2016年10月31日

『どう放射能を避けたらいいのか』

ただ今「田中優有料&活動支援版メルマガ "未来レポート"」バックナンバー(主に文章のみ)を公開中!

今回は、2012.10.2発行 第24号 『どう放射能を避けたらいいのか』です。
どうぞ"お試し読み"ください。
※データなどはこの有料・活動支援版メルマガを発行した2012.10.12現在のものです。


□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■ 



『どう放射能を避けたらいいのか』


■ 放射能に向き合う

筑摩書房から頼まれた原発の本が遅れに遅れている。怠惰ではないのだが、時間が取れなくてぼくのせいで遅れている。申し訳ない…。

 ただしその一方で、内容は深みを増した。特に放射能の影響についていろいろ読んで考えまくった結果、だいぶ自説ができてきた。もちろん自説なのであって、客観的に正しいと言われるようなものではない。本を全部載せることはできないので、そのエッセンス的な部分をここで紹介したい。

 まずは放射能はあぶなくないと盛んに御用学者が言っているが、このデータを見てほしい。

 これはウクライナ政府が出している報告書のグラフで、被曝した親から生まれた子どもの健康な子どもと慢性的な病気を持った子の比率だ。
 なんと8割近い子どもが病気になってしまっている。

 放射能が安全なら、こんな事態にはなっていないはずだ。しかもこのデータはウクライナ政府が公的に発表しているものだ。


■ 外部被曝と内部被曝

 以前、区役所の環境セクションにいたときに、魚の汚染調査をしたことがある。
網を投げて魚を取り、それを検査機関に送って有毒物質の調査をする。そのとき偶然に網に背骨の曲がった魚がかかった。珍しいことでもあるし、早速その魚を検査機関に出した。結果は「汚染なし」だった。

 ここが不思議に思えるところだが、背骨の曲がりは発生段階の早い時点で起きたことだ。つまりまだほんの幼魚のときに発生した事態なのだ。卵かもしれないし、その直後かもしれない。そのときに放射線か有害物質などの催奇形性物質の影響を受けたのだ。幸い軽度であったので、魚はその後もずっと生き延びた。
 つまりその被害は発生段階の早い時点で一回加害を与え、その後は普通の状態だったのだ。
 しかし発生段階の早い段階でのダメージは、そのまま背骨の曲がりとしてずっと残されたのだ。

 外から放射線を浴びる「外部被曝」はこれによく似ている。発生段階のどこかでダメージを与えられたせいで、その痕跡が残るのだ。その後の環境には左右されずに残る。

 外部被曝の1ミリシーベルトとは、体の60兆個、すべての細胞の核を、一回放射線が突き抜けることを指しているから、とても大きな被害を与える。余分に浴びることの最大限度が1ミリシーベルトまでというのは、それでも多すぎるということは言えても、とてもではないが軽い被曝ではない。しかし日本政府は今、これを20ミリシーベルトまでにしてしまっている。

 しかしシーベルトは被曝量なので、計算された値だ。客観的な数値ではなく、評価が入り込む隙がある。特に体内被曝では、臓器全体にまんべんなく被曝させる計算になっていたり、セシウムがガンマ線を出す数分前に出しているベータ線を無視していたりして、とてもではないが信用できない。

 それに対してベクレルは、放射性物質から発せられた一秒間に一個の電離放射線を示すだけだ。これには評価の入る隙はない。しかし外から発せられる放射線が自分に当たるかどうかは運次第だが、体内から発せられたときは必ず当たる。ベクレルは体内からの内部被曝のときには確実なものとなる。



■ 予測できる被害


 外部被曝は「天才バカポン」に出てくる、ピストルを撃ちまくる目のつながったおまわりさんのようなものだ。流れ弾に当たるかどうかの問題だから、確率的に決着をつけるには保険確率のような「大数の法則」と呼ばれる膨大な数のデータが必要になる。それが得られないから原発推進派は安心して「安全だ」とウソが言える。

 しかし内部被曝は確実だ。それを調べてしまったのがベラルーシのゴメリ医科大学学長だったバンダジェフスキー氏だった。彼は亡くなった患者の臓器のセシウムレベルを計り、その人の疾病と比較したのだ。そこには明らかな関連があった。そのことを発表した数日後、彼は冤罪で獄中につながれ、アムネスティーが救い出すまで5年間も外に出られなかった。

 放射能による疾病は、明らかに体内の放射能量と比例するのだ。

 これを日本の御用学者たちは攻撃する。バンダジェフスキーはデタラメだ、権威もないしろくな論文もないと。しかしバンダジェフスキー氏はwikipediaによれば、「ベラルーシコムソモール賞、アルバート・シュバイツァーのゴールドメダル、ポーランド医学アカデミーのゴールドスターを授与され、氏の指導のもと、30の博士論文が作成され、200篇の文献が作成された」とある。日本の御用学者がシュバイツァーのゴールドメダルを獲得しているものだろうか。

 バンダジェフスキー氏のデータでは、子どもの体内のセシウムが、体重1kgあたりわずか11ベクレルを超えるだけで正常な心電図が35%まで減るとしている。

 そして体内でのセシウムが最も蓄積する臓器が、甲状腺であることを明らかにしている。


 このことは、(2012年)9月に発表された福島県内の子どもの甲状腺の「のう胞」発見レベルに、恐ろしい未来を暗示する。データは、「42,060人の子どものうち、6~10歳の女子の54.1%、11~15歳の女子の55.3%に「のう胞」が、男女合わせた全体でも43%に「のう胞」が見つかった」というものだが、その数の多さが恐ろしいが、しかしその被曝をさせたヨウ素131はとっくに放射線を出して安定化している。その後の「のう胞」がガン化するかどうかは、その後の条件によるわけだ。

 ところがセシウムは子どもの甲状腺に最も多く蓄積する。そこからガンマ線だけでなく、ベータ線も被曝させるのだ。距離が近い分だけ被害を及ぼすエレクトロボルトも高い。

 ガンになるには発がんというイニシエーターだけでなく、ガンを促進させるプロモーターも必要だ。それをセシウムが担うとしたら。セシウムを体内に摂取することはとても危険な事態を招く。


■ 被害発生のメカニズム

 なぜ心電図に影響が出るのかは簡単だ。セシウムは筋肉に集中する。心臓は筋肉の固まりだからだ。ところが心臓の筋肉は、ほとんど一生モノで、ほんのわずかしか細胞が生まれ変わらない。そこに入ったセシウムが、放射線で細胞を殺した分だけ心臓は正常に動けなくなり、ある線を越えると心筋梗塞を生むのだ。

 他にわずかな量で影響を及ぼすのは尿だ。尿の中のセシウムが5ベクレルを超えただけで、「チェルノブイリ膀胱炎」と呼ばれるほど膀胱炎を頻発させ、一部は腎臓病や腎臓ガン、膀胱ガンを招く。なぜこんなわずかな量で起こすかと言えば、尿は雑菌を一切含んでいないために、人体は栄養分をリサイクルする。


 セシウムは99%回収されてしまうために、出て行くまでに100回もその場を循環することになるためだ。

 バンダジェフスキー氏は断言する。
「シーベルトなどという勝手な人の判断が入る基準を使っていてはいけない。ベクレルで判断すべきだ」と。

 御用学者は批判する前に、自分で亡くなった患者の臓器の汚染レベルを計ってみたらどうか。それほどバンジェフスキー氏を否定したいなら。

 さて、体内の汚染レベルが問題だとして、どの程度までの汚染を許容値とすべきだろうか。これまで見てきた中では「5ベクレル/体重1kgあたり」というのが最小だろう。

 これを基準にしてみると、食べ物の許容されるレベルは1ベクレル/kg以下という水準になる。日本政府の持つ一般食品100ベクレル/kgの百分の一だ。

 この厳しい基準でも実際に可能だという話は、有料・活動支援版メルマガ12号「放射能の健康被害、何が本当に危険なのか」に書いたので繰り返さない。
とにかく食材の産地を確認すること、汚染レベルを確認することをお勧めしたい。


■ 何を食べたらいいのか

 では何を食べたらいいのか、と聞きたくなる。その逆がいい。何を食べてはいけないか、だ。放射能を多く含むものだけ覚えるほうが簡単だからだ。

 まずは魚だ。淡水魚が溜め込む。特に高いのが放射能を集めやすいコケだけを食べているアユだ。次が近海魚。特に「ヒカリモノ」と呼ばれる魚は危険だ。遠洋モノはそれより少ない。魚にだけはもうひとつの危険性がある。体に入ると骨に吸収されて30年経っても半分しか出てこないストロンチウムが、海水ではセシウムの3割から半分近く含まれるのだ。

 しかし汚染されているのは福島沖と茨城沖だ。あとは海水の回り込みによって北海道苫小牧沖と宮城県金華山沖あたりにも多少汚染があるが、それ以外は海流の関係から救われた。産地か汚染度を把握してほしい。

 それとめちゃくちゃに汚染を集めるのがシイタケなどのキノコ類だ。自生しているものはかなり高い。それとタケノコ、山菜類も高い。そのせいで野生動物は食べられないほど高くなってしまった。

 果実類も高い。クリ、ウメ、モモ、リンゴ、柑橘系も軒並み高い。
 穀物では必ずモミと胚芽部分が高くなる。だから白米にすれば7割は減らせる。

 小麦は今年に入ってからうどんなどに確認され始めた。特に要注意なのがパンだ。パンは小麦からの汚染だけでなく、牛乳に含まれていた汚染があるのだ。


 バターやチーズにすると汚染が減るので牛乳はそれらに加工された。ところが汚
染はホエーと呼ばれる乳性部分に集められた。それらは捨てられるのではなく、パンや菓子に使われたのだ。その結果、パンに汚染が確認されることがある。

 野菜は総じて汚染が低い。汚染が見つかるのは土の中から取れるサツマイモなどのイモ類、そして泥から取れるレンコンなどだ。特に集めることが確認できているのはカラシナ程度だが、その理由は日本の土壌の性質にある。セシウムは一度粘土に取り込まれると、植物の根から出される酸程度では吸収できなくなる。
日本はたまたまチェルノブイリと違って粘土層が多かったことが幸いしているのだ。


■ 食べたとしても解決できる

 でもすでに食べてしまったという人もいるだろう。それでも対策がある。体内に入り込んだセシウムを体外に排出させる能力の高いものを摂ることだ。

 なにより高いのが「食物繊維」だ。それは植物の繊維ではない。オクラや納豆、ワカメなどのヌルヌルだ。それを摂ると体外に排出させる効果がある。その効果を高めたものがペクチンだ。リンゴや海藻などの食物繊維の一部を集めたものだ。


 作ることもできる。リンゴなどを細かく切り、クエン酸を5g加えた2リットルの
水でことこと煮る。煮汁を濾して残った汁がペクチンだ。これは核戦争を心配していた1970年代から、軍事で開発されたものなのだ。

 また、体内で放射能が被害を与えるのは、遺伝子を切断してしまうことともうひとつ、細胞の電子を蹴飛ばして失わせることだ。電子を失った原子は他の電子を奪ったりすることで周囲の遺伝子をめちゃくちゃにする。


 これを「フリーラジカル反応」というが、この反応は酸化反応だ。つまり抗酸
化物質が効く。この抗酸化物質は、圧倒的に野菜に含まれているのだ。だから野菜をなるべく食べるのがいい。

 もうひとつ、ラットの動物実験の結果で放射能の被害を緩和したものがある。
それが乳酸菌、麦芽の発酵させたもの、熟成度の高い味噌だった。

 乳酸菌と聞くとヨーグルトを思い浮かべるかもしれないが、日本人は普段から摂っている。漬物はぬか漬けでも野沢菜でもキムチでも乳酸菌発酵なのだ。

 麦芽の発酵させたものはビールだった。ビール酵母から作ったエビオスも同様の効果があった。さらに味噌となると、どれも発酵食品ばかりだ。日本の伝統的な食品を摂るのが効果があるだろう。

 ただし医師の一部は否定している。「それはラットであって、人間ではない」と。しかし人体実験はできないのだから、それらの医師たちに任せていたら埒が明かない。だから自分はラットに体質が似ているという人だけ信じればいいと思う。


■ 汚染値に暮らす鉄則

 どうだろうか。対策の方法が見つかったのではないだろうか。ここで再度上に述べたことから鉄則を考えてみよう。

 まず外部被曝は、確率と発生の早い段階への被害が大きな問題だから、妊娠している人、妊娠の可能性のある人、可能なら今後妊娠する予定のある若い人と幼児はそこに住まないことが望ましい。そして住むのなら、生殖器官が危険だから絶対に外で腰掛けてはいけない。距離が近くなれば当たる確率は10倍近く高くなる。

 内部被曝は何より食事だ。水のほうがもっと摂取量が大きいので危険だが、水道原水がきれいでない地域では水の中のホコリを落とすために凝集材を使っている。するとセシウムはホコリとともに沈殿するから汚染されなくなる。むしろ逆にきれいな原水で凝集材を使っていないところの水のほうが危険になる。井戸水はセシウムが地下浸透しないことからまず汚染されないから大丈夫だ。食べ物は産地か汚染値を確認して食べてほしい。

 危険なのは外食だ。外食産業の中で、原料を安く買い叩くところは汚染された食材を選択しやすい。そうした場合、キノコ類を残し、ヒカリモノの魚は避けるのが無難だ。そして最後の煮汁は飲まないことだ。セシウムは半分程度が煮汁に溶け出すので、煮汁を飲むと摂取することになる。酢漬けも同じだ。ピクルスはセシウム量がとても減っているが、その分酢のほうに流れ出ているから飲んではいけない。

 福島県南相馬市の子どもを調査したデータでも、半数以上の子どもの体内セシウム量はゼロだった。汚染されている子どもも平均で7ベクレル/体重kgあたり程度ですんでいた。もうちょっと気を配ればチェルノブイリのような被害を生まずにすむかもしれない。だから知っておいてほしいのだ。

 テレビも御用学者の「大丈夫」ばかりのいい加減な報道ではなく、きちんと汚染食品を避けられる方法を伝えてくれればいいのに。

--*--バックナンバーここまで こちらの書籍もご参考に! -*--*--


文章の冒頭で「筑摩書房から頼まれた本」が、2013.7月に発行されています。

今回のメルマガの内容がさらに詳しく書かれていますので、まだの方はぜひご覧ください。


田中優著
『放射能下の日本で暮らすには?

~食の安全対策から、がれき処理問題まで~』

(筑摩書房 2013.7発行)   
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480878663/ 





3.11後、空気も水も食べ物ももはや安全ではない。
私たちは、何を食べ、どう暮らせばいいのか?
今、できることは何か?
後悔しないために。

原発の危険性を長く訴えてきた著者渾身の書!
原発事故後を生きるための必読書!


<目次>

第1章 放射能汚染の中の暮らし
第2章 外部被曝と原発事故の被害
第3章 内部被曝とダメージ
第4章 チェルノブイリの現実から考える
第5章 私たちは何を食べたらいいのか
第6章 これから日本でどう暮らすか
第7章 原発周辺のミステリー
第8章 がれきをどう処理すべきか


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