2017年9月10日

『木造の「継ぎ手」が同じという不思議』

天然住宅コラム第43回

■ 「大工ワザ世界頂上決戦!~日本VS.ドイツ~」

 人の家でテレビを食い入るように見た。「超絶凄(すご)ワザ!SP「大工ワザ世界頂上決戦!~日本VS.ドイツ~」というNHKの番組だった。ドイツの木造大工はかなりのマニアで世界中の手作業の道 具を持っている。当然日本の木造技術にも造詣があり、その技術に対する敬意すら感じられて見ていて気持ち良いものだった。「盾と矛」のような敵意ではなく、互いの敬意が感じられる良い企画だった。

 凄ワザの用意したテストは二つ。一つは木材を2.5ミリだけ残してくり貫く技術の時間競争と、二つ目は木材を縦に継ぎ合わせて上から重さを加えていく強度の競争だ。一つ目は日本の大工が勝ち、二つ目はドイツの大工が勝利して引き分けた。ドイツの大工は「今度は競うのでなく、一緒に仕事したい」と言い、 大工同士の連帯を感じさせた。


■ ドイツの「船大工」

 しかし二つ目の勝負はちょっと気にかかる点があった。二つ目の同じ向きの木材をつなぐ方法だが、そう考えれば第一に「金輪継(かなわつぎ)」が浮かぶ。我が家のつなぎ方は「追っ掛け大栓(おっかけだいせん)」だが、最も頑丈なつなぎ方と言えばやはり「金輪継」なのだ。金輪継は簡単に言う と、二本の木を一本にしてしまう技術だ。組み合わせる面を凹凸をつけて刻み、それを真ん中に差し込む四角い「込み栓(穴に差し込んでいく硬い木)」で絞めていく。 込み栓を打ち込むと、二つの木材はがっしり食い込んで長い一本の木になる。この「金輪継」を日本の大工は選んだが、驚いたのはドイツ大工も全く同じ手法を選んだことだ。なんとドイツにも同じような組み方があるというのだ。

 ヨーロッパに木工の技術が発達しているのは、北欧から襲ってきたバイキングの影響だ。無敵のバイキングを支えた理由の一つが、バイキングが攻めていくときの木造船の工作技術なのだ。日本でよく聞くのは寺社を造る「宮大工」だが、もう一つの並び称される技術がある。それが「船大工」なのだ。バイキングたちを支えていたのは「船大工」の技術だった。そのバイキングたちはまさに 無敵で、フランスに残るサン・ミッチェル寺院以外に不落 だった場所はないほどだ。そのためヨーロッパの北海沿岸の各国は、バイキングたちに領地や名誉を与えることで、懐柔しようとした。

 その結果残されたのが北海沿岸国の木造技術なのだ。オランダの風車もまた木造で、電気のなかった時代のポンプの役割をさせるために作られた。そこには 「込み栓」が使われている。木造の教会などもこの流れからもたらされたものだった。






■ ドイツの勝因

 それにしても日本と北欧とで、まったく同じ継ぎ手の手法があったのには驚かされた。ただし日本の「金輪継」と違う点がわずかにあった。それが切り口の形だ。日本の金輪継では斜めに切った木材を組み合わせるのに対して、ドイツの手法は全く水平に切ったものを組み合わせるのだ。ドイツの大工はこうして柾目の年輪を切らないことで、強さを保つのだと言った。同様に「込み栓」もまた、柾目を活かして押し込んだ。その結果、ドイツの大工が勝ったのだ。しかしここには別な視点が必要だ。その話は次回に説明しよう。



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第1回 住むんだったら健康な家がいい
第2回 そのどこがエコなの?
第3回 天然住宅は高い?
第4回 蚊を殺すのにバツーカ砲
第5回 いい湯だな、バハン
第6回 次の世代に引き継げる林業に
第7回 本物「小林建工」さんとの出会い
第8回 日本ミツバチ
第9回 カビを寄せつけない技術
第10回 温泉三昧、雨ときどき間伐
第11回 小屋礼賛
第12回 皮むき間伐の弱点
第13回 低周波騒音問題
第14回 上下階騒音問題
第15回 住宅リテラシーを
第16回 湿気で溶けていく家
第17回 住宅貧乏
第18回 家を担保にした超・長期ローンを
第19回 「私、研究所の者です」
第20回 鉄筋にアースを 
第21回 太陽パネルの電気自給は「冬場」が大事
第22回 男なら天然住宅!
第23回 男なら天然住宅!~男ならスペックにこだわれ~
第24回 男なら天然住宅~男なら「マイホーム主義」~
≪番外編≫寺田本家さんに共感する
第25回 暮らしに家を合わせる
第26回 次の世代の住まいとは
第27回 「未完」の家
第28回 カナダからの見学者
第29回 気候の事情、個人の事情
第30回 健康を害さない防音ルーム
第31回 電力自由化でどこを選べばいいの?
第32回 エアコンは「熱を電気でつくる」もの?
第33回 電力自由化を契機に節電を
第34回 24時間換気の不要な家
第35回 「カネを出せば買える家」じゃない
第36回 「普通の」家
第37回 自宅の完成見学会
第38回 森を守って、健康長持ち
第39回 ネオニコ住宅の恐怖
第40回 ベランダって必要なの?
第41回 年収300万円台からのマイホーム
第42回 抵当権を登記しない融資を
第43回 木造の「継ぎ手」が同じという不思議
第44回 伝統大工は頑固なままで
第45回 木材に要注意
第46回 楽しいハイブリッド林業
第47回 自立的なウマ、琴姫
第48回 この世にムダなものはない
第49回 天然住宅にすむのに必要なもの
第50回 ホタル族、ホタルに会う
第51回 ホームバイオガス
第52回 いびきが消えた
第53回 高知県興津海岸は、こうして残された
第54回 太陽温水器の裏ワザ
第55回 「Low-Eガラス」の功罪
第56回 不都合を楽しむ
第57回 音と暮らす生活
第58回 においの環境問題
第59回 空気が吸えない恐怖
第60回 秋雨前線と電気不足
第61回 家が変わると暮らしが変わる
天然住宅バンク出資のお願い
第62回 湘南発、未来へ
第63回 おカネに頼らず暮らす
第64回 虫対策、その後
第65回 おカネに依存しない暮らし、自営
第66回 おカネに依存しない仮想通貨
第67回 天然住宅はホコリが少ない?
第68回 住宅教育が必要だ
第69回 住宅費用のイニシャル、ランニング
第70回 無煙炭化器
第71回 偉いぞ、炊飯器
第72回 中国のシックハウス問題
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