2018年8月10日

「豪雨に負けない森はどこへ…。今国会で成立 「森林経営管理法」 が日本の山と林業を殺す=田中優 」

2018年8月5日に発行されたばかりの、 田中優が マネーボイスのために書き下ろしをした記事のご紹介です。

8/10現在、Facebookではすでに約2,900のいいね!やtwitterでは470件以上のリツイートを頂いているようです!

ぜひご一読頂ければ嬉しいです。 拡散も大歓迎です!(スタッフ)


▼ 田中優より

今進められている「森林経営管理法」は大問題です。
長いですがぜひ読んでみてください。
そしてこの問題を多くの人に知らせてあげてください。




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豪雨に負けない森はどこへ…。

今国会で成立 「森林経営管理法」 が日本の山と林業を殺す=田中優


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https://www.mag2.com/p/money/501696

180805woodjob_eye

あまり知られていない、今国会で成立した 「森林経営管理法」 について解説する。
日本の森林の乱伐を招き、林業というビジネス自体を崩壊させかねない制度だ。

~ 新法で恩恵を受けるのは、 低級木材を大量生産する巨大製材所だけ ~



■ひっそり成立した「森林経営管理法」

今国会にて、新たな法律である「森林経営管理法」が可決・成立した。
来年2019年4月1日には施行され「新たな森林管理制度」がスタートする。

その制度は、所有者が管理できていないと市町村が判断した森林について、市町村が業者らに伐採などを委託できるというもの。伐採には森林所有者の同意を前提としているが、もし同意が得られない場合でも、市町村の勧告や都道府県知事の裁定があれば伐採を可能とする特例も用意されている。

この新制度についてほとんど国民には知らされていないが、日本の森林の乱伐を招き、日本の山を守ろうと努力してきた「きこり」とも呼べる林業従事者たちの生活を脅かす恐れがある。その問題点について詳しく解説したい。


■食品を腐敗させない「天然スギ」の素晴らしい殺菌効果

「酒・味噌・醤油・お酢」、日本を代表する発酵食品を作るのに欠かせない木材がある。それがスギだ。スギの精油分には殺菌効果があって、食品を腐敗させないのに発酵は促進する。

我が家で醤油造りをしてみた。我が家は無垢のスギで建てていて、殺虫剤はおろか、防カビ処理すらしていない無垢のスギだ。おかげで醤油造りに向いていたようで、一緒にワークショップしたメンバーの中で一番早く発酵が進んでいる。


それだけではない。秋田スギで作る「曲げわっば」を作る職人たちは、樹齢が200年を越える天然(天杉)のスギを使っていたそうだ。曲げたときに折れない材質を作り出すには、樹齢50年程のインスタントなスギではできないのだ。
そのために秋田県大館市は、「150年の森」事業を始めた。素材となる樹齢の高い木が入手困難だからだ。

「桶」の材料にするスギも同様で、樹齢数百年のスギが使われている。
プラスチックでは作れない特徴が、酒や醤油、お酢などの発酵文化を支えていたのだ。


もともとスギの殺菌効果は食品には欠かせないもので、かつては食品を運ぶ「経木」もスギであったし、かまぼこ板にもスギが使われていた。スギの食品庫に保存すると、腐敗させずに食品が枯れていくのだ。


■効率重視で流通しているスギ材に、その効果はない

ただし、これはきちんとした低温乾燥または天日乾燥をした天然スギの場合の話である。いま普通に購入したスギではその効果はない。

今は乾燥を早く、徹底的にするために、120℃もの高温で乾燥させるのが一般的だ。
乾燥炉の中に入ると下にはスギから出た精油分がタール状になって落ちている。
この精油分がなくなると、殺菌効果も発酵を促進させる効果も期待できなくなる。


スギを使うことの最大のメリットが失われてしまうのだ。スギはまるでプラスチック部品の代替品のように扱われ、生命を持つ樹木としての扱いをされなくなっているのだ。

今は伐採したスギは防カビ薬品のプールにドブ漬けされ、さらに殺虫剤で処理されてしまう。輸入された木材も同様だ。輸入されるとまずシートを被せられ、殺虫のための臭化メチルで処理されてしまうのだ。


■成立した「森林経営管理法」が守るものは…

ところが今回の今国会で成立した「森林経営管理法」では、こうしたきめ細やかな森林経営は対象としていない。素材加工業者である「巨大製材所」の都合に合わせた森林経営を推進するために作られたものだ。


大手の「製材所」が求めるのはインスタントで量の多い素材の供給である。つまり良質の木材ではなく、接着剤で固めただけのベニヤ板や、MDF(中質繊維板)と呼ばれる、木材チップを原料としてこれを蒸煮・解繊したものに合成樹脂を加えて成形しただけのものだ。


木材には本来、「A材、B材、C材など」と呼ばれる質のランクがあって、A材以外の質の劣悪なものを加工して作る素材加工業者は、質の低い木材しか必要としない。質が低い木材も使われること自体は歓迎されるべきことなのだが、そればかりにされてしまうと困る。

さらに今問題になっているシックハウス症候群や化学物質過敏症の人たちの症状を悪化させる接着剤や化学物質を使うので、さらに暮らすことのできる無垢材を使った住まい作りを狭くしてしまうことになる。


■樹齢55年以上はすべて伐採へ

たとえば樹齢についても、11齢級(樹齢55年)以上のものはすべて伐採していく方向だ。日本では戦後の水害対策として、「拡大造林計画」として全国各地にスギ・ヒノキ・カラマツ・アカマツ等を植えた。全国に膨大に植えられたスギはすでに伐採期を迎えたので、順次伐採していって毎年伐採する木材の樹齢を合わせたいというのが方針だ。そうすれば毎年持続的に伐採していっても森は維持されるからだ。


いや、そもそも「拡大造林計画」自体が強引で無理のあるものだったという反省のないことが問題だ。今回の「森林経営管理法」の強制もまた問題だ。「拡大伐採計画」とも言うべきものを押し付けようとしている。これが強制されると、「曲げわっばの150年の森」などできなくなる。樹齢を長くして、A材や超A材を増やすことは全く求められてなくて、ただひたすら低級な材を粗製乱造することしか考えられていないからだ。


そうではなく、高級な木材生産を中心とした「森林経営」はできないのか。
人体に悪影響のある接着剤や化学物質まみれの木材の供給を「森林経営」と呼んで推進することは、さらに森林経営者を圧迫して、人々に住むのに適さない住宅ばかりを建てさせることになる。


■中国では、毎年210万人の子どもがホルムアルデヒドで死亡

中国での今の事例を見てみよう。
「毎年210万人の子供が内装材料に含まれるホルムアルデヒドなどが原因で死亡している」と報道されている。

指摘したのは中国工程院院士で呼吸疾病専門家の鐘南山(しょうなんざん)氏で、中国の白血病患者児童の9割の住宅が高級リフォームされている家屋で発生しているという。

中国環境保護協会の統計データをもとに、白血病を患う子供の患者のうち90%の家庭が住宅高級リフォームを行っており、毎年210万人の子供が内装材料汚染が原因で死亡しており、80%の内装材料で基準値を超えたホルムアルデヒドが使用されており、妊婦の流産の70%も環境汚染と関係があると指摘した。

これは、政府が定めるホルムアルデヒドの安全基準値が低い上に、家具などの環境基準値が低いことが原因であるという。


北京在住環境保護ボランティアである張峻峰さんは、次のように語っている。

「ペンキや接着剤に含まれるホルムアルデヒドやベンゼンはじめ多種の溶剤によって、木材を塗装し接着します。それはリフォームの際に大量に使われる木材や合板、ペンキなどに含まれています。しかし、これらの216種類もの溶剤によって接着させられた場合、ホルムアルデヒドが完全になくなるまでに100年~200年の時間がかかります」。


このホルムアルデヒドの汚染問題を予防することは不可能であると、張さんは指摘します。唯一の方法は、こうした木材や塗料を使わないようにするしかありません。ですが、現時点では無理なことです。それが現実です。
出典:新唐人(2016年12月23日)


■「合理化」の名のもとに悪法が次々と成立している

日本もまた、中国と同様のレベルになろうとしている。供給される素材そのものが無垢材ではなく、加工木材を中心とした「森林経営管理法」によって進められるからだ。


いまも現実に、多くの人は日本の新築の家を「新築の家の臭いがする」として発がん物質とされるホルムアルデヒドの臭いを嗅ぎ、同じ臭いを「新車の匂いがする」と喜んでいるのだ。

このような形の「合理化」があちこちで進められている。
「水道の民営化」「種子法の廃止」など、どれもみな「大きな企業」へ餌を丸投げするかのような方針ばかりだ。

その結果、日本はどうなってしまうのだろうか。


■記録的豪雨に流された森林

2018年7月、西日本を中心に日本は記録的豪雨に見舞われた。ダムを守るために放水された水は民家を押し流し、愛媛県の肘川や岡山県の高梁川などで大きな被害をもたらした。今回もまた、流れ落ちてくる流木は水害を拡大させた。


なぜ、これほどの流木が流れ落ちてくるのか。そこに戦後行われたスギ・ヒノキによる拡大造林計画の失敗の影を見ることができる。大規模に植林した後、手入れもされずに放置された植林木が十分に根付かずに雨と共に流され、倒れるときに周囲の土砂を掘り起こして流れた結果であるとの見方があるのだ。


「拡大造林計画」では、それ以前のような広葉樹中心の森林が針葉樹に変えられ、植えられた植林木が「挿し木」中心であったため、天然林のような真下に根を張る「直根」が広がらず、山を抑える力が弱くなっていたこともある。そして、植林以前の広葉樹の根が枯れ、そこが水を含んだ空間に変えられてしまうのに30年以上かかるため、伐採した直後ではなく半世紀以上も経った後に山崩れを起こした。「拡大造林計画」によって、水害に弱い山地を人為的に作ってしまっていたというのだ。


■林業では生活できなくなっている…


そうして考えてみると、「戦後の拡大造林計画」はそれまでの広葉樹中心の山を針葉樹中心に勝手に塗り替えてしまったのだ。いくら何でも国内の森林の半分近くを、突然人工林に変更してしまうのはやりすぎだった。


当時は山林所有者の力が強く、木材の価格は山林側の言い値の通りになる状態だったが、それを安く供給させるために、1960年頃から木材の輸入に対する関税をほとんどなくしてしまった。木材価格はそれをきっかけにして暴落し、今でも当時の木材価格と変わらない。物価上昇率を加味すると、当時の木材価格の八分の一程度まで下がってしまっている。


山に手が入らない最大の理由は、木材価格が安すぎて、関係者は生活できないレベルになっているためだ。先を見ないその場しのぎの林業行政が、これほどまでにダメにしたようなものだ。それが再び三度、同じ林業行政によって繰り返される。


こうしたその場しのぎの林業政策が森をダメにしてきたのであって、改善したのではない。今回の「森林経営管理法」も、その流れに乗った森林経営を悪化させる仕組みになるのは間違いないだろう。


■「林道」が日本の山を破壊する

現在の時点で山という現場を壊しているのは、「高性能林業機械化による過大な林道建設」によるものだと思う。ところが「森林経営管理法」もまた、高性能林業機械の活用を推進している。


山が壊れるのは、圧倒的に林道崩壊をきっかけにすることが多い。その林道は、効率良く伐採した木材を搬出するために推進されるのだが、日本の急峻な山に適した林道となっていない。さらに効率重視の高性能林業機械を入れたがるが、その重さは日本の急峻な山に耐えうる重さではないのだ。

30トンもあるような高性能林業機械を走らせるには、高速道路レベルの道路網を整備しなければならない。しかし急峻な山岳地帯に、そんな道路を造れるほどの余裕などない。その結果、山を削り、沢を埋め立てて林道が造られるが、その林道そのものが山を崩れさせる原因となっていった。


たとえばバブルの時期に全国で進められた「スーパー林道」と呼ばれる高規格道路を見てみるといい。各地に建設されたが、その後はスーパー林道の法面から続々と崩壊し、使えないものばかりになってしまった。


山にとって最も破壊的なことは、「道路建設」だと思う。確かに平地なら機械で伐採し、余分な枝や木の皮を剥ぎ取り、玉切りして大型トラックに積んで運び出す作業までできる高性能林業機械は魅力的だが、日本の急峻な斜面ばかりの山では、そんな簡単に使えるようにならないのだ。


■山と共存する「自伐林業」

昔のきこりたちは山から木を伐り出してくるために、木馬道(きんばみち)を作っていた。それはなるべく斜面を削らず、高低差のある所では伐採した木材を積み上げて、橋のような構造物を造り、そこにレールのように木材を並べて運び出していた。そこまでして山の斜面を削らずに運び出していたのだ。


こうした山を傷めない施業方法は今、「自伐林業」と呼ばれる施業に引き継がれている。山には重いものは入れず、「チェーンソーやワイヤー、フォワーダ(小さな木材運搬機)や2トンロングトラック」程度しか入れない小径を造っていく。


その小径からさらに葉脈のように小さな道をつけていく。そのトラックの入る道路もまた、斜面の側に落ちるように傾斜をつけて作ってある。そうすることで、豪雨の時に道が雨の流れで削られないようにしているのだ。その林道を車で走ると、車が斜面の下側に傾くので落ちそうな感触になって怖いのだが、そのことも手伝ってトラックも轍をつくらずに走るようになると言っていた。


台風の日に徳島県の「橋本林業」が管理する自伐林業の山を見せてもらったことがある。豪雨の後だというのに、全く崩れることもなく林道が続いていた。その日の作業は、道路に塞がるように落ちている枝葉を作業靴で崖下に落とす作業が中心だった。

このような伐採方法を「自伐林業」と呼んでいる。


■山に負担をかける「森林組合型林業」

「自伐林業」と対になるのが、「森林組合型林業」だ。森林組合では効率的に経営しようと思うあまり、一斉に木材を皆伐して市場に出し、山に負担をかけてしまうやり方をする。

今でこそ皆伐はしなくなったが、多くの森で横一列に伐採する「列状間伐」をする。ところがその列の幅はいつの間にか広めに取られるようになり、皆伐と変わらないような伐採のされ方をしている現場も多いのだ。そうすると豪雨で水害を招くような森の現場になってしまう。


■日本の山は経済的に壊滅してしまう

木材については質の高い方からA材(建築用材)、B材(合板や集成材など)、C材(紙生産のためのチップ)、D材(バイオマスとして燃やすための材)がある。今回の「森林経営管理法」で恩恵を受けるのは、中心となる素材生産業者は主に膨大な生産量で稼ごうとする巨大企業である。B材(合板など)、C材(チップ)、D材(バイオマス)の取引が多くなるからだ。

ところが、日本の山は放置されてしまった荒れ果てた山を除けば、意外なことにA材(建築用材)、さらに超A材とも呼ばれる最高級建築用材もたくさん育っているのだ。


これに対して全体の網掛けが、低質材中心になっていることがおかしい。
「森林経営管理法」によって低質材中心に集められ、そこに交じり込んだA材を市場に横流しすれば、素材生産事業者は儲かる。今ただでさえ価格が低迷して困っている林業者が山を保全しながらA材を生産しようとしても、素材生産事業者が横流しするA材に市場価格が暴落させられれば、もはや山は「打つ手なし」の経済的崩壊状態になってしまうだろう。


たとえば「間伐材だから低級材」になるわけではない。木材の質によるのだ。
間伐材でも丈が短いだけで木材市場で十分A材として販売できるものもある。
これまで一所懸命に山を大事にしてきた「きこり」さんのような人たちの利益を、「素材生産事業者」の横流しが奪う結果になりかねないのだ。


■「森林経営管理法」が日本の林業をダメにするワケ

自伐林業では、ほとんど「択伐」によって選ばれた木だけを市場に出す。
常に森には木が育ち、択伐した後の空間にだけ再度植林をしていく。

そうすると、まっすぐ上にだけ択伐した木のあった光の射す空間ができるため、広葉樹であってもまっすぐ空に向かって育とうとするのだ。その結果、通直(木目もくめなどが縦にまっすぐに通っていること)に伸びる広葉樹を育てることもできていた。

こうして一本一本を択伐して市場に運び、販売していく方法だ。
どんな木でもいいから市場に運び出す「森林組合的林業」とは全く違う。


今回の「森林経営管理法」は全くもって「森林組合的林業」の延長線にある。
B材C材を中心に「一山いくら」の販売をして、素材加工業者である製材所に届けるだけの林業となるからだ。


■山をただのカネとして見ていない「森林経営管理法」
そうではなく、森を保全する最前線にいる「きこり」の人たちの利益になる仕組みにしていくべきだ。

今の改正案は、大きな力を持つ「素材生産事業者」を中心にした仕組みになっている。そして、山を本当に保全できる人たちを排除し、素材生産事業者の作る勝手な場価格が暮らし方を決めていくことになる。

木々はもっと樹齢を重ねていくことで、もっと貴重な性質を持った材となり、山は多様性を持った生物たちの作り出す豊かな空間になれるのに、この改正案は山をひたすらカネの場に変えてしまおうとしているのだ。


生物としての木ではなく、カネになるコンクリートや鉄骨が育っているだけの場所のように認識している。「環境」も「災害防止」もカネと直接関係ないからと無視されれば、今よりさらに山は荒れるだろう。


強引な拡大造林計画で自然林を人工林にして荒らしてしまった後に、木材自由化によってその価格を著しく安いものにしてしまった。それを一部の心ある人たちが森の環境を改善してきた矢先に、今回の「森林経営管理法」がそうした現場での努力を無視して大きな「素材生産事業者」に利益を分配する仕組みにするのだ。


■「森林払い下げ疑獄事件」に発展する?

この「森林経営管理法」の問題点について、東大大学院教授の鈴木宣弘氏は以下のように述べる。

「経営意欲が低い」と判断されると、強制的に経営権を剥奪され、受託企業がそこの木を伐採して収益を得ることができる。無断で人の木を切って販売して自分の利益にするというのは、盗伐に匹敵するほどの財産権の侵害で、憲法に抵触する。

そして仕上げとして、来年には国有林についても、その管理・伐採を委託できる法律が準備されている。これは国の財産を実質的に企業にタダで払い下げることである。
出典:林業改革の問題点 林家よりも企業優遇 
東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏 - 日本農業新聞(2018年7月24日配信)


これは恐ろしい話ではないか。
いわば「平成の森林払い下げ疑獄事件」とも呼べるような事態が進められることになる。


かつて日本の財閥と軍が日本を帝国主義的な専制国家にしたという反省に立って、戦後に「財閥解体」が進められた。それによって「農地解放」と同時に進められたのが「財閥解体」だった。その戦後解体された財閥には、チップなどのために世界中の山を破壊してきた「製紙会社」もあったことを思い出すべきだ。その製紙会社などが「チップ材」や「合板・MDF材」「バイオマス材」など低質木材の購入者として再び権力を持つのだ。

それら財閥に、再び豊かさを取り戻しつつある日本の森が、タダで明け渡される状態になっているのだ。


■子孫のために森を守ってきた「きこり」を蔑ろにしてよいのか…

かつてきこりたちは、荒れた山に土嚢をかついで登り植林をし、山を再生させてきていた。

その木材は育つまでに百年以上かかるため、自分の利益のための努力ではなかったのだ。子孫のため、未来世代の人のために努力してきたのだ。百年後に木を売って利益が得られるとしても、自分の世代ではなかったのだ。その努力を横から出てきてかすめ取る。それがこの法によって実現させられようとしているように見える。

今やっと育ってきた木を、もっと樹齢を重ねた豊かな材にしてはどうか。遮二無二伐採して木材の齢級を平均化させるのではなく、古くからの森と新たな森が共存していても毎年伐採する木材の量を平均化させることはできるはずだ。

「山を壊すのは林業政策の失敗であって、重すぎる「高性能林業機械」を入れるために削り取った林道だ」と知ったうえで、今を見てほしい。じっくりと私たちの生涯以上の長さで変化していく山を監視していてほしい。


■新制度は「山殺し」でしかない

私たちは宮城県の山で、山を保全して使い続けていくための林業を実施している。

皆伐はせず、択伐しながら広葉樹の自然林を造ろうとしている。そこにつける道路は極めて小さな小径を細かに入れ、運び出すのも「高性能林業機械」ではなく、かつて盛んに使われていたウマに頼っている。ウマなら自分で小径を選んで作り、林道を壊すこともない。しかも夏場には最も費用の掛かる下草狩りを、頼まなくても食べてくれる。最初一回の下草刈りだけで、後の下草刈りはウマとウシとがやってくれる。彼らは炎天下でも自由に動き回り、下草を食べ、植林木への栄養を届けてくれる。


本来の林業はこうした人間を含めた生き物たちの場が育んでいく場ではなかったか。もともと林業は工業生産ではない。その対極にある生命の営みに合わせた時間のかかる生産なのだ。


それを現場も知らない見にも来ない人たちに管理させるのがおかしい。
もっと謙虚になって自然に起きることに学びながら進めなければ、結局「林業」とは名ばかりの利権の奪い合いの場にされてしまうのだ。


林業者の側から見ると、勝手に「所有した」と名乗る人たちによる「山殺し」でしかないのが、「林業の再生」という名目の新制度である。山という場は、たくさんの生き物が交錯して暮らす場で、カネになるためのものを育てる場などではない。そこには仲間としての生き物に対する敬意がないとうまく進められないし、無理な使い方を考えるのではなく、無理のない利用法を昔に遡って教わるようでないと実現できない。


それを水が売れるからと買収して水源を奪ったり、高値で売れるからと伐採して輸出したりするのが間違っている。あくまで天然素材はその地に付随する豊かさとして存在するだけであるので、販売したり輸出するためのものではない。


■大自然の美しさは、決しておカネに変えられない

最近、近くの山の木材が皆伐されて、そこに太陽光発電が設置された。
こんな破壊が自然に優しいはずもないし、持続可能なはずもない。
近くの他のメガソーラーは今回の西日本豪雨によって土砂崩れを招いて壊れた。

山をカネの尺度で考えたら、そうした利用法を考えることになるのだろう。
カネの尺度でしか考えられない人たちに、どう説明したらいいのかと考えると、言葉を失う。そこにある自然の美しさは、誰のものでもない。


前述した「自伐林業」をしている橋本さんの山に入って、雨上がりの森を見て息を飲んだ。「山紫水明」とでも言うべきか。そんな山づくりをしたいと思う。


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『日本の農業をぶっ壊す種子法廃止、なぜほとんど話題にならない?=田中優』 (2018.2.25)
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