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2012年5月26日

「私たちに必要なのは、明るさ、温もり、便利さ、そして希望だ」

私たちが往々にして間違うのは「電気が必要だ」という勘違いだ。私たちは直接電気を必要としない。必要なのは、「明るさ、温もり、便利さ」なのだ。

 そう考えると別な解決策のあることに気づく。

 明るさならわずかの電気で点くLEDランプがあり、その発電はわずかな太陽光で足りる。温もりなら電気でなくていい。断熱して薪やペレットの暖房を使うなら、ほとんど全く電気は要らない。


 便利さなら、省エネ製品を使えば従来の半分程度の電気で足りる。
もし安全性なら原子力を使うより、自然エネルギーの方が安全だ。エネルギーセキュリティーでも国内で自然エネルギーを伸ばした方が、輸入資源に頼るよりずっといい。
 そもそも電気エネルギーは高級なエネルギーだ。
 
 熱として使うなら、わざわざ熱の3割を電気に変えてから熱に戻すような無駄はしない方がいい。電気は電気でなければ使えない、照明や動力にだけ使うべきだ。


 それらも日本の省エネ製品が、世界一の省エネを実現しているのだから、そちらを使った方がいい。するとごくわずかの電気があれば足りることになる。

 デンマークではいったん「オール電化」の方向に進んだものの、効率が悪いことに気づいて方針を戻している。日本では、一度進めた方向を変更できない国であることが最大の問題だ。
 合理的に考えればどちらがトクになるかわかるはずだ。

 日産のリーフという電気自動車のホームページには、家庭にリーフのバッテリーをつないで、自宅で作った太陽光発電の電気で自給する仕組みを載せている。

 そうなる未来は目の前まで来ている。省エネ製品に変えた後の電力消費は今の半分程度になる。それを賄う太陽光発電の広さは、八畳間ひとつ分程度だ。


 しかも高かった太陽光発電も価格が急低下し、今や電力会社からの電気より安く供給できるものも実現している(日経ビジネス「太陽光発電1kwh当たり19円の衝撃」電力会社の24円/kwhより安い)。これによってDMMは条件が合えば、8万円先に払えば11年間の発電量の8割を譲れば、その後は自分のものになる仕組みも実現している。

 事業所で2割を占める照明も、ヤマダ電機は省エネ照明器具のレンタルで、初期投資不要で損金処理できる仕組みを実現している。その先に来るのが高い電力会社から独立して、電気を自給していく未来だ。

 そのとき条件が有利になるのが地方だ。地域に森林資源があり、光があり、水も風もふんだんにある地域こそが豊かな場になる。雇用者数も、ドイツでは自然エネルギー利用で12倍増え、オーストリアでは木材バイオマス利用で15倍増やした実績がある。これまでの中央集権でなければできないと考えてきたことが誤りだった。

 地域でエネルギー自給していく仕組みとして、世界では「スマートグリッド(賢い送電線網)」が進められている。それに必要な自然エネルギー、省エネ製品、電気自動車、高性能バッテリー、IT技術ともに、日本が最先端だ。


 オバマ大統領は「日本製品ばかりじゃないか!」と怒り出したほどだ。
そのスマートグリッドに、世界で最大投資額が注がれている。日本はそちらに進むべきではないか。

 私たちが必要としているのは電気ではない。
「明るさ、温もり、便利さ」に加えて将来の希望や安定した暮らしを望むなら、私たちの進むべき方向は原子力ではない。

 今ここから新たな希望に向かって、新たな歩みを始める時期に差しかかっているのだと思う。

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この記事は2012.5.20に愛媛で開催された「ライブアースまつやま」へ向けての
田中優メッセージを転載したものです。