2015年11月14日

『そのどこがエコなの?』  

田中優が共同代表を務めます非営利の住宅会社「天然住宅」では、 ホームページのリニューアルに伴い、田中優のコラム「住まいと森のコラム」を始めています。 

 「森を守って健康で長持ちする」住宅や森の再生へのヒントなどがたくさん入っています。 
月に3回更新!ぜひチェックしてみ下さい。 


 □◆ 田中 優 より ◇■□■□ 

 天然住宅「住まいと森のコラム」 第2回    

 『そのどこがエコなの?』  

 ある地方へ講演に出かけたとき、知人から「エコ住宅ができたので、ぜひ住宅を見ていってくれ」と言われた。ぼくは建築が専門ではないが、こんな活動をしているから否が応でも目は肥えてくる。だから見せられても「ほめられない建物だったら」と思うと気乗りがしないのだ。むしろ環境問題の方で知られているから、「エコ住宅」 という視点だけで健康を全く考えていない住宅だったら困るなと思って、やんわり断り続けていた。    

 しかし「道の途中だから、ちょっと寄ってみましょう」と連れて行かれてしまった。 悪い予感は的中した。玄関を開けるなり、『いらっしゃ~い』と化学物質のガスのお出迎え。ホルムアルデヒドなどの臭いだ。室内に入ると一層ひどくなる。 『えっ?えっ?なぜみんな平然とした顔してるの?』 と思う間もなくご説明が始まった。

  「この家は太陽角度を計算して冬には光を取り入れ、 夏の直射日光は遮断するように建てられた住宅です」

 『それって、当たり前じゃないの? 計算難しくないんだし』

 「グラスウールの断熱材をたっぷりと使って冬場でもほとんど暖房なしでも暮らせます」

 『っていったって、この臭いじゃ換気しないと死ぬよ~』 

 「堅牢さを確保するために最新技術のラミナーを使い、 壁倍率も高く震災にびくともしません」

 『ラミナーって集成材だろ?接着剤で貼り合せたあれ?びくともしないって、オレすでにぐらぐらなんだけど』 


 ■詐欺士、その名は〇級建築士  

 ところがその家には若い夫婦と幼い赤ん坊がいた。家族一同、幸せそうにこの空気の中で笑っている。いや、ここダメでしょ。 
 「大変結構なお住まいですね。先を急ぐものですから、これで失礼します。お邪魔いたしました」  
  努めてにこやかに、本当に自分の言葉なんだろうかと思うほど、空虚な挨拶をしてそそくさと退散した。いやはや気の毒だ。建築士とは「他人のカネで自分の作品を作るヤツ」と悪口言われたりするが、その典型のような家だ。こんな人体実験みたいな家を作るんなら、自分のカネで自分の住まいにしろよと思う。    

 オランダでエコ建築の大学を見学したときもそうだった。天然ゴムに混ぜる可塑剤に、むちゃくちゃ有害で臭いヤツがある。そのひどい臭いのおかげで、無神経男のこのぼくが、「化学物質過敏症(CS)」の人の気持ちを一瞬にして理解したほどだ。 なんとその後二日間は頭痛が消えなかった。集中力も落ちてしまってあまり考え事ができなくなる。  
『エイリアンってのは口がのべーっと前に伸びていたけど、臭くって吐き出したく てあんな顔になったのかなぁ』ってベッドの中で考えていた。 


 ■有害化学物質は使っちゃダメでしょ  

 天然住宅では可能な限り化学物質を使わない。「99.9%だ」と胸を張るが、『なんで100%じゃないの?』と聞きたくなる。そこで聞いてみた。すると電灯のつなぎの部分だとか窓周囲のパッキンだとか…。『いや、それって「建築した部分」じゃない じゃん、100%使わないって言えば?』と思う。それでも今なお99.9%のままになって いる。    

 しかも木材は高温乾燥していないし、それ以前に防カビ剤のプールにも漬けてない。 だから家の中は森の中の匂いみたいだとよく言われる。 『だけどね、この匂いは森ではなくて木材の青い匂いなんだよな。竹林に入ったって 青竹の匂いはしないでしょ?』なんてちょっと思うけど、ま、イメージとしてはそん な感じなわけだ。そのおかげで、天然住宅の見学会だけしかしていないと、その匂い が当たり前になっちゃうんだ。
 だから不覚にも家具屋さんや他の住宅に入った時に、 内心ではエイリアンの顔になっちゃう。 

 住宅にもし一つだけ「存在の条件」を持たせるとしたら、一切の化学物質を使っていないことなんじゃないかと思うんだ。 




 ☆--★ コラムは第21回まで更新中! (2015.11.14現在) ☆---★   

 田中優の「住まいと森のコラム」    月に3回記事を更新しています!  

 ■目次一覧 http://tennen.org/yu_column  

 第1回 住むんだったら健康な家がいい 
 第2回 そのどこがエコなの? 
 第3回 天然住宅は高い? 
 第4回 蚊を殺すのにバツーカ砲 
 第5回 いい湯だな、バハン 
 第6回 次の世代に引き継げる林業に 
 第7回 本物「小林建工」さんとの出会い 
 第8回 日本ミツバチ 
 第9回 カビを寄せつけない技術
 第10回 温泉三昧、雨ときどき間伐 
 第11回 小屋礼賛
 第12回 皮むき間伐の弱点 
 第13回 低周波騒音問題 
 第14回 上下階騒音問題 
 第15回 住宅リテラシーを 
 第16回 湿気で溶けていく家 
 第17回 住宅貧乏 
第18回 家を担保にした超・長期ローンを 
 第19回 「私、研究所の者です」 
 第20回 鉄筋にアースを 
 第21回 太陽パネルの電気自給は「冬場」が大事