先日、カナダの建築家の若い人が建築中の我が家を訪れた。さわやかな外見と人柄の良さのおかげですぐに親しくなった。ウィリアムさんは日本に3年いると話した。ところが日本語の方はさっぱりだ。と言ってもぼくの方も英語を10何年もしているのに話せないのだからおあいこだ。そんな気持ちもあって気楽に話すことができた。しかし大変だったのは通訳してくれた岡山在住の新井さんだ。「『断熱材』って英語で何て言えばいいのかしら」なんて、苦労をしながら通訳してくれた。
■カナダの基礎断熱
その彼に基礎断熱の話をしたら、『当たり前だろ?』って顔をして聞いていた。
我が家の断熱材は鉱物で、内側・外側に3センチも塗っていると話したところ、『カナダでは2メートル断熱するよ、内側と外側で合計4メートルだ』と言ってきた。『しかも土は3メートル掘ってそこから基礎コンクリートを打つのだ』と。『ぼくの国はケベック州だから冬はマイナス40℃まで下がるんだ』
土の中の水分が凍結して盛り上がり、さまざまな構造物を壊してしまう現象がある。これを「凍上現象」と言うが、この現象を放置して建物を建てたなら、一冬で建物は壊されてしまう。だから家は凍結しないほど深いところまで掘り、そこに基礎を据えるのだ。そしてマイナス40℃という寒さから隔離するために、合計で4メートルもの断熱壁を設けるのだという。
■家づくり古今東西
「断熱材は何を使うの」と聞くと、発泡系の断熱材を並べるのだと言った。
「しかし日本でそれをしたら、シロアリの巣になってしまうからできないんだ」と話した。すると彼は『日本はたぶんカナダより8倍は虫が多いからね』と言った。『カナダでは虫が多くないから、窓にネットもいらないんだ』と網戸を指差した。虫の英訳は「インセクト」かなと思っていたら、簡単に「バグ」と話していた。どうやら虫が少ないせいもあって、虫の種類も気にしていないようだ。
日本に家を建てるには、この虫対策もとても重要だと思う。そのため我が家では基礎コンクリートの上にヒバの土台を透湿防水シートを挟んだだけで直接置いた。普通なら空気層をつけるところだが、虫対策のために空間を空けなかった。
そのための電気も装置自体がソーラーで自給する。さらに「虫返し」を外壁の下に付け、ムカデが登れないようにした。さらに建物周囲2メートルは舗装することにして、虫が寄れないようにしている。
ウィリアムは盛んに「ナイス!」を連発していた。何かを実現しようとすると、別な問題が生まれてくる。それをさらに先回りして防いでいく。そこに感心してくれたみたいだ。
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