2017年9月22日

『伝統大工は頑固なままで』

天然住宅コラム第44回

第43回 木造の「継ぎ手」が同じという不思議 の続き


■ 「日本の大工vsドイツの大工 勝負の行方」

 木材は生えている時の縦方向に強く、横方向に弱い。だから柾目の板というのは縦方向目が並んでいるのだから、その方向の木目を切らない方が強い。 だからドイツの大工の考え方は合理的で、木目を切らない水平の継ぎ手の方が強 くなることはわかる。それにしても「これほどの差が」と思うほど、強度に差があったが。

 木は自然のものだから個体差が大きい。しかしそれでは説明がつかないほど、強度に大きな差が出たのだ。しかしこれだけでは「ドイツの技術の方が優れている」で、終わりにされてしまいそうだ。しかし違うのだ。ここに気候・風土が関わるのだ。


■ 日本とドイツの違い 

 ドイツの建物が恐れるのは、強風のように建物にかかる荷重と上からの重みだ。しかし日本で家屋が倒壊する最大原因は、熊本地震の例を出すまでもなく地震だろう。日本の建物が耐えなければならない荷重は、上にかかるもの以上に下から突き上げるような揺れなのだ。したがって建物は上からかかる荷重に対応できる強度だけではなく、下からのあらゆる揺れに強くなければならない。

 もうお分かりだろう。「凄ウデ」で行われたのは上からの荷重実験で、継ぎ手の強さを上からの荷重で見ただけのものだ。これで大工のウデを見られたのではたまらない。日本には日本の気候と風土に見合った、強さとしなやかさが必要なのだ。

 たとえば京都の町屋の造りは非常に弱いものだ。上から荷重がかかるとしたら持つものではない。しかししなやかさは抜群だ。縦の柱を横に突き抜けていく 「貫(ぬき)構造」で柔らかな構造にし、地震や風の揺れにしなやかに揺れることで吸収して耐えていく。これを上からの荷重でテストしたら、もつはずがないのだ。


■ 日本の大工は頑固なままで



 だから日本の「金輪継」は、これまで通りの形でいい。ドイツのように柾目に沿わないままでいいのだ。荷重が下から縦横へかかるのだとすれば、上からの荷重だけに対応していたのでは、かえって弱くなりかねない。硬直した構造で強 くするよりも、しなやかに力を分散させる仕組みがいい。そう考えると『西洋かぶれ』と言いたくなると程ばかげた仕組みに目が行く。


 日本の建築基準法では、土台、構造の木材を基礎コンクリートにがっちり金属で留めなければならないが、地震の時には土台、構造材が割れてしまって使い物にならなくなる。
 
 一回目の地震に耐えられても、群発地震のような次の振動には耐えられなくなる。昔からの建物がそうであるように、硬い石の上に乗せるだけの「石場立て」の方がいいではないか。古今東西、「~かぶれ」の人たちは自分で考えようとしないからこういうことになるのだと思う。日本の大工は頑固なままでいいのだ。


石場立て


--------------

田中優が共同代表を務めます非営利の住宅会社「天然住宅」では、田中優のコラム「住まいと森のコラム」を始めています。

「森を守って健康で長持ちする」住宅や森の再生へのヒントなどがたくさん入っています。

こちらの田中優メルマガでも順不同ですが紹介させて頂いています。


☆--★ 2017.9.22現在、コラムは第84回まで更新中!☆---★  

田中優の「住まいと森のコラム」 

月に3回記事を更新しています! 


■目次一覧 http://tennen.org/yu_column 


第1回 住むんだったら健康な家がいい
第2回 そのどこがエコなの?
第3回 天然住宅は高い?
第4回 蚊を殺すのにバツーカ砲
第5回 いい湯だな、バハン
第6回 次の世代に引き継げる林業に
第7回 本物「小林建工」さんとの出会い
第8回 日本ミツバチ
第9回 カビを寄せつけない技術
第10回 温泉三昧、雨ときどき間伐
第11回 小屋礼賛
第12回 皮むき間伐の弱点
第13回 低周波騒音問題
第14回 上下階騒音問題
第15回 住宅リテラシーを
第16回 湿気で溶けていく家
第17回 住宅貧乏
第18回 家を担保にした超・長期ローンを
第19回 「私、研究所の者です」
第20回 鉄筋にアースを 
第21回 太陽パネルの電気自給は「冬場」が大事
第22回 男なら天然住宅!
第23回 男なら天然住宅!~男ならスペックにこだわれ~
第24回 男なら天然住宅~男なら「マイホーム主義」~
≪番外編≫寺田本家さんに共感する
第25回 暮らしに家を合わせる
第26回 次の世代の住まいとは
第27回 「未完」の家
第28回 カナダからの見学者
第29回 気候の事情、個人の事情
第30回 健康を害さない防音ルーム
第31回 電力自由化でどこを選べばいいの?
第32回 エアコンは「熱を電気でつくる」もの?
第33回 電力自由化を契機に節電を
第34回 24時間換気の不要な家
第35回 「カネを出せば買える家」じゃない
第36回 「普通の」家
第37回 自宅の完成見学会
第38回 森を守って、健康長持ち
第39回 ネオニコ住宅の恐怖
第40回 ベランダって必要なの?
第41回 年収300万円台からのマイホーム
第42回 抵当権を登記しない融資を
第43回 木造の「継ぎ手」が同じという不思議
第44回 伝統大工は頑固なままで
第45回 木材に要注意
第46回 楽しいハイブリッド林業
第47回 自立的なウマ、琴姫
第48回 この世にムダなものはない
第49回 天然住宅にすむのに必要なもの
第50回 ホタル族、ホタルに会う
第51回 ホームバイオガス
第52回 いびきが消えた
第53回 高知県興津海岸は、こうして残された
第54回 太陽温水器の裏ワザ
第55回 「Low-Eガラス」の功罪
第56回 不都合を楽しむ
第57回 音と暮らす生活
第58回 においの環境問題
第59回 空気が吸えない恐怖
第60回 秋雨前線と電気不足
第61回 家が変わると暮らしが変わる
天然住宅バンク出資のお願い
第62回 湘南発、未来へ
第63回 おカネに頼らず暮らす
第64回 虫対策、その後
第65回 おカネに依存しない暮らし、自営
第66回 おカネに依存しない仮想通貨
第67回 天然住宅はホコリが少ない?
第68回 住宅教育が必要だ
第69回 住宅費用のイニシャル、ランニング
第70回 無煙炭化器
第71回 偉いぞ、炊飯器
第72回 中国のシックハウス問題
第73回 のらぼう菜
第74回 孤独になる?自給生活
第75回 「自給住宅」と食べ物
第76回 ガーデンパーティー
第77回 「自給の家」の「たべるにわ」
第78回 「居ていい場所」というコミュニティー
第79回 我が家の庭でBBQ
第80回 自給の家と「たべるにわ」 
第81回 連休は出かけちゃダメ?
第82回 ネオニコチノイド農薬ふたたび
第83回 松枯れにネオニコチノイド農薬散布は無意味だ
第84回 ネオニコチノイドが水を汚染する

★☆★ 天然住宅 ホームページはこちら★☆★
http://tennen.org/ 

・施工例 http://tennen.org/gallery
・お客様の声 http://tennen.org/voice
・こだわり ~高断熱適気密・お家で森林浴・工法~ http://tennen.org/kodawari
・プラン集 http://tennen.org/plan
・見学会のお知らせ http://tennen.org/event
・住宅コーディネートって何? http://tennen.org/coordinate
・資料請求 http://tennen.org/request

他にもたくさんのこだわりがあります。
ぜひHPでチェックしてみて下さい。