オフグリッドしている田中優の自宅
「グリッド」と突然言われてもわからない言葉だろう。
「電気の送電網」のことだ。
多くの人が地球温暖化の問題で、最大の問題なのが「電気」であることは知っていることと思う。
その電気は、大きな電力中心に配られ、最後に残った小さな家庭などに配られていく。いわば上から下に流れる仕組みになっているのだ。しかし電気の問題だから「電気を使うな」と言われても困るだろう。
でも電気全体の中で家庭の消費している割合が、小規模な商店などの消費を含めても22%しかないことを知っている人は少ない。全体の62%を消費しているのは大企業などの大口消費なのだ。
だから「あきらめろ」ではない。
まず最初にしてほしいのは、電気を「大口消費」と「家庭などの小口消費」とを分けて考えることだ。そして小口は自分たち家庭の消費だから、その分だけ責任をもって考えてほしい。
その家庭のすべきことは何といっても省エネだ。と言っても努力・忍耐ではない。
ただそのまま買い替えるときには「省エネ家電」を選択してほしい。
家庭内最大消費の冷蔵庫はすでにかつての3%しか消費しないほど省エネが進んでしまっているし、他のものも省エネが進んでいる。おかげで同じように暮らしていても、かつての三分の一ほどに省エネできるのだ。
これに加えて自家用車を燃費の良い車に買い替えてほしい。それだけのことで地球温暖化を起こさない暮らし方ができる。車の燃費も我が家のマツダ車では22Km/L走るので、それまでの半分になっている。合計で45%も減らせるのだ。
二酸化炭素を減らすのにゼロにしなくていい。従来通り植物や海藻などが吸収してくれている二酸化炭素があるので、マイナス45%が実現できればいいのだ。
なんと家庭なら「省エネ家電」と「低燃費自動車」を活用するだけで、達成できてしまうのだ。それ以上に頑張ればもちろんそれ以上に減らせることになる。
我が家に導入しているオフグリッドの仕組み、「パーソナルエナジー」を作った「慧通信技術工業」が、ガス器具メーカーのリンナイと組んで「エコワンソーラー」を開発した。
電気は熱源には使わない方がいいのだが、外気温が低すぎない時の「ヒートポンプ」だけは例外だ。外気から熱を集めるので、電気の熱の五倍以上もの熱を作り出すことができるのだ。
給湯の場合、火傷するほどの高温の温水は必要ないから、非常に高い効率で熱を集めることができる。それを外気が冷え切った夜間ではなく日中に使うのなら、非常に効率的に使うことができるのだ。
それを実験してみたら、開発者も驚くほど効率良くなり、予定していたカタログスペックを上回ってしまった。外気が冷え切っていない日中にヒートポンプを動かし、蓄熱性の最も高い「水」に蓄熱する。
その結果、純然たる太陽光発電の電気だけで足りてしまった(追い炊きにはガスを使うので、追い炊きするときにはガスが必要になる)。
さらに非常時の冷蔵庫や上水などへの蓄電も可能にしているのだ。
卒FITと呼ばれる「太陽光発電などの固定買取制度を終えてしまった後の人には、これを導入するのが圧倒的に有利となっている。
もちろんこれを導入すれば、さらにガス分の二酸化炭素排出量も大きく減らすことができる。
これを床暖房などに利用するなら、より以上の温暖化対策ができるし、光熱費も下げられる。生活は快適なままで、二酸化炭素を出さないでも暮らせるようになるのだ。
こうして温暖化を防止する暮らしを実現すると、予想外なもう一つの効果が生まれてくる。
これは経産省の調べた数字だが、東京電力の収益は「家庭などの規制部門」から91%を得ていながら、電気そのものは大口契約などの自由化部門が62%を使っている。
家庭などは38%しか使っていないのに、収益の91%を支払っているのだ。つまり簡単に言えば、私たちの料金で大口は電気を安くしているのだ。ところがこうして家庭などが電気消費しなくなると、嫌でも大口消費者が自ら払わなければならなくなる。
簡単に言うと大口消費者の電気単価を上げなければならなくなる。すると大口電気消費者は省エネせざるを得なくなる。もし料金が使えば使うほど単価が高くなる仕組みになれば(今すでに家庭などはそういう料金体系になっている)、おそらく半分近くは省エネするだろう。
電気の62%を消費している大口事業者が半分にするなら、自動的に温暖化は起こさないレベル近くまで下げられる。温暖化防止は難しい話ではなくなるのだ。
このためには家庭が産業などの排出まで買い支えるのをやめて、産業の自己責任に戻せばいいだけのことだ。逆に言うと私たちが買い支えてしまっていることが、産業の好き勝手な態度を支えている。温暖化の進行を止めるためには、私たちの費用で支えてしまうことを拒否すればいい。
だから家庭は産業を買い支えてしまうグリッドを離れていけばいいのだ。
もう一つの方法がある。
電気の購入先を電力会社ではなく「生活クラブエナジー」や「みんな電力」に換えてしまうことだ。それで二酸化炭素排出量は半分程度に減る。
化石エネルギーではなく、再生可能エネルギー中心に発電を変えているからだ。それらもまた買い支える構造から離れられる。買い支えなくなる点では同様だ。
「老いては子に従え」という言葉がある。私には耳の痛い言葉だが、変革を求める時代に至ってはそうすべき言葉だろう。年を取ると変革を求めなくなる。それどころか変革を恐れるようにすらなってしまう。それが今の時代なのかもしれない。
しかし技術がそうであるように、社会は変革を求めている。
抵抗となることも必要だが、確実に歩を進めて新たな社会になることを受け入れていく覚悟も必要だ。
地球温暖化の進行は待ったなしの状態になってしまった。しかしよく時代を見極めれば解決の途はある。この可能性を閉ざしてはいけない。
私たちの未来は見捨ててしまうには早すぎる。
可能性ある未来は実現できるのだ。
~~こちらでも詳しく取り上げています~~
★田中優 有料・活動支援版メルマガ 2020.2.15発行
『 2020年を「急がば回れ」の年に(下) 』
http://www.mag2.com/m/0001363131.htm