2019年5月27日

『増加し続ける「化学物質過敏症」』

田中優無料メルマガより

 NNNドキュメントで「化学物質過敏症~私たちは逃げるしかないのですか」を観た。一般社団法人「天然住宅」の代表をしていることもあって、普通の人よりは「化学物質過敏症」を発症してしまった人たちとの接触も多い。

 そう話すと、天然住宅がその人たちが住めるような住宅を建てているように聞こえるが、それは正しくない。化学物質過敏症にならないための住まいを建てているのであって、なってしまってからの対応は困難なので、私たち自身もそのための住宅を建てられるとは思っていないのだ。化学物質過敏症を一度発症すると、どんどん他の化学物質にも過敏に反応するようになる。

 私たちはスギの木材を中心に家を建てているのだが、そのスギにすら反応する人も出てくる。すると「イタヤカエデ」なら大丈夫かと反応を確かめてみたり、他の木材でないと無理かどうかなどと個別に調べることになる。


 化学物質過敏症になってからは、反応する物質も変化していくので、これなら大丈夫というセオリーはない。とにかく必ずダメな接着剤などの化学物質を使わない最低限の条件を整えた家を建てるのみだ。化学物質過敏症に対応した家となれば、当然建物は特殊化していくことになり、その分だけ費用もかかるようになる。

 だから私たちが建てている住宅は、化学物質過敏症にならないための住まいであって、発症してしまってからの多彩な反応を回避できる家ではないのだ。しかも建てただけで安心ということでもない。住宅付近の状況などの影響も受けるし、洗濯物の柔軟剤の臭いが漂ってきただけでも暮らせなくなってしまう人もいるのだから。


 最初に反応するのは住宅に使ったホルムアルデヒドや、知らずに使った農薬などに反応している場合が多い。その農薬も、いかにも「農薬」というものではなく、蚊取りに使った化学物質や家に溢れる虫除け、殺虫剤、殺菌剤の類やペットの蚤取りというようなものが多い。もちろん家の土台のシロアリ剤なども絶対アウトだ。今は臭いのしないものも多く出ていて、臭いで気づくこともできないものも多い。


 こうした化学物質過敏症の被害者は、ついに予備軍も含めると、日本の人口の「13人に1人」が化学物質過敏症の対象となっているそうで、メジャー化してしまった。見つけるのが困難な特殊な病気ではなくなってしまったのだ。あなたもすでに予備軍になっているのかもしれない。


 人にはその人なりの大きさで化学物質に対する耐性があるようで、その人なりの化学物質への耐性を越えたときに反応する。すると他の物質に対しても、次々に反応するようになっていく。


 これに対応する大きな感覚器官は嗅覚で、他の感覚器官と違って直接に脳につながっている。しかも記憶と近い位置にあるせいか、嗅覚は記憶と一緒になって警戒反応を示す。そのため臭いが記憶と一緒に想起されて混然一体となり、過去の記憶によって反応を示す場合もある。


 その反応も様々で、アトピーのようなアレルギー反応に似たもの、自律神経失調に似たものや頭痛や眩暈などさまざまある。だから的を絞って対症療法を施すことも困難なのだ。


 ところが日本は、たとえ発症していなくても実害ある化学物質や農薬などに対して、世界で最も規制の緩い国なのだ。もともと耐性の強い人が「私は大丈夫だから」とばかりに蔓延させているのだ。化学物質過敏症になってしまってからでは遅いのだが、福島原発事故の放射能と同じように人々の反応は薄い。私からするともっと前から警戒すべきだったと思うが、すでに今や「13人に1人」となってしまった。人々は未だに自分には関係ない問題だと思い続けている。


 もしこれがアレルギー反応なら、自己免疫の過剰な反応を避けるための方法もある。それが対策の近似値かもしれない。友人の医師は、それに対して免疫を支える「腸内細菌との共生のあり方」を原因と考えている。


 その対策として、抗生物質や薬品などの使用を極力避け、免疫を整えるセロトニンの原料となるトリプトファンの摂取、腸内微生物を支える「食物繊維」の摂取を勧めている。具体的には豆やゴマ、アーモンドなどの種子類などだ。こうしたものを摂ることで、腸内に棲む微生物類を健全に整えて、暴走した自己免疫を鎮静化しようとしている。



 しかし何より最初から生命を危うくする有害化学物質を摂らないことだ。その摂取は飲食から摂取するのが一番ではない。体内に取り入れてしまうほとんどは呼吸からなのだ。特に長い時間を過ごす室内、最大部分になる寝室の空気環境に気をつけたい。臭いがなく無臭であっても、化学物質がないということではない。


 まずは家庭内の農薬を捨てよう。防虫剤や防臭剤、殺菌剤の類だ。もしそれで臭いが気にかかるようならハーブなどの植物性の殺菌効果を利用してはどうだろうか。天然の植物由来なら少なくとも化学物質の類よりはずっと安全で使いやすいと思う。


 こんな事態を生んだ「新たな化学物質」に囲まれて暮らすようになったのも、たかが数十年前からの話だ。この数十年のせいで人々が苦しむようになったのなら、その前に戻ってやり直せばいい。それまでの歴史の中で、人々はそれなしに暮らしていたのだ。体の中ではずっと長い間、微生物たちは植物や他の生命から物質を得て人体そのものや体に必要な神経伝達物質すら作り出してきていた。そこに帰ることだってできるはずだ。


 道を間違っていたことに気付いたなら、一番確実な出口は元の分かれ道に戻って再び歩き出すことだ。こんなとき役立つのは、一見関係しない事態に学んで、別な原理に基づいた道を再び進むことだ。


 ごく最近になって、人は原子力に頼ることの経済的損失と愚かしさに気付いたばかりだ。そこから利益を得ていた人と、その道でこれまで努力してきてしまった人たちは、簡単には折り返せないだろう。それでもその道の先は行き止まりなのだ。だから今、日本以外の国々では別なエネルギーを求めて歩みを始めようとしている。


 同じことではないか。化学物質過敏症に対しても、私たちは進むべき道を誤ってしまったことに気づいて別な道に戻ろう。

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※動画はこちらでご覧頂けます!
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『NNNドキュメント

「化学物質過敏症~私たちは逃げるしかないのですか20190224』

https://dai.ly/x73bm7o


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以下、動画より抜粋したメモです。


「ある日突然嘔吐して、ありとあらゆるもの(化学物質)に
反応するようになってしまって・・」  


・・ある日突然襲う、化学物質過敏症。


柔軟剤や食品添加物、床ワックスなど、
身の回りの化学物質に過敏に反応して、様々な症状に苦しみます。  


「家の中にいても息苦しい」  


発症した人に残されるのは、逃げること。

仕事を辞め、家を捨て、孤立を深めていきます。



ファッションデザイナーだった倉さん、若い頃は髪を染め、
タバコも吸っていました。38歳で結婚。

ごく普通の暮らしが一変したのは、
長女を出産して3か月経った頃でした。 

自宅のリフォームによる住宅建材や、
友人の柔軟剤の匂いで顔が腫れあがりました。

専門医の診察を受けたところ、
化学物質過敏症と診断されました。



化学物質過敏症とは、
わずかな量の化学物質でも過敏に反応して
様々な体調不良を起こす病。


しかし発症の仕組みはわかっていません。  


「今のいいニオイと称するものは、
ほとんどは石油化学製品なんですね。

嗅神経を通してどうも脳に直接影響するみたいなんですね。

臭わなくてもダメです。
殺虫剤や除草剤の成分ってほとんど臭わないですから。」



環境省が平成27年度にまとめた報告書によると、
化学物質過敏症の対象者は予備軍も含めると日本の人口の約7.5%、
およそ「13人に1人」になります。  


化学物質過敏症は、子どもにも広がっています。

高知に、小学校に通えない女の子がいます。


・・ ぜひ動画もご覧ください。