2月12日、大飯原発の隣の高浜原発の合格がおりたようですね・・
2月11日に発行しました田中優無料メルマガより転載します!
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※2012.4.1発行 有料・活動支援版メルマガ "未来レポート" 第11号より転載
2015.2月現在の情報なども追記致しました
『 おーい、原発! 消えてなくなれ 』
■再稼働に向けて進む大飯原発3,4号機
今、福島第一原発事故を受けて、北海道電力の泊3号機を除いてすべての
原発が止まっている。ストレステストと称する「シビアアクシデント対策」
のテストが行われてから動かす予定になっているからだ。
再稼働に向けて、ストレステストの最初となったのが大飯原発3,4号機だ。
原子力安全・保安院によれば、ストレステストでは地震や津波の規模を段階
的に大きくしていった時に、原発の設備や機能にどのレベルでどんな影響が
出るかをシミュレーションするというものだそうだ。これにより、原発の設
備の弱点を洗い出して対策につなげようとするものだ。
■何をテストしたらいい?
ところが福島第一原発事故の原因は、未だにはっきりしていない。
政府は津波によって起きたと信じ込ませようとしているが、実際には津波に
発電機が水没し、電源を失ってメルトダウンする前に、放射能が検出されて
いる。
現場では「おそらく主蒸気管が外れ、放射能が高くて測定不能だ」と言わ
れていた。電気を失った現場では、連絡用にホワイトボードを使うしかなか
った。そこに書かれたメモに残されているのだ。
つまり何メートルの津波が届こうが、それとは関係なく地震の揺れによっ
て破壊されていたのだ。
ところが津波何メートルまで大丈夫か、ダメなら非常用発電機を上に上げ
る、防波壁を築いて波が届かないようにする、などの対策が取られようとし
ている。
しかも地震が間もなく来ることが確実となっている東海地震の震源地の真
上に、浜岡原発が建てられている。そこには以前に一度行ったことがある。
行ったグループが脱原発御一行様だったのでどこにも入れず、砂浜から見学
したのだが、中部電力はものすごく長い望遠レンズで敷地からわれわれの写
真を撮っていた。 いやらしい恫喝まがいのことは、中部電力はずっと続け
ていた。
ぼく自身は中止に追い込んだ芦浜原発の反対運動にも関わっていた。その
せいか、職場には数十枚まとめて猥褻な写真を印刷したハガキが届き、隠し
撮りされたぼく自身の写真が送られてきていた。芦浜のある現地のローカル
紙で、「工作資金は建設受注を予定している○○建設から出されている」と書
かれてから、しばらく届かなくなったりした。だから脱原発のメンバーたち
からは、「中部電力の運動に関わるとひどいいやがらせがある」と言われて
いた。人権委員会にも提訴したが、ついぞ解明されることはなかった。
3月30日、経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)がインターネット上の
原発報道を監視していた問題をめぐり、枝野幸男経済産業相は会見で、「国
民の皆さんにネットを監視するような印象を与えたことは、誠に遺憾で反省
している」と陳謝した。
ぼく自身は60名ほどしかいない個人名の要監視リストにノミネートされてい
たが、こんなウソ臭い誠意のない陳謝で許す気にはならない。それどころか、
形を変えて今後も陰に陽に圧力をかけられ続けるだろうと思っている。
なぜなら不都合だからだ。良い子として「そうね、津波がいけなかったの
ね」と言っていれば問題ないだろうが、地震のせいだと主張されるのは困る。
しかし虚構の対策が生みだしたのが福島第一原発の事故だったのだ。
■建物は変わらないのに、地震動基準だけが変わる不思議
このグラフを見てほしい。福島第一原発事故以前の「想定最大加速度」の
グラフだ。
(写真1)
(写真2)
東海地震が想定される浜岡原発だけが600ガル(ガルというのは瞬間的な揺
れの加速度の単位)を想定している他は、ほぼ370ガル程度を想定している。
ところが福島原発事故後、このグラフが消されてしまっていた。これは私が
たまたま、「東京原発」という映画を見ていて、面白いグラフだと感心して
自分で探して作っていたものだった。
ところが人から聞かれて調べてみたら、元のアドレスからは抹消され、新た
な数字に変わってしまっていたのだ。急に原子力発電事業をしている事業者が、
基準となる地震動の値を変えている。最大の浜岡原発が800ガル、それ以外は
ほぼ600ガルだ。
これをシミュレーションしてみて事故にならないならいい、と再検討すると
いうのがストレステストなのだ。
いくつか問題がある。
■ストレステストの問題
1.そもそも原発は経済性とのバランスで建てられるため、地震動に対して
余裕がなかったはずなのに、建物も工事せずになぜ耐震性能を急に高く評価
できるのか。
原発は常にコストとのバランスで建てられる。安全性を重視しすぎた場合、
コスト的に見合わなくなるから、バランスの範囲で建てると原子力安全委員
長の斑目氏も述べている。
それが突然、「実はもっと強く造ってあった」と言われても信じられない。
2.東日本大震災では、1000ガル測れる地震測定器が壊れているのに、なぜ
その程度の耐震性能で足りるのか。
地震学者の島村英紀氏は、近年地震動が大きくなり、4000ガルの揺れがあ
ったことを報告している。元菅首相の政策秘書、松田光世氏によれば、福島
原発では1000ガルまで測れる地震計が壊れ、女川原発では2000ガル以上の地
震を計測している。
それをなぜ最大800ガルまでしか想定していないのに「適切」なのか。
シビアアクシデントとは、「設計基準を大幅に超える事故のこと」とされる
が、今回の現実すらカバーしていないレベルで、テストと言えるのか。
3.この耐震性能は、建物が倒れない程度を計算しているが、
福島第一原発では主蒸気管が壊れている可能性が高い。
建物だけ残っても意味がないではないか。
そもそも基準地震動が適用されるのは、「格納容器」と「建物」にすぎない。
それが倒れなければ大丈夫とするのは楽観に過ぎる。今回の事故を私は「主蒸
気管など配管の外れ、断裂」が事故の原因と推理しているが、配管の耐震性能
は考えられていない※。これでは安心できるレベルにない。
※追記:元東電社員だった木村俊雄さんの分析によれば、4号機で破損したの
と同じ箇所が破損したのではないかという。
それは炉心に直接つながっている水圧計の直径わずか1cmほどの配管だ。
それは設計上、細い管であるために強い強度を求められていなかった。その管
は炉心から原子炉建屋に直接つながっていたため、わずかずつだが恐ろしい圧
力で炉心の蒸気を噴出したのではないかと見ている。
主蒸気管の破損だった場合には、もっと激しく炉心内の水位が下がったはず
で、それはあり得ないと。
(詳しくは2013年11月15日発行の有料メルマガ「原子力規制委員会さん、
「水の泡」って知ってる?」(を参照してください)
4.福島第一4号機では、南側に80センチも傾いている。
不等沈下が起こったときには建物の強度が高くても 意味ないではないか。
建物が乗っている地盤が均一に動くと想定するのは非現実的。
そのことは私が1998年に書いた「環境破壊のメカニズム」でも指摘している。
そして今、福島第一4号機では1500本を超える燃料集合体の入った4-5階
のプールが傾き、必死の燃料集合体取り出し工事(取り出しを開始するのが
2013年の年末だが)を続けている※。そのまま倒れれば、冷やせない核燃料
が散らばることになり、熱と放射能で誰も近付けなくなる。すると福島原発
全体がそのまま放置されることになり、破滅に向かっていくことになる。
現にこれほどの危機が進行しているのに、保安院の審査は非現実的なまま
になっている。
※追記;この4号機にあった使用済み核燃料は、2014年12月にすべて搬出で
きたとの報道があった。
5.福島第一原発事故の反省からストレステストをするのに、
まだ福島第一原発の事故原因が明らかに なっていない。
ストレステストの目的が見えない。福島第一原発事故を再度起こさないため
なら、福島第一原発事故の原因を究明しなければならないはずだ。電力会社に
都合のいい想定を提出させて、その数字は正しいなどと確認算するだけなら
「保安院全員アホ」※でもできる。
※追記;「保安院全員アホ」は、「回文」になっている。
上から読んでも下から読んでも同じになる。
■政治判断って!
保安院のこうしたやり方は、従来の方法に則っている。従来、経産省の元に
ある保安院は、お墨付きを与えるためにだけ存在してきた。しかし今回だけは、
従来お墨付きを与えるだけだったはずの斑目原子力安全委員長が、問題点を指
摘した。「前提はともかくとして、前提にした範囲の計算は正しい。しかし問
題がある」と。 大きく言うと一つ目には第二次テストが必要であること、二つ
目に第一次テストは再稼働のためのものではないことだ。
そこで再稼働を焦っている前原政策調査会長は泊原発がストレステストに入
って、日本中の原発が全機停止する前に再稼働しようとし、野田首相は政治判
断で原発を再稼働するかのような動きを見せた。
アメリカのNRC(米原子力規制委員会)が日本に対して発言した内容が傑
作だった。「日本では首相が原子力の技術について、一番詳しいのか?」と。
なぜなら原子力発電所を動かせるかどうかは、最も技術的にシビアな問題で、
当然しかるべき能力が必要だからだ。だからアメリカでは国家から独立した機
関であるNRCが決定するが、日本でそうならないのは首相が一番詳しいから
なのかと皮肉ったのだ。
政治判断と言ってしまうとそういう意味になる。野田首相が「あとは政策判
断だ」と言ったのは墓穴を掘ったのだ。
実は結論が先にあって、それに合わせて「審査」しているだけなのだと。
■想定のウソ
ウソはさらに続く。図を見てほしい。(写真3)
大飯原発を左上から斜めに切り裂くような位置に線がある。活断層だ。
地震は活断層の長さが長くなればなるほど大きくなる。簡単に言うと、それが
ただのシワなのか、大きな裂け目の断層なのかの違いが出るからだ。
そして今回保安院が認めたのが三つのシワだった。だから最大700ガルの揺
れまで想定すれば良いとしたのだ。しかしみてわかるとおり、これは巨大断層
の可能性が高い。そうすると、想定の揺れをはるかに超えることになる。
これを「活断層殺し」という。「活断層ではない、ただの表層の崩れだ」と
か、「つながった断層ではない、ただのシワだ」とするものだ。実際、地質調
査をしても、都合の悪い「破砕帯」を示すぼろぼろの土質が出てくると、この
部分のコアを捨て、固い岩盤のように見せる「操作」は六ヶ所村でも行われて
いた。
■再稼働を認めるなら次の原発事故を容認せよ
今回の大飯原発のストレステストは、今後の審査の道を開く問題だ。これで
認められるなら、「想定外の震災」は頻発し、「最悪の事故」は最悪を更新し
続けるだろう。なぜならこれまでの審査がそうだったからだ。
全国の活断層の図を見てほしい。こんな国に原発を稼働させるのは無理だと
わかるだろう。(写真4)
これまで日本で起きた原発事故は、どれ位の確率だか知っているだろうか。
今回の4機の事故だけで、実に486炉年に1回の事故なのだ。「炉年」という
のは原発一基の炉心を一年間動かすことだ。すると現時点の54基の原発で割
るなら、8.8年に一回の事故が起こることになる。子どもが小学校に入学して
卒業するまでに次の事故が起きている勘定だ。そのたびに財産は失われ、国
家は財政破たんへと駒を進める。
単に大飯原発だけの話ではないのだ。これを読んでもらえたら、なぜ私が
今回のストレステストに反対しているのか理解してもらえるだろうか。
(これを書いている2012年3月31日、内閣府が公表した「南海トラフ」の地
震による津波は、浜岡原発に21メートルの津波をもたらすと予想した。
つまり現在造ろうとしている防波壁18メートルでは足りないということだ。
事態が分かるにつれて対策は不十分なものになっていく。損害保険すらつけ
られない地震と津波を考えれば、原発は止めるしかないのだ。)
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■再稼働に向けて進む大飯原発3,4号機
今、福島第一原発事故を受けて、北海道電力の泊3号機を除いてすべての
原発が止まっている。ストレステストと称する「シビアアクシデント対策」
のテストが行われてから動かす予定になっているからだ。
再稼働に向けて、ストレステストの最初となったのが大飯原発3,4号機だ。
原子力安全・保安院によれば、ストレステストでは地震や津波の規模を段階
的に大きくしていった時に、原発の設備や機能にどのレベルでどんな影響が
出るかをシミュレーションするというものだそうだ。これにより、原発の設
備の弱点を洗い出して対策につなげようとするものだ。
■何をテストしたらいい?
ところが福島第一原発事故の原因は、未だにはっきりしていない。
政府は津波によって起きたと信じ込ませようとしているが、実際には津波に
発電機が水没し、電源を失ってメルトダウンする前に、放射能が検出されて
いる。
現場では「おそらく主蒸気管が外れ、放射能が高くて測定不能だ」と言わ
れていた。電気を失った現場では、連絡用にホワイトボードを使うしかなか
った。そこに書かれたメモに残されているのだ。
つまり何メートルの津波が届こうが、それとは関係なく地震の揺れによっ
て破壊されていたのだ。
ところが津波何メートルまで大丈夫か、ダメなら非常用発電機を上に上げ
る、防波壁を築いて波が届かないようにする、などの対策が取られようとし
ている。
しかも地震が間もなく来ることが確実となっている東海地震の震源地の真
上に、浜岡原発が建てられている。そこには以前に一度行ったことがある。
行ったグループが脱原発御一行様だったのでどこにも入れず、砂浜から見学
したのだが、中部電力はものすごく長い望遠レンズで敷地からわれわれの写
真を撮っていた。 いやらしい恫喝まがいのことは、中部電力はずっと続け
ていた。
ぼく自身は中止に追い込んだ芦浜原発の反対運動にも関わっていた。その
せいか、職場には数十枚まとめて猥褻な写真を印刷したハガキが届き、隠し
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紙で、「工作資金は建設受注を予定している○○建設から出されている」と書
かれてから、しばらく届かなくなったりした。だから脱原発のメンバーたち
からは、「中部電力の運動に関わるとひどいいやがらせがある」と言われて
いた。人権委員会にも提訴したが、ついぞ解明されることはなかった。
3月30日、経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)がインターネット上の
原発報道を監視していた問題をめぐり、枝野幸男経済産業相は会見で、「国
民の皆さんにネットを監視するような印象を与えたことは、誠に遺憾で反省
している」と陳謝した。
ぼく自身は60名ほどしかいない個人名の要監視リストにノミネートされてい
たが、こんなウソ臭い誠意のない陳謝で許す気にはならない。それどころか、
形を変えて今後も陰に陽に圧力をかけられ続けるだろうと思っている。
なぜなら不都合だからだ。良い子として「そうね、津波がいけなかったの
ね」と言っていれば問題ないだろうが、地震のせいだと主張されるのは困る。
しかし虚構の対策が生みだしたのが福島第一原発の事故だったのだ。
■建物は変わらないのに、地震動基準だけが変わる不思議
このグラフを見てほしい。福島第一原発事故以前の「想定最大加速度」の
グラフだ。
(写真1)
(写真2)
東海地震が想定される浜岡原発だけが600ガル(ガルというのは瞬間的な揺
れの加速度の単位)を想定している他は、ほぼ370ガル程度を想定している。
ところが福島原発事故後、このグラフが消されてしまっていた。これは私が
たまたま、「東京原発」という映画を見ていて、面白いグラフだと感心して
自分で探して作っていたものだった。
ところが人から聞かれて調べてみたら、元のアドレスからは抹消され、新た
な数字に変わってしまっていたのだ。急に原子力発電事業をしている事業者が、
基準となる地震動の値を変えている。最大の浜岡原発が800ガル、それ以外は
ほぼ600ガルだ。
これをシミュレーションしてみて事故にならないならいい、と再検討すると
いうのがストレステストなのだ。
いくつか問題がある。
■ストレステストの問題
1.そもそも原発は経済性とのバランスで建てられるため、地震動に対して
余裕がなかったはずなのに、建物も工事せずになぜ耐震性能を急に高く評価
できるのか。
原発は常にコストとのバランスで建てられる。安全性を重視しすぎた場合、
コスト的に見合わなくなるから、バランスの範囲で建てると原子力安全委員
長の斑目氏も述べている。
それが突然、「実はもっと強く造ってあった」と言われても信じられない。
2.東日本大震災では、1000ガル測れる地震測定器が壊れているのに、なぜ
その程度の耐震性能で足りるのか。
地震学者の島村英紀氏は、近年地震動が大きくなり、4000ガルの揺れがあ
ったことを報告している。元菅首相の政策秘書、松田光世氏によれば、福島
原発では1000ガルまで測れる地震計が壊れ、女川原発では2000ガル以上の地
震を計測している。
それをなぜ最大800ガルまでしか想定していないのに「適切」なのか。
シビアアクシデントとは、「設計基準を大幅に超える事故のこと」とされる
が、今回の現実すらカバーしていないレベルで、テストと言えるのか。
3.この耐震性能は、建物が倒れない程度を計算しているが、
福島第一原発では主蒸気管が壊れている可能性が高い。
建物だけ残っても意味がないではないか。
そもそも基準地震動が適用されるのは、「格納容器」と「建物」にすぎない。
それが倒れなければ大丈夫とするのは楽観に過ぎる。今回の事故を私は「主蒸
気管など配管の外れ、断裂」が事故の原因と推理しているが、配管の耐震性能
は考えられていない※。これでは安心できるレベルにない。
※追記:元東電社員だった木村俊雄さんの分析によれば、4号機で破損したの
と同じ箇所が破損したのではないかという。
それは炉心に直接つながっている水圧計の直径わずか1cmほどの配管だ。
それは設計上、細い管であるために強い強度を求められていなかった。その管
は炉心から原子炉建屋に直接つながっていたため、わずかずつだが恐ろしい圧
力で炉心の蒸気を噴出したのではないかと見ている。
主蒸気管の破損だった場合には、もっと激しく炉心内の水位が下がったはず
で、それはあり得ないと。
(詳しくは2013年11月15日発行の有料メルマガ「原子力規制委員会さん、
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4.福島第一4号機では、南側に80センチも傾いている。
不等沈下が起こったときには建物の強度が高くても 意味ないではないか。
建物が乗っている地盤が均一に動くと想定するのは非現実的。
そのことは私が1998年に書いた「環境破壊のメカニズム」でも指摘している。
そして今、福島第一4号機では1500本を超える燃料集合体の入った4-5階
のプールが傾き、必死の燃料集合体取り出し工事(取り出しを開始するのが
2013年の年末だが)を続けている※。そのまま倒れれば、冷やせない核燃料
が散らばることになり、熱と放射能で誰も近付けなくなる。すると福島原発
全体がそのまま放置されることになり、破滅に向かっていくことになる。
現にこれほどの危機が進行しているのに、保安院の審査は非現実的なまま
になっている。
※追記;この4号機にあった使用済み核燃料は、2014年12月にすべて搬出で
きたとの報道があった。
5.福島第一原発事故の反省からストレステストをするのに、
まだ福島第一原発の事故原因が明らかに なっていない。
ストレステストの目的が見えない。福島第一原発事故を再度起こさないため
なら、福島第一原発事故の原因を究明しなければならないはずだ。電力会社に
都合のいい想定を提出させて、その数字は正しいなどと確認算するだけなら
「保安院全員アホ」※でもできる。
※追記;「保安院全員アホ」は、「回文」になっている。
上から読んでも下から読んでも同じになる。
■政治判断って!
保安院のこうしたやり方は、従来の方法に則っている。従来、経産省の元に
ある保安院は、お墨付きを与えるためにだけ存在してきた。しかし今回だけは、
従来お墨付きを与えるだけだったはずの斑目原子力安全委員長が、問題点を指
摘した。「前提はともかくとして、前提にした範囲の計算は正しい。しかし問
題がある」と。 大きく言うと一つ目には第二次テストが必要であること、二つ
目に第一次テストは再稼働のためのものではないことだ。
そこで再稼働を焦っている前原政策調査会長は泊原発がストレステストに入
って、日本中の原発が全機停止する前に再稼働しようとし、野田首相は政治判
断で原発を再稼働するかのような動きを見せた。
アメリカのNRC(米原子力規制委員会)が日本に対して発言した内容が傑
作だった。「日本では首相が原子力の技術について、一番詳しいのか?」と。
なぜなら原子力発電所を動かせるかどうかは、最も技術的にシビアな問題で、
当然しかるべき能力が必要だからだ。だからアメリカでは国家から独立した機
関であるNRCが決定するが、日本でそうならないのは首相が一番詳しいから
なのかと皮肉ったのだ。
政治判断と言ってしまうとそういう意味になる。野田首相が「あとは政策判
断だ」と言ったのは墓穴を掘ったのだ。
実は結論が先にあって、それに合わせて「審査」しているだけなのだと。
■想定のウソ
ウソはさらに続く。図を見てほしい。(写真3)
大飯原発を左上から斜めに切り裂くような位置に線がある。活断層だ。
地震は活断層の長さが長くなればなるほど大きくなる。簡単に言うと、それが
ただのシワなのか、大きな裂け目の断層なのかの違いが出るからだ。
そして今回保安院が認めたのが三つのシワだった。だから最大700ガルの揺
れまで想定すれば良いとしたのだ。しかしみてわかるとおり、これは巨大断層
の可能性が高い。そうすると、想定の揺れをはるかに超えることになる。
これを「活断層殺し」という。「活断層ではない、ただの表層の崩れだ」と
か、「つながった断層ではない、ただのシワだ」とするものだ。実際、地質調
査をしても、都合の悪い「破砕帯」を示すぼろぼろの土質が出てくると、この
部分のコアを捨て、固い岩盤のように見せる「操作」は六ヶ所村でも行われて
いた。
■再稼働を認めるなら次の原発事故を容認せよ
今回の大飯原発のストレステストは、今後の審査の道を開く問題だ。これで
認められるなら、「想定外の震災」は頻発し、「最悪の事故」は最悪を更新し
続けるだろう。なぜならこれまでの審査がそうだったからだ。
全国の活断層の図を見てほしい。こんな国に原発を稼働させるのは無理だと
わかるだろう。(写真4)
これまで日本で起きた原発事故は、どれ位の確率だか知っているだろうか。
今回の4機の事故だけで、実に486炉年に1回の事故なのだ。「炉年」という
のは原発一基の炉心を一年間動かすことだ。すると現時点の54基の原発で割
るなら、8.8年に一回の事故が起こることになる。子どもが小学校に入学して
卒業するまでに次の事故が起きている勘定だ。そのたびに財産は失われ、国
家は財政破たんへと駒を進める。
単に大飯原発だけの話ではないのだ。これを読んでもらえたら、なぜ私が
今回のストレステストに反対しているのか理解してもらえるだろうか。
(これを書いている2012年3月31日、内閣府が公表した「南海トラフ」の地
震による津波は、浜岡原発に21メートルの津波をもたらすと予想した。
つまり現在造ろうとしている防波壁18メートルでは足りないということだ。
事態が分かるにつれて対策は不十分なものになっていく。損害保険すらつけ
られない地震と津波を考えれば、原発は止めるしかないのだ。)
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