2016年11月30日

『 秋雨は夏の置き土産 』

2016.11.7発行 田中優無料メルマガより


『 秋雨は夏の置き土産 』


■ヤバイ! 電気がない 


 今年の9月後半、ついに電気が枯渇した。台風が秋雨前線を刺激して、一週間ほど全くお日様に会えない日が続いたためだ。ご承知の通り、我が家は太陽光発電をバッテリーにつないで電気を自給している。電力会社とは契約していない。




 今回、電気の枯渇が起こって、選択肢は三つあった。

1.中国電力と契約し直す、2.耐える、3.発電機をつなぐ、の三つだ。もともと努力忍耐はしないで進めるつもりだったし、電力会社とはもう二度と関わりたくない。すると3の「発電機をつなぐ」しかないと思った。


 ところが折悪しくぼくは東京に出かけていて、自分ですることができない。妻からメールで、「どうやってつないだらいいのか」という連絡があった。そこで自分としてはていねいに返信した。発電機はあらかじめ動作確認してあったし、つなぐのも難しくない。


 大丈夫かなと思って「つないだ?」と聞いたら、「発電機を運ぼうとしたら重すぎて運べなかった。家の近くにある温泉ホテルに泊まることにした」と返信があった。そう、想定していなかった四つ目の選択肢があったのだ。ほっとすると同時に笑ってしまった。確かに心配はなくなったし、あのホテルならきれいだし快適に過ごせる。


 出先から帰宅すると、まだ雨が続いていたので発電機をつないだ。夜店屋台にあるようなものだ。「バルッ、ババババババ」とうるさく発電する。


■晴れた日の快適さ

 その翌日には台風が去り、一日中晴れた。太陽光発電はあっという間にバッテリーを満タンにしてくれた。その発電量は発電機の倍の効率だ。音も出さず静かに倍の量を発電してくれる。何とも心強い。雨でしばらくできなかった洗濯を、ばりばり電気を使っていもバッテリーにチャージされていく。電気の快適さ、便利さから考えれば、生活に欠かせないものだと思う。その電気を太陽光パネルは一気に4日分も発電してしまうのだ。それで十分暮らせるなら何も命がけで発電して、福島のような被害者を生まない方がいい。





 実は電気が不足したのは二回目だ。3年前の同じ時期に、やはり台風が秋雨前線を刺激して雨が続いて不足した。その頃に買った発電機は、その後倍の大きさのものにした。でも重さのことは考えなかった。

 こう書くと、なんだかいつも電気に不自由しているように聞こえるかもしれない。しかしこの夏は毎日晴れていて、毎日が電気富豪だった。エアコンを毎日バリバリ使っても余るほどだった。バッテリーをもっと増やせばこんな年も問題なく超えられるのだが、家を建てたばかりで手元不如意なのだ。

 一方、ちょっと不注意だった部分もある。今回電気が足りなくなって見直してみると、不要な足元灯が電気を食っている。分電盤の小さなブレーカーを使えば、不要な電気消費をカットすることもできた。妻に小ブレーカーの使い方を伝え、足元灯は配線を切った。






 もうひとつある。小さな子どもがいるので掃除機が常時必要だ。この電気消費量が大きいのだ。そのためにインバーター自体の電気消費量も増える。そこで今回、充電式の掃除機を購入した。これだと充電してあれば心配なく使える。






 晴れた日は電気富豪だ。電動草刈機だろうが温水ポットだろうがエアコン、電子レンジだろうが使い放題だ。

太陽の力はそれほど強いのだ。さらに太陽温水器もあるから、夏場は温水も使い放題の状態だった。子ども用のプールを温水でまかなっても、夜の風呂の分のお湯は十分残っていた。そう思うと、晴れの日の太陽はとても神々しく思えるのだ。



■今そこにある「イマジン」

 こうしたオフグリッドをするお宅も増えてきた。今回の秋雨前線の影響は全国的だったようで、それぞれの世帯が工夫を凝らしていた。ある人は見直してみて、「ほとんど中身の入っていない冷蔵庫は要らない」と気づいたそうだ。ある家庭は毎月400円かかるが電力会社の配線を残していて、そちらの電気につなぎ変えたそうだ。

 もし近所だったら、重いバッテリーを運んで電気を届けたい。それより電線をつなぐ方が便利だが、道路に電線を架線できるのは電力会社などの特権になっている。
だから原始的だがフル充電したバッテリーを運ぶしかないのだ。


 でもそれで足りる電気のために、これから電気料金から廃炉費用8兆円も取られたり、原発事故に怯えながら暮らすのはどうかと思う。もっとたくさんの人が自給してしまえばいいと思う。

 我が家が「努力忍耐をしない」のはそのためなのだ。特別な人にしかできない仕組みでは広がっていかない。少し工夫すれば、誰にでもできる仕組みにしたい。


 一方妻は、今回ホテルに泊まることにしたとき、最初は出費もかかるし苛立たしく感じたようだ。そのとき決心させたのは、幼い子どもが「暗いのやだ~」と泣いたせいだという。まだ3歳の子だから理解していないと思っていたが、翌朝ホテルの窓から晴天の空を見たときに、「晴れたから、これでお家に帰れるね」と言ったそうだ。子どもは天気と最初から共生して生きている。




 この子は生まれたときから電力会社の電気を知らないから、電気はそういうものだと思って育つのだろう。それはそれで心強いし楽しい。


 日本の家庭のエネルギー消費量は、主要国の中で最も少ない。電気消費量も同様だ。もし家庭が省エネ製品ばかり取り入れれば、今の平均家庭の電気消費量は三分の一まで減らせる。一日3キロワット時で暮らせるから、自宅で自給も可能になるのだ。


 そんな未来をイメージしてほしい。太陽や小川の流れ、風の流れや生ごみを発酵させたガスで自宅で発電し熱を得る。建物も断熱をきちんとしてあれば、外からのエネルギーが不要になる。そして今は高いバッテリーも、今ずっと値下がりが続いている。10年かからずに、電気は電力会社から買うよりも自給する方が安くなるだろう。

 もう地球温暖化も沈静化に進むし、戦争の原因である化石燃料の奪い合いの必要もない。発電しすぎた電気が余るなら、電気自動車のバッテリーに充電して、フル充電してなら嫌でもドライブに出かけよう。カネはかからず環境を壊す心配もない世界になる。

 そんな未来ができるのだから、今の暮らしは未来へ進む通過点だ。
それならもっと先に歩みを進めよう。