2009年6月2日

ぶつけたヘルメット



□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□

ぶつけたヘルメット


 ずいぶん前、友人がバイクの事故を起こした。そのときに無傷のヘルメットを捨てると言うから、もったいなくてもらおうと思った。しかし友人は、ゲンをかついでヘルメットを捨てるわけではなかった。
 「ヘルメットってのは、ぶつけると中で脆くなっていて、次に事故を起こしたとき、パキッと割れることがあるんだ、だから捨てるんだよ」と。
 のちに原発問題で「応力腐食割れ」とかいうときの、「応力」という用語のイメージはこれで理解できた。たしかにヘルメットの中には見えないゆがみが起きているのかもしれない。ゆがみの力が加わったままの状態であれば、割れることもあるだろう。
 だからバイク乗りは中古のヘルメットを買わないのだ。どんなに美しく見えたとしても、外から見えないゆがみの力が残っているかもしれないからだ。

 今回、柏崎原発が運転再開をめざして「起動試験」を始めた。しかしこの原発には、目に見えない大地震の「応力」が残っている。バイク乗りの友人の言葉を応用するなら、次の地震のときには、突然「パキッと割れて」しまうかもしれない。「起動」なんか試験したってしょうがない。問題はそこではないからだ。動くのは当然だ。でも見えないゆがみの力は確実に残っている。それが問題だから止めるべきなのだ。
 そもそも大きな地震がある地域に原発は建ててはいけないルールになっている。だから柏崎原発を東京電力が建てたときにも、この地域に活断層はないと主張し、市民が指摘する活断層に対しても「ためにする論議だ」と切り捨ててきたのだ。「ためにする論議」という言い方は、「原発を止めたいためにする(いいかげんで根拠のない)論議」という意味だ。しかし「想定外」の地震は起こり、原発は周囲に放射能をこぼした。原発は地震が想定されるところには建てない約束だったんだから、止めるのが当たり前だろう。今なお「防災科学技術研究所地震予測地図」 (
http://www.j-shis.bosai.go.jp/)には、柏崎原発の位置が「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が3%~6%」の色に塗られているのだ。

 「東京電力と共に脱原発をめざす会」は、東京電力に話し合いを申し入れているが拒否されている。どうやら周辺住民の命は、東京電力だけの独断で決めていいと思っているようだ。説明といっても、いつも一方的に述べるだけで質問にも答えられないことが多いから、来たくないのかもしれない。それはそれで引きずり出された担当者は気の毒だし、気持ちも分かる気がする。だが…、事は日本全体に及ぶ危険性の問題なのだ。
 説明できないなら止めたほうがいい。原発が割れてしまう事故は、あまりにも被害が甚大になってしまう。電力会社は原発の保険に入っているが、事故の際の保障金額は微々たるもので、一定額を超える部分はどうせ国が補償することになっている。だから安心して割れるかもしれない原発を動かそうとするのではないか。

 人々は「応力」のことを知らない。ここに「想定外」の活断層が見つかっていることも。知っている人たちは知らせようと懸命なのだが、難しすぎるのか伝わらない。どうしたらいいのだろう。原発が廃炉になるまで、地震が起こらないように神に祈るしかできないものなのだろうか。原発というのは、神頼みで動いているのだなぁとつくづく思う。
 次の選挙では、今の体制を変えられる政治家を選ぼう。そしてもしよかったら、脱原発の運動をしている団体に、参加してもらえるといいと思う。地震は防災科学技術研究所が示すとおり、いずれ起きるだろう。このままじゃ、自分の子どもも守れない。


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