『 温泉三昧、雨ときどき間伐』
■ エコラの森
毎年二回はエコラの森で山のお手入れ。今年も6月に天然住宅バンクが主催する「皮むき間伐ツアー」に参加してきた。エコラの森というのは宮城県栗原市の「くりこま木材」が保有している260ヘクタールの広大な森だ。もともとは山好きな人が植林した森のようだが、バブルの時期にそこを買い取ってリゾート開発しようとした会社があった。その会社はそこにボーリング場だのゴルフ場だのを想定したようだが、バブル崩壊であえなく倒産。その会社にカネを貸していた会社は群がって森を盗伐。おかげで保安林に指定されていた斜面の木まで、みんな伐採して持って行ってしまった。
銀行から森の金銭価値を調べてくれと頼まれたくりこま木材の大場さんたちは、その結果を報告している。「価値なし」だった。今の森は、残っている木材価格でしか測れない。盗伐されたその森に価値はなかった。ところがしばらくすると、その森の先に産業廃棄物の処分場が予定され、下流の温泉地に反対運動が起きた。そして再び銀行から「買ってもらえないか」と話があったそうだ。値段のつく森ではないだころか、再び植林するコストを考えたらマイナスなのに、くりこま木材は買ってしまった。そのままでは廃棄物に埋まることを考えたら、森がかわいそうで購入したのだ。
■ 金食い虫の森
カネにならない木材しかない森は無価値だ。それどころか植林してやらなければならないし間伐などの手入れが必要なので、森は金食い虫なのだ。私たちが手入れを続けているのはこの森だ。もうすでに7年も手入れを続けている。年二回、春先に「皮むき間伐」して、その年の冬に伐り倒す。さすがに年数を重ねてきて、そろそろ間伐できなくなるんじゃないかと心配になる。
「大場さん、あと何年分間伐する森がありますかねぇ」と聞くと、「40年分位ですかね、その頃には最初の森の手入れが必要になるから、無限にありますよ」と心強い返事。気が遠くなりながらも今年も間伐に汗を流す。
■ カビの手形
でも今年の間伐は雨に祟られた。梅雨の雨とは思えないほどの強い降り。間伐できないほどの雨は初めての体験だ。
「どうしましょうか」
「じゃ、鳴子温泉で温泉三昧しましょうよ」
ぼくの気楽な戯言が現実になった。みんなで車に乗り込んで、間欠泉だの炭酸泉だの、吉永小百合の湯だのを回って温泉三昧した。ぼくはそれだけでも良かったが、初めて参加した人から「皮むき間伐を体験してみたい」の声が。
最終日、ついに雨が上がった。みんなで山の中に入って皮むき間伐する。皮むき間伐は成長する春から夏までの間に、スギ・ヒノキの皮を剥いて木を枯らしてしまう方法だ。特に雨の後はよく剥ける。4~5メートルの皮がするする剥けるので、みんな思う存分楽しんだ。皮むきしたきれいな樹皮に指を大きく広げて喜ぶ人、舐めて「甘い」と言う人。
でもね、冬に来ると手形や舌の形にカビが生えるているんだよ。人ってすごいばい菌の固まりなんだ。
皮をむいた樹に手形を残す子供達
田中優、皮むき作業中。。
田中優が共同代表を務めます非営利の住宅会社「天然住宅」では、田中優のコラム「住まいと森のコラム」を始めています。
「森を守って健康で長持ちする」住宅や森の再生へのヒントなどがたくさん入っています。
こちらの田中優メルマガでも順不同ですが紹介させて頂いています。
☆--★ 2017.8.1現在、コラムは第79回まで更新中!☆---★
田中優の「住まいと森のコラム」
月に3回記事を更新しています!
■目次一覧 http://tennen.org/yu_column
第1回 住むんだったら健康な家がいい
第2回 そのどこがエコなの?
第3回 天然住宅は高い?
第4回 蚊を殺すのにバツーカ砲
第5回 いい湯だな、バハン
第6回 次の世代に引き継げる林業に
第7回 本物「小林建工」さんとの出会い
第8回 日本ミツバチ
第9回 カビを寄せつけない技術
第10回 温泉三昧、雨ときどき間伐
第11回 小屋礼賛
第12回 皮むき間伐の弱点
第13回 低周波騒音問題
第14回 上下階騒音問題
第15回 住宅リテラシーを
第16回 湿気で溶けていく家
第17回 住宅貧乏
第18回 家を担保にした超・長期ローンを
第19回 「私、研究所の者です」
第20回 鉄筋にアースを
第21回 太陽パネルの電気自給は「冬場」が大事
第22回 男なら天然住宅!
第23回 男なら天然住宅!~男ならスペックにこだわれ~
第24回 男なら天然住宅~男なら「マイホーム主義」~
≪番外編≫寺田本家さんに共感する
第25回 暮らしに家を合わせる
第26回 次の世代の住まいとは
第27回 「未完」の家
第28回 カナダからの見学者
第29回 気候の事情、個人の事情
第30回 健康を害さない防音ルーム
第31回 電力自由化でどこを選べばいいの?
第32回 エアコンは「熱を電気でつくる」もの?
第33回 電力自由化を契機に節電を
第34回 24時間換気の不要な家
第35回 「カネを出せば買える家」じゃない
第36回 「普通の」家
第37回 自宅の完成見学会
第38回 森を守って、健康長持ち
第39回 ネオニコ住宅の恐怖
第40回 ベランダって必要なの?
第41回 年収300万円台からのマイホーム
第42回 抵当権を登記しない融資を
第43回 木造の「継ぎ手」が同じという不思議
第44回 伝統大工は頑固なままで
第45回 木材に要注意
第46回 楽しいハイブリッド林業
第47回 自立的なウマ、琴姫
第48回 この世にムダなものはない
第49回 天然住宅にすむのに必要なもの
第50回 ホタル族、ホタルに会う
第51回 ホームバイオガス
第52回 いびきが消えた
第53回 高知県興津海岸は、こうして残された
第54回 太陽温水器の裏ワザ
第55回 「Low-Eガラス」の功罪
第56回 不都合を楽しむ
第57回 音と暮らす生活
第58回 においの環境問題
第59回 空気が吸えない恐怖
第60回 秋雨前線と電気不足
第61回 家が変わると暮らしが変わる
天然住宅バンク出資のお願い
第62回 湘南発、未来へ
第63回 おカネに頼らず暮らす
第64回 虫対策、その後
第65回 おカネに依存しない暮らし、自営
第66回 おカネに依存しない仮想通貨
第67回 天然住宅はホコリが少ない?
第68回 住宅教育が必要だ
第69回 住宅費用のイニシャル、ランニング
第70回 無煙炭化器
第71回 偉いぞ、炊飯器
第72回 中国のシックハウス問題
第73回 のらぼう菜
第74回 孤独になる?自給生活
第75回 「自給住宅」と食べ物
第76回 ガーデンパーティー
第77回 「自給の家」の「たべるにわ」
第78回 「居ていい場所」というコミュニティー
第79回 我が家の庭でBBQ
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