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2011年5月16日

お蔵入り寸前、幻の『地宝論』、アマゾンで予約開始!






□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□

お蔵入り寸前、幻の『地宝論』、ついに発売へ


検閲の兆候

この本はぼくにとって因縁の本だ。N新聞社から執筆の依頼を受け、完成に至った時点でクレームが入った。その新聞社の上層部から「再処理工場と佐賀県の玄海原発についての記述を含め、この計4ページを『著者に相談して、なんとかしてもらえないだろうか』と伝えてきたのだ。そのことを伝えるための講演会をし、それを原稿起こしして作った本だったからだ。しかし出なければ原稿がムダになる。別な本で書けばいいと考えて受け容れた。続いて今度は『貯金が日本の戦争の資金になった』と書いた部分についても、指摘を受けた。表現を柔らかくしろと。それも受け容れた。

しかしさらにクレームは続いた。『再処理工場は必要なのか?』の全文削除、第3章の『おカネのゆくえ』『今も戦争を支える私たちの貯金』の全文削除の指摘だった。はらわたが煮えくりかえる気持だった。これまで自分の著書で、そんな理不尽な「検閲」を受けたことなど一度もなかったからだ。しかも間違いを指摘されているのではないのだ。しかしそれでも受け容れた。この本は当初から『地宝論』というタイトルで、地域の資源を活用することで、どれほどのことができるのかを示すのが目的の本だったからだ。


新聞社の役員

しかしそこまで譲歩しても終わらなかった。メールのやりとりを再掲しよう。担当者は誠実で真面目な人なのだが、新聞社というものがどんな「公共の器」であるのか、よく理解できる話だと思うからだ。

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出版委員会、事業局、経営企画委員会までは順調に承認されていたのですが、最終決裁が下りないのです。決裁と同時に印刷・製本に入るつもりだったのですが、保留のままです。
先日、役員室に呼ばれ、詳細について聞かれました。企画の経緯や「なぜ、本にしたいと思ったのか」などについて聞かれたので、講演会をきっかけに、私のほうから、企画出版を持ちかけた話などを説明いたしました。「原発」と「郵便貯金」のページの削除についても話し合いのうえ、著者の了解をいただいたと伝えました。
しかし、会社の結論は、「他の出版社から出していただくように著者の方に相談をしてほしい」ということでした。会社は「田中さんの活動は理解できるし、否定するものは何もない。ただ、新聞社としては少し荷が重すぎる」という結論です。新聞社が出す本には限界があるという考え方です。
仮に出版部が、新聞社の別会社であれば、地宝論を出すことは問題ないと思われます。私自身がまいた種ですから、何とか解決策を見つけだしたいと思っています。
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「否定するものは何もない」などとリップサービスをしておきながら、意味不明の「ただ、新聞社としては少し荷が重すぎる」という理由でさんざん訂正をさせた挙句に出版を拒否したのだ。もちろん原稿料も何も支払われなかった。ぼくの分はいいとしても、イラストや構成をした業者にすら一銭も支払っていなかった。この分は結局、今回出版いただいた「子どもの未来社」側が負担した。ぼくはこの費用を元のN新聞社に負担させたかった。ところがついにN新聞社は一銭も負担することがなかった。現地では良い本を出版することで有名な新聞社なのだが。


絶望の新聞社

後から経過を見ると、当初のクレーム自体がぼくを怒らせるためにたくらんだものではないかと気づく。ぼくがちゃぶ台をひっくり返して『頭に来た、他社から出版する!』と言うのを待っていたのではないかと思えるのだ。しかしぼくが最後まで怒りださなかったので、「荷が重い」という理由で断るしかなくなったのだろう。

この「荷が重い」というのは、「不用意なトラブルを招く」という意味だろう。しかも指定されているのは主に原子力発電に関わる部分だ。つまり地域にある電力会社とトラブルを覚悟してまで出版するのは、N新聞社にとって荷が重いとなるだろう。福島第一原発が莫大な放射能汚染を広げている今、この新聞社の態度を問いたい。新聞社は何を守って、何を伝えようとするところなのか、と。


非営利事業で解決する

しかし期待する人には申し訳ないが、原発問題はメインではない。地域経済を復興し、人々が地域で豊かに暮らせるためのアイデアとツールを満載した本だ。しかもぼく自身がNPOバンクや一般社団法人天然住宅などで今なお事業を続けている。社会を変革するには、ぼくは非営利事業を興すことが必要だと思っている。そこには独自の調査と発想が必要で、リスクを取る覚悟と行動力が必要だ。それは学者や文筆評論家にはできない。今なら「社会事業家」と呼ばれるかもしれないが、日本初のNPOバンクである「未来バンク」を始めた17年前には、そんな言葉すらなかった。

環境、人権、地域経済などの問題を、非営利事業から解決しようとする活動家の発想をぜひ知ってほしい。ここに記したアイデアを役立ててもらいたいと切に願っている。


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地宝論(ちほうろん)
──地球を救う地域の知恵
田中優・著
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子どもの未来社
2011年5月31日発行予定
ISBN978-4-86412-033-3 C0036
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