2009年1月25日

イスラエルのガザ大虐殺の背景





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「イスラエルのガザ大虐殺の背景 」

<紛争の五つの原因>
 ぼくはこれまでの著書の中で、ほとんどの紛争地は、その背景に「石油、天然ガス、それらのパイプライン、鉱物資源、水」があると説明してきた。「宗教紛争、民族紛争」というのは後からつけた理由にすぎないと。
 「ではパレスチナ問題はどうなのだ?」という疑問が出てくる。これまでも水紛争と呼べる部分もあった。しかしそれ以上に大きなものが、「領土」という資源なのではないかと考えてきた。しかしそれでも疑問は消えない。というのは、そもそもパレスチナ人とイスラエルの民は共存してきたし、それが唯一の解決策になるはずだ。それをなぜわざわざイスラエルという国家まで作って独占する必要があるのか、という疑問にうまく答えることができないからだ。
 国家というものが、利益の独占をするための枠組みだとすれば分かりやすい。確かにイスラエルという国家にすることで、アメリカから毎年3000億円もの「援助」を受けている。ほとんどが軍事援助だ。つまり国家という枠組みのおかげで利益を独占し、軍需産業を発展させることができたわけだ。国家は利益を奪い合うための枠組みのようにも見える。
<ガザの天然ガス田>
 しかしきくちゆみちゃんが見つけてくれたホームページ(http://www.informationliberation.com/print.php?id=26383)で、もしかしたら最初に述べた「紛争の五原因」の枠組みそのままである可能性が出てきた。なんとガザ沖に天然ガス田が発見されていたのだ。1999年11月、パレスチナ自治政府はイギリスのブリティッシュ・ガス(以下BG社)等と「石油とガスの25年の探査権利協定」を結んだ。BG社はそれに基づいて探査し、その結果、2000年に「約40億ドル、1兆4000億立方フィート」という巨大なガス田を発見した。しかもそれはイスラエルの持つ海洋ガス田と隣接し、実際には見積もりよりもっと多い量があるものと思われた。
 しかしイスラエル政府は、この金がハマスにコントロールされた政府に流れることだけは我慢ならなかった。ハマスは民主的な選挙で選ばれた正当な政権だし、ガス田は以前パレスチナ自治政府が契約していたとおり、ガザの領海内にある。しかしイスラエルは10億ドルの資金がハマス政権に流れることだけは許せなかった。そこで隣接するイスラエルのガスパイプラインにつなごうとすらしていた。イスラエル自治政府との正当な利権を持っているBG社は、2008年1月、いったんイスラエルとの交渉をあきらめ事務所も閉じた。しかしその後、再度イスラエルとの交渉が復活している。
 キーになるのは2008年6月だ。その月はイスラエルがハマスとの停戦交渉を始めた月であり、今回の大虐殺につながる侵略作戦が作られ始めたのも同じ月だ。さらにイスラエル政府がBG社とガザの天然ガス交渉を再開し、イスラエルの意図をBG社に伝えたとされる月だ。これらが同時に進められたのだから、相互に関連していないと考えるほうがおかしいだろう。
 戦いを避けたがるハマスを停戦交渉で動けなくさせておき、その間に2008年末から開始した今回の大虐殺を計画する。それと平行してBG社との間で戦後の天然ガス奪取の計画を練る。そして6ヶ月後に侵略し大虐殺に至る。とすると虐殺後に来るのはイスラエルの弾圧的な駐留と、ガザ沖のガス田の開発をBG社と再開することではないのか。
 今回の攻撃で、何もない漁村が爆撃されている。それがぼくにはとても奇妙に思えた。しかしガス田を中心に考えると合点がいく。
<ガザは地政学上の重要地点>
 これを地図で確認してみると、このガザ海域は石油と天然ガスのパイプラインから見ても重要な位置にある。ロシアはこの間、エネルギー資源を武器に強引な交渉を進めてきた。昨年8月に軍事介入したグルジアには、「BTC(バクー油田、グルジアのトビリシ、トルコの地中海出口ジェイハンの頭文字)パイプライン」がある。このパイプラインは第二のペルシャ湾と呼ばれるほど世界的に重要な、「カスピ海」から石油を運び出している。
 グルジア、アゼルバイジャンが旧ソ連領であった時期には、ロシアはカスピ海のバクー油田からの石油を、二本のパイプラインで運び出していた。一本がグルジア、アゼルバイジャンを通って黒海に抜けるルート。もう一本はチェチェンを通って黒海につながるルートだ。しかしアゼルバイジャン、グルジアが旧ソ連から離脱すると、アメリカ寄りの政権になった。その後、グルジア、アゼルバイジャンを通るパイプラインは、地中海に抜けるルートが開発されて変更された。それがトルコを抜ける「BTCパイプライン」だ。これまでの黒海のルートは、狭くて船舶が混雑して渋滞する「ボスポラス海峡」を通る必要があった。これがボトルネックとなって効率的にはならなかった。しかし今度は直接地中海に出られる。このBTCのルートは、運び出すのに圧倒的に有利なルートなのだ。この開発には日本の伊藤忠も参加している。http://www.jogmec.go.jp/news/release/docs/2006/new_060606.pdf
 そうなると不利なのがロシアだ。チェチェンを軍事的に弾圧して独立を妨げてまでパイプラインを死守してきたものの、ロシア側に残る最後のルートはボルポラス海峡がボトルネックになる「カスピ海-黒海」のルートにすぎない。地中海に直接出られないため、BTCよりはるかに不利だ。2008年8月、ロシアがわざわざグルジア紛争に介入したのも、「いつでもBTCなど止められるぞ」と圧力をかけるためのものだったと言われている。http://democracynow.jp/submov/20080815-3
 それが証拠にロシアの意図をめぐっては、日本の石油業界内でも神経質に何度も論議されている。BTCは虫歯につながる神経のようなものなのだ。そのBTCの最終地点、地中海沿岸のジェイハンに、もう一方、エジプト側からつながる「地中海東部沿岸パイプライン」がある。そのパイプラインはBTCとエジプトまでつなぐのだが、唯一切れているのがガザ地区沿岸なのだ。しかもそこには巨大な天然ガス田がある…。
 ロシアは2009年1月1日、ウクライナ経由ドイツ行きの天然ガスのパイプラインを停止させた。ドイツなどヨーロッパ各国は文字通り震え上がった。それがヨーロッパの生命線であるからだ。一方のBTCパイプラインも、ロシアのグルジア介入以来不安定になり、紛争後の流量も完全には回復していない。そのとき、逆のエジプト、ガザ側から天然ガスが供給されるとしたらどうだろう。ヨーロッパにとってもガザのガス田は重要な位置になる。それを狡猾なイギリスのエネルギー企業が放置しておくだろうか。
<戦争を抑止するエネ・カネの仕組みづくりを>
 ガザの紛争ですら、天然ガス田とパイプラインと密接な関係がある。エネルギーの重要拠点で利益の源でもある。そのせいでガザの人々が侵略・虐殺を受けているのだとしたら、エネルギー源を変えない限り続いてしまう。やはりぼくらのエネルギーの問題でもあるのだ。資金の点でもイスラエルを支えるアメリカの軍事援助だって、日本政府が購入するアメリカ国債から多くが流れている。化石燃料で今の経済を支え、利潤のためなら人を虐殺することも気にも留めずに投資していることに問題があるのだ。
 しかも昨年11月、IEA(国際エネルギー機関)は従来開発済みの油田からの石油が、2007年にピークがあって、その後減少していることを認めている。つまり今の世界はすでに、ピークオイル後の世界なのだ。もう今後、石油の産出量は増加しない。したがって景気が回復しても石油がボトルネックになって経済にはブレーキがかかる。石油は底が見えたのだから、さらに増やすことはできない。奪い合うか、石油に頼らない社会にしていくかの二つに一つしか方法がないのだ。しかも100年後の未来から見れば、石油だけでなく、天然ガスもウランもすでに枯渇している。もしぼくらが今後も存在していきたいなら、エネルギー源を自然エネルギーに変える以外にないのだ。
 しかし利権のために未来のない原子力が推進され、化石燃料が使われている。はるかにエネルギー効率が高くて低公害の電気自動車ですら、アメリカの自動車業界によってつぶされてきたのだ。http://democracynow.jp/submov/20070413-3
 こうした利権のために、自らの未来を滅亡させるのは愚かなことではないのか。しかもあなたの使っている石油の先には、ガザの大虐殺がつながっている。銀行預金の通帳の先にはイスラエルの武器がつながっている。ここでも再び、エネルギー問題、カネの問題に行き着いてしまった。ぼくはこの構造を変えていきたいのだ。