2012年11月6日

「やっぱりペレットストーブがいい」



急に寒くなってきて、この冬初めてペレットストーブをつけた。燃焼トレイは少しさびていたものの、火を点けると勢いよく燃える。昨年入れたストーブは健在だ。

 このストーブは新潟の「さいかい産業」が作ったものだ。燃焼効率は86%と極めて高い。

 しかし着火は手動だ。自動着火装置は電気を食いすぎるから外したためだ。しかし着火剤に火を点けて燃焼皿に入れ、スイッチを入れるだけなので手間ではない。

 このストーブを開発した古川さんと会ったのは5年前のことだ。当時彼はこの高性能なストーブを開発したが、開発費用の返済に困っていた。ぼくが未来バンクという市民で作る非営利のNPOバンクをしていることから、融資できるかどうか見てほしいと友人に連れて行かれたのだ。当時、国内のペレットストーブには良いものがないのを知っていたので、正直ぼくは行きたくなかった。

 しかし古川さんの作っていたストーブは違っていた。室内の空気を汚さないFF暖房、防火工事のいらない二重管の煙突、置き火利用による高い燃焼効率で灯油よりランニングコストが安く、徹底的な熱交換で暖かいのにストーブ自体は熱くならないので外側に自動車の塗料が使えるほどだ。

 そこで仲間たちに協力してもらい、「さいかい産業」の立て直しに努力した。一番効果があったのはテレビ番組で紹介してもらったことだ。おかげで問い合わせが殺到した。

 ところがさいかい産業が持っていたペレット工場が火事で焼失。一時はここまでかとあきらめかけた。そのときに新潟の中堅会社である「新越金網(株)」が、この会社を古川さんごと買ってくれたのだ。社長の山後さんは「古川さんをストーブごと買ったんだよ」と言う。



そして2011年、ついに黒字に転換した。そしてこの冬は、去年の3倍の勢いで売れているそうだ。ペレットになった分だけ灯油の輸入が減り、地域に資金が還元されている。

 古川さんがペレットストーブを作ろうと決意したのは、地域の山が使われずに荒れていることに気づいたからだ。冬場に仕事で山に入って、倒木のせいで遭難しかけたという。だから安い海外産ペレットを使ったのでは意味がない。ちゃんと地域の木材が使われ、地域の活性化や雇用につながらなければ。

オーストリアに実例がある。
木質バイオマスに変わる前の化石燃料を利用していたとき、人口1万人の町の雇用者数はわずか9人だった。それが木質バイオマスに変わってから雇用者数は135人に増えた。中東に支払われていた燃料費が地域に循環したからだ。


 では日本がエネルギーを自給したらどうなるだろうか。自給率が低いものは輸入を増やし、国内の経済活性化を妨げる。食料や木材の自給率が低いが、もっと低いのがエネルギー自給率だ。わずか4%しかない。

 そのために2008年、日本の化石燃料輸入額は24.5兆円に上った。それが国内で自給していたなら、一都道府県あたり毎年5,213億円もの資金が循環していたはずだ。


 考えてみればわかるとおり、それだけ各県に資金が回転したら雇用は増え、国内から資金が流出することもない。しかし原発事故が起きた2011年以降、日本は31年ぶりに貿易赤字に転落してしまった。今年は上半期だけでも2兆9,000億円もの赤字になってしまった。

 これを地域や国内で循環させるためには、国内のエネルギー自給を増やすことが急務だ。今ヨーロッパで赤字にあえぐ国々もまた、エネルギー自給率が低い国ばかりだ。木材は日本が国内でエネルギー自給していくための最大の資源だ。

 古川さんのストーブは着火剤もペレットも福祉作業所で作ってもらっている。
 作業所に通う人たちは通常、ひと月数千円を得るだけだ。しかし古川さんが手伝ってもらっている作業所では、月7万円得られている。

 震災以降、「ペレットの値段」より「それは被災地支援や地域雇用に役立つのか」と聞かれることが多くなったそうだ。被災後の今が、社会を立て直すチャンスなのかもしれない。 


さいかい産業
http://www.saikai-sangyo.com/

▼ただ今連載中の「NET IB NEWSコラム」より転載。

「やっぱりペレットストーブがいい(前)~優さんコラム(11)」
 http://www.data-max.co.jp/2012/11/01/11_444_yusann_11.html
 
「やっぱりペレットストーブがいい(後)~優さんコラム(12)」
 http://www.data-max.co.jp/2012/11/02/11_444_yusann_12.html