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2018.6.17 毎週一つ、F.I.N.編集部が未来の定番になると予想する言葉を取り上げて、その言葉に精通するプロの見解と合わせながら、新しい未来の考え方を紐解いていきます。
今回紹介する言葉は、今までの常識を覆す自給自足の電力のあり方「オフグリッド」です。
F.I.N.的新語辞典
『オフグリッド【おふ・ぐりっど/off-grid】』
家屋などで電力会社が提供する送電網を引き込んでいない状態を表し、その代わりに自家発電などで電力消費を賄っていること。
近年、世界で広がり認知されていて、特に欧米諸国では一般的なエネルギーシステムとなっているオフグリッド。日本でも、2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、エネルギー消費の仕方について考え始め、オフグリッドの生活にチャレンジする人が増えています。今や世界規模で取り組むべき、大きな課題となっているエネルギー問題。今後どのように展開されていくのでしょうか。
今回、地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境や経済、平和などのさまざまなNGO活動に関わる環境活動家の田中優さんにお話を伺いました。
ご自身でもオフグリッドの生活をおくる田中さん。
その魅力について次のように話します。
「日々、自力で生きることの楽しさを体感しています。これまでは電力会社のような大きな存在の下で生活していましたが、今はまるで野菜を育てるように生活に不可欠な電気を自分で生み出すことができます。電気代もかからず独自のライフスタイルを維持できるので、気持ちが良いですね」。
この生活を始めてからの5年間、電気が不足したこともあったという田中さん。
素敵なエピソードを教えてくれました。
「今まで4回ほど電気が足りなくなりました。その時は近くにある温泉ホテルに出掛けて食事をして帰ります。不便さも楽しみに変えていくことが大事。子どもは電気が不足するのを楽しみにしているほどです」。
現在、バッテリーの技術は日々進展し、価格は低下してきています。
さらに電気自動車に貯めた電気をつなげることなどができれば、ほとんど電気が不足することはなくなると田中さんは予想します。
「地域にあふれるほどのエネルギーが自給できるようになれば、その場所で経済圏を作り出すことも可能になりますし、蜘蛛の巣のような送電線も必要がなくなります。未来の遠くまで見渡せる風景は、従来と全く違った風景になるでしょう。
また、我が家の二酸化炭素排出量は一般家庭の一割ほどしかないので、地球温暖化も起こす可能性が低く、原子力発電の操作も不要。自然と共生できる持続可能な暮らしは難しくありません。したいと思えば実現できるんです」。
シンプルでクリーンなエネルギーを主としたオフグリットは、変わりゆく環境の中で、今後私たちの快適な生活を実現する最大の方法かもしれません。