午前の部は主に農業について。
・種子法廃止が日本にもたらすもの
・最近発見された、画期的な地球温暖化対策 についてなどです。
トーク動画はこちらよりご覧頂けます。
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『ライヴ・アースまつやま2017 午前の部~農業のお話~』
https://youtu.be/R7atDqqVifk
今日は農業の話をしてみたいと思います。
というのはぼくの家は水を井戸にしたので自給、電気も太陽光発電とバッテリーで自給、そしてお湯も太陽温水器で自給、ほとんど自給を始めてしまっています。すべてほとんど自給になっていくとですね、支出が少なくてすむんですね。支出が少なくてすむと、お金を稼がなくていいし、お金に頼った暮らしをしなくても生活ができる、これ、かなり安心感につながるんですよ。
ぼくは大学で非常勤として教えているんですが、学生たちって本当に就活に追われているんですよね。その就活で追われている学生たちに、いや別の生き方も可能だよという風に見せていきたいわけです。
そういう中でまだ農業をやっていなかったなと思って、最近自分の家の庭で家庭菜園みたいなことを始めたわけですね。やってみる中で、最近なんと意外な法律が廃止になっていました。
日本の中で、「主要農作物種子法」が廃止になりました。主要農作物って何かというとお米の稲、それと小麦大麦裸麦、あと大豆、まぁ主要な種なんですがこれを国が管理して都道府県に任せて、そのおかげでF1ではないきちんとした種を政府が価格を抑えて作らせてきたんです。この法律が廃止になってしまいました。
「いったい何のためにその種子法をなくしてしまうのか?」ということなんですが、別な法律も同時に作られまして、そこに書いてあるものを読むとこの種を民間企業に助成、または配る譲渡することによって農業を作新する、なんて書いてあるんですね。
種を受け取って作新する方法って何だろう?と考えてみると、当然遺伝子組み換え作物なんかをやっているモンサント、シンチェンタとかのアグリビジネスをする会社を思い浮かぶわけです。実はそれらの会社の意向にそった形で、種子法が廃止されてしまいました。
種子法が廃止されちゃったというのは結構困ることでして、「日本の中でなぜ種子法が作られたのか?」。実は戦後にものすごくみんな飢えてしまいまして、食べ物の種を確保したいと思っても、種の確保ができなかったんですよ。だから良い種を作って、それで農業をやっていくようにしたいということで、「主要農作物種子法」ができたのに、それが今回廃止になってしまったんですね。
そうすると、その種は民間会社に売られていき、その種を一番買いたがっているというか手に入れたがっている会社がモンサントのようなアグリビジネス。
モンサントは何をするかと言うと、その良いお米の種を手に入れて、ラウンドアップというような除草剤(これを開発したのもモンサント社)を使っていますね。
この除草剤をまいても枯れないお米を遺伝子組み換え技術で作ってしまおう問う方向に進んでいきいそうな状況なんです。
これ結構怖いことでして、世界で見てみると、「種を制する者は世界を制する」と言われているんだけれども、その種が今どんどんと大企業に占められつつあるんですよ。それが結構怖いことで、アメリカにもじような「種子法」のことがあったんだけれども、それがなくなった後どうなったかと見てみると、やっぱり「モンサント社」と「シンジェンタ社」の種が多くなっています。それを考えると日本の従来から使ってきた種を台無しにしちゃいそうなんです。
そしてその日本の「種子法」で作った種って、皆さんがDIYの店で買ってくる種、あれと違うんですよ。今の「種」というのは、ハイブリッドと呼ばれるようなF1(エフワン)の種なんですね。F1の種って何かと言うと、雑種のAと雑種のBを掛け合わせると、第一世代だけ「トンビが鷹を生む」んです。非常に良い作物を採ることができる。これがF1なんですね。
ところがそのF1とF1を掛け合わせるとどうなるかと言うと、今度は「鷹がトンビを生む」んです。全然ダメな種に戻ってしまう。そうするとF1の種を使って作物を作ると、永遠にF1を買ってこなくちゃいけない。農民というのは常に種屋さんから種を買ってこないといけなくなる。そしてその種がモンサントのような遺伝子組み換えの種だと、同時に除草剤を買わされることになっちゃうわけですね。
そういう風にして今農業をやっている人たちちは今後どうなるかというと、ただの栽培人にされます。ただ栽培して売るだけの人にされちゃうんですね。だからやっぱり種が大事、種をちゃんと確保しておかないと。
それに対して今回廃止になった種子法の場合には、この種をF1にしていないんです。完全な純粋種を作っていて、これが美味しいよ、例えばササニシキとかコシヒカリとか、たくさんの種がありますけど、あれらの種はそうやって純粋にして作ったものなんですね。F1じゃないんです。だからその種を農家が採ってもう一度植えると、きちんと良い作物が育つんですよ。ここが大きな違いなんです。
そして農業の種の法律には2つあって、その種子法というのと、もう一つは苗の方の「育苗法」。この2つの法律があって、「種子法」が廃止されて「育苗法」の方に必要な条項は残すんだと言っているんだけど、「育苗法」って、実は特許パテントのための法律です。だからF1の種とか知的所有権が守られるパテント料がつく、そういう種なんです。今全部が一色に変えられようとしてしまっています。
そうすると我々は種を国が守らなくなるので、市民なり農業者なりが自分たちで種を管理して守る、ということをやらないと、みんな企業に持っていかれてしまうというのが現在の状況なんです。
そしてそういう農業になってしまったら、全く自由がきかない、農民というのは小作人どころか単なる育てるだけの「栽培者」にされてしまうわけですね。
だから自由な形での農業というのを残すためには、やっぱり種が大事。
それをやっていきたい。それが必要になってきた、という状況なんですが、その一方で例えば地球温暖化の問題、というのが今問題になっていますが、その中で実に画期的な話が出てきました。
世界の二酸化炭素を排出したものの中で、実はトータルで見ると半分を占めてしまうのが農地なんですよ。例えば「土」が、「土」がと言っても単なる無機質の「土」だろうと思いきや、生き物の死骸や種、そういったものがたくさん含まれている「腐葉土」になっているわけですね。その「腐葉土」というのは、生き物由来のものがたくさん含まれていて、炭素がたくさん入っている有機物なんです。それを燃やしてしまうと、ただの荒れ地になってしまって、土の中に含まれていた炭素がみんな燃えて二酸化炭素になってしまうんですね。
ここに画期的な方法が出てきました。フランス政府が主張したのですが、農家の場合には、今やっている農地に0.4%だけ炭素を多めに入れてくれれば、現在人間が毎年排出している二酸化炭素の実に70%を安定させてしまうことが出来る。
そのフランス政府のアイディアというのが実は有機農業、有機無農薬の人たちが考えついたことで、それをやれば確かに土の中に二酸化炭素を貯蔵することができるんです。
今の二酸化炭素の貯蔵は、昔堀った天然ガスの跡地のところに二酸化炭素を投げこんじゃえとうことで100万トンとかとんでもない量の二酸化炭素をそこに突っ込んでしまっている。でも日本人だったらわかりますね、地殻変動なんて始終起こるんですよ。そんなところに詰め込んだって、地殻変動が起これば100万トンの二酸化炭素がバーッとそこから出てくる、そんなことをしたら地球はその時からもうおしまいになることが決まるわけですね。
だから二酸化炭素を貯蔵するのに、岩の間とかそんなところに突っ込むのはダメだよと日本の場合考えるわけです。それと全く違う方法が農地に二酸化炭素を貯めていくことなんです。要は土に炭素を入れてしまう、それは圧倒的な効果があるというのが出されたんですが、これについてさらに画期的なことがわかりました。
アマゾンで、何度耕作しても連作障害を起こさない奇跡の土というのがあったんです。それを日本人などが移民で随分行っていたんですが、その日本人の移民の人はそのことに気がついていて、こういうやり方ができるといいね、なんてことを考えていたんですけども。それをアマゾンの先住民は長らくそれをやられていて、一番古いものは8000年前からしていたんです。
8000年前に作られた「テラ・プレタ(黒い土)」というものなんですが、その「テラプレタ」のはすごいねと言われていたんですが、西暦2000年を超えて2002年のときに初めて研究者がそれを調べて結論を出したんです。
何とテラプレタは人間が作ったものだった。だから人間のインディオの人たちが8000年も昔から作ってきた「土」だったんです。そしてその「土」は8000年経った今でも生きています。ちゃんと連作障害を起こさない肥沃な土として現在も存在しているんです。それを作ったのは「人間だった」というのがわかったんです。
その方法は炭の利用だったんですよ。土の中に炭を一緒に耕して入れていくこと、そしてそれ以外のものもたくさん入っていて、ゴミ捨て場のように見えるほど色んなものが突っ込まれているんですが、それが微生物と共に土を作っていたんです。
それらの「テラプレタ」、人間が作った「テラプレタ」がですね、8000年を超えていまだに生きていて、肥沃な土地になっている。なおかつ「テラプレタ」を入れた土地は、周囲もだんだん肥沃になっていくということがわかったんです。
「これはいったいどういうことだ?」ということで今世界中でテラプレタを人間が再現できないかということで調べているんですが、今のところまだできていません。
でも炭で言うと、炭って世界の中で一番作り慣れているのは日本人なんですよ。
だから日本に「炭ってどうやって作っているの?」ということで調べに来ました。
だけど日本の炭って、白炭、黒炭、非常に高い温度で作ったものと、低い温度で作ったものと、どっちについても非常にソフィスティケイトされていて、精錬されすぎちゃっていて、その「テラプレタ」に使われた炭はたった200℃で焼かれていて粗野なものだったんです。そんな低温で炭を作るなんていうのは、残念ながら日本にもなかった。だから一からこの「テラプレタ」をやらなくてはいけない。
そのテラプレタはどれくらいの炭素を土に含めているか、というのを調べてみると、さっき言ったフランス政府が0.4%だけ土に入れてくれれば現在排出している二酸化炭素の70%を回収できるというものと比べて、何と10倍以上の炭素を回収できてしまうんですよ。
そうすると何が起こるかというと、これからその「テラプレタ」のような土の中に炭素を入れていくということをやると、本気で世界中がやったとすると、1年で現在排出してしまったものも過去に排出してしまったものも回収できちゃうんです。
ただ1年でもしやるとしたら木なんかみんな炭にされちゃいますから少しゆっくりやった方がいいわけですが、それにしてもゆっくりやっていけば地球温暖化は炭によって解決可能だというのがわかったんですね。そしてそのテラプレタというのが面白いと思って、我が家でも炭を作ってみました。そして農地の中に入れてみました。
そうしたら面白いことに炭というのはとにかく微生物のマンションになるんですよ。小さな微生物がたくさん住み着くことのできるマンションになります。
そのマンションの中に入った微生物たちが、土壌の中のミネラル分、これを一生懸命集めてきて、植物の根っこに渡すんですね。実は植物の根っこは微生物と共生していて、植物は微生物に液体化された炭素を与えるんです。どっちかがいなければ育つことができない。だからどちらもいなければ存在できないんです。
それを、炭を入れてやることによってどんどん推し進めることができるんです。
その結果、炭を入れてみたら、とにかくよく作物が育つようになりました。
これを世界中がやってくれたら、現在の地球温暖化の問題を全く別な形で解決することが可能なんです。その可能性を持っている農業というものを、一方で政府は「種子法の廃止」という形でダメにしようとしているんですね。
これもったいなくないですか?
せっかく地球温暖化防止の解決策が見つかったのに、その農業というジャンルをダメにしてしまう。でもそうすると人によっては、「いやでも今の効率の悪い小さな農家より大きな農家の方がいいんじゃないか」という風に考える人がいるかもしれない。
でもね、農地の生産量は小さな農家の方が多いんです。だって大きな農場、例えばアメリカのコーンベルト、トウモロコシばかり作っているエリアは、トウモロコシを年に1回しか作らないでしょう? ところが小さな農家はそこに色んな野菜を混植して入れて、ずっと作物を育てていきますよね。だから収穫量を合計してみると、大きな農場は全然収穫量が少ないんです。小さな農家の方が、収穫量が圧倒的に多いです。そういう方向が見えてきているのに、その農業を台無しにするような方向の政策をとろうとしている。これはぼくにとってはもったいなくてしょうがないんです。
有機無農薬の話で、キューバが有機無農薬ですごく飢えちゃうような時期を乗り越えたことがあります。今でも「スペシャルピリオド」とキューバの人たちはその期間のことを呼ぶんですが、それまで農薬バンバンの農業だったのに、何と1人の餓死者も出さずに乗り越えちゃったんです。
その時に何をやったかというと、「有機無農薬」の農業です。その有機無農薬をやった人たちは、何とアジア系の人たちが多かったんですね。アジア系の人たちが「有機無農薬」を、全然推奨されない時期にもやり続けていたんです。でも旧ソ連が崩壊して、「今後どういう風にしていったらいいんだ?ソ連からの援助も止まって石油も届かないし農薬も届かないし」という時に、その人たちが未来はこっちの方向だと指さしたおかげで1人の餓死者も出さずに乗り越えられたんです。
ぼくはその可能性を持っておく必要があると思っていまして、この松山の少し離れたくらいのところの農地には有機無農薬で真面目にやっている人がかなり多いんですよね。たぶんここにも出店されていると思うけども、そういった人たちの技術を継承して、それをみんなが自分の家でやっていてそれを種として自分で持っておく、そうすることで「いよいよ飢えるぞ、円が安くなっちゃうってもう何にも輸入できないぞ」という時代になったら、キューバのように乗り越えることができるようになります。それをやっておく必要があると思うんです。
その時に日本の農家というのはかなり優れた技術を持っている人たちが多いので、この人たちと一緒に次の未来を作ることができたら、どんな事態も乗り越えられるかなと思っています。それほど農業は大事で、そして「種子法」が廃止になってしまっていよいよヤバイなという時代に今なったんだけども、だったら今度は自分たちでそれを守れるような仕組みを作ろう、農家と一緒に自分たちでその仕組みを作っていこうよということをやっていくのが必要かなと思います。
ライヴアースまつやま、そしてそのアース(地球)を考えていくときに、私たちはそんな大きな力はありません。だから私が突然命を賭けたって大して社会を変えることはできません。
だけどその小さな力がいっぱい集まったとしたら社会は変えられるんです。
ぼくはそっち側に期待をしていきたい、それを何とか実現していきたいと思っています。
(書き起こしにあたっては、読みやすくするため必要最低限の編集を行っています。
文章作成:田中優スタッフ)
-- 種子法、テラ・プレタについて、より詳しくはこちらもご参考ください --
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バックナンバーのみでもご購読可能です
◆2017.5.30発行 第139号:「主要農作物種子法廃止」にどう対処するか(下)
◆2017.5.15発行 第138号:「主要農作物種子法廃止」にどう対処するか(中)
◆2017.4.30発行 第137号:「主要農作物種子法廃止」にどう対処するか(上)
◆2016.12.15発行 第128号:謎から読み解く地球温暖化問題(下)「幻の黄金都市、エルドラド」
◆2015.5.15発行 第89号:「生命の掟(下)吉田俊道さんの農法を考える」