2017年9月18日

書き起こし デモクラTV ~田中優に聞く再生可能エネルギーの未来など~


2016年11月にインターネット放送の「デモクラTV」に田中優が出演させて頂いた際の、
田中優コメント書き起こしです。

動画はこちらより登録などをして頂くとアーカイブよりご覧いただけます。
http://dmcr.tv/index.html



▼「年金法案強行採決について」

田中優
「ぼく自身は「こんなことで強行採決をするの?」というところですね。

 つまり全ての人に関わる問題で、それを強行採決するって、そもそも少子高齢化がどんどん進んでいる日本では、やらざるを得ないことなのだから論を詰めればいい。それなのに無理筋でも何でもないことを強行するというところが、まず、おかしな話です。

 それともう一つ思うのが、もうだいぶ日が経ってしまっていますがGPIFの巨大損失の問題、これが突っつかれない方がおかしいのに、ところがそれをまだ強行採決で「年金はだからもうダメなんだ」というような形でその運用を民間に一気に移し替えて巨額損失を発生させた。その失敗についての反省なり総括なりが無いままやったということが、ここら辺の事情の裏にあるのかなという感じがします。」


-GPIFについて突っ込めばボロが出る可能性が非常に高い。
なのであえて今の内にこれをやってしまえと、やった可能性が強いということですね。



田中優
「そのGPIFにはもともと公務員の年金が入っていなかったんだけれども、ところが公務員のものもそれに倣う形で運用先を同じ方式に変えましたね。
ですから国民全員が大損したわけですよ。その国民全体が大損したことを脇に置いといて、「その代わり年金を下げるからね」ということだけを強行したように見えます。」



-そうですね。鋭い視点だと思います。


▼「トランプ政権と日本について」


田中優
「ぼくはまだあんまり読めていないんですけど、ところが問題なのは日本の側にあって、日本は旧態依然の思考が残っていて特にひどいのが外務省です。

 外務省の人たち、外国に行ってそこの外務省の人と話をすると、「今度何とか商工会の人たちが来るからその準備で追われていて」みたいな話ばかりです。本来外務省の担当者って、その国の情報を調べて、いうならばスパイ活動並みに調べる人であるはずなのに、日本のことばかり見ている。しばらく勤めると天皇陛下の表彰か何かもらえるんでしょ? それをすごく楽しみにしていて、遠くの地にいながら日本を恋しがっている人たちばかりに見えます。

 その人たちが外務省の担当者で、結局外国から日本を見ているだけでその国のことを全く見ていない。十分な調査に基づいた情勢分析ができていないので、全く間違った方向に進めていく。だから海外としては「ジャパンパッシング」、要は日本を素通りしていく、そういうパターンにならざるを得ない構図になっているように思うんですよ、ずっと。

 そのおかげでこういう流れになって、日本側の主体性がないままにパッシングされていくだけ、というふうに見えますね。」










▼「再生可能エネルギーの未来」

-2012年に岡山に移住されて電力会社と線を切ってオフグリッド生活を始められているそうですが、具体的にはどうやって電力を賄っているんですか?


田中優
「太陽光発電パネルがあって、それと充電コントローラーを経てバッテリーに流し込んで、バッテリーの電気も太陽光の電気も直流なので家の家電製品って交流なので、そこにインバーターを挟んで使う、という形ですね。それをやっていくことがもうそんなに難しい時代じゃなくなりまして。

 実は一番問題になるのは発電量の問題じゃなくて、バッテリーに貯める電気の量なんです。電気消費量が少なければ3日分の電気を貯めるのも簡単です。でも消費量が多ければその3倍になっちゃうからものすごく大量のバッテリーが必要になる。」



-3日分で大丈夫なんですか?

田中優
「ぼくの家はだいたい4日分のバッテリー量がありますけど、それくらいあれば大丈夫です。

 ところが今年(2016年)9月に雨が10日間くらい続きまして、その時に今回電気が足りなくなりました。その時のために、屋台の後ろに置いてあるような発電機を持っていまして、それで復活させたんです。

 ところが運悪くぼくが出かけちゃっている時だったんです。奥さんから連絡があってどうしたらいいのって言うから、その発電機を出してきてつないでということで教えたんですよ。ところが『どうなった?』ってメールしたら、『重すぎて運べないので近所の温泉ホテルに今泊まっています』って(笑)」



-電化製品の数っておっしゃいましたけど、だいたい普通のご家庭でもある程度のもので田中さんちにないものってなんですか?

田中優 「ぼくの家にないものはたぶんないと思います。(笑)」



-炊飯器あります?

田中優
「もちろんあります。電子レンジもあるしエアコンも2台もあるし何でもありますよ。基本的なポリシーが、努力忍耐はしないなんですよ」


スタジオ 爆笑


田中優
「ぼくが努力忍耐して自給したら、他の人は「田中優さんだからできることだ」と言うじゃないですか、それは困るので誰でもできるレベルのことでやろうと思って」



ードライヤーもあるの?

田中優「はいありますよ」


-普通の生活ですよね?

田中優 「はい」



-それで初期投資を含めて採算はとれるんですか?

田中優
「採算は、まだバッテリーが安くなるまでは厳しいですね。
 ただ逆に今電気料金の方が原発事故の後処理でこれからむちゃくちゃ上がるんですよ。だからそのむちゃくちゃ上がってきた時には10年以下で元がとれるっていう状況にはなるでしょうね。」


-田中さんの家のだいたいの規模とご家族は何人くらいか教えて頂けますでしょうか?


田中優
「実は最近建て直したばかりなんですが、建坪で26坪くらい、家族は3人です」




-家族3人で今おっしゃったその電力でまかなえると?

田中優
「はい、まかなっています。
実は私の家はそれだけではなくて、NTT回線も切っちゃって全部無線LANを使っているようにしてます。あとは水道管も全部切っちゃいまして井戸に替えちゃいまして。ですからぼくの家はほとんど公共的なインフラがつながっていないんですよ。」


-井戸のポンプは電動で?

田中優「はいそれも太陽光発電パネルで作った電気で動かすんですね。」



-ガスはどうしているんですか?

田中優
「ガスはプロパンガスをつけています。
ただ太陽温水器をつけているので、だからガスの消費量は普通の世帯の3分の1なんですね。」




-なるほど、温水で温まるんですね?

田中優
「はい。ただ最近イスラエルの会社が「ホームバイオガス」という装置を作りまして、たった10万円でイスラエルで売っているんですよ。生ごみを放り込むだけでガスを作ってくれますよという装置なんですね。」



-それが実際に燃料として使えるということですか?

田中優
「そうです。何と一日6kwh分のガスを作り出すっていうもので、うちなんかにとってはもう十分なので、それが早く日本で発売されたら真っ先に買いたいと思っているんですが。」



-でもやっぱり田中さんというと、理系に強いという

田中優「いやぼく文系なんです(笑)」


-いやでもそういうのに強くないとインバーターとか難しいなぁと

田中優
「いやそんなことないですよ。
 「自エネ組」と団体があって、「自給エネルギーチーム」で自エネ組なんですが、そこは「エネルギーは自給するものだから、地域の人たちで自給するような仕組みを作りなさい」ということで装置を売ってアドバイスもしてくれるんだけど、あとは「地域の人たちが自分でやっていきなさい」と進めているんです」



-地域というのはどういう感じですか?

田中優
「例えば全国で東京で入れたいというと「自エネ組東京」というグループがあっ
て、うちの長男がやっているんですが、その長男が設置しに行ったりします。
その時電気工事士が必要になるんですが、実は工業高校で電気科を出た人はだい
たい持っている資格なんですよ。それくらいのレベルの技術なのでその人たちが
参加して一緒に設置するという形です。」




-ちなみに、うちは普通に電力会社からの電気を引いているんですね。
たとえば田中さんの真似をしたいと思ったとして、まず電力だけでもいいから電線を思い切り切って上に太陽光パネルを乗っけるとしたら、コストはだいたいどのくらいですか?


田中優
「それなんですけど、省エネのレベルによるんですね。
これが徹底的にされていれば100万円を切るくらいでできちゃうんだけど、ところがそこまでいかないレベルだと、250万円くらいですかね。

 まず投資をすべきなのは省エネ家電への買い替えです。
45万円くらいで足りちゃうんですが、家電を省エネ製品に替えると電気消費量が劇的に減るんです。家庭の最大消費である冷蔵庫は、マイナス97%も節電していますから。」


-ですよね。冷蔵庫を買い替えてビックリしたんですよ。
こんなに電力消費が違うんだと思って。


田中優「そうなんです。」



-田中さん、車は?

田中優
「最近車を新たに買いまして、それがクリーンディーゼル車なんです。
マツダが作ったディーゼルが無公害のディーゼルなんですよ。
それにバイオディーゼルと呼ばれる廃食用油から作ったディーゼル燃料入れちゃうと、完全にCO2に関してはゼロになります」





-えーっ!!

田中優「なおかつ値段の方も軽油ですから安いし、ぼくが実際に走ってみましたけど、リッター22キロ走ります。」


-すごいですね。

田中優「そういうような形に変えて、その後に電気自動車にしたいです。
今は電気自動車への過渡期なので、それをバイオディーゼルでつないでその後電気自動車かなと思っていますね。」



-マツダももうちょっと東京で上手く宣伝すればいいのになと思いますね。
今初めて聞きました。

田中優「本当に。すごいですよ、マツダの技術は。」



-実際にこうやって田中さんのお話を聞くと電力自給自足、あるいは本当の意味での省エネルギーというのが現実問題できる段階なんだなというのがよくわかるんですが、一方でこれは今日田中さんがいらっしゃったのでぜひ聞いてみたいことがあって、そうは言っても原発を推進したい方々は、電力会社を一生懸命再稼働を勧めて維持していきたいということをやっている。

 大っぴらに電力会社は原発を維持しますよっていうことをなかなか広告なんかで言えないんですけれども、その代わりに電力会社り業界団体である「電気事業連合会」が色んな広告をうっているんですね。





 これが昨年(2015年)の6月に読売新聞に掲載された広告なんですけれども、左側にいらっしゃるのが八木さんという関西電力の社長、右側が読売の論説員の橋本五郎さんが対談するような形の記事風広告なんですが「なぜ原子力が必要か」ということを言う上で、彼らがよく言うのが「日本全体の電力の自給率が下がっていると、原発が止まったことによって原発は純国産エネルギーと言っていたんだけれども、これが止まったがゆえに今は6%くらいの自給率でしかないんだ」と、だから原発を動かして自前の電力を作りましょうよ、これが一つ。


それからもう一つがCO2の問題。
「原発を止めるとことによってCO2が増えていますよ」と。それともう一つが原発を止めたことによって電力のコストが上がってきていると。実際に電力料金がどんどんどんどん高くなっているじゃないか。海外に原発を止めた分の火力燃料の天然ガスや石油を買いに行くと、今は下がっていますけど少し前はものすごく高かった。それによって火力の燃料費の輸入費というのがどんどん上がって電力コストが高くなっている。

 だいたいこの3つくらいを理由にしているんですね。


 なおかつじゃあ再生エネルギーというのはCO2削減にも自給率の向上にも一番良いエネルギーと言うんですけども、じゃあこれがなぜダメなのかという話になると、技術的な壁が高いと。

 太陽光だったらやっぱり天候に左右されるとか、あるいは導入するにはまだたくさんのコストがかかると、こういうことをこの広告では一生懸命おっしゃっている。
これが今の電力会社側の現状なんですね。

これに対して田中さんから今挙げてきたいくつかの問題点というかポイントに対してひとつひとつお願いします。


田中優
「はい、まずコストの話にすると今回新たに政府が出してきたのは、この間の原発のコストで取りそびれた部分が8.1兆円あって、事故処理を合計するとおそらく50兆とか80兆とかかかるんじゃないかということで、その費用を今頃後出しジャンケンで出してくるわけ。だから原子力は高いんですよ、明らかに。

 にも関わらずそれを6年後の今頃になって出してきて、「実はこれまでも本当は電気料金は高かったんだから」と言って国民の理解を得ようとしている。どの口で原発は安いんだと言えるんだ、という話ですね。

 そして「準国産エネルギー」なんて変な言い方していますけど、でもその準国産というのは日本の中で作ったウランなり、再処理したウランなりを使わなくちゃムリな話で、それが出来ていないんだから、「完全輸入エネルギー」だったわけです。」



-要するに核燃料サイクルが確立されるというのが前提で、「準国産エネルギー」だと言ってきたわけですよね。でもできていないということです。・・

田中優
「高速増殖炉もんじゅもついに廃止になるし、もう実現不可能な状況になっているにも関わらず、そのロジックをいまだに持ち出すということで、まぁ無茶な話と言えると思います。

 そして自給率で言うと、日本って自然エネルギーを含めて考えるとかなり条件が良いんです。だって世界で3番目に地熱が使えて、日本は領海がものすごく広いんです。国土の11倍あります。」


-世界で5番目か6番目くらいですよね?

田中優
「はい、しかも風車を並べるには海の上が最も効率が良くて、これは東京電力が調べたんですが、東京電力の管内の50kmの範囲だけに風車を並べたらどれだけ発電できるか?と。何と、東京電力の電気、全部自給できちゃうんですよ。」



-風力だけで!?

田中優
「はい。それが彼らのレポートで出ています。そういう意味では可能性があるものがいっぱいあって、しかも黒潮が流れているでしょ?黒潮っていう世界で一番強い潮流が、国土のすぐそばを流れているんですよね。しかも風車というのは空気の密度で発電するのでどうしても発電量が少ないんです。水は空気の800倍の密度があるので、はるかに発電量が大きくなります。」


-風力だと風が止まったり太陽光だって夜は使えないけども、海流というのは地球が自転して起きているんだから永久に止まりませんから。あれを使わない手はないですよね。


田中優
「年中無休ですよね。

 それとCO2の問題で言うと日本は言えない立場ですよ。11月4日にパリ協定がやっと成り立ったわけですけど、それが成り立たないだろう仕組みを日本は中に入れていたんです。「55カ国以上55%以上」という条件を。

 ところがアメリカと中国が手を組んで成立させてしまった。成立したら日本だけ乗り遅れていて、今頃参加しようとしているんです。本当にみっともない状況で。しかも世界で唯一、世界中に石炭火力を売って国内にも作ろうとしています。そんな国がCO2の話が言えるかという状態で、ものすごく話が違いますね。

 ぼく正直言って電力会社が今原発をやりたがっているというのはもちろんなんだけど、もう一つ彼ら気づいた点があると思います。

 自然エネルギーに変えるとなると、これまでの送電線が使えないということです。つまりこれまでの電気は「上から下」に流す大きな仕組みで作られているんです。今、電気は「下から上」には流せない上に、自然エネルギーで地域の中で電気を自給するという仕組みに変えると、送電線網がいらなくなってしまう。本来は地域化した「スマートグリッド化」しなくちゃいけないんです。

 そうした時に自然エネルギーを勧めている人にも問題があって、一つは自然エネルギーだと二つ問題点が出ます。それは周波数の中の短周期、短い周期の20分以下のところですごく上下するのでこれをなだらかにする必要がある。これにはバッテリーを入れてやれば解決する。その費用が高いものだから、そのまま巨大送電線網につなごうとする。電力会社が作った自然エネルギーではバッテリーが入っています。逆に言うと、電力会社はつけなければ周波数などの問題を解決できないと思っている。でもその費用を負担したくないから問題を放置している。

 もう一つは送電ロス問題ですね。それがあるので、彼らの送電線任せにした自然エネルギーになっている。」


(CM明け)
-自然エネルギーを入れるのに電力会社が渋っている2つのポイントを先ほど聞きました。

 ひとつは短期間に変動することをおさえるためにバッテリーを入れなければいけない。その設備投資にお金がかかるということ。

 もう一つが送電ロスですか、送電する上で電力がどんどん落ちていくというかこぼれてくると、それを補うためにやはり送電線に対しての設備投資をしなければいけない。

 しかし、設備投資をしたとしても、それが従来の自分たちの資産としてのインフラになるのではなくて、地域が独立的に電力をまかなえるようなものになっていくので、電力会社の身入りにはならなくなっていくと?


田中優「その可能性が高いですね。」



-この2つの問題を自然エネルギーを阻んでいる大きな壁だというご指摘でよろしいでしょうか?

田中優
「はい、それはしかも残念ながら市民側がよく理解していないということがすごく悩ましいポイントかと思うんですよね。実は先日計算してみたんですが、50万ボルトの高圧送電線と比較すると、今家でつけた太陽光発電からの電気をそのまま100ボルトの送電線につないでいいんですが、送電ロスが2億倍違いますよ。」



-2億倍!?

田中優「はい」


-50万ボルトで起こしたものが100ボルトになるために、どんどんどんどんその間にロスしていると


田中優「それもありますが、100ボルトの送電線を使ったときは、送電ロスは電圧に反比例するので、50万ボルトの送電線と比べると2億倍送電ロスします」

-2億倍送電ロス!?

田中優「はいですのでそれを考えの中に入れていくと、その従来のように遠くに運ぶという発想があり得なくなるんです」


-完全に地域の中で?

田中優「はい地域の中で回していくということです」






-エネルギーは優さんが昔から言っているエネルギーの地産地消をやれば大きな大規模送電線はNGだと、逆にそれが要らないということですね。電力会社が生存を図るのであれば、海流発電をすれば、あれに切り替えれば東電だって・・


田中優
「ところが困ったことに東京電力の収益の91%は、何と個人と小さな事業者から得ていて、ところが電気の消費のほとんどは大きなところが消費するんです。そこは収益にはならないんですよ。そうすると、例えば海洋発電で大きなすごい電気を生むとそれは大きなところにいっちゃう。小さなところは自宅で太陽光とバッテリーで簡単に自給ができるようになってしまうので、そうするとそれは二分割されるという方向になっていくと思います。」



-日本の電気料金は工業用も高くてね、だから日本では軽金属があまり発達しないんですよね。


田中優
「はい、1970年代に、発電所は実はピークの電気消費のために必要になるので、そのピークの比率に合わせて料金負担を決めました。それを反映させたのが80年代の電気事業改革だったんです。そうしたら事業者の値段がぽーんと跳ね上がって、電気を大量消費するアルミ産業などは海外に逃げちゃった、という流れですね。」










(書き起こしにあたっては、読みやすくするため必要最低限の編集を行っています。 
文章作成:田中優スタッフ)