュービューと暖かい風が出てくることによって空気を暖めるのですが、実は熱的に言うと空気で部屋を暖めるというのは効率があまりよくありません。それよりも効率がいのは「輻射熱(ふくしゃねつ)」、直接暖かい輻射熱、目にも見えない赤外線ですけども何となくこう暖かいのが当たってくるなぁという感じのあの輻射熱の方が、大変効率が良いんです。

 それによってこのストーブを作って、現在はこのストーブの後継機(後の世代の機械)が今は主力になっていますけども、事の発端はこのMT311 SUMITAで作った技術から始まっています。

 そしてそのことを何とか広げていきたいという風に考えていく中で、その頃ペレットストーブのためのペレットを供給したのは、くりこま木材という会社でした。現在は「くりこまくんえん」という名前になっていますが、そこが協力してペレットもせっせと届けて暖かい状況を届けていきました。


森から始まる地域循環



 そしてそのもう一つの動きであったくりこまくんえんにいた大場さんは、新たにもっと木材を使って暮らしやすいスタイルを作ろうと努力をしてきました。そして今年(2020年)やっと初めてできたのが、エコヴィレッジ、エコアパートを自分たちで建ち上げました。


 そのエコアパートは、もちろんくりこまくんえんというのは製材会社をやっていますから、製材したときに出る木屑(くず)で、プレーナーがけ(木材を最後にきれいにする時に木材にヤスリ掛けをする)で削るわけですけども、そのやすりをかけた時の粉、木粉がたくさん出るんです。それをギューっと固めて作ったものがペレットなんですね。

 

 木材を使うときにはいくら木を使いたいと言っても、例えば家の中に使われるような家の材料としての木材では、木材全体の実に3~4割くらいしか使われなくて、木材の中の6~7割は捨てられていってしまうんです。その6~7割捨てられてしまうものを活用したい。

 ということで一部はペレットにし、そしてまた木材としては材料として使えない枝とか細いものとか、そういったものは薪やチップにしてそうして木材全部を使えるようにということでエコアパートを作りました。

 そのエコアパートは、普通の木造アパートの3倍近く木材を使うと同時に、そこから出てきたペレットは今も古川さんのところに提供し、そして東北地帯での暖房に役立てています。


 そういう風にして、そこのアパートはドイツから輸入した発電機を導入し、木くず、枝などで作ったチップを燃やして燃料にしてお湯を届ける。そしてそのお湯を届けてもちろん暖房もしますが、同時に発電もします。その発電をした電気は、その地域の市で運営する電力会社がありそこに電気を売っています。そしてその同じところから電気を買ってくるのです。だからエネルギーがわざわざ東京経由だったり原発経由だったりするのではなく、その地域の中で循環していく仕組みをついに作りました。

 それがいよいよこの4月からスタートしていくのですが、そういう風にすることで地域循環、「森から始まる地域循」を現実に宮城県で実現する、ということをやってくれました。

 そうして木材を端から端まで役立てていき、地域の中でエネルギーも作るし、同時にそこに雇用を生み出したいんですね。


森を育て、木を活かす 


 今までの木材の採り方というのは、木を植えてそれが育ってきたら全部皆伐(かいばつ)と言って丸裸にして、その木材を使いその後に全部植林するというのが一般的なやり方だったのですが、そうではなくて山を裸にしない、まるっきり皆伐で全部切ってしまうというやり方を全部改める、という仕組みの林業を今目指して進めています。

 だからそこは今後は択伐(たくばつ)と言って、この木を切るんだという必要な木を切ってその後にそこに実生(みしょう)の木を、できれば種から育つような木をそこに育てていく、というようなことをしたいと思っています。


それがなぜ重要かと言うと、実生の木というのは、直根(ちょっこん)と言ってまっすぐな根っこをまず最初に木が育つ時に地中深くに伸ばすんですが、それを大事にした森を作っていこうということをやっています。それによりまず土深く根っこが張って行き、その根っこが土を深く掴んで山を崩さないような森作りをしていこうとやっています。

 
台風で倒れない庭木の育て方~土砂災害のメカニズムとポット苗の問題 より


さらにその林業を成り立たせていくためには、ものすごく林業には手間がかかるのですが、その手間の部分をなるべく動物たちにやってもらおうと一番手のかかる「下草刈り」の部分については牛を放ち、牛がせっせと下草を食べて育つ。

説明を追加
(田中優天然住宅コラム「第5回 いい湯だな、バハン」より)




そして今度木材を搬出するときには従来のやり方だと重たい重機でみんな運んでくるのですが、重すぎて山が崩れていく、というのが今までの林業の形だったんですが、それを馬に馬搬(ばはん)と言うんですが運ばせて何とか人の手間をかけないで、化石燃料を使わなくてもやれるような形を実現しようと進めています。


(田中優天然住宅コラム「第47回 自立的なウマ、琴姫」より)

(馬搬の様子)
 

それが今いよいよ出資も終わり融資も受けられて、いよいよ今年の4月からスタートすることになります。そういう時点からその311を振り返ってみると、社会が変わり始める最初の一歩が311だったと思えます。


311が起こる前までは誰しもが「まぁ原発は多少問題はあるけどもいいよね」という風な形で捉えていたのが、もう、今や時代が変わって「原子力は嫌だ」という人が圧倒的に多くなりました。


そして今やCO2は否が応でも出てしまうのだと言われていましたが、昨年(2019)のデータを見ると、CO2が火力発電を使っているにも関わらず減っているんです。それは自然エネルギーが伸びたこともあったし、発電効率が良くなったおかげもあります。


でもこれをもっと進めていくと人々が森からのエネルギーを使って森で育ってきた木を使っていくと、CO2を出すけれどもそれはまた再び森に吸収されていくという「循環可能な社会」が作っていけることになります。それがいよいよ今年スタートするわけですが、それを始めたのがいつからか?というと、311がきっかけだったわけです。


そのくりこまくんえんの大場さんがいつも言うのは「僕らがやっているのは、優さんが避難生活をしている東北に来たときにそこの場所でこう言っていたことだ」と。


「物事を動かしていくときには一つ、タテ方向、自分が政治家になるなり上から下に社会を動かしていく方向。ヨコ方向、他の人に一生懸命知らせていくことで社会を変えていく方向。しかし、三つ目の方向がある。それはナナメの方向、新しい仕組みを自分たちで新たに作り、それを広げていくことで社会を変えていく方向だ。」と。
 

「そのナナメの方向がぼくらなんだ。」
と、そのくりこまくんえんの大場さんは言っていました。

 それをついに9年経って今年実現したわけです。それをここで10年という単位で考えてみたとしたら、ではあとさらに10年先にはどんな社会が成り立ちうるのか?ということをイメージしてみてください。


 木からエネルギーを生み出すことは可能です。そして私たちがCO2によって地球温暖化を招かない暮らしをしたいと思ったら、マイナス45%、45%減らすだけのことで可能です。
 マイナス45%は、実はたった二つのことでできるんですね。


 一つは電気を省エネにして減らすこと。もう一つは自動車がCO2排出が多いので、燃費の良い車に変える。その二つをやっただけでもマイナス45%は可能です。


 それにさらにペレットを使って暖房をする、木材を主体に使って社会を組み替えていく、ということが実現できたら、私たちの未来は「全く新しい次の10年の社会」の形になるはずです。

 その新しい10年に向けて、ぼくも今住んでいるこの岡山の土地でもくりこまくんえんがやってくれたようなスタイルの木を活かしていって循環経済を作っていく、ということを実現したいと思っています。岡山県和気町の仲間とそのことを今話し合っているところです。次の10年に向けて新しいことを始めるのは今ではないかと思っています。



~~動画説明文より~~

2020年3月11日、田中優からのメッセージ。

311原発事故から9年。

坂本龍一氏が代表のmore treesにより、当時被災地の岩手県住田町に仮設住宅と暖房用にペレットストーブが配られた。

そのペレットストーブの話から始まり、日本の森を活かすために私たちができること、田中優がこれからの10年でやりたいことなど。 ぜひご覧ください。

田中優公式HP http://www.tanakayu.com/ 

●さいかい産業(新潟県、ペレットストーブの製造販売) http://www.saikai-sangyo.com/

●一般社団法人 more trees (坂本龍一氏が代表)https://www.more-tree.org/

●くりこまくんえん (宮城県、ペレットの供給) http://www.kurikomakunen.jp/


 

(書き起こしにあたっては、読みやすくするため必要最低限の編集を行っています。文章作成:田中優スタッフ)


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