2013年10月18日

『「他人事」として生きる病理』

『「他人事」として生きる病理 』

■他人事の東電 

 いつ見ても不審に思うことがある。東電の発表者の態度がいつも他人事なのだ。
自らの発電所の事故で、自らの対応のまずさのせいでより深刻化させ、今や蜘蛛の糸にぶらさ
がっているような状態なのに、まったく誠意を感じさせないのだ。

 記者会見する社員も気の毒だと思うものの、その態度はどこか別な会社の話をしているようだ。しかもタマネギを剥くみたいにどこまで首脳にさかのぼっても変わらない。「あなたが起こした事故だ」と何とか伝えたいのに、どこまでいっても他人事のままだ。

 しかもメディアすらそれを責めるようではない。黄金の揺りかごに眠るわがままな王様のようだ。

今現在の危機

 現場で作業する人たちからは「何も教えてもらえない、高汚染の場所すら聞かされていない」と
声がもれる。その人たちのおかげでなんとか保っているというのに。東電の社員はいいから、
現場で作業する人たちだけでも守れないものかと思う。

 メルトスルーがわかったとき、京大の小出さんのアイデアに沿って「地下ダム」を建設することを
検討した。流れ込んでくる地下水を防ぐための地中連続壁を作るアイデアだ。ところが東電は
「1000億円かかるので株価が下がって株主総会を乗り越えられない」という理由でしなかった。


 これがすべての汚染水問題の始まりだった。毎日1000トンの地下水が流れ込み、300トンは汚染されずにスルーし、残りの400トンは汚染水となり、300トンは海へと流れ出てしまっている。しかも海へと流出する汚染水を防ぐために、海側に地中壁を建設した。その結果、地下から湧き出す形であちこちから汚染がにじみ出ようとしている。

 するとどうなるか。作業員すら誰も入れなくなる。誰も入れなければ、そのまま多量の使用済み
核燃料が事故を起こすのを待つだけになる。その規模はチェルノブイリの比ではない。関東・川崎どころか北半球ですら危険になる。

 もうひとつ、即席で作ったタンクからは汚染水がダダ漏れし始めた。その濃度は1リットルあたり
4億1千万ベクレルのストロンチウムだ。それが300トン漏れた。指摘されると「パトロールを強化
する」としたが、行くのは作業員、場所によっては3分で職業人の年間被曝許容量を上回る。最初からつけるべきだった水位計はこれから、なんと11月にやっと設置されるそうだ。

 こんなに逼迫した事態なのに、東電は例によって他人事だ。政府もまた他人事だ。オリンピック
開催の方がよほど重要だと言わんがばかりの対応をしている。


廃炉処理費は電気料金から

 ここまでの事態になっても東電は助けられる。こんな企業にした株主や債権者は守るため、国はせっせと東電を倒産させまいとしている。そして廃炉にかかる費用すら電気料金から集めてよいとする変更を、なんとただの会計規則改定だけで実現しようとしている。

 国民の中で電力会社に料金を払っていないのは、ぼくを含めてごく一部でしかない。つまりほぼ国民全員に負担させるのだから、国の法律に匹敵する変更だ。
ところがそれはただの会計規則の変更だけで行われようとしている。

 雑誌「世界」の記事はこう書いている。
「要するに売るモノがすべてなくなっても、自らの組織だけは何としても維持しようという「究極の
延命策」(電力業界関係者)だ。廃炉コストを最終的に押し付けられる消費者こそ、いい面の皮。
しぶとい電力業界における残された最大の「抵抗勢力」は、いまや日本経済の「お荷物」でしか
ない」と。

 電力会社はなぜこれほど王様なのか。ぼくは新たに太陽光発電で作った電気でほぼ自給できる仕組みを、今の電気料金と変わらないレベルで実現した。

 それでも多くの人は変えないだろう。人々もまたぶつぶつ人に文句は言うものの、自ら動かない「他人事」社会の一員になってしまっているからだ。


あなたの人生? それとも

 不思議になることがある。人々はその人自身の人生を生きているのかどうか。
 離人症という用語がある。その人自身のことに思えず、実感を持って生きられない精神病理だ。自分を守ろうとして演技のように他人事として生きてきて、それが習い性になってしまったのではないか。東電社員のように会社の代理で生きるだけになってはいないか。

 ぼくはぼくの人生だから自分で決める。
 何を選択するのも自由だし、自分で選択したことだから責任は負う。
 そして考える。今一番大切なことは何なのかと。

 まず東電の汚染水の問題が、私たちの将来を守るためにとてつもなく重要だ。
だから多くの人に知らせたいと思う。まず東電を倒産させ、国が原発すべての主体になるべきだ。もちろん原発はすべて廃炉にし、この深刻な負債を先に解決しよう。

 流れ込む地下水の流れを変え、当初あった「地下ダム」を今からでも建設する。
そしてメルトスルーしてしまった核燃料の冷却は水ではなく鉛などの金属を入れ伝導熱で冷却する形に変える。汚染水は東電の柏崎刈羽原発に処理施設があるので、そちらにタンカーで移送することを前提に厳重に保管する。
 汚染を犯罪として処罰することにし、無責任になってはならない体制を作る。

 原発廃炉の処理費を電気料金に転嫁してはならない。それが許されれば原発が最もお買い得
な発電方法になってしまうからだ。きちんと競争に基づく市場原理の中で販売するために、その前に電力の完全自由化を先にしなければならない。

 その上で廃炉処理費の負債については、アメリカにならって「ストランデッドコスト(どうにもなら
ない費用)」として、最低限だけ電気料金に上乗せさせるのがいいと思う。

 問題なのは東電も政府も官僚も(もしかすると国民も)、みんな他人事としてしか生きていないことではないのか。

あなたの人生はあなたのものなのだ。
しかも一回限りの。
自分らしく生きるとしたら、どんな形がいいのだろうか。


( 川崎市職員労働組合様へ寄稿したものを、好意を得て転載しています。)


10/18発行の田中優無料メルマガより転載http://archive.mag2.com/0000251633/20131018100000000.html