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2017年5月13日

『 日本ミツバチ 』

□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■

天然住宅コラム第8回

 『 日本ミツバチ 』

日本ミツバチのはちみつ日本ミツバチのはちみつ


■日本ミツバチがいるということ

 前回、小林建工の話をしたが、その小林さんに日本ミツバチのハチミツを分けてもらった。実は我が家では、以前から日本ミツバチのハチミツを使っている。

 ところが日本ミツバチから採れるハチミツは量が少なく、西洋ミツバチと違って年に一回しか採れない。日本ミツバチは野生種なので、自然界に普段から住んでいる。その野生のミツバチをおびき寄せて、箱の中にハチミツを貯めてもらうのだ。そのハチミツは値段も高いが、それ以前にほとんど売っていないし信頼できるものばかりではない。西洋ミツバチのハチミツと混ぜられたとしても確認のしようがないからだ。

 小林建工は愛媛県・今治の会社だ。今、ミツバチを滅ぼしてしまっている可能性の高いネオニコチノイド系殺虫剤は、市街地である今治市だったら当然使われているだろう。日本ミツバチは西洋ミツバチより敏感で、農薬を察知すると巣を捨てていなくなってしまう。とても今治市内で採れそうにない。どこで採っているのだろうか。

「石鎚山の山奥です。…今治では難しいので」

 おそらくは木材を伐採している山で採っているのだろう。普通の山では今や、松枯れ対策や害虫対策のためにネオニコチノイド系の『マツグリーン』という殺虫剤が撒かれている。これが山から流れ出る水自体を汚染してしまっているのだが、日本ミツバチを飼っているということは、山に殺虫剤を撒いていないことの証左なのだ。


■知ってほしいから…

 そのハチミツを恐ろしく安い価格で売っていた。ぼくは驚いて聞いた。

「なんでこんなに安く?」

「もともとタダで配ろうと思っていたんです。知ってもらえばいいと思って」

 日本ミツバチのハチミツは、味が濃厚でとても美味しい。一種類の花の蜜を集めることはできない代わり、自然の花の蜜を集めた複雑な味がするのだ。しかも西洋ミツバチのハチミツからは微量ながらネオニコチノイドが検出されるが、日本ミツバチではほぼ皆無だ。だから我が家は日本ミツバチ派だ。

「我が家では買うのに苦労していて、隠岐の島の養蜂家さんから買っていたんです。これを買うことはできますか?」

「これからホームページでも公開しようと思っているところです。…日本ミツバチのハチミツと言ってもニセモノも多いですからね」

 石鎚山には若い頃に登ったことがある。登山者がほとんどいない山で、険しい道を鎖を使って登った覚えがある。本物の自然に出会える場所だった。あの山の奥で集めたハチミツだと思うと、さらにうれしくなる。友人たちに配ろうと、少し多めに買ってきた。本当は全部買い占めたかったけれど。


■カネではない価値を

 だけど価値が分かるからといって、自分ばかりがもらって他の人が手に入れる可能性を奪っちゃいけない。実際、我が家からのプレゼントには日本ミツバチのハチミツをよく選んでいる。これが広がればネオニコチノイド系農薬の問題に気づく人が増えるだろうし、殺虫剤の危険性に気づいて反対してもらえる人が増えるかもしれない。そもそも殺虫剤を使わなくても元気な野菜を作れば虫は広がることができないのだから。…そう思って関わりのある人に、説明もせずに配っている。だからその貴重さはよくわかるのだ。

 帰りに気づいたら、我が家の一歳の娘が一個余分に握っていた。お店の人がプレゼントしてくれたそうだ。…こんな商売がしたいと思う。おカネ儲けではなく。

『いつかその価値に気づいてもらえるだろうか。
そうでなくてもその子の体には本物の良いものが入るのだから、それでいい』

 きっとそう思ってくれたのだろう。なんだか久しぶりに、気持ちの良い出会いをした。ぼくは実はシャイで、人に話しかけようとしない性格なのだが、今回ばかりは話しができて良かったと思う。


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 田中優が共同代表を務めます非営利の住宅会社「天然住宅」では、田中優のコラム「住まいと森のコラム」を始めています。

 「森を守って健康で長持ちする」住宅や森の再生へのヒントなどがたくさん入っています。
 

☆--★ 2017.5.13現在、コラムは第74回まで更新中!☆---★  

田中優の「住まいと森のコラム」 

 月に3回記事を更新しています! 


■目次一覧 http://tennen.org/yu_column 


第1回 住むんだったら健康な家がいい
第2回 そのどこがエコなの?
第3回 天然住宅は高い?
第4回 蚊を殺すのにバツーカ砲
第5回 いい湯だな、バハン
第6回 次の世代に引き継げる林業に
第7回 本物「小林建工」さんとの出会い
第8回 日本ミツバチ
第9回 カビを寄せつけない技術
第10回 温泉三昧、雨ときどき間伐
第11回 小屋礼賛
第12回 皮むき間伐の弱点
第13回 低周波騒音問題
第14回 上下階騒音問題
第15回 住宅リテラシーを
第16回 湿気で溶けていく家
第17回 住宅貧乏
第18回 家を担保にした超・長期ローンを
第19回 「私、研究所の者です」
第20回 鉄筋にアースを 
第21回 太陽パネルの電気自給は「冬場」が大事
第22回 男なら天然住宅!
第23回 男なら天然住宅!~男ならスペックにこだわれ~
第24回 男なら天然住宅~男なら「マイホーム主義」~
≪番外編≫寺田本家さんに共感する
第25回 暮らしに家を合わせる
第26回 次の世代の住まいとは
第27回 「未完」の家
第28回 カナダからの見学者
第29回 気候の事情、個人の事情
第30回 健康を害さない防音ルーム
第31回 電力自由化でどこを選べばいいの?
第32回 エアコンは「熱を電気でつくる」もの?
第33回 電力自由化を契機に節電を
第34回 24時間換気の不要な家
第35回 「カネを出せば買える家」じゃない
第36回 「普通の」家
第37回 自宅の完成見学会
第38回 森を守って、健康長持ち
第39回 ネオニコ住宅の恐怖
第40回 ベランダって必要なの?
第41回 年収300万円台からのマイホーム
第42回 抵当権を登記しない融資を
第43回 木造の「継ぎ手」が同じという不思議
第44回 伝統大工は頑固なままで
第45回 木材に要注意
第46回 楽しいハイブリッド林業
第47回 自立的なウマ、琴姫
第48回 この世にムダなものはない
第49回 天然住宅にすむのに必要なもの
第50回 ホタル族、ホタルに会う
第51回 ホームバイオガス
第52回 いびきが消えた
第53回 高知県興津海岸は、こうして残された
第54回 太陽温水器の裏ワザ
第55回 「Low-Eガラス」の功罪
第56回 不都合を楽しむ
第57回 音と暮らす生活
第58回 においの環境問題
第59回 空気が吸えない恐怖
第60回 秋雨前線と電気不足
第61回 家が変わると暮らしが変わる
天然住宅バンク出資のお願い
第62回 湘南発、未来へ
第63回 おカネに頼らず暮らす

第64回 虫対策、その後
第65回 おカネに依存しない暮らし、自営
第66回 おカネに依存しない仮想通貨
第67回 天然住宅はホコリが少ない?
第68回 住宅教育が必要だ
第69回 住宅費用のイニシャル、ランニング
第70回 無煙炭化器
第71回 偉いぞ、炊飯器
第72回 中国のシックハウス問題
第73回 のらぼう菜
第74回 孤独になる?自給生活


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