2014年10月20日

『 「戦争経済」 復活を拒否する』

2014.8.288発行田中優無料メルマガより

■戦争待望論

 「朝鮮特需」を聞いたことがあるだろうか。戦後の復興期、焼け野原となった日本の復興のきっかけになったのが、1950年の朝鮮戦争と言われる。そのため在朝鮮と在日アメリカ軍が日本に大量の物資とサービスを発注した。

 1950年から1952年までの3年間で10億ドル、1955年までの間接特需として36億ドル、しかも一ドル360円で大卒初任給が8000円だった時代だ。この需要によって日本の景気は一気に上向きになった。そのため長く、景気が下がると戦争待望論が出されていた。今なお経済界の保守系委員などから戦争待望論が、出される。

 今の安倍政権が期待しているのはそれなのではないかという疑念が消えない。「失業が増えるなら戦争で軍需を、景気が停滞するなら戦争で回復を」という考え方だ。事実今年6月、戦後初で日本の防衛企業14社が国際兵器見本市「ユーロサトリ」に参加した。そこに武田防衛副大臣が出かけて行き、「持っている軍事力を発揮できる環境を安倍首相が作ったのだから、それを生かして成長していっていただきたい」と述べている。
「兵器見本市」を生かして成長するのは軍需企業以外あり得ない。


■加害する国へ

 今年7月、イスラエルによるパレスチナの虐殺が始まった。戦争と呼ぶには死者数が比較にならないほど違う。8月1日時点でイスラエル兵士50人に対して、パレスチナはガザ地区で1340人、西岸地区で13人(8月13日では2000人弱)。パレスチナ被害者のほとんどが民間人(多くは子ども)となっている。

 パレスチナの人々から接収した土地に住むイスラエルの入植者たちは攻撃が始まると離れた土地に避難した。しかしパレスチナは8メートルの壁に囲われて逃げ場がない。国連の敷地に逃げ込んだ人たちも建物ごと爆撃され、14人の子どもが亡くなった。

 国境は封鎖され、物資が届かない上に唯一の発電所すら爆破された。民間人の殺戮や国連、救急車、公共インフラの爆撃は、戦時国際法と人権条約によって禁止されているのにお構いなしだ。国連で「イスラエル非決議」が可決されたが、支援するアメリカは唯一反対し、日本は棄権してしまった。

 これまでは日本に関係のない「戦争」だったろうが、これからは違ってしまう。安倍政権は2014年3月、アメリカの進めるF-35次世代戦闘機開発に資金を出すことにし、武器輸出三原則の例外として三菱重工の参加を認めた。

 4月には武器禁輸政策を「防衛装備移転三原則」に変え、最初に「PAC2(迎撃ミサイル「パトリオット」)」に適用して自由に輸出できるようにした。ミサイル部品はアメリカにパテントがあるため、目的外使用や第三国への再輸出の事前同意を定めた三原則の例外となっている。

 つまりアメリカの判断だけで他国にも輸出できるのだ。そのアメリカの最大援助供与国がイスラエルで、多くが軍事援助だ。イスラエルは新たな武器の実験場としてパレスチナを使っている。今回も「DIME弾」という人間を粉々にしてしまう兵器を使った。これまでの無人爆撃機に加え、動くものすべてを機銃掃射する無人小銃を設置した。

 未来は無人武器が残って、動くものすべてが抹殺される世界になる。
そこに精度の高い日本の通信技術が使われる。

 現実に2012年従来からの世界100大軍需企業の日本の常連5社に加えて、「DSN」がランクインした。同社は「スカパーJSAT、NEC、NTTコミュニケーションズ」の3社の共同出資会社で、衛星通信を得意とする。

 三菱重工・三菱電機・川崎重工・東芝・IHI・NECなどの大軍需企業は、自民党に多額の政治献金をし、見返りのように安倍首相の外遊に同行して各国と合意を取りつけた。これまで日本の軍需企業は「エンジン、ミサイル、爆撃機、軍艦」のような、「重工」が主流だった。しかし今後伸びそうなのがDSNのような通信・衛星技術だ。日本の兵器の精度は高いのだ。

 世界の兵器が「Made in JAPAN」になるかもしれない。世界の軍需企業の受注額が減少する中で、ロシア企業に次いで日本の軍需企業だけが増額している。アメリカがあまりの開発費の高さに持て余しているF-35を日本が分担し、三菱重工が共同開発に参加した。このF-35はすでにイスラエルが購入を予定している。


■戦争経済を拒否する

 これまで日本の軍需企業は兵器を作ってはいても、企業全体の売り上げの10%を超えることはなかった。しかしアメリカの軍需企業は売り上げの8割が兵器だ。アメリカの軍需企業は平時ですら全被雇用者の5%を雇っていて、戦時になると30%を超す。いわば戦争が「公共事業」となっているのだ。
日本の公共事業の問題どころではない。アメリカの公共事業は「ヒトを殺すこと」になってしまっているのだ。

 日本は戦前、経済界が必要とする資源獲得のために戦争し、軍需企業はさらに拡大していった。安倍政権は自らが憲法に縛られるべき行政の長だというのに、内閣の勝手な解釈で集団的自衛権を認めようとした。これは憲法違反で本来無効だが、今の政権に理論は通らない。アメリカに従属し、軍需のおこぼれに預ろうとしているようだ。F-35に搭載するミサイルについてもイギリスと共同開発を進めている。それはイスラエルに配備される予定なのだ。

 人々の血に染まった経済で潤う社会は幸せだろうか。このままでは日本の軍需企業の売り上げの大半が兵器になる時代も近いだろう。多くの人が兵器生産に携わり、「雇用を考えたら否定できない」などと今の公共事業のように多くの人が語るようになるだろう。これが「戦争経済」だ。戦争経済になることを今ならまだ拒否できる。自衛隊が人々のためと自衛に努め、兵器産業の兵器比率が10%を超えない今なら。

 一方で私たちが自立した経済を作れるといい。営利目的の企業は本質的に、利益のためなら残虐なこともする。無人爆撃機と無人小銃だけが残る世界は悪夢だ。

 戦争経済を拒否するために、透徹した意志と現実を見抜く力が求められている。


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