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2015年10月19日

『責任は免れない川内原発再稼働』

『 責任は免れない川内原発再稼働 』 

 ■業界の神様、東電会長らが起訴された  

 東電の元会長らが検察審査会の二度目の「起訴議決」により、強制起訴された。これは検察の公訴権に民意を反映させるため、2004年に強化されてできた制度だ。それ以前だっ たら民意は反映されず、おそらく一回目の検察審査会の起訴の議決があったとしても、その後の検察の「起訴不相当」だけで無視されていただろう。  

 現に検察は、二度とも起訴は不要としてきた。ところがくじ引きによる一般人11人のう ち、8人以上が「起訴議決」したことから今回のような強制起訴に至った。病院から避難した患者のうち44人が死亡、さらに救援に当たった自衛官など13人がけがを負った「業務上過失致死傷」の罪だ。

  強制起訴の理由だが、最も大きなものが「予見可能性」の部分だった。原発事故は津波が原因とされているが、その津波が予見できないものであれば確かに起訴するのは酷だ。誰に も想像できないことで起訴されたのではたまらない。  

 ところがその後に出てきた事実がある。2008年、政府及び電力業界内で貞観地震規模の地震に伴う津波予測がされ、東電自身が敷地高10メートルの福島原発に、15.7メートルの津波が襲来する予測していた。当然対策が必要だ。  

 しかし東電には長年経済性を優先する体質が染みついており、大津波の予測に対しても 「さらによく調べる」などという時間伸ばしの対応しかして来なかった。予見できたのに対策しなかったことが、今回の事故につながったと検察審査会は判断した。  

 そして審査会は、「原子力発電に関わる責任者は、万が一にも重大な事故を発生させない高度な義務を負っている」と述べた。 


 ■川内原発再稼働  

 川内原発は50キロしか離れていない位置に桜島があり、もっと近い位置に姶良カルデラなどの破局的な爆発を起こす火山がある。それでも田中原子力規制委員長は、カルデラ噴火の時には九州が壊滅するほどの被害になるのだからと、まともに取りあっていない。  

 万が一に対する義務なら、稼働させる30年から50年間に対し、カルデラ噴火する確率は 「数万が一」だから無視して良いと見くびっているのだろう。しかし問題は他にもあるのだ。  

 ご承知の通り、桜島の噴火警戒レベルはついに4まで上げられ、もし「大きな噴石が火口から2.5キロ超飛ぶレベル」になれば、警戒レベルは最大の5に引き上げる予定だ。噴火前としてはこれ以上ないレベルに引き上げられている。

 桜島の降灰は、鹿児島県内であれば 経験しないことはない。風向きを調べてみると、春先から夏にかけては桜島の降灰が川内原発側に流れる。風向きによって桜島の降灰は川内原発に届く。問題なのはカルデラ噴火の爆発だけではない。

 何万年に一度どころか100年に一度の中規模噴火の降灰によっても、事故につながる可能性があるのだ。  

 火山灰の対策は15センチ未満の降灰を0.12mm以上と未満に分け、0.12mm以上のものはフィ ルターで9割除去する、0.12mm未満のものは一方的に「影響ない」としている。しかし高圧線に降り注ぐ降灰は防ぎようがない。降灰の硫化物は雨によって高い酸性になり、電気伝導体になる。するとショートさせる危険性があるため、電流を通せなくなる。これで外部電源の喪失になる。  

 続いて原発敷地内の非常用ディーゼル発電機を回すことになるが、0.12mm以上の降灰は1 割も入り込む。フィルターを細かくすればフィルターが目詰まりして交換しなければ使えず、 大きくすれば発電機が故障する。これで内部電源も喪失する。  

 しかも影響ないとされる0.12ミリ未満の降灰であっても精密機器には影響する。原発が大 きな装置だけで動くならいいが、実際には電子的に制御されている。冷却ファンがうなるコ ンピュータを降灰の下で動かすようなものだ。 


 ■現世代の義務として  

 川内市の岩切秀雄市長は「桜島の噴火の川内原発への影響を懸念していない」と言い、九州電力も「噴火しても影響ない」と言い切る。これは起訴議決した検察審査会の言葉「原子力発電に関わる責任者は、万が一にも重大な事故を発生させない高度な義務を負っている」から考えたら、明らかに義務違反だ。  

 実は再稼働までの流れの中では、第一層から第五層までのチェックがあり、原子力安全委員 会のチェックは第四層までだ。残る第五層の「外部への防護、緩和措置」となる「原子力災害対策」はいまだに終えていない。30キロ以内の人々の避難が正常に行われる可能性はなく、し かも多くの病院などの施設入所者は忘れられたままになっている。

 原則通り考えるなら原発は動かせない。「見切り発車」なのだ。これが川内原発再稼働の現実だ。  

 九州電力の送電線網の地図を見てみると、50万ボルトの送電線は絶えず降灰する桜島周辺への設置を避けている。22万ボルトの高圧線がループせずに伸びているだけだ。これは降灰の影響を考えてのことだろう。




 こうしてみると、今回の再稼働はやってはならないことだと言える だろう。東電に対する検察審査会の決議は当時の会長・社長など3人だけだが、むしろこうした情報を知っていて放置している現場の人間をも強制起訴すべきだ。そうしないと次の事故は 防げない。  

 いつか火山の爆発が起こり、川内原発は緊急停止できたとしても、噴火の降灰によって外部 電源を失い、非常用発電機が降灰によって動かなくなり、電源喪失となってメルトダウンする。 そのときに社長はじめ関係者は「想定外」という言葉を繰り返すだろう。放射能は卓越する偏 西風に乗って、日本全土を覆う。

 たかが電気のために、こんな未来を甘受する義務があるだろうか。そして今この問題に気づいている社員たちは、そうなったとしても自分が起訴されるわけではないとタカを括ってしまっているかもしれない。  

 そのときになったら、「放射能は言われているほど危険ではない」という念仏でも唱えるのだろうか。私たちの無責任社会はこんな未来を実現しようとしている。

 責任を考えたら危険性を知る者は告発すべきだし、検察は知っていて黙っている者たちも起訴すべきだ。それが未来世代へ引き継ぐ今の世代の義務ではないかと思う。


 ( 川崎市職員労働組合様へ寄稿したものを、好意を得て転載しています。) 


 *** より詳しくお読みになりたい方は、こちらをご参考ください *** 

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 『「川内原発再稼働は、私たちの暮らしのリスクを増やす」』(8/20発行 第96号)  
をご覧ください。 より詳しく解説、図や写真も多数用いています。  

 <田中優より>  
 この写真 http://tanakayu.blogspot.jp/2015/08/blog-post_25.html にある 「大容量空冷式発電機」が噴火の降灰が降り注いだらどうなるの? という話。 




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以上、2015.8.28田中優無料メルマガより転載