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2018年7月5日

「 未来バンクを超えて新たなステップへ 」

『 未来バンクを超えて新たなステップへ 』

         未来バンク事業組合 理事長  田中 優


 未来バンクが、同じく私が代表を務める天然住宅バンクに合併するという話を伝えたが、なんだか変わりないように思えるかもしれない。
しかし大きな違いがあることをお話ししたい。

 数年前に脳幹部の出血をして、後遺症も何もないが危険な体験をした。こうしてリスクが加齢とともに増えてきているのだ。そればかりでなく、頭が固くなって次の機会を逃す危険もある。老害になることのリスクもあるのだ。ある団体では頭が固くなった老人が最後まで我を張って代表を続け、若いスタッフが困った末に自殺してしまったという悲惨な例もある。

 私自身が固陋になってしまったとしても、はたまた今以上に能力が衰えてしまったとしても、次に委ねる仕組みを作っておきたい。そうすれば安心して活動できるのではないか。と考えたのだ。だから若い人たち主体に新しいバンクを構成し、今いる、ある意味でベストメンバーである今のバンク理事たちはサポートに回る。 

 そして徐々にフェードアウトできる仕組みにしたいと思うのだ。

 未来バンクの今の理事たちは、特技にでっぱりへっこみがあるとはいえ、全体としてうまく運営できるメンバーだと思う。そこから私たちにしてみれば多額の貸倒引当金や事業準備金を含めて、次の世代に引き継ぎたいのだ。


 とはいえ私自身も引退するには早すぎると感じている。その部分は、別な形で実現しようと進めている。それが「未来基金」構想だ。私はそれら二つのバンク以外にも関わっていて、「財団法人 信頼資本財団」の評議員も務めている。そこで次の仕組みを作ろうと考えているのだ。動機は私自身が年金を受け取れる歳に、あとわずかでなれるということだ。しかし社会を見渡してみて、私がそのお金を受け取ることに抵抗があるのだ。個人的には一生懸命に頑張ってきたとは思う。


 しかし若い世代の人たちを差し置いて、私が受け取ることには抵抗があるのだ。
ある団体に関わっていて、世界一周する旅行の講師をしていた。そこには今や高齢者が多くを占め、体が十分に動かない人たちも参加していた。すると若い人たちが親切に高齢者をかばい、車椅子の後ろを押すのだ。その後ろから押される側に、私がなることには抵抗があるのだ。病気して一時的には車椅子で移動する生活になったことはある。そうではなく、これから先の生き方として納得できないのだ。

 私が生まれた年は、日本で原子力の予算が初めて組まれた年だ。なんてことをしてくれたのかという思いはある。それと同様に私の育ってきた時代は将来のツケにして良い暮らしになってきた時代でもある。

 恩恵に浴することはなかったが、バブルの時代もあり退廃的なまでに遊び呆けていた時代でもある。そんな時代の人間が、年老いてまで車椅子を後ろから押してもらうだけの資格があるようには思えないのだ。

 そこで年金を受け取る中の一部でも、きちんと未来に寄付できる仕組みを作りたいと考えたのだ。年金額の総額は巨額で、わずか一%に満たない寄付でも、全体としては「兆円」の単位になる。その資金を得て、未来に残したくない負の遺産(ツケ)をなくしたいと思うのだ。

 たとえば放射性廃棄物の問題にしても、恩恵を得ることのない世代に残すことになる。その電気すら使っていないのに、一方的に放射性廃棄物だけを押し付けられる。これを解決するのに国の費用ですべきと言うことはできる。しかし今の政権を見ていればわかるように、そんな能力も決意もないだろう。ここには三つの選択肢しかない、政府がするか、市民が自発的にするか、市民と政府が共同でするかの三つだ。

 言葉上で美しいのは共同で実行するというものだが、実際の場面を見てみると、無責任で、大きなものに寄り掛かった活動しか見えてこない。これでは解決するはずがない。

 市民が勝手に自発的に始めなければ、十分に効果的なものにはならないだろう。ある人が実験して、トリチウムの混じった水の浄化に挑んだ。成功したので政府に働きかけたが、政府は追加実験もすることなく握りつぶした。従来の物理学からは不可能と思われるからだろうか。そうでなくても、もし実現できたらゼネコンの「除染ビジネス」に齟齬をきたすからだと聞いた、すると成功したら除染ビジネスの利権に穴が開き、失敗すれば従来通りの不可能な話になるのだ。ならば何もしないことが最高の対策になる。

 こんなことでは解決できる手段は見えてこない。実績があるならやって実験してみたらいいと思う。その費用も「国の対策」では検討すらされなくなる。放射性物質の話は荒唐無稽と思われるかもしれないが、人口が激しく減少する時代のダム計画はどうだろうか。

 ついに10人に一人を越えて発生するようになってしまった「ADHD(注意欠陥/多動性障害)「LD(学習障害)」「情緒障害」や「自閉症」などの問題はどうだろうか。この発生とネオニコチノイド農薬の使用量とが比例していたり、アメリカの自閉症児の増大と、除草剤ラウンドアップの使用量が比例している。

 マサチューセッツ工科大学から、「2025年には二人に一人の子どもが自閉症になる」と論文も出されている。この除草剤ラウンドアップは、それでも枯れないように作られた遺伝子組み換え作物の栽培によって、当たり前に使われることになる。
日本ではその準備として「主要作物種子法」が廃止されてしまった。


 私たちは政府に気兼ねしたり忖度したりすることなしに、きちんと調べて対策する資金を市民自身で持つべきではないだろうか。信頼資本財団は公益財団だから、寄付したお金の四割程度が税控除される。

 その分は戻ってくるのだ。さらに若い人たちが能力ではなく、親の財力によって将来が限定される事態も避けたい。最低限、無利子の奨学金を用意したい。そのとき※信頼資本財団は、公的財団となっているので貸金業の登録なしに融資ができる。
そして現に今も融資をしている。

 なんと「無利子・無保証・無担保」で、信頼保証人という法的な責任を負わない人だけで融資し、これまでの十年間に一軒の貸倒も起こしていない。これはブロックチェーンによる信用確保と同様で、信頼によって社会の仕組みを実現する形になっているのだ。

 これが私の考える次の仕組みだ。わずかではあるが、もちろん私も寄付していこうと思う。買いに稼いだお金と、現世代の就労者から老後の費用を賄おうとするのが年金制度だとするなら、これまでとは逆に過去に働いて稼いだお金である年金を、未来のために使おうとする動きだ。

 未来バンクは「過去の費用」には融資せず、未来のための活動だけに融資してきた。同様に未来のための資金にしたい。石川啄木の言葉で恐縮だが、「これをし遂げて死なんと思う」のだ。私たちは未来世代のために生きてきた。そのひとつの表現にしたい。


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以上、2018年6月発行 
※「未来バンク事業組合ニュースレター No.95/2018年6月」より抜粋

※PDF版はこちら
http://www.geocities.jp/mirai_bank/news_letter/MB_NL_95.pdf


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