2018年2月、グリーンコープ共同体様主催の2017年度脱原発学習会が開催され、田中優が講演をさせて頂きました。
その講演をまとめたものが、グリーンコープ共同体の機関紙「共生の時代」に掲載されました。
図は、こちらのPDFからご覧いただけます。
http://www.greencoop.or.jp/kyousei/pdf/kj201804.pdf
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田中優『原発に頼らない社会へ』
▼原発がなくても 電気は足りる
政府や大手電力会社は原発がないと電気の安定供給ができないと言っているが、電気が足りなくなる恐れがあるのは、真夏の平日昼間、年間数時間だけ。しかし、日本各地の電力会社はネットワークで結ばれピーク時には補完し合うため、電気が不足することはない。電力不足と騒がれ大飯原発を再稼働した2012年さえ余剰が出たほどで、再稼働は全く必要なかった。
ピーク時の電気を消費しているのは大半が事業者で、家庭用はわずかだ。日本の家庭は先進国の中で最も省エネが進んでおり、家庭よりも事業者が消費を減らす必要がある。
ピーク時の電力消費を減らすのは難しいことではない。アメリカのカリフォルニア州では、電気の消費量が多い時間帯に電気料金を上げる設定をしたところ、消費量か減った。莫大な費用をかけて発電所を建設し電気の供給量を増やすより、消費量を減らすほうが合理的なのだ。
▼原発と総括原価方式で肥えた日本の経済界
政府と大手電力会社が原発に固執するのは、発電に必要な経費全てとその3%の事業報酬を電気料金に含めて消費者の負担にすることができる「総括原価方式」が採用されているからだ。電力会社は事業報酬を大きくするために架空のニーズを創り出し、多大な経費がかかる原発や再処理工場などの建設を進めてきた(図2)。
2020年に「総括原価方式」が廃止されることが決まり、直前の今、大手電力会社は、原発の再稼働準備や津波対策費等という名目でどんどん浪費し、事業報酬を増やしている。
「総括原価方式」で日本の企業の7割が儲かると言われている。政府や大手電力会社だけでなく、日本の経済界、政界のほぼ全体が利権を共有する仕組みによって原発は守られ、推進されてきた。原発により甘い汁を吸う人々によって、日本はエネルギーの国際競争力を失った。今後大きな経済効果が見込める自然エネルギー発電は、エネルギー先進国に大きな後れを取っている。
▼“原発の電気は安い”はウソ
電気事業連合会の試算によると、発電コストは原発が最も安いとされている。
最も高いとされた水力発電には、※1揚水発電のコストも含まれる。揚水発電は、100%の出力で稼働させ続けなけれはならない原発で発電した余剰電力を使うためのもので、水力ではなく原発のコストと考えるべき。補助金等も含めた原発のコストと揚水発電のコストを合わせると、原発が最も高くなる。
原発を推進した日本の電気料金は、世界一高いと言われる。
▼電気は地域分散型で
日本でも自然エネルギーによる発電が広がっているか、特に太陽光発電は電圧が低いものが多く、電力会社の送電線網に乗せると電気抵抗により口スが生じ、届く電気は大きく減ってしまう。小さな発電はその地域で消費するべきだ。
2020年に※2発送電分離で送配電も自由化されれば、自分たちで電気を届けることができる。国や大手電力会社から降りてくる電気ではなく、地域で電気を選び、自給する仕組みづくりが必要だ。
これまで、日本の自然エネルギー発電の電気料金は、※3固定価格買い取り制度で守られ特に高かった。今後は市場競争が生じ、世界の水準にまで下がるだろう。蓄電バッテリーも性能が上がり価格は下がっている。我が家では、太陽熱温水器と太陽先発電、ペレットストーブを使うことでエネルギーを全て自給している。皆でやれば、地球温暖化を止めることもできる。
原発に頼らない安全な電気をもっと広げ、各地で小さく発電し、地域で独立して屈ける仕組みをつくっていこう。
※1 発電所の上下ともにダムと調整池を設ける。電力需要の少ない夜間の電気で上部調整池に揚水し、昼間のピーク時間帯に下部調整池に水を落として発電する。
※2 発電事業と送電事業、配電事業を切り離すこと。大手電力会社が独占していた送電網を誰もが公平に使えるようになる。
※3 再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間、固定価格で購入する制度。
これまで段階的に見直しがされている。
文責:グリーンコープ共同体様
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