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2017年1月6日

『 カネに頼らない暮らしで新車を買う 』

2016.12.28発行 田中優無料メルマガより

■おカネに頼らず暮らす 


 「私事だが」と断らなければいけないかもしれないが、我が家はおカネに頼らずにどこまで暮らせるかの実験をしている。だから初期費用はかかったものの、長寿命で有害物質を使わない「天然住宅」で家を建て、光熱水費の要らないインフラの自給を限界まで実験している。おかげで家庭の支出は、一般家庭の半分以下に節減できている。 

 「私事だが」と言いたくないのは、これが未来の当たり前の暮らしになると思っているからだ。初期費用が高いのは、まだ一般化した商品になっていないからだ。一般化すれば安くなる。しかし実際に実験してみる人がいなければ、永久に価格は下がらないままなのだ。だからこの生活は「実験」なのだと思っている。 


 政府のすることは相変わらずひどい。せっかく電力会社を変えてまともな電力会社にしていても、そこに再び原発を含めた電気を買わされる仕組みが決められてしまった。どこまでいっても囲い込まれてしまう。ならばいっそインフラを自給してはどうだろうか。家庭の電気消費量は日本全体の電気消費量のわずか22%しかなく、しかも家庭の消費量は主要国で最も少ない。少なくて分散しているのだから、地域で自給できた方がいい。 


 もちろんリスクは自分たちで負わなければならない。それでも原発事故を再度起こすよりはずっとマシだ。わずかな電気を遠くから送電ロスしながら送ってもらわなくても、地域や自宅で自分たちで作った方がいい。地域で作れるようにすれば、「エネルギーセキュリティ」という言葉で戦争したりする必要もなくなる。第一電信柱がなかったら、町だって遠くまで見渡せて、美しいたたずまいになるだろう。 


 そんな暮らしを続けてくる中で、必要な生活費は徐々に減った。生活に必要なおカネが減ったおかげで、収入は多くないのに蓄えを作れるようになった。先日、家で使っている軽自動車の走行距離が10万キロを超えたので、もう一台自動車を購入しようと思うに至った。



■マツダのクリーンディーゼル 


 車を探すのは楽しい。将来は電気自動車にしたいと思っているのだが、今現実に買うとなると納得がいかない。要は性能が今ひとつなのに、価格が高いのだ。トヨタを選ぶ選択肢はなかった。ハイブリッドは電気自動車と比較すると中途半端だし価格も高い。さらに燃料電池自動車は効率的でないし、重くて高くてとても「未来」を指し示すものではない。

 肝心の電気自動車も、自宅で作り出した電気で充電するには十分な性能になっていない。電気自動車を電力会社の電気で充電したのでは、電力会社の発電効率が40%程度しかないために、さほど省エネにはならないし。つまるところ、つなぎの技術が必要なのだ。 


 そう思って調べてみた。「これは」と思う技術があった。それがマツダの「スカイアクティブ・ディーゼル」のエンジンだった。マツダが最初にしたのは、黒煙もNOX(窒素酸化物)も出さない低公害のディーゼルエンジンだった。「低圧縮」にすれば実現できる。しかしディーゼルは空気と燃料を高く圧縮することで爆発力を得ている。ところが空気を圧縮すると、空気の7割を占める窒素が高温にさらされてNOXが出てしまうのだ。さらに力のないエンジンとなれば、アクセルの踏み込み過ぎでススを発生させてしまう。どうにもならないジレンマだった。 

 それをマツダは解決したのだ。エンジンをパワーアップするために、燃料と空気の混合する比率を電子制御で細かく変え、エンジンのシリンダーの形まで変え、小さなターボをふたつ付け、低圧縮に伴ってエンジン自体も軽量化した。おかげでとても高性能な車に仕上げたのだ。 


 「ディーゼルは効率は良いが公害が出る」という問題をクリアした。燃料の軽油は安いが、日本ではあまり使われていないために海外に逆輸出されている。日本で精製しておきながら輸出してしまうのはもったいない。それともうひとつ期待したかったのは、「バイオディーゼル」と呼ばれる廃食用油から作った燃料を使ってみることだった。それを使うなら、廃油由来なので二酸化炭素の排出は心配しなくてよくなる。 


 ここまでしたマツダに敬意を感じ、『デミオ』の新車を買うことにした。ディーラーに行くと、価格はそのままなのに、11月から「Gベクタリング・コントロール」という揺れを防ぐ技術も搭載されるという。応援したいという気持ちもあって購入した。




■次はバイオディーゼルにトライ 


 新車を受け取りにはこちらから出かけ、走らせる前にメーカーの敷地でガラスタイプのコーティング剤を塗らせてもらった。ホコリがついてからでは傷になってしまうから、走らせる前に塗る方がいい。塗ってみるとガラスコーティングの効果はあるようで、その後の汚れも水だけで流し落とすことができた。 

 実際に乗ってみるとさらに気に入った。燃費は2000キロ弱走った時点で平均リッター22.2キロ、しかも軽油だから最大に入れても4000円しかかからない。一回の給油で800キロ以上走り、岡山から新潟まで無給油で行ける。揺れが少なく乗り心地は良いし、軽自動車のときに心配だった横からの衝突へのエアバックもある。心配だった黒煙も、排気筒の中を覗いて見ても全く汚れが付いていない。 

 しかしバイオディーゼルの利用についてはメーカーも否定的だ。質が均一化していない上に、電子制御されたエンジンは「軽油利用」を前提に調整されているからだ。そこで調べてみた。岡山には「乾式」のバイオ精製技術が導入されていた。ヨーロッパでは当たり前の方法だが、日本では廃食用油の不純物を除去するのに水洗いする湿式で処理する方が一般的だ。理由はプラントが安いからだ。ところが費用のかかる乾式を導入した企業が岡山県内に存在していた。メーカーには申し訳ないが、これを使って実験してみたい。 


 こうして我が家は次の仕組みに挑戦していく。その費用が出せるのは、普段の生活費が節減できているからだ。今や二酸化炭素排出量は、一般家庭より80%少なく、家計支出は75%を削減できた。だから収入が少ないのに豊かに暮らせている。

 こうして調べて実験してみる暮らしは楽しい。未来が少しずつ見えてくる気がするのだ。