『 原発推進は現代のラッダイト運動か『商品からの革命」を』
(未来バンク事業組合理事長 田中優)
ラッダイト運動とは「1811年から1817年頃、イギリス中・北部の織物工業地帯に起こった機械破壊運動」である。
■新たな生産装置は社会を変える
「ラッダイト運動」は、産業革命にともなう機械使用の普及により、失業のおそれを感じた手工業者・労働者が起こした機械の破壊活動をいう。
日本では「千歯扱き(せんばこき)」のような画期的な生産用具のようなものか。それまで脱穀作業は、扱箸(こきばし)という大型の箸状の器具で穂を挟んで籾をしごき取っていたため、非常に手間がかかるものだった。 それが未亡人の重要な仕事になっていたことから、別名「後家殺し」
と呼ばれた。それに対する打ち壊し運動のようなものだったろう。
日本では「千把こき」の打ちこわし運動は起きなかったようだが、もし破壊運動につながっていたら、本家イギリスではこれに死刑を認めて対抗したのだから、本物の「後家殺し」事件になっていたかもしれない。
■新たな発電装置
それでも新たな生産装置は社会を変えていく。もしただの「日の光」や「風や水の流れ」で生み出せるようになったとしたら、それまでしてきた命懸けの発電をどう思うだろうか。
「核物理学」や「原子力工学」を学んだ人たちは、きっと新たな発電装置を打ち壊したくなるだろう。大学で研究し、社会的に「権威」とあがめられ、高収入を約束されてきた原発マフィアの人たちにとってみれば、突然の失業になるのだから。
しかも自然エネルギーは燃料となる石油・石炭・ガス・ウランも必要としない。地球温暖化の問題を解決するばかりか、地球上の資源争いを無意味なものにしてしまうだろう。
原発マフィア御一行の中には、装置で儲けていた原子炉メーカーやゼネコン、鉄鋼だけでなく、広告費で儲けていた広告代理店もテレビ・新聞などのメディアの人も含まれる。再処理では住友化学のような化学メーカーや輸出入に関わる商社おこぼれに与かっていた。
その利益は「総括原価方式」という仕組みで守られていたが、その報酬率は電力会社が借りる資金の金利に比例していた。電力会社が利益を大きくするには、借りる資金の金利が高い方が良い。その結果、大きな銀行や生命保険会社がわざと高金利で電力会社に融資していた。
このマフィアグループを揺るがすのが新たなエレキテルを生み出す自然エネルギーなのだ。当然否定的な噂を流布するし、推進する人を排除し、可能な限り破壊しようとする。
「自然エネルギーは高くて不安定で役に立たない子どもの玩具だ」と。
■商品に始まる革命
しかしそれでも新たな生産装置は社会を変えていく。いくら日本でダメなものと印象付けても、他国では推進されていく。そしてやがてコストの安さが知られると、従来の命懸けの発電所は捨てられていくのだ。
この場合、社会を変えているのは「生産装置の進化」ではないか。「革命」というと、高貴な「思想家」「革命家」という家に住んでいて、作業もしないのにヘルメットぐらいをかぶらなければできないものと信じられてきたが、何のことはない、革命は新たな生産装置という商品にも作れるのだ。
商人が生み出すのが革命だなんて、なんて非高尚な話だろう。「思想家・革命家」なんて、もう墓に掘る「○○家」のたぐいに見える。
そう、この「商品に始まる革命」を起こしたいのだ。我が家は二年前から太陽光発電とバッテリー設備で電気を自給し、送電線につながっていない。水も井戸に戻して水道も切ってしまった。インターネットはエア回線にしてNTT回線もつないでいない。暖房もペレットストーブで、近隣の
木材滓から作ったペレットだけで足りている。
そして次には電気自動車が簡単に地域で改造できる時代がやってくる。
そうしたら我が家で使い切れないほどの発電をする快晴の日の電気で、バッテリーを満タンにしよう。すると家に届く日の光と裏山に降る雨のおかげで、我が家は原発も石油も必要としなくなる。
そうしたら我が家で使い切れないほどの発電をする快晴の日の電気で、バッテリーを満タンにしよう。すると家に届く日の光と裏山に降る雨のおかげで、我が家は原発も石油も必要としなくなる。
それで足りる日に、戦争してまで石油を奪う意味があるだろうか。
■現代のラッダイトたち
その道具はローテクだ。自民党議員に「田舎の貧乏人のもの」と呼ばれた軽トラックを改造して、自宅で作った電気で走る車にしよう。今や冷蔵庫の電気消費量は最小化したので、その電気ならソーラーパネル畳一枚分あれば足りる。そしたら冷蔵庫と腕を組んで散歩しながら、ときどき扉を開けて冷えたビールでも飲もうか。
今や照明はかつての1割の電気で照らせるし、テレビ、エアコンも半分以下になった。暖房便座は今、画期的に消費量が下がっている真っ最中だ。日常生活の品が革命を起こし、社会を変えるのだ。
しかしぼくは大真面目にこの「商品からの革命」を起こそうと思っている。そのためさまざまな生産装置の開発に関わっている。たとえば木材が歪まない、傷まない木材乾燥機であったり、圧倒的な低価格での断熱リフォーム技術であったりする。
ぼくは大真面目に考えているのだ。商品からの革命が必ず起こると。
そのとき自分の利権を守ろうとして余計な規制で邪魔したり、いやがらせや誹謗中傷をしてくる人たちがいる。そう、原発推進や再稼働を求める業界関係者や政治家たちこそ、「現代のラッダイト運動」の手先なのだ。
かつてのラッダイト運動は生存のためだった。しかし今の彼らは自分の利権だけのために社会の進化をつぶそうとしている。彼らに同情の余地はない。
よく「失業するから」と同情する意見を聞くが、では「ポケベル」や「8ミリビデオ」の生産者のことはいいのか。
時代は変わるのだ。
その時代に関わりなく暮らせる生産装置に囲まれるのがいいと思う。