ページ

ページ

2010年10月19日

デザートだけ? メインディッシュは食べないの? ~田中優より ~

□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□


デザートだけ? メインディッシュは食べないの?


COP10名古屋会議

 これが生物多様性条約会議であることは知られている。しかし何のための?と聞くと返事は心許ない。それぞれの団体は自分に関わりのある問題を引っ提げてこの場に集まり、それぞれのアピールをしていく。それはそれでいい。しかしぼくが気にかかるのは、メインテーマに対する人々の意識だ。

カルタヘナ条約会議

 今回の会議には重要な意味がある。メインテーマの重要なひとつが、「遺伝子組み換え作物の輸出入に関するカルタヘナ議定書」だ。ひとつ目のカルタヘナ議定書は、遺伝子組み換え作物を勝手に持ち込んだりすることへの制限だ。たとえばトウモロコシの原種はメキシコにあるとされている。しかしそのメキシコには遺伝子が組み換えられたトウモロコシがたくさん植えられてしまった。そのせいでいつの間にか原種に組み換えられた遺伝子が入り込み、遺伝子の汚染が広がってしまっている。困ってしまうのは私たちの次の世代だ。「やっぱり原種に戻って再度育種していかないと成長力が弱いとか、病害虫や天候の変化に弱い」となったときに、残念ながら原種がない。すべての原種がいつの間にか組み換えられた遺伝子に汚染されてしまっているからだ。日本たんぽぽが見つからなくなったように、汚染前の原種が失われてしまうのだ。

 それを「いらないと言っている国に勝手に持ち込んでいけない、輸入はその国の許可が必要で、安全性のデータも揃える必要がある」というものが、このカルタヘナ条約なのだ。それを決める重要な局面が、今回の名古屋会議だ。

「ABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)」

 もうひとつ重要なのがと「ABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)」問題だ。たとえば薬品の半数以上は、その原材料を途上国の熱帯林から調達したと言われている。しかし彼らはその薬の利益からの分け前をもらえない。タダ取りされるだけだ。そして薬を得ようとすると、自分たちの地域からの原料成分だというのに、特許に守られた高い価格を払わなければならない。しかも薬品の場合、高いカネを払える人たちにだけ開発される。途上国の人たちのかかるマラリア薬が開発されず、一方で禿げ薬がどんどん開発されているのはそうした事情だ。そしてたとえば途上国が自国民をエイズ/HIVから守るために、コピー薬を安く生産しようとすると、本来GATTの条文で認められているのに特許侵害として訴えられる。その遺伝子資源は途上国の地域のものなのに。

 腹を立てたインドネシアは、鳥インフルエンザウイルスを先進国に渡さなかった。たとえ薬が作られても彼らに届かず、しかも提供しても何の利益も得られないからだ。だから公平に遺伝子資源を持っていた地域に利益を配分しようとするのが今回の会議の二つ目のメインテーマだ。

ミーイズム

 これほど重要なことが話し合われる会議だというのに、この機を利用して自分の運動を知らしめようとする動きが多すぎる。それを「するな」というのではない。してもらっていいのだが、最重要課題を論議しようと集まっている人たちの話に敬意を払った上でしてほしいと思うのだ。

 このふたつのテーマ、きちんと理解していただろうか。先住民や途上国の地域で暮らす人たちの非差別感、自分たちの原種を汚染される人々の悔しさを理解しようとしただろうか。それなしに自分たちのテーマだけを訴えるとしたら、「デザートしか要らない」と言ってメインディッシュに目もくれない子どものようではないか。この会議はただのお祭り騒ぎではないのだ。ましてや地域おこしのイベントなどではない。ところがオバマがアメリカ大統領に選ばれたときに、「小浜市」が大騒ぎしたみたいな事態になっている。

 「ミーイズム」という言葉がある。自分のことだけで、他には関心を払わない自己中心主義を指す。日本全体がミーイズムそのものではないか。

汚染者が勝つ世界を変えよう!

 今からでも遅くはないから人の話にも聞き耳を立ててほしいと思う。こうした会議は最後の閣僚級会合でどんでん返しが起こって決まったりするものだ。その閣僚級会合は10月の27日(水)~29日(金)に行われる。そのときに今起きてしまっている深刻な問題を覆せるかもしれないのだ。

 モンサントという農薬メーカーは、自社の枯葉剤の被害を受けないように遺伝子を組み換えたナタネを作った。つまり枯葉剤を撒いたとしても、自社のナタネだけは被害を受けないのだ。だから安心して枯葉剤を撒ける。しかしこのナタネが穀物用に輸入された貨物からこぼれ、いまや名古屋港から三重の工場につながる23号線沿いに、多数の遺伝子操作されたナタネが生えてしまっているのだ。ナタネの元になったアブラナから派生した作物は数多い。アブラナ、カブ、キャベツ、ハクサイ、カリフラワー、ブロッコリー、ダイコン、ワサビ…。これらのものの中には容易に交配してしまうものもある。われわれは何を食べたら遺伝子組み換え植物から逃れられるのだろうか?

 カナダでまじめに作物を作っていた有機農家がいた。その周囲でモンサントは遺伝子を組み換えたナタネを作った。その結果、彼の大事なナタネは汚染されてしまった。しかしそれを訴えたのはモンサント社の方だった。勝手に彼の農場のナタネを奪って調べ、自社の組み換え作物と交配してしまっているのだから、特許の侵害だと訴えたのだ。
なんと負けたのはまじめな有機農家の側だった。汚染した側が汚染したことを根拠に特許の侵害だと訴えてカネを奪うことができる。こんなばかな話はないだろう。しかしこれは現実の話なのだ。

 それを止めようと努力した人たちが結実させた会議なのだ。ただデザートを食べにくるのではなく、メインディッシュに目を向けてほしいと思う。


たとえば
COP10に関わる「遺伝子ビジネス」の理不尽な話
講師 河田昌東さん
http://www.janjannews.jp/archives/2882842.html

A SEED JAPAN:『ABS に関する議定書原案』
http://www.aseed.org/abs/press_100608.pdf
など、ぜひ見てほしい。




□◆  注目イベント! ◇■□■□◆◇◆◇■□


本日!まだ間に合います☆彡 上記COP10のお話も聞けます!

 <10月19日(火)>

”田中優”、”高森ゆうき”がトークと音楽でお贈りする
THE大人 の「社交BAR」
~学ぶ楽しさ音を感じる喜び~

今回のテーマ「お金ってなんだ?」
http://tanakayu.blogspot.com/2010/10/blog-post.html

今、世の中には様々な情報が溢れかえっておりその中で何を選び、
何を信じればいいのか?
本当に起こっている事は何?、本当に必要なものは何?
そんな「何?」を”楽しみ学びながら共に考え”そして音楽を
もっと身近に感じてもらおう!
レッツ!トーク&ミュージック!
BARと言うだけあってお酒もございます。
嗜みながら是非!皆さま社交BARへ。
かっこいい大人の階段がここに、、

【講師】田中優(未来バンク理事長)
→ 
 http://tanakayu.blogspot.com/
【ゲスト講師】土谷和之(国際青年環境NGO A SEED JAPAN
「エコ貯金」担当理事)→ 
http://www.aseed.org/
【演奏者】高森ゆうき(シンガーソングライター)
http://www.takamoriyuki.com/

OPEN18:30 / START19:30
前売¥1,800 / 当日¥2,300(共に飲食代別)

前売チケット取り扱い:ローソンチケット(Lコード:
31529)、ネイキッド電話予約
問い合わせ:tel.03-3205-1556



++メルマガ第82号より++