2019年3月4日

映画「アウト オブ フレーム」への田中優応援コメント

ぼくの三男がなんとドキュメンタリー監督デビュー!
応援コメントを頼まれたので書きました。

その映画が現在クラウドファンディング中です。
皆さま、よしろければ拡散やご支援をお願いします!

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【映画「アウト オブ フレーム」への応援コメント】

映画「アウトオブフレーム」完成に向けて

環境活動家田中優さんから応援コメントをいただきました!
田中優さんは、本作の監督・田中悠輝の実父でもあります。

***田中優さんからの応援コメント***

 悠輝くんはぼくの息子だ。男の子ばかり三人兄弟の一番下の子として生まれた。ぼくの名前は環境問題や人権関係で知られていて、上の子たちはそれを知られるのを嫌がっていたが、悠輝くんは嫌がるどころかそれを楽しんでいるようだった。

 
 悠輝くんの叔父に当たる『てっちゃん』には知能に障害がある。
 
 妻の弟は赤子の頃に黄疸がひどくて、そのせいで知能に障害が残ってしまったらしい。見た目には普通なのに意味ある言葉を発することができないし、会話もできない。自転車が置かれていて車輪がロックされていないと、蹴ってロックを掛ける。相手は驚くと同時に見た目に普通なので怒り出したりする。謝って障害のある子なのだと説明しなければならない。
 
 その『てっちゃん』は散歩と水泳が好きで、出掛けるのを毎週休日の日課としていた。当然悠輝くんは赤ん坊の頃から一緒に出掛けていた。少しすると悠輝くんの知能が『てっちゃん』の知能を上回るようになり、悠輝くんが『てっちゃん』の世話をするようになった。『てっちゃん』は怒ることもあったが全体としては素直で明るい子だ。その『てっちゃん』のことはそのまま受け入れていた。
 
 高校生になったあるとき、悠輝くんが言った。「『てっちゃん』はインフラだから」と。悠輝くんにとって『てっちゃん』はいるのが当たり前の存在で、自分を形作っている一つのファクターだという意味だろうと思った。取り立てて言わないが、当然のこととして悠輝くんは『てっちゃん』をありのままに受け入れていた。

 
 ぼくは人に指図されるのが嫌いだし、命令されるのは真っ平御免だ。
 
 自分がそうなのだから子どもたちにもそう接していた。自分で決めたことを尊重し、無理強いすることはなにもしなかった。その中で長男は運動中心に体育会系の人ともつきあなるように育ち、二男は学問中心に活動しながら今は弁護士になった。悠輝くんはどちらもできるにもかかわらず体育会的な関係を嫌って、自分なりに福祉的な活動に分野を広げた。
 
 何をするかはその人次第だ。でも親としてその妨げだけはしたくないし、その後ろ支えはしてやりたい。そんな中で、いつも仲良く楽しめる家族となった。一緒に合宿のようなスタディーツアーに出掛け、夜になれば酒盛りを楽しむ。何も強いられることはなく、その人なりにその時間を楽しめばいい。友人を共有するように紹介して一緒に活動する。


 そんな中で悠輝くんは頭角を表したのかも知れない。彼は誰一人除け者にすることなく、その人の内側から見ていく能力を身に着けた。理解するのではなく、内側から共感し、了解していくのだ。その彼が障害者の人たちのドキュメンタリーを撮った。
 
 それは差別観のない彼の、殻を破って活動のフレームを壊して広げていく人たちのドキュメンタリーであるだろう。「障害者」という枠ではなく、共に同じ時代を拓いて生きていく人たちへの共感が綴られるだろう。彼に「障害者」という枠組みに対する特別視はないからだ。
 
 
 ぼくは一人の人として悠輝くんが好きだ。彼には兄弟たちもまた見方のアドバイスを受けている。彼から見てどう見えるかを知ることはとても役立つからだ。そして自分が入院した時に、彼がどれほど温かく身をもって献身してくれるかを知った。
 
 その彼が作ったドキュメンタリーだ。第三者的に客観を装ったドキュメンタリーではないだろう。一方で悠輝くんには動いている自分を後ろから観察するような目もある。冷静に分析してしまうのだ。それに加えてもともと私自身の友人だったはずの鎌仲監督のプロデュースも加わっている。監督の目の確かさはすでに作品に示されている通りだ。

 鎌仲監督が宣伝を引き受けた映画「ほたるの川のまもりびと」の冊子の中に、ぼくの友人である新村安雄さんが文を寄せている。それはとても格調高くて良い文だ。彼のことは悠輝くんも飲み交わす友人として知っている。悠輝くんは彼が父親を通じて見るところに不満がある。彼は余分なフィルターを通して見られることが不満なのだと思う。


 だからぼくが父親であるというフィルターを外して、彼の見せたかったものを観てほしいと思う。そこに懸命に生きている人の想いだけが伝わるのではないだろうか。

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”自立生活運動の現在”を描く映画、
「アウトオブフレーム」完成のための
クラウドファンディング!
https://readyfor.jp/projects/out-of-frame

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映画「アウト オブ フレーム」は、“自立生活運動の現在”を描く作品です。

自立生活とは、日常的に介助(手助け)を必要とする障害者が、親元(親の家庭)や施設を出て、地域で生活すること。

自立生活は、自由と安全の戦場です。

施設や親元から出て、当事者の意志によって営まれる自立生活では、本人の選び取れる自由が増す一方で、しんどくてもその責任を引き受けなければなりません。選択をあやまり、自分の命を危険にさらすこともあります。

また、自立生活にはヘルパーの存在が必要になります。

ヘルパーのいる暮らしは、当事者ができることを増やし、見守りがあることで安全の向上につながります。その一方で、気の休まる時間を失うことにもつながります。自立生活は誰かと生活を協働していくことが宿命づけられているのです。

ぼくは自立生活の現場で、様々な葛藤を経て自由を獲得していく人たちの生き様を見て、その姿を撮影してきました。

それぞれの自立生活を歩む当事者の日常を描くことで、あまり知られていない自立生活の実相や、より自由に生きられる世界をより身近に知っていただくができるのではないかと思っています。


【ごあいさつ】

はじめまして、ぶんぶんフィルムズの田中悠輝(たなか ゆうき)です。映画「アウト オブ フレーム」で初監督を務めます。

「おれたちの姿を撮ってほしい」

2016年、制作支援者の一人である今村登さん(全国自立生活センター協議会・副代表)が、障害者のヘルパーとして彼の介助をしていたぼくに言いました。

ぼくは元々、ホームレス支援・生活困窮者支援の現場で働いてきました。現在も自立生活サポートセンター・もやいというところで働いていますが、困窮に陥る人の中には、見える/見えない障害に苦しんでいる人が少なくありません。

自立生活運動に出会ったのは、そうした困窮者の方々と一緒にいて、いきづまりを感じていた時でした。

社会の中にある障害を乗り越えるために、当事者として自ら声をあげ、仲間を募って、その社会環境を変えてきた先進的な当事者運動が、自立生活運動でした。

その現場をより深く知りたいと資格を取得し、障害者のヘルパーをはじめ、その中で「一緒にいるなら、空いた時間だけでもいいから撮ってほしい」と言われたことがきっかけに、カメラを手にしました。


左から鎌仲、今村さん、田中、磯部さん(自立生活センター自立の魂・代表)


出会ってきた人たちに誠実に向き合いたい

今回の映画製作プロジェクトが立ち上がった背景には、多くの人たちとの出会いがありました。

最初に「映像を撮ってほしい」と言ってくださった今村さんをはじめ、プロデューサーを引き受けてくださっている鎌仲ひとみさん、製作支援を担ってくれた平下耕三さん(全国自立生活センター協議会・代表)との出会いがありました。

ぼくは当初、映像に関しては全くの素人でしたが、ヘルパーをしながら撮りためた映像をプロデューサーの鎌仲ひとみさんにプレビューしていただき、鎌仲さんと一緒に応募した文化庁・芸術文化振興基金の助成対象に選ばれたことで、本格的に作品完成に向けて動き出すことができました。

また、全国自立生活センター協議会・代表の平下耕三さん、副代表の今村登さんが製作支援者として参画していただいたことで、より深い取材が可能になりました。

二人は映像製作についてなんの実績もないぼくに、「ゆうきならできる、ゆうきにやってほしい」と言ってくれました。そんな風に期待をしてもらえたことはあまりなかったので、この言葉にはとても勇気をもらったことを覚えています。

さらに現場での経験不足で行き詰まっていた時に、撮影・編集・構成として経験豊富な辻井潔さんが製作に加わっていただいたことで、作品の輪郭が見えてきました。

辻井さんは、撮影の基本的なことや構成・演出上の技術的なことについて、辛抱強く丁寧に指南してくれました。今回のクラウドファンディング用の映像も、辻井さんと二人で撮りに行った大阪のライブハウスや、泊まり込みで行った介助風景のロケからのものがメインになっています。

この製作チームの誰が欠けても、ここまで製作を進めることはできませんでした。すべての出会いがあって、3年間続けてきた映画製作も、あと一歩のところまで進めてくることができました。

普段のぼくは、いつも斜に構えて恩知らずなことも多い若者ですが、「今回ばかりはきちんと誠実に応えたい」、そう思ってクラウドファンディングに至りました。

映画の完成まであと少し、ぜひご協力をお願いします!!



【作品の見どころ】

個人的な思いもありますが、この現場にいる障害当事者の方々は「おもしろい」です。

撮影する中で、彼らはぼくと同じ人間だけど、ぼく以上に自由でおもしろく日々を生きているような印象を受けました。

でも、それは彼らがいろいろな大変さを引き受けて獲得してきたものなんだ、と撮影を続けてきてわかってきました。


「自由はいいけど、自由すぎてもあかん」

ある飲み会の席でお酒の好きな当事者が言いました。お酒を飲んでも、タバコを吸っても、パチンコをやってもいいけれど、それだけじゃ日々は充実しない。いろんな役割や責任を自ら進んで引き受けて日々の充実がある。

そんな日々の葛藤があるけれど、だからこそその光景はとても刺激的でした。

この映画はきっと障害のある当事者のみならず、ぼくと同じように漠然とした生きづらさを感じて、いきづまっている人にも勇気を与えるものになると思っています。

これまでつくってきた枠を出ることは勇気がいりますが、そのあとに開ける世界を映画に出てくる当事者たちは見せてくれます。



【今回のクラウドファンディングについて】

今回のクラウドファンディングでは、「映画の仕上げにかかる費用」と、「映画を劇場で上映するためのフォーマット制作費用」をご支援いただきたいと考えています。

300万円のご支援をいただければ、なんとか映画を完成するための費用をまかなうことができます。使途については以下の通りです。

・編集機材費
(3年に及ぶ取材で撮影した膨大なデータを保存するために必要な機材購入費など

また、スタジオ経費を節約するための映像編集ソフト購入費)
・スタジオ使用料と人件費
・カラーグレーディング
・予告編制作費
・ヴィジュアルデザイン費
・原版制作費+劇場用フォーマット制作費


【今回の映像について】

音楽を提供してくれたガナリヤ・サイレントニクスGt.Voの川崎さんは、映画の重要な登場人物の1人で、障害者のヘルパーをしています。

夜の大阪を疾走する車椅子にのった男性は、川崎さんが働く自立生活センターの代表・渕上賢治さん。

川崎さんがライブを終え、渕上さんの自宅前で2人が出会うところから、介助の日常が始まります。
今回の映像はその2人が交差するまで。

今後も少しずつ映像を出していきたいと思いますので、引き続きページをご覧いただければと思います。


【プロデューサー・鎌仲ひとみさんからのメッセージ】

ページをご覧いただきありがとうございます。 ぶんぶんフィルムズ代表の鎌仲ひとみです。

私は長年、ドキュメンタリー映画、 特に社会の中で声が届きにくい人たちの声を届ける作品を作り続けてきました。 今回は、障害当事者の方々の取り組みを知っていただきたいと思い、 新作映画「アウト オブ フレーム」の製作に取り組んでいます。

ぶんぶんフィルムズのスタッフである悠輝くんを通じ、 自立生活を獲得しようと取り組む当事者の方々に出会い、 本作をプロデュースする決意をしました。

ドキュメンタリー映画の分野に「障害者もの」と呼ばれるジャンルがあるように 「障害者」を主題にした作品はこれまでも沢山作られてきました。

私自身はこのテーマで監督作品を作ろうと思ったことはなく、 正直を言えば、 障害者の方々と自分を重ね合わせることがこれまでできていなかった。

しかし、今回は初めて監督を経験する悠輝くんの新鮮な眼差しで、障害当事者の方々の 取り組みを捉えた時、 映画は「障害者もの」という限界を超えて行けるのではないかという予感がしました。

これは、誰にとっても、「私のことでもある」、そう思える作品になるのではないか、と。

これまでにない、枠を超えたドキュメンタリー映画を世に送り出すために 悩みながら格闘する新米監督悠輝くんの力になれたらと思っています。

皆さまのご支援、応援をよろしくお願いいたします。


【映画「アウト オブ フレーム」概要】

▷完成予定日:2019年4月
▷上映予定日:2019年9月
▷上映場所:東京の劇場を皮切りに全国の劇場で上映
▷上映時間:90分
▷主な出演者:平下耕三 渕上賢治 大橋グレース愛喜恵 川崎悠司 他 
▷撮影場所:東京、大阪、アメリカ、ネパール、コスタリカ